Ti-Fe 系合金薄膜の構造と電気的特性

SURE: Shizuoka University REpository
http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/
Title
Author(s)
Ti-Fe系合金薄膜の構造と電気的特性
栗田, 典明
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Issue Date
URL
Version
1982-03-26
http://doi.org/10.14945/00006647
ETD
Rights
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電子科学 研究科
⊂,
0002512291
R
博
Ti…
士
文
Fe系 合金薄膜の構造と電気的性質
○
1982年 3月
〇
静 岡大 学大学院 電子科学 研 究 科電子 材料科学専 攻
栗
O
田
典
明
次
目
第
1章
序
論
参考文献
第
2章 Ti― Fe系 合 金 膜 の 作製 法
2-1
は じめ に
… … ……… … … … … … …… … … … … … …… … …
11
… … … … …… … … … … … … …… … … … ……… … … … …… …… … …
11
2-2 Ti一 Fe系 合 金 膜 の 作製 方法
… … … … … … … … ……… … … … …… … ・… …
1・
2-3
ス パ ッタ膜 の 組 成 分 布 の 演1定 方法
2-4
細 線 を用 いた 複 合 ター グ ッ ト法 に よ るス パ ッ タ膜 の組 成 分 布 に関す る
実 験 結 果 と考 察
2-4-1
… …… … … … … …… …… … … … … …… ……・…… …・… ……・
16
… … … … … … …… … … …… … … …
21
2
膜 組 成 が 基 板 上 で 均 一 に な る原 因
2-4-
3
ター ゲ ッ ト上 の 金 属線 間 隔 を変化 させ た 場 合 の ス パ ッ タ膜 の
… … …… … … … …… … … … … ……… … … … …
組 成 の 均 一 性 に つい て
4
参考文献
3章
24
陰極 ター グ ッ ト上 の 鉄 とチ タ ンの 面 積 比 とス パ ッ メ膜 の 組 成
… …… … … … … … …… … … … ………… … … …………… …… …
27
… … … …… … … … … … …… … … … … …… … … … … … … … … … …
27
… …… … … …… …… … … … …… … … … …
… … … …… … … … ……… … … … … Ⅲ
29
との 関 係
2-5
16
… … … … … … … … …… … … … …… … … … …… …… … … …
2-4-
2-4-
16
ター ダ ッ ト上 の 金属線 間 隔 と基板 の 幅 の 関係が膜 の 組 成 分 布 に
与え る影 響
第
…… … … … …… …… … … … … … …… … …
12
ま と め
Ti一 Fe系 合 金 膜 の 組 成 と構造
3-1
は じめに
3-2
X線 回折 に よ る実 験 方法
3-3
X線 回折 に よ る 結 果
3-4
電 子 線 回折 に よ る実験 方法
3-5
電 子 線 回折 に よ る結 果
3-6
回 折法 に よる 結 果 の 考察
3-7
… … … ……… … … … … … …… … … … … ……… … … … …… … … … …
30
30
… … … … …… … … … …… … … … …… …… … … … …
30
…… … … … … … … … … … … …… … … … … … … … … … …
32
… … … ……… … … … ……… … … …… …… … … …
35
… … … … … …… … … … … …… … … …… … …… … … …
35
… … …… …… … … … … ……… … … …… …… …… …
40
Auger電 子分 光 及 び ESCAに よる 分析 結 果 とそ の 検討 … … … … … … … … …
41
参 考 文献
47
付
48
録
Ti― Fe系 合金 膜 の 電気的特 性
50
4-1
は じめ に
50
4-2
電 気 的 測定
50
4-3
実験 結 果及 び 考 察
50
4-3
-1
ス パ ッ タ膜 の 電気的特 性 に お よぼす 膜 生 成 時 の基 板 温 度 の 影 響 … … …
50
4-3
-2
全組 成 領 域 の Ti―
4-3
-3
残 留抵 抗 ρ。 ……… … … … … … … … … … … ……… …・…… …・…… … …・ 55
