教育課程指導資料について はじめに 平成20年3月告示の学習指導要領において,学力の三要素をバランスよく育てることを目指 し,習得・活用・探究という学習過程の中で,学級やグループで話し合い発表し合うなど言語活 動や,他者,社会,自然・環境と直接的に関わる体験活動等を重視することとされた。 そこで,今年度の教育課程研究委員会では,昨年度から取り組んでいる,「見通しを立てたり 振り返ったりする学習活動」とともに「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」につ いて,各教科等の特性に合わせて具体化するとともに,よりよい実践が図れるよう,例示するこ ととした。 ■各教科等における『主体的に学習に取り組む態度』の育成 学力の三要素のうち「主体的の学習に取り組む態度の育成」は,基礎的・基本的な知識・技能 の定着とともに,それらを活用して課題を解決するための思考力・判断力・表現力等の育成を重 視した教育を行うことが必要であると同時に,子供がこれらを支える知的好奇心や探究心を持 って学習に取り組める態度を養うために極めて重要である。 1 体験的・問題解決的な学習及び子供の興味・関心を生かした学習の充実 言語活動や観察・実験など,体験的な学習や基礎的・基本的な学習の充実は,主体的に学習に 取り組む能力を身に付けさせるとともに,学ぶことの楽しさや成就感を体得支える上で有効で ある。また,子供の興味・関心を生かすことは,学習意欲を喚起する上で有効である。子供が 学習の目的や進歩の状況を意識し,進んで学習しようとする態度が育つように配慮することが 大切である。 2 各教科等での「見通し・振り返り」学習活動の重視 見通しでは,子供の側に立った目標(めあて・ねらい・課題)を示し,この時間に何ができる ようになればよいのか,何が分かるようになればよいのかがはっきり分かる具体的な表現にし て,子供が何をめざして学習すればよいかゴールを意識して取り組めるようにする。 振り返りでは,実際に学習したことや,何が分かり,何ができるようになったかを子供自身 が自分のことばで振り返ることができるようにしていく。 「見通し・振り返り」活動は一連の学習活動であるため,意図的・計画的・組織的に実施し, 各教科等における内容のまとまりごとに,あるいは毎時の授業において,「見通しを立てたり, 振り返ったりする学習活動」について,どのように見通しを立てる学習活動や振り返る学習活 動を設定し,その充実を図るかが大切である。これらの指導を通じて,子供の学習意欲の向上 を図るようにすることが大切である。 3 指導方法,指導体制の工夫 子供が自分にふさわしい学習方法を模索し,主体的に学習を進めていくことができるように 個々の子供に応じた指導を行うことなど指導方法や指導体制の工夫を行うことが大切である。 ■各教科等における『学び合い』の授業 中央教育審議会答申(H20.1.17)には,思考力・判断力・表現力等の育成を図るために不可 欠なものとして「互いの考えを伝え合い,自らの考えや集団の考えを発展させる」活動が示さ れている。「学び合い」は,異なる経験や考えを持つ者同士が集団で多様な考えを交わし合い, 一人一人の考えやみんなの考えを深められるところに,学びの本質的な意味がある。 - 1 - 1 授業づくりの視点 「自分の考えを持ち」他者と関わることにより,自分の考えを再考し,友達の考えを取り入 れることで,一人では解決できない問題への新たな見方が生まれる。友達との関わりによって 考え方や見方が広がる時,子供たちは「分かってよかった」「次は,これを考えたい」「もっ と学びたい」といった気持ちが広がり,学びが連続していく。 そのためには,学習課題の設定,一人で考える時間の保証,話合いに必要な視点の提示,教 師の関わりなどがポイントとなり,授業の質の向上が求められている。 2 子供たちが「学び合う」授業 一人一人の子供が他者と相互に関わりながら,新しい情報を分析して既存の知識や経験と結 び付けたり,学びを振り返って評価したりできるようにする。他者とのコミュニケーションを 図り,自分の考えと他者の考えとを比べ,どこが同じか,どこが異なるのか等を知り,考えを 発展させていく過程が大切である。 そのためには,一人一人の子供の中に「受信→思考→発信」という一連のプロセスが作られ, 子供たちが自分で判断し,解決していくことのできる学力の育成を図るために,子供同士が学 び合う「能動的」な授業を意図的・計画的に取り入れるようにしていく。 なお,「初等教育資料 2015 4月号,5月号」も参考にしてください。 ■提示の方法と内容 教育課程指導資料は,冊子とホームページの2部構成になっている。 