漢 検 生 涯 学 習 ネットワ ー ク かんかんこうきき ∼ 巷に 生 き る 漢 字 あ れこれ ∼∼ ﹁観感興起﹂…目で見、 心に感じ、感動して奮起すること。 文 字を作りたい﹂という 方 針を打 ち出して作 られる書 コンセ プト が ぶ れないよ う 5 0 0 字ですから、途 中で に描 き 進 めな け れ ばな り ま 体もあります。 コンセプトが決 まると、デッサンを行います。 ミリ と が あるので、5 0 0 字の せん。それでもぶれてくるこ う ちでも 最 初に作った 自 分 四 方の紙に文 字 を 手 作 業で描いていき ま す が、ここで のデッサ ンを 常 に 見 返 す よ は、コンセプトがぶれないように一人のデザイナーで基 本となる5 0 0 字を全て描きあげます。 一つの書 体で約 ジが揃っているかの確認も行っています。 後、同じ形状を持つグループで分け、コンセプトイメー みたり、ユニバーサルデザ ―小田さんが手が ン﹂です。最 初の構 想 うことで作った﹁黎 ミ れい 新しい明朝体を、とい い う 明 朝 体 に 対 して あった﹁リュウミン﹂と そ れ まで 我 が 社 に ものは? けた書 体で印 象 深い 目にする書体となります。 を繰り返し、ようやく普段 あ ら ゆ る 角 度 か らの 確 認 い か チェック を し た り と、 イ ンの 観 点 か ら 読 み や す メ ー ジして 文 章 に 組 んで 実 際 使 わ れる 状 況 を イ さまざまな立 場を通して感じる、またそれぞれの角 度 ナ ー で は 、漢 字 と 特 別 な 関 わ り 合 いを 持つ人 を 取 り 上 げ、その人ならではの﹁漢字模様﹂について伺います。 だ ひでゆき 今 回は、印 刷 物の書 体を作 成しているモリサワ文 研 株 お 式 会 社のタイプフェイスデザイナー・小 田 秀 幸さん。いつ も目にする書 体 が 作 られていく様 子と、そこに込 められ た想いを伺いました。 ― 明朝体、ゴシック体、教 科 書 体 …世の中には様 々 デッサン﹂を担当されているそうですが。 ― 小田さんはその﹁基本となる500 字の な 書 体 が あ ふれていま す デ ザ イ ンさ れ、作 成 さ れ が、そ れ ら は ど の よ う に その幅やバランスは微妙に異なっている。 だけで に 年、完成まで 年かかりました。 ト を 決 定 し ま す。市 場 か 参 考にすると、ど う しても だ ん だ ん 似て はあえて参 考にしないようにしています。 たな 書 体 を 制 作 する際には、既 存の書 体 がけて良かったと感激しましたね。 ました。初めての挑戦でもありましたから、黎ミンを手 完成したときは、それは嬉しかったし、何よりホッとし いといけませんでしたので、プレッシャーもありました。 すし、リュウミン同等の、いやそれ以上のものを作らな らの 要 望 や 流 行 を 反 映 し きてしまいますから。 一万字の基本となる 明 朝 体 や ゴシック体 というのは その会 社の顔にな り ま デザイナーが ﹁このような て作 られる書 体 もあれば、 け、微調整しながら仕上げていきます。新 「憾」 「撼」 「轗」は全て旁に「感」を持つが、 さ らに紙 を 重 ね、定 規 な どを 使って肉 付 さらに紙を重ねてラフを描きます。それに デッサンは、まずその字の骨 格を描 き、 12 一文字一文字丁寧に手描きされている。 を作るか﹂というコンセプ 教えてください。 ていくの か、その 過 程 を 15 積み上げられたデッサンの束。 まずは﹁どのような文字 「口」 という部品に分けられている漢字群。 様 々 な 修 正 を 加 え ま す。 も、微 妙に幅やバランスを変 えて作 成しています。その きるとは驚きです。 ― それにし てもたった 5 0 0 字 で一万 字の漢 字 を 表 現 で うにしています。 一万 字ありますが、この5 0 0 字にはその一万 字のほと んどの形状が含まれているのです。 そしてその字を元にして、複数のメンバーで残りの文 字 を一字 ずつ描 き 上 げま す。それでも一万 字 全てのデッ 紙を重ね、微調整しながら丁寧に描いていく。 基本的には、ですけれどもね。同じ部品を持つ漢字で サンを終えるまでに1 年から2 年かかります。 左から、字の骨格、 ラフデッサン、清書。 取り込み、デジタル化して ︵漢検四字熟語辞典より︶ 60 その後コンピューターに 4回 から観ると、漢 字の姿は一様ではないようです。このコー 第 4 せた ― 新しい明朝体﹁黎ミン﹂のコ ― そ れ では 最 後 に、小 田 さ んのお 仕 事 を 表 す 漢 字 ― 文 字の ﹁空間﹂ ? 一文字を教えて下さい。 文 字一文 字 作っていく、と ﹁真 ﹂です。真心込めて一 を 塗 りつぶ す、 墨 入 れとい う 仕 事 ば か り を 3 年 ほ ど やっていました。