第
4章
Fe系 合 金膜 の 抵 抗 率
ρ
…… … … … … …… …… …
51
4-3-4
抵 抗 率 (ρ 一 ρO)
55
4-3-5
抵抗温度 係数
TCR
55
4-3-6
β ― Ti相 を含 む混 合膜 の 電 気的性 質
61
参 考 文献
64
録
65
付
第 5章
ア モ ル フ ァス 相 の 構造 と電 気 的 性 質 に お よぼす 加熱 処理 効 果
…… … … … …
67
5-1
は じめ に
… … … ……… … … … … …… … … … … … …… … … … … … …… … … …
67
5-2
実験 方法
… … … … …… … … … … …… … …… … … … …… … … …… …… … … …
67
5-3
実 験 結 果及 び 考 察
……… … … … … … …… … … … … …… … … … … … … … … …
68
5
-3-1
ア モル フ ァス 相の結 晶化 温 度
5
-3-2
加熱 処 理 に よるア モ ル フ ァス相 の構 造 変 化
5
-3-3
加熱 処 理 に よる電 気的 性 質 の 変化
…… … … … … …… … … …・……… … … … 68
… … … … … … … … … … … 68
… … … … … … … … … … …… … … …
70
70
第
〆
6章
結
論
74
第 1章
序
論
本論 文 は ,ア モル フ ァス 相 及 び β一Ti相 を 含 む Ti― Fe系 合 金 薄 膜 の 構造 とそ の 電 気的
性 質 に 関す る報 告 で あ る。
従 来 の 抵抗 薄膜 素子 は ,カ ー ボ ン薄膜 や遷 移金 属 化 合物 及 び 遷 移金 属合金膜 を蒸 着法 や
ス パ ッ タ法 を用 い る こ とに よ り作製 され て きた 。 近 年 の 電子 回 路 は ,小 型軽 量 化 ,消 費 エ
ネ ル ギ ー の 低 減化 ,配 線 等 ア セ ンプ リに お け る 歩留 ま りの 低 下 を 防 ぎ,性 能 の 安 定 化 をは
か るた め に高 集積 化 ・高 密度 化 の 傾 向が あ る 。 集 積 回路 素子 に お け る抵抗体 は電 極形 成 の
く,ハ イ
際 の オ ー ミック性 の 良 さを考 え る と凡 て の 素 子が 半 導体 を利 用 で きるわけ で は な・
プ リ ッ ド IC等 ,従 来 の 抵 抗体 材 料 を用 い る こ とが 有 用 で あ る場 合が 多い 。 この 場 合 ,電
極 の 機 械 的強度 や ,多 層 構造 を と る プ ロセ ス の 方 面 か らの 長 所 を 考 え 合わ せ る と,遷 移金
属 を母 体 とす る合金 や 化 合物 がす ぐれ て い る よ うに思 われ る 。 遷 移 金属 はそ れ 自体 ,高 抵
抗 を もつ た め合金 と して 抵 抗 素 子 に 用 い られ て い る。 チ タン及 び タ ン タル は ,原 子 半径が
大 きい ため原 子 間 間 隙 が 大 き く
,か な りの 量 の 窒 素 を固 溶 し,侵 入型 固溶 体 を つ くる。
固溶 した窒 素 は電 子 の 不 純 物 散 乱 を ひ きお こ し,合 金 の 抵抗 率 を増 加 させ る 。 Ta2 N膜
〔1〕 及 び Ti一
N膜
パ
〔2〕 は 反応 性 ス パ ッタ リ ン グ法 に よ り,窒 素 分 圧 を ラ メ ー タ と して作
製 され ,そ れぞ れ の 最 大抵 抗 率 (ρ max)は 230 μΩ ―cm,
270μ Ω 一cmで あ り,抵 抗温
1で
あ る こ とが 報 告 され て い る 。 また ,Ti=Al
(TCR)は い ず れ も 0∼ -20 ppm℃
3]は 置換型固溶 体 をつ くり, 全 組 成領域 に わた り固溶 体 とな るた め Tiと Alの 組 成
系合金〔
度係数
化が
1対 1に な る組 成 で 抵抗 率 が 最 大値 280 μΩ 一cmを と る ノル ドハ イ ムの 関 係 式 ρ=
ρo
x(1-x)μ
Ω 一cm(こ こで ,
xは 二元 合 金 の母 金 属組 成 を表 わす )を ほ ぼ満 足 す る
よ うな 組 成 変 化 に 対 す る抵 抗 率 の 変 化 を示す 。 Ti― Al系 合 金 膜 は ,Ti円 板 上 に Alリ ボ
ンを数 本 張 り, ター ダ ツ ト上 の Tiと Alの 面積 占有 率 を変化 させ て ス パ ッタ リ ン グを お こ
ない 種 々の 組 成 の ス パ ッ タ膜 が 作 製 され てい る 。 この よ うに ,遷 移金 属 を利 用 した 薄膜 の