教育課程指導資料 教育課程指導資料 【冊 子 版】 【ホームページ版】 http://www.ypec.ed.jp/gimukyo/ Ⅰ 各教科における「主体的に学 習に取り組む」学習活動のポイ ント Ⅱ 各教科における「学び合い」 の学習活動のポイント 「主体的・協働的な学び」を取 り入れた具体的な学習指導につい て,掲載 ■『教育課程指導資料』の活用の方法 その1 その2 【冊子版】では,各教科等ごとの特性に合わせ,まず,「課題の発見・解決に向 けた主体的・協働的な学び」のポイントを示す。これを踏まえて,【ホームペ ージ版】では,言語活動の充実とともに具体的な事例を掲載している。 下に示したURLにアクセスし,「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学 びを生かした指導のポイント」を具体的な事例をもとに指導の在り方について理解 する。 ホームページでは,PDF版で「学習指導の事例」の詳細が見られるようになっています。 これらを参考に実際に指導計画に取り入れたり,新たな単元(題材)づくりの参考にしたり してください。また,必要に応じてダウンロードできるので,印刷して,校内研究会の資料 等に御活用ください。 教育課程指導資料 ホームページのURL - 2 - http://www.ypec.ed.jp/gimukyo/ 平成27年度全国学力・学習状況調査【小学校】 【目標(めあて・ねらい)を示す活動】 ○授業の冒頭に目標(めあて・ねらい)を示す活動を計画的に取り入れた学校の割合は, 「よく行った」 「どちらかといえば,行っ た」が山梨県は 98.9%である。 平成 26 年度より 2.7%上回り,全国平均も上回っている。 ○授業のはじめに目標(めあて・ねらい)が示されたと思う児童の割合は, 「よく行った」 「どちらかといえば,行った」が山梨県 は 86.0%である。平成 26 年度より 4.4%上回り, 全国平均と同等である。 【振り返る活動】 ○授業の最後に学習したことを振り返る活動を計画的に取り入れた学校の割合は, 「よく行った」 「どちらかといえば,行った」が 山梨県は 90.6%である。平成 26 年度より 3.3%上回り,全国平均より 3.3%下回っている。 ○授業の最後に学習したことを振り返る活動を「よく行った」 「どちらかといえば,行った」と思う児童の割合は,山梨県は 76.9% である。平成 26 年度より 2.9%上回り,全国平均も上回っている。 【授業で使うノートに,学習の目標(めあて・ねらい)と学習のまとめを書く活動】 〇授業で使うノートに,学習の目標(めあて・ねらい)と学習のまとめを書くように指導した学校の割合は, 「よく行った」 「どち らかといえば,行った」が山梨県は 87.9%である。全国平均より 6.2%下回っている。 〇授業で使うノートに,学習の目標(めあて・ねらい)と学習のまとめを書く活動を「よく行った」 「どちらかといえば,行った」 と思う児童の割合は,山梨県は 82.2%である。全国平均を 4.9%下回っている。 【学級やグループでの話し合いなどの活動で,自分の考えを深めたり,広げたりする活動】 〇学級やグループでの話し合いなどの活動で,自分の考えを深めたり,広げたりする活動ができている学校の割合,を「よく行っ た」 「どちらかといえば,行った」が,山梨県は 72.9%である。全国平均を 6.8%上回っている。 〇学級やグループでの話し合いなどの活動で,自分の考えを深めたり,広げたりす「どちらかといえば,行った」児童の割合は, 山梨県は 70.5%である。全国平均を 3.6%上回っている。 〔学校質問紙〕 調査対象学年の児童に対して,前年度までに,授業の冒頭で目標(めあて・ね らい)を児童に示す活動を計画的に取り入れましたか 〔児童質問紙〕 5年生までにに受けた授業のはじめに,目標(めあて・ねらい)が示されてい たと思いますか 〔学校質問紙〕 調査対象学年の児童に対して,前年度までに,授業の最後に,学習したことを 振り返る活動を計画的に取り入れましたか 〔児童質問紙〕 5年生までにに受けた授業の最後に,学習内容を振り返る活動をよく行って いたと思いますか 〔学校質問紙〕 調査学年の児童に対して,前年度までに,授業で使うノートに,学習の目標 (めあて・ねらい)と学習のまとめを書くように指導しましたか 〔児童質問紙〕 5年生までに受けた授業では,授業で使うノートに,学習の目標(めあて・ね らい)と学習のまとめを書いていたと思いますか 〔学校質問紙〕 調査対象学年の児童は,学級やグループでの話し合いなどの活動で,自分の 考えを深めたり,広げたりすることができていると思いますか 〔児童質問紙〕 学級の友達との間で話し合う活動を通じて,自分の考えを深めたり,広げた りすることができていると思いますか -3-
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