夏秋なす 定植前の準備(H28.2.22)(PDF:754KB)

夏秋なす
==
定植前の準備
準備は遅れないよう、計画的に!
==
平成28年2月22日
芳賀農業振興事務所
【関東甲信地方の1か月予報(H28.2.18 気象庁発表)】
○北からの寒気の影響は小さく、向こう1か月の気温は高いでしょう。
○低気圧や気圧の谷の影響で、向こう1カ月の降水量は平年並か多く、向こう1か月の日照時間は平年並
か少ないでしょう。
○向こう1カ月の平均気温は、高い確率60%です。降水量は平年並または多い確率ともに40%、日
照時間は平年並または少ない確率ともに40%です。
○週別の気温は1週目が高い確率60%、2週目は平年並または高い確率ともに40%です。3~4週
目は、平年並または高い確率ともに40%です。
【関東甲信地方の3か月予報(H28.1.25 気象庁発表)
】
○日本付近は、北からの寒気の影響が小さく、南から暖かく湿った空気が流れ込みやすいでしょう。
低気圧や前線の影響を受けやすい見込みです。
○向こう3カ月の気温は高く、降水量は多いでしょう。
○2月 平年に比べ晴れの日が少ないでしょう。気温は高い確率50%、降水量は多い確率50%です。
○3月 天気は数日の周期で変わりますが、平年に比べ晴れの日が少ないでしょう。気温は、平年並ま
たは高い確率ともに40%、降水量は、平年並または多い確率ともに40%です。
○4月 天気は数日の周期で変わりますが、平年に比べ晴れの日が少ないでしょう。気温は、高い確率
50%、降水量は、平年並または多い確率ともに40%です。
【気象経過(アメダス:真岡地点 H28.2.10現在)
】
- 1 -
1.作
型
◆栽培暦 (定植苗を購入)
露地栽培の10aあたり目標収量
8t
月 2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
旬 中|下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中
◆露地栽培
主
○
定植
収穫期間
な ◆トンネル栽培
∩
○
定植
作
∩
収穫期間
※定植2週間前から5月中旬まで、トンネル被覆。
業 ◆無加温栽培(パイプハウス+内張やトンネル)
○
定植
収穫期間
注)収穫期間は、6月から11月中旬まで(霜が降りるまで)。
トンネル栽培は、作業が 1 か月前進する。
【参考:台木の特性比較】
耐 病 性
台木名
青
枯
病
半
身
萎
凋
病
赤なす
半
枯
病
ネ
コ
ブ
セ
ン
チ
ュ
ウ
◎
主 な 特 徴
低
耐
温
湿
伸
性
草
勢
長
性
・栽培期間をとおして草勢が安定する。
・新しいほ場、または、過去に土壌病害の発生がないほ
場で用いる。
・湿気に対してはやや弱いため、畑作に適する。
○
△
強
トルバム
ビガー
○
○
◎
○
・草勢は強く、生育中後期に特に強くなる。
・青枯病と半身萎凋病の発生が心配なときに有効。
・土壌病害とネコブセンチュウに強い。
・へた枯れ、葉枯れが出やすい。
・マグネシウム欠乏と見られる葉の黄化が発生しやすい。
△
○
極
強
トナシム
○
○
◎
○
・トルバムビガーでは草勢が強すぎる場合に有効。
・葉の黄化、へた枯れ、葉枯れの発生は、トルバムビガ
ーと同様に発生しやすい。
△
○
極
強
カレヘン
○
△
・青枯病と半身萎凋病の発生が心配され、草勢を抑え、
低温伸長性を求める場合に有効。
○
○
弱
台太郎
○
◎
・青枯病対策を優先する場合に有効。
・半身萎凋病に抵抗性がない。
△
○
強
◎
・半身萎凋病と半枯病に抵抗性があるが青枯病に抵抗性
がない。
◎
△
強
耐病VF
○
※耐病性:◎:強い、○:比較的強い、△:多少強い(農業技術体系より抜粋)
- 2 -
2.ほ場の選定は?