抵 抗 素子 は ,広 い 固溶 領 域 を もつ 合 金 系 が 用 い られ て きた 。 一 方 ,限 られ た 組 成 領 域 に金
属 間 化 合物 を もち ,固 溶 領 域 が わ ず か しか存 在 しな い 合金 系 は ,そ の 金 属 間 化 合物 が 一 般
に小 さ な抵抗 率 しか もた ず ,抵 抗 素 子 と して の 利 点が 少 な い た め に とん ど抵 抗 素子 の 対 象
速に お こ
とは な らなか つた 。 と こ ろが ,1970年 以降 ,ア モル ア ァス 合 金 の 応 用研 究 が 虐、
なわ れ る よ うに な る と,こ れ らの 合 金 系 で つ くられ るア モル フ ァス は抵 抗 率が 大 き く,抵
√
-1-
抗温度 係 数 が小 さい とい う電 気的性質 が わか つて きた。 このた め ,こ れ らのア モル フ ァス
合金 が 抵抗 素 子 と して 注 目され るよ うに な つて きた。
現在 まで 研 究 されて い る金属を母 体 と した ア モル フ ァス 合金は ,次 の 3つ の範疇 に分類
す る こ とが で きる。
11, 10∼ 30%の 非金 属 と遷移金属 の 合金 (Fe― B等 〔4〕
(2)Ⅱ A金 属 と遷 移金属 の 合金 (Ti一 Be等 〔4〕
)
)
(3)周 期 律表 で離 れた 二 つの遷移金 属 ど うしの合 金
範疇 に入 る合金 と しては ,Zr。
(3)の
70 MQ30(こ
こで ,M=Pd,Ni,Oo,Fe〔
5〕
,Nb
1-1に
―Wi〔 6〕 ,Gd一 Fe〔 7]が あ る。 一般 に ア モル フ ァス合金 を つ くる方法 と して,図 ‐
示す よ うに ,気 体 ,液 体 ,結 晶体 の 3つ の 状態か らの 過程が あ るが ,最 も一般的 な方法 に
は液体 急 冷法 及 び真空蒸着法 ,ス パ ッ メ リン グ法 な どが あ る。液体 急 冷法 は線試料 また は
薄板 試料 を作製す るのに 有 用 であ り,蒸 着 及び ス パ ッタ リン グ法 は薄膜試料 に作製 に有用
冷法 の一 つ で あ る メル トース ピニ
で あ る。上 記 の ア モル フ ァス 合金 の ほ とん どは ,液 体 急、
ン グ法 が 用 い て作製 され てい る。 この 方法 で作製 で き るア モル フ ァス 合金系は ,融 点が
1,000℃ 以下 の 合金系が対 象 とな り, ア モル フ ァスが 得 られ る組 成域 は融点が 比較的低 い
領域 が 利 用 され てい る。
本 研 究 の 対 象 と した Ti一 Fe系 合金 は ,(3}の 範疇 に入 る合金系 で あ る。事実 ,チ タ ンの
原子 番号 は22で あ り,鉄 の 原子番号 は26で あ り,原 子半径はそれぞ れ 1.46A及 び 1.26A
8〕 と約
〔
15%異 な り,結 晶構造 もそ れ ぞ れ綱密六方構造 と体心立 方構造 と異 な るた め ,両
者 は数 %し か 固溶 で きず , ジル コニ ウ ム合金同様 , β一共析型 の状 態 図
2)。
しか し,共 晶点 でさ え 1,000℃ 以上 (Ti。 70 Fe。
30;1'085℃
[9〕
を示す (図
1-
,Ti。 17 Fe。 33;1'340
℃)で あ り,メ ル トース ピニ ング法 が 使 用 で きない た め ,Ti― Fe系 ア モルフ ァス 合 金 の
作製 及 び研究 は お こなわれ てい ない の が 現状 で あ る。
本 研 究 の 第 1の 目的は ,細 線 を用 い た 複合 ターグ ッ ト法 に よ り,高 抵抗 で抵抗 温度係数
の小 さ な抵抗 素子 を得 る こ とで あ る。 も し,ス パ ッ タ リン グ法 に よ り,ア モル フ ァス 合金
を作製 す る こ とが で きれ ば ,従 来 の Ti― A』 系及び Ti― N合 金系 よ り,か な り大 きな抵抗
率 と優 れた抵抗温度係数 を もつ抵抗 素子 が 得 られ る可能性が ある。
Ti― Fe系 合金系 の これ まで の研 究 は , 30at.%Tiの 組 成 と 50at.%Tiの 組成 で存在す
る TiFe2 Laves相
*
(hexagoral)及 び Ti Fe相 (Cs Cl型 )の 二 つ の 金属間化合物 に限 られ
ガスを使 って急激に金属ロールに吹きつ
細 ノズルを下側にもつ石英炉で, 2元 以上の合金を溶融 し,不 活性
る
冷去口され リボ ン状 または線状 のアモル フ ァス合金 が得 られ 。
け る方法 で,溶 融 合金 は急、
-2-
P
A
V
r
l
ER
VAPOR
U
V
P ・
C
S
ヽ
J ヽ ︱
DEPOSItt10N
TTERIN G
―CONDENSAtt10N
L10UID
.D.