昔は先 輩は何 も教 えてくれなくて、 見 私 がこの仕 事 を 始 めた 頃 、 先 輩 が デッサンした もの て盗むしかありませんでした。先 輩が型を取り、自 分が ださい。 ンセ プ ト を 具 体 的 に 教 え て く りしていて安定感があり、素直 ﹁黎ミン﹂ は懐が広く、すっき ル化が進み、いま、文字は いう 想いか らです。デ ジタ きま す 。 ですから心を込 め 一度 作ると 永 遠に残ってい 悪いのか考え、自 分 だったらこうするのにと思 うことも あ り ま した。そ う してある 程 度 形 を 覚 えて7 年 ぐ らい 塗りこんだ後の字をじっと見つめては、どこが良いのか した 時に、ある日 突 然﹁ 空 間ってこう取ればいいんだな﹂ とダメだと思っています。 てき ちんと 作っていかない くモダンで、あらゆる場 面に使 仕 上 げてあります。伝 統 的な明 いやすいよう、癖のない書 体に 格を見るでしょう。そ うではなく、その字を取り巻いて と気 づいたのです。文 字を見るとき、通 常はまずその骨 な 感 じの書 体です。抑 揚 が 少 な 朝体は、横棒の線が細すぎてゴ 字にのって歴 史を動かすような場 合もありますよね。そ 文字は、文化だと思っています。さまざまな情報が文 シック体と並んだときにか弱 く ちろん骨 格 も大 事ですが、 骨 格 だけを見ていると文 字 のような想いで、文字を作っています。 いる余 白や、四 角で囲まれた空 間に着 目 するのです。も す。逆 にこの 空 間 が 分 か る の 良 さ が 分 か ら な いので 悪 し が 見 えて き ま す。他 の モリサワの字なんです。文 字 通り刻み込 まれて残ってい 板が設置されているのですが、そこに刻まれている字が 私が使 う 駅の近 くの博 物 館には、石で作 られた 案 内 ― 何か形を残せるって素敵ですね。 文 字 を 作るときにも、その よ うになると、 文 字の良 し 空 間 を あわせることができ くことは凄いことだし、嬉しいことですね。 そのものの大 きさは 違 う ん イ ン タ ビュー 後 記 ― ありがとうございました。 る よ う に なって く る。空 間 ランスの取 り 方 が 揃 う んで ですが、ほどよい均 等さ、バ すね 。 文字を見て、懐かしい感じを受けたり、かわいらしい イメージを持ったり、また手書きであれば書いた人の人 とな り を 思い浮 かべた り す ることは 少な く あり ませ るからなのでしょう。 今回の取材を通して、 バリエーショ ん。 書体は、情報だけではない何かを伝えることができ からこそ、 できることなのかもしれません。 た。 一文字一文字に真心を込めて制作されている書体だ き手の心﹂を蘇らせる役割を担っているように感じまし ン豊かな書体はデジタルの世界で失われかけていた﹁書 漢字は、画 数が多いものより少ないもののほうが難し 難しいところですね。 す。様々な文字の空間、太さ、大きさを揃えていくのが、 由 が 利 かないので、逆にバランスが 取 りや す くなり ま いか らです。画 数 が 多いとマス 目いっぱいに詰 まって自 いです。空 間やバランスをどう取るか、選 択の余 地が多 りますよね。 ― 漢 字の形もそれぞれで、特 徴 的な空 間があるものもあ 空間の入る位置は漢字によってさまざま。 見 えること が あ り ま した。しか もの書体、数十万字が生まれ、ギネスに認定され るまでになりました。 ― そのコンセ プトは 書 体のどのよ う なところに表 れてい ますか? 漢字の構成部分である ﹁口﹂ 、もしくは ﹁田﹂﹁曲﹂ などの 四角で囲まれた箇所を見ると、その文字の性格が分かる んです。 いろんな書体がありますが、その特徴は口の形に 最も表れますね。黎ミンはこの四角で囲まれた箇所が大 きいので、字そのものも大きく見えます。どっしりしてい て、見た目にも読みやすい、その上ですっきり感を出し⋮ ひし形の漢字、細長い漢字など、 し そ れ ら の 明 朝 体 の バリエ ー ションは縦 線の幅 を 太 くした も のしかなく、横線が太めの明朝 体はありませんでした。そこで、 縦 線の幅のみならず横 線の幅に も バリエーションを 持 たせたの が 黎 ミ ンです。縦 線 と 横 線の幅 を さ ま ざ まに組 み 合 わ このほか、あと30書体の縦線と横線の太さがそれぞれ異なる黎ミンがある。 というコンセプトはこのように表れています。文 字には、 今 日 黎ミン Y40 U 黎ミン Y30 B 黎ミン Y10 EH 黎ミン L 余白というか、特徴のある﹁空間﹂というものがそれぞれ あるのです。 5 永 永 永 永 34
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