【最適なほ場条件とは】
(1)排水が良く作土が深く、なす科作物を作付したことのないほ場
○排水不良は、土壌病害(青枯病、半身萎凋病)の発生を助長したり、草勢低下、品質低
下等の原因となるため注意する。
◆主ななす科の作物
なす、ばれいしょ、たばこ、とうがらし、ししとうがらし、ピーマン、トマト、ミニト
マト等
(2)かん水の可能なほ場
○なすは、乾燥に弱く、乾燥が甚だしい時は生育が悪くなり、花の質、果実の発育も悪く
なる。このため、収量・品質を上げるためには、十分な水分が必要となる。
◆水分不足によって発生する生理障害
【つやなし果(ボケナス)】
・果実になす独特の光沢がなくなり、消し炭状にぼけるもの。
・直接の発生要因は、果実の水分不足で、根の老化や草勢の低下によって吸水力が低下
した場合に発生しやすい。
3.ほ場の土壌診断は?(堆肥投入1か月前まで)
○土壌診断は、土壌の化学性や主要養分の分析結果に基づいて行われる。
○土壌診断の結果は、栽培期間中に欠乏症や生育に異常が発生した場合に
も役立つため必ず実施する。
※土壌のpH(化学性)も養分の吸収に大きな影響を与える。なすの適正
pHは 6.0 ~ 6.5 だが、この範囲から低下してしまうと、窒素、燐酸、
加里、石灰、苦土等の吸収が抑制されてしまう。
※養分間のバランスによっても養分吸収に影響を受ける。土壌中の加里
や石灰が過剰な場合、苦土の吸収が抑制されて、下葉(古い葉)から
【苦土欠乏症】
葉脈間が黄化してしまう『苦土欠乏症』が発生する。
4.(定植)苗は?
○栽培期間をとおして草勢が安定している『赤なす』台木が管理しやすい。
〈10a当たりの定植本数の目安〉
栽植距離
定植本数
畝幅
220㎝
×
株間
70㎝
640株
畝幅
220㎝
×
株間
75㎝
600株
畝幅
230㎝
×
株間
70㎝
620株
畝幅
230㎝
×
株間
75㎝
570株
- 3 -
5.堆肥の投入(注文)は?
○堆肥の施用は、定植予定の1か月前までに終了させる。
○堆肥は、糞尿臭(悪臭)がしない完熟堆肥を使用する。なお、家畜糞堆肥は、種類によって
窒素含量、肥効が違うため注意する。
(窒素が多い)
鶏ふん
>
豚ぷん
>
牛ふん
(窒素が少ない)
〈堆肥投入量の目安(㎏/10a)〉
3,000Kg
豚ぷん堆肥
1,000Kg
鶏ふん堆肥
500Kg
▲ ▲ ▲
▲ ▲ ▲
牛ふん堆肥
1作での肥効
窒素成分で3~8Kg
1作での肥効
窒素成分で3~5Kg
1作での肥効
窒素成分で6~10Kg
○注意点
・未熟堆肥は、生育障害を起こすことがあるので使用を控える。また、未熟なまま施用する
と発酵分解により、ガス害による根やけ(根傷み)が発生する場合がある。
・完熟堆肥でも、過剰施用は養分過多、養分バランスが崩れるなど悪影響が懸念されるので、
適正量の施用とする。(別表)
・堆肥施用時期は、施用後2次的な分解発酵する場合があるので、定植開始の1カ月以上前
に行う。
【参考:堆肥の特性】
堆きゅう肥
の種類 等
堆
施
原
材
料
用
効
果
肥料的 化学性 物理性
改善
改善
施用上の注意
肥
稲わら、麦かん、野菜屑等
中
小
中
最も安心して施用
牛ふん尿
豚ぷん尿
鶏ふん
牛ふん尿と敷料
豚ぷん尿と敷料
鶏ふんと敷料
中
大
大
中
中
大
中
小
小
肥料効果を考えて施
肥量を決定
牛ふん尿
豚ぷん尿
牛ふん尿ともみがら
豚ぷん尿ともみがら
中
中
中
中
大
大
木質 牛ふん尿
混合 豚ぷん尿
堆肥 鶏ふん
牛ふん尿とおがくず
豚ぷん尿とおがくず
鶏ふんとおがくず
中
中
中
中
中
中
大
大
大
未熟木質があると虫
害・モンパ病の発生につ
ながるので注意
バーク堆肥
樹皮やおがくずを主体
小
小
大
同上・同下
もみがら堆肥
もみがらを主体
小
小
大
物理性の改良効果
厩
肥
(農作物施肥基準
栃木県
平成18年1月より抜粋)
- 4 -
【参考:主な堆肥の成分組成例】
水
分
(%)
牛ふん堆肥(副資材なし)
49.9
C/N比
16.7
(一作での肥効率(%))
牛ふんもみ殻混合堆肥
59.2
18.9
(一作での肥効率(%))
牛ふん稲わら混合堆肥
77.0
16.7
(一作での肥効率(%))
牛ふんおがくず混合堆肥
61.8
22.0
(一作での肥効率(%))
乾
物
中
(%)
窒素
炭素
リン酸
加里
石灰
苦土
2.2
34.9
2.9
2.9
4.2
1.3
60
90
3.8
2.4
3.6
1.1
60
90
2.1
2.3
2.4
1.0
60
90
2.1
2.4
2.8
1.0
60
90
10~30
2.1
31.4
10~30
2.2
36.1
10~30
1.8
38.4
10~30
牛ふんバーク混合堆肥
51.6
16.5
2.2
39.1
2.3
4.0
3.2
1.3
(バラツキが大きく、分析例も少ないので
2事例)
59.8
29.6
1.65
39.7
0.84
0.45
-
-
(一作での肥効率(%))
10~30
5.9
2.3
3.3
1.1
4.0
1.2
15.8
2.2
豚ぷん堆肥(副資材なし)
35.9
9.9
(一作での肥効率(%))
豚ぷんおがくず混合堆肥
54.3
17.2
(一作での肥効率(%))
豚ぷんもみ殻混合堆肥
43.7
15.8
(一作での肥効率(%))
鶏ふん堆肥(副資材なし)
19.7
8.4
(一作での肥効率(%))
3.7
34.9
20~40
2.3
38.3
20~40
2.4
36.1
20~40
3.5
27.9
40~70
60
90
6.3
3.0
60
90
3.7
1.8
60
90
4.0
1.4
60
90
7.3
3.9
70
90
(堆肥利用の手引き(栃木県農務部H13.3))
※この成分組成例は過去の分析値の平均であり、一つの目安。
※成分組成は、副資材(もみ殻等)の混合割合によって変動する。家畜ふんは季節により成分の変動
もある。
※C/N比は炭素率で、20以上で大きい値ほど未熟の可能性が高い。
6.防風ネットの設置(準備)は?