OUENCHIN G
Tニ
アモ ル フ ァス 生 成方法
矢 印は 気 体 ′液体 ・ 結 晶 か らア モ
ル フ ァス が 得 られ る こ とを示す 。
-3-
N
0
E T
V A
A T
1-1
N
A H 0
R S I
rl l l L
図
一P ︺ ●ョ ち缶ュE●ト
:500
Ti2Fe
1085・
1000
∼590・
500
0
TifFel_xX〓 0
・
50
:00
0.5
colmposition lo↑ .%Ti l
図
1
-2 Ti― Fo系 合 金 の状 態 図
-4-
〔9ユ
て お り,1968年 以降 ,東 北 大学金属材 料研究 所 の 池 田等 に よ り, これ らの金属 問 化 合 物
に関す る構造 及び電 気的性 質 に ついて 詳 細 な研究が お こ なわれ てい る。 TiFe2 Laves相 に
関 して は 図 1-3に 示す よ うに ,電 気抵 抗b熱 履歴 現 象
[10〕
が 報 告 されて い るほか ,磁 化
の
率をは じめ とす る物 理的基 礎 デ ー タが 得 られ てい る [11,12,13〕 。 TiFe相 研究 も構造
電気 的性 質 及び磁 気的性質 に つい て基礎 的 実験 が お こなわれ て
19〕
お り 〔14,15,16′
,
17,18,
こ
よつて抵
。 電 気的 な性質 に関 して は ,化 学量論 比か らわず か に組成が 変化 す る とに
抗率 が 急 激 に変化す る こ とが 調べ られ てい る。 図 1-4は
,数 at.%の 組成 変 化 に対 して
Ti Fe相 の抵抗 率が数倍 変化す る こ とを示 した 。 また ,極 低温 (∼ 50壬 )で 1路 が 負 の 領
て 明され
域が 存 在す る こ とが わか つて お り,1こ の原 因に つい て は構造 的 KondO効 果 とし 説
てい る 。
本 研 究 の 第 2の 目的 は ,ス パ ツタ膜 に つい て ,全 組 成 領 域 にわ た つて l Ti―
Fe系
合金
お こ な う こ とで あ る。
膜 を作 製 し,膜 構造 とそ の 電 気的性 質 に つい て実 験 的 ,理 論 的検 討 を
第
3の 目的 は ,Ti一 Fe系 合 金 ア モ ル フ ァス 相 の 電 気 的性 質 を調 べ る こ とで あ り ,こ の
際 ,準 安 定 状 態 で あ るア モ ル フ ァス 相 の 熱 的安 定性 に つ い て 実験 的 に検 討す
第
る。
4の 目的 は ,室 温 で 安 定 な β― Ti相 の 電 気的性 質 に つい て も検 討 す る こ とで あ る。
Ti― Fe〔 20〕 や Ti一 V
β一Ti相 は ,状 態図 か ら明 らか な よ うに ,高 温 で 安定 な相 で あ る。
一
る こ とが 報 告
21〕 で は ,溶 融状態 か ら急冷 す る こ とに よつて ,室 温 で β Ti相 が 得 られ
〔
され て い る。 しか し,Ti一
Fe系 合 金 の β一Ti相 の 電気的性質は 調 べ られ てか らず ,組 成
―
に対す る格 子定数 の 関係 が X線 回折 に よつて調べ られ てい るだけ で あ る。 β Ti相 は状態
図か らわか る よ うに ,鉄 をか な り固溶 す る ことが考 え られ る。 この 性 質 は ,Ti一
金 の 中 で は異質 で あ り,そ の 電気的性 質 の 研究は ,非 常 に興味深
Fe系 合
い と ころであ る。本論 文
は以 上 の 目的か ら次 の よ うな構成 か らな る。
まず ,Ti―
Fe系 合金膜 を得 るた め の 方法 と して細線 複合 ター ゲ ツ トを用い た ス
リ ング法 の基 礎 実験 に つい て述べ る。特 に均 一 な組 成 の
