動物公園・植物公園・昆虫館

第 12回 安佐動物公園・植物公園・こんちゅう館
研 究 活 動 発 表 会 の お 知 ら せ
(公財)広島市みどり生きもの協会の安佐動物公園、植物公園、森林公園こんちゅう館は、日ごろの
調査研究活動を広く市民の皆様に知っていただくため、合同で発表会を開催します。
最新の情報を担当者から直接お伝えしますので、ぜひお聞きください。
1 日
時
平成 28 年 2 月 23 日(火)14:00~16:00
2 会
場
広島市役所 2 階講堂(広島市中区国泰寺町一丁目 6 番 34 号)
※駐車場に限りがあります。公共交通機関を利用してお越しください。
3 申
込
当日、会場にて受け付け
4 発表内容
(1)広島市安佐動物公園におけるコウノトリの初繁殖
発表者:広島市安佐動物公園 飼育・展示課 技師 川上 裕敏
コウノトリ Ciconia boyciana は、中国やロシアなどの極東地域に生息している大型の鳥です。かつては、
日本各地で見られましたが、生息環境の悪化により、その生息数が徐々に減少していき、1971 年には日本
での野生個体が絶滅してしまいました。
その後、1985 年に兵庫県が旧ソ連からコウノトリを譲り受けて、飼育、繁殖させてきました。2005 年
にはその内の 5 羽を試験放鳥し、コウノトリを野生復帰させました。現在では野外で約 80 羽が生息して
いますが、まだ数の少ない希少な鳥です。
広島市安佐動物公園では、1994 年からコウノトリの飼育を行なってきました。しかし繁殖に至ることは
なく、
2012 年には飼育していたペアが死亡してしまい、
一度はコウノトリの飼育が途絶えてしまいました。
そこで、もう一度コウノトリの繁殖を目指すために、2013 年 11 月 20 日に兵庫県立コウノトリの郷公
園から、すでにペアリングできている雄と雌を迎え入れました。2015 年 6 月 6 日に、このペアが繁殖に
成功し、当園で初めてとなるコウノトリの雛が誕生しました。翌 7 日にも 1 羽が孵化し、合計 2 羽の雛が
元気に育っています。
今回、コウノトリの導入から安佐動物公園で初めての繁殖成功、雛の成長までの新しく確認できた知見
をおりまぜながら報告します。
抱卵する雌
子育て中の雄
(2)ゲンゴロウ属の累代飼育技術確立への取り組み 第2報
発表者:広島市森林公園 昆虫館 技師 松尾 信彦
ゲンゴロウの仲間、中でも大型のゲンゴロウ属 Gen.Cybister は子供から大人まで広く人気があり、展
示効果の高い水生昆虫です。しかしその多くが環境省のレッドデータブックの絶滅危惧種に記載されるな
ど近年急速に個体数が減少しており、できる限り野外での採集に頼る展示昆虫の調達は避けなくてはなり
ません。昆虫館ではゲンゴロウ属の安定した周年展示を実現するため、累代飼育技術の確立に努めてきま
した。
今回は広島県産のクロゲンゴロウ、他 1 種について産卵から孵化まで効率よく管理できる方法について
報告します。また亜熱帯産(南西諸島)のヒメフチトリゲンゴロウ、他 2 種について異なった水温条件下
での繁殖と成長の比較を行ったので、これも紹介します。
クロゲンゴロウ
ヒメフチトリゲンゴロウ
コガタノゲンゴロウ
(3)みんなで調べた広島県のタンポポ
発表者:広島市植物公園 栽培・展示課 主任技師 井上尚子
タンポポと言えばだれもが知っている身近な植物。しかし今から 40 年以上昔、都市化が進んだ場所では
日本在来のタンポポの代わりに外国由来のタンポポが増加していたことからこれを環境の指標とすること
が提案され、1974 年から 1975 年にかけて大阪で市民参加型のタンポポ調査が実施されました。以後この
調査は5年ごとに実施され、2005 年、2010 年と地域を拡大し、2014 年から 2015 年にかけての今回の調査
は西日本を中心に 2 府 17 県で行われました。
広島県からは 2010 年の初参加に続き、今回 2 回目の参加となり、広島市植物公園が実行委員会を務めま
した。約 300 人もの参加者によってデータが収集され、植物公園ガイドボランティアによってデータが処
理されるなど、数多くの協力者の力を得て実施されました。その結果、広島県内からは広島県初記録のト
ウカイタンポポとモウコタンポポを含め、カンサイタンポポ、シロバナタンポポ、キビシロタンポポ、ヤ
マザトタンポポ、クシバタンポポの 7 種の在来タンポポと、セイヨウタンポポ、アカミタンポポの 2 種の
外来タンポポ、雑種タンポポが記録されました。また、それぞれの分布には特徴があることが分かりまし
た。3 月末の西日本全体での調査報告に先駆け、広島県内のタンポポの調査結果を報告いたします。
シロバナタンポポ(右が花粉の顕微鏡写真。サイズはバラバラ)
カンサイタンポポ(右が花粉の顕微鏡写真。サイズは均一)