○防風ネットの風によるスレ果等の軽減効果は、高さの4~5倍程度の範囲。
防風ネット
高さ
2m
8~10m
8~10m
○風によるスレ果、枝折れ軽減対策のため、ほ場準備の段階から防風ネットを設置し、効率よ
く作業を進めるよう心がける。
○設置する際は、十分な間隔(歩き部)を開けて設置し、作業スペースを確保する。
- 5 -
[参考:ほ場の間隔と防風ネットの設置方法(例)]
ほ場空間の取り方
2m
2m
※防風ネットの代用として、ソルゴー(は種量:10a当たり2㎏)をほ場外周には種する。
伸長してきた段階で、支柱やマイカー線などで、倒伏防止策が必要になってくる。
7.今後の管理と定植までの準備
(1)施
肥
○基肥の施用:土壌診断の結果に基づき、定植予定日の2週間前には完了させておく。
【なすの養分吸収特性】
①肥料の吸収は、窒素、燐酸、加里ともに生育が進むにつれて増加し、なかでも、収穫始め
から収穫最盛期へ、更に、収穫後半に向かって一気に増加する。特に、収穫を始めてから
60~70日間が最大となる。このため、収穫が始まる頃から肥料を効かせ、収穫期間中は
肥効を切らさないことが重要である。
②塩類濃度に対する反応は鈍く、野菜類の中では耐塩性が強く、濃度障害を起こしにくい作
物である。
③苦土の吸収が多く、苦土欠乏が出やすい。
※『肥料取扱品目解説及び作物別施肥例
平成23年9月JA全農とちぎ』から引用
- 6 -
【参考:作型別、台木別基肥施用例(10a当たり)】
台木別施肥量
作
型
露地栽培
肥料種類
牛ふん堆肥
苦土入りなす006
赤なす
台太郎
カレヘン
3,000Kg
3,000Kg
3,000Kg
240~320Kg
160~240Kg
200~280Kg
220~300Kg
-
-
60Kg
20Kg
燐硝安加里1号
水マグ
耐病VF
3,000Kg
-
CDUS555
トルバム
トナシム
20Kg
-
-
(窒素成分
30~38Kg)
(窒素成分
31~39Kg)
20Kg
60Kg
(窒素成分
26~34Kg)
20Kg
-
(窒素成分
28~36Kg)
○牛ふん堆肥3,000Kgの1作で窒素成分の肥効は、3Kgで計算。
○燐硝安加里1号:活着促進のため、うねを中心に施用。
○CDUS555:カレヘン台等の初期生育の促進。
○水マグ:緩効性の苦土肥料、トルバム、トナシム台の苦土欠乏症対策。
(2)定植ベッドの作成
○うね幅と株間
→
うね幅220~230㎝×株間70~75㎝
○うねの作り方(図参照)
肩
20cm
うねの高さ20cm
通路幅
50cm
~70cm
うね幅
220cm ~230cm
120cm
(150cm幅マルチ)
※水田や水はけの悪いほ場では、ベットをやや高めにする。
※ベッドの方向
▲
▲
ほ場の条件にもよるが、南北畦の方が光線が均一に差し込むため理想。
- 7 -
○マルチ被覆
▲
▲
マルチ被覆は降雨後に、定植予定日の10日~2週間前までに行い、土壌水分と
地温(15℃以上)の確保に努める。
○排水対策
▲
▲
排水不良による生育の遅れや病害予防対策のため、ほ場周辺には、大雨に備えて排
水溝を設置する。
[参考:排水対策設置例]
○ほ場の周囲に明渠を設置し、通路を明渠につな
げる。明渠はほ場外に逃がす。
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