パ ッタ
ス パ ツ タ膜 を合組成に わた つて作
で ある。
の
つ
製す る方法 を検討 す る 〔第 2章 〕。 これ は ,抵 抗 素子 を くるた め 必要条件
に大 き
次 に ,作 製 した ス パ ツタ膜 の構造 に つい て検討す る。膜構造 は ,膜 の 電気的性質
べ る〔第 3章 〕。
な影 響 を与 え るので ,ア モル フ ァス 相 及 び β―Ti相 を含 む混合膜 の 構造 を調
るた めに電気的
そ して ,こ れ らの ス パ ッ タ膜 が抵抗 素 子 としての 有 用 で あ るか を検討す
性質 に ついて述 べ る [第 4章 〕。
-5-
I●
I
︵E o l q ■ ︺
ヽ
●●C●ち 葛 ●α
100
200
300
400
500
600
丁emperature
図
1-3
珈
800
900 1000 1100 1200
〔K)
温 度変化 に対 す る TiFe2 Laves相 の抵抗率 の変化
Ti Fe2相 の抵抗 率 は ,冷 却 と加 熱 に よって値 が 異 な リヒス テ リス 曲線 を示す こ とを特
10]。
徴 と してい る。代 表値 と して 2種 類 の組 成 の もの に ついて示 した 〔
(a)33.2 at.%Ti
(b)34,6 at.%Ti
-6-
50
52.8 of
40
`
\
Yo
Tj -t-"F--"'-r
′́ °
4L_
″
`
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卜」 イ/三
三
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´
_。
50.5
〆
0
50。
10
´
=
´
___二 =r=コ
0
0
50
100
150
丁emperature
図
1-4
温度変化 に 対す る TiFe相
-0´
200
3
″
′´
´″
re´
250
300
{K〕
(CsCl型 )の 抵抗率 の 変化
TiFe相 は 49.7∼ 52.3 at,%Tiの 組 成域 で種 々の抵抗率 を示 し, 50.5∼ 52,8 at.%Ti
の 組 成域 で は ,4手 が 負 の 値 に なる。温度範 囲が あ り,KondO効 果 と して 説 明されて
いる〔
5〕 。
-7-
最 後 に ,ア モ ル フ ァス 相 の 熱的安 定 性 の 検 討 の た め ,結 晶化温度 を調 べ ,結 晶化 後 の膜
の 構造 と電 気 的 性 質 に つい て 考 察す る 。
以下
,本 論 文 は ,Ti一 Fe系 合金膜 が 集 積 回路 用 の 抵 抗 材 料 と して応 用 され るた め の 基
礎 的 研 究 の 報 告 で あ る。
-8-
第 1章 の 参考文 献
1)R.P etrovic,・ ToNenadovic, N.Krail eViCノ and T:Dimitrijeviご : Thin
S01id Films,57(1979)333.
.Appl.Phys.,
2)Y.Igasaki,H.Mitsuhashi,K.Azuma and ToMuto :Jpn.」
17〔
(1978)35.
1〕
3)八 幡英子 ,梅 沢利 二
4)増 本
健
:ラ
:北 見 工大研 報
ンダ ム系 の物理学
9(1978)113.
11章
〔日本物理学会 ,東 京 ,1980〕 113.
5)Y.Waseda and H.S.Chen :Proc.3rd lnternat.Oonf.Rapidly QuenChed
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6)H.S.Chen and Yo Waseda :Phys.S tat,S ol.(a),51(1979)593.
7)P.Terzieff and K.L ee :J.Appl.Phys., 50〔
5〕
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8)L.Pauling :The Nature of The Chemical Bond and The Structure
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9)M.Hansen i Costitution of Billary Alloys 2nd Ed.〔 Mc Graw一 Hill
B00k Company, New York, 1958)723.
lo K.Ikeda and T.Nakamichi : J.Phys.Soc.」 pnt, 30(1971)1504.
11)G.K.Wertheim, J.H,Werhich and R,C.S herwOod : J.Appl.Phys.,
41〔
3〕
(1970)1325.
=
10M.V.Nevitt :J.Appl.Phys.,31〔
1〕
(1960)155,
10 K.Ikeda, T,Nakamichi aod M.Yamamoto : Phys.S tat.S ol.(a),
12(1972)595。
14D K.I.keda, T.Nakamichi and M,Yamamoto : J.Phys.Soc.J pn., 32
(1972)280.
、
10K.Schrlder and c.HoCheng :J.Appl.Phys., 31,〔
10 K.Ikeda, T.Nakamichi and M.YamamOto :
3〕 (1974)652.
〔
-9-
12〕
(1960)2154.
」.Phys.Soc.J pn., 37,
1つ
IK.Ikeda, T.Nakamichi, Y.Yamada and M.Yamamoto : Phys.S tat,
S ol.(b), 63(1974)361.
10K.Ikeda, T.・ Nakamichi,K.Noto, Y.Muto and M.Y am amOto :Phys.
S tat.S ol.(b),51(1972)K39.
19 K.H.J.Buschow and A.M.Kre an i Physo Stat.S ol(a), 53(1979)665.
20 BoW.Levinger i Trans,Meta11.S ol.AIME, 5(1953)195.
21)F.R,Brotzen, Edward L.Harmon
」r.and
Metall.Soc.AIME,(1955)413.
-10-
A.R.TroianO : Trans.
第 2章
2-1
Ti一 Fe系 合金膜 の作製法 〔1〕
は じめ に
,
チ タン系合 金 は ,耐 熱性 耐 飩 性 に優 れ て お り,そ の 固有 抵 抗 が 高 い とい う諸 特 性 か ら
,
チ メ ン系 合金 薄 膜 の 薄膜 抵 抗 体 と して の 研 究 が な され てい る 。 チ タンを 含 め遷 移 金属 は
一 般 に高融点材 料 で あ るた め ,薄 膜 作製 に は 成長 速 度 が 制御 しや す く,均 一 な組 成 や 膜
メ
厚 を 再 現性 良 く得 る 方法 と して 子 パ ツ タ リ ン グ法 が 用 い られ て い る。 例 え ば ,,窒 化 チ
ン薄 膜 や Ti一
Al系 合金膜 は ,ぞ れ ぞ れ 反応 性 ス パ ッ タ リ ン グ法
2,3〕 と 複 合 ター グ ッ
〔
トを 用 い た ス パ ッ タ リ ン グ法 で 作 製 され てい る 。
々
複 合 ター ダ ッ ト法 は 二 元 以 上 の 合金膜 を作 製 す るた め に用 い られ ,種 の形 態 の 陰極
ター グ ッ トが 試 み られ て い る 。 複 合 ター グ ツ トは 合金板 を 直 接 陰 極 とす る もの と,板 状
また は棒状 の 異 種 金 属 を交 互 に並 べ て 陰極 とす る もの を総 称 して い る。 合 金 板 を用 い る
場 合 ,合 金 を構 成 す る金 属 元 素 の ス
パ ツ タ率 の ちが い か ら,陰 極 板 の 組 成 と同 じ組成 の
ス パ ッ タ膜 が 作 製 で きな い とい う問題 が 起 こる 。 そ のた め ,組 成 を容 易 に 変 化 させ る方
法 と して ,異 種 金 属 板 を交 互 に 並 べ る試 み や ,二 枚 重 ね の 合 金 板 の 表 面 板 に穴 を あけ て
ス パ ッ タ膜 の 組 成 を変 化 させ る試 みが な され て い る。 この 場 合 に は ,組 成 の む らが 生 じ
る 久 点 が あ つた 。 複 合 ター ゲ ツ ト法 を用 い るた め には ,膜 の 組 成 の 均 一 性 を い か に 良 く
ス パ ツ タ装置 が 工 夫 され てい る
す るか とい う問 題 が あ る。 この た め ,回 転 陰極法 や 四極
〔4〕 が ,装 置 の構造 が 複雑 に な る とい う欠 点 が あ る。
細 線 を用 い た ス パ ツ タ リ ン グ法 は ,純 金 属が わ ず か に 他 の 金 属 を 含 ん だ 合 金 を作製す
るた めに用 い られ てい る 〔5〕 カミ,合 金 の全組 成 範 囲 にわた つて 用 い る試 み は なされ ていな
い 。 この 方法 は ,比 較 的 容 易 に組 成 を変化 させ る こ とが 可能 で あ る こ とか ら,高 融点 金
一
属 材 料 の合 金 薄 膜 を作製 す るた め に 有 効 な手 段 と考 え られ る 。 しか し,組 成 均 の 膜 を
つ くるた め の 条 件 は わか つて い な い 。本 章 で は ,細 線 複 合 ター ゲ ッ トを用 い て ,均 一 な
Ti一 Fe系 合 金 膜 を つ くるた め の 方 法 と,均 一 に な る要 因 に つ い て 検討 す る。
-11-
2-2 Ti― Fo系 合金 膜 の 作 製法
パ ッ タ装置 を用 い た 。 メー ゲ ッ ト材 料 が ,金
試料 作製 に は 図 2三 1に 示す 直流 二 極 ス
てい る 。
属 で あ るた め ,構 造 が 簡 単 な直流型 を使 用 した 。 陰極 は装 置 上 部 に あ り水 冷 され
ター ダ ッ ト電 圧 は ,-3kVを 印 加 した 。 試 料作 製 のた め の ガ ラス 基板 は ,カ ロ熱 と冷却 が
可能 な試 料 台 に載 せた 。 加 熱 は カ ン タル 線 を用 い た ヒ ー タで お こ な い ,冷 却 は水冷 また
は液体 窒 素 を 用 い た 。 ター ゲ ッ トと試 料 台 間 隔 は
てい る 。 メー ゲ ツ ト及 び 試 料 台 は 直径
5.5cmで あ り,シ
10cmで あ り,直 径 30cmの
ャ ツ ターで仕 切 られ
円筒 ス テ ィ ンス ・ ジ
ロ
ンプ で
ャー 中央 部 に位 置 して い る 。 ス テ ン ンス ・ ジ ャー は拡 散 ポ ンプ及 び ー タ リーポ
・
べ
ス パ ッ タ用 ガス は ニ ー ドル ・バ ル プ を
排 毎 され ,電 離戸 空計 を 用 い て 真空度 を調 た 。
.“ r
ニ ・
通 して 導 入 し,ガ ス 分 圧 は ピ ラ ー ゲ ー ジに よ り測 定 した 。
細線 複 合 ター ダ ツ トを 図
は ,直 径
2-2に
示 した 。 チ タン成 分 の 多 い 組 成 の 膜 を つ くるた め に
10cmの チ タン 円板上 に 0,2
,そ の 本数 と線間
rrrnφ の 鉄 線 を平 行 に電 気溶 接 し
ン
隔 を変 え る こ とに よ リ ター ゲ ッ ト面上 で の 鉄 とチ タ の 面積 占有 率 を 変 え た 。 また ,鉄
成 分 の 多 い 組 成 の膜 を つ くるた め には ,直 径
10cmの 鉄 円板 上 に 0.3 mmφ
ゴ ン ・ ガス の 純度 は表
平 行 に張 つた 。 ターダ ツ ト用 金属材 料 お よび ア ル
の チ タ ン線 を
1-1に
示 した 。
パ
ス
ス
基 板 は 市 販 の ガ ラス基 板 (コ ー ニ ン グ 7740及 び テ ン ック ガ ラ )を 用 い た 。 基 板
の洗浄 は ,ア セ トン,エ タ ノール ,セ ミコ ク リー ン及 び エ タ ノール の 順 序 で 超 音波 洗 浄
パ
ス パ ソ メ リ ン グ条 件 を 表
ン
を お こ な い ,そ の 後 ,温 風 乾燥 した 。 前 ス ッ タ リ グ及 び
-Ⅲ に示 す 。 前 ス パ ッ タ リ ン グは ス テ ン レス ・ ジ ャー 内 を 2X10
1
6 Torr以 下 に排 気 後
,
ア ル ゴ ン ・ ガ ス を導 入 し,管 壁 等 の 脱 ガ ス 及 び陰極 ター ゲ ッ トの 表 面 の 清浄化 を 目的 と
して 約
1時 間 お こな つた 。 さ らに , lX10 6 Torr以 下 に排 気後 ,再 び ア ル ゴ ン・ ガ ス
お
を導 入 して ス パ ツ タ リ ン グを開始 し,30分 後 に シ ャ ッ ター を開 け て 基 板 上 に膜 成長 を
こ な つた 。 膜 成 長速 度 は 約
85A/min(計 算 値 )で あ つた 。膜 成長 速 度 は ,生 成後 の ス
パ ッ タ膜 の 厚 さを繰 返 し干 渉計 で 漁1定 し,そ の 値 とス パ ツ タ時 間 か ら求 めた 。 ス パ ッ タ
膜 生 成 時 の 基 板 温度 は特 に 指定が な い 場 合 は 380℃ で あ った 。
*
フル ウテ化 学製 ,弱 ア ル カリ性半導 体洗浄 剤 。
-12-
表
2-I
タ ー ゲ ッ ト材料 及 ス パ ックガ ス 純 度
MateriaI
ron
Titanium
I
I
plate
99。
plate
99.9
99
99.6
wire
ron
Titan ium
w ire
'99。
gas
Argon
表
2-I
9
9995
前 ス パ ッタ リング 及 び ス パ ッタ リング条 件
Substrate
Ar gas
pressure(Torr)
temperaturefC)
voltage 1 fV) current(mA)
Target
sputtering
Sputtering
Pre-
Target
1.0
40
sxto+
1.7
20
3x
-13-
lo-a
400
380
図
2-1
直 流 二 極 ス パ ック装置 の 概 観 図
1.基 板 加熱 ヒー ター
6.基
板
2,陰 極 メー ゲ ッ ト
7.熱
電 対
3.陰 極 シー ル ド
8,液 体 窒 素
4.シ
ャ ツ ター
9.ニ ー ドル ノヾル ブ
5,ス
テ ン L/ス ジ ャ ー
10,Arガ
-14-
トラ ッ プ
ス ボ ンベ
TilFel p:● te
■ E E 0〇 一
nHHHHHH=HHHHH=HHU
口 H H H = = = H = H H = = H = = = = u
nHHH==HHHHHHHH==HHHU
-15-
Π = H H H = = H H H H H H H = = = H H H H H u
n H H H H H H H H H = = H H H = H H H H = H = 日
ΠH=HH HHHH= =HH=H =HHHH HHHH日
Π = H H = = = H H = = = H = = H H = = H H H U
Π H H H = H = = H H H H H H H = H H H H u
ΠHHHH==HH==HH==H==HHH日
Π= H = = H H H = H H H H H H H = H 日
I H H = = = H = = 日
Π H H = = H H H H I
Π H = H H H H H H = H H =
I I = H H = H 日
Π H = = H H = H I
I
ヽ
細 線 複 合 タ ー ゲ ッ トの構 造
2-2
図
2-3
ス パ ック膜 の組成 分布 の測定 方 法
組 成 分 布 の調1定 には EPMA(E lec tvき n Probe Micro Aralyzer)を 用 い た 。 試 料 の
パ
膜厚 は約 二μmの もの を使 用 し,標 準試 料 と して膜厚 lμ mの 鉄 ス ッ タ膜 及びチ タ ンス
パ ッタ膜 を用 い た。電子線 は ビーム径約 0.7μ mで 約 100 μm/minの 速度 で ス キ ャ ニ
ン グを お こ な う線 分析法 と 5カ 所 の 点 を 3回 づつ測 定す る点 分析法 を併 用 した 。 印加電
圧 は 20kV及 び 30kVを 使 用 し,TiKα 線 及び FeKα 線 を測定 した 。試料 の Ti成 分及 び
Fe成 分 の 定 量 には ,標 準 試 料 (Ti膜 及 び Fe膜 )の
Ti Kα 線 及び Fe Kα 線 を 用 い て正
規化 を お こ ない ,組 成 の 校正 には豊 田研 究所発行 の The diagram and tables for
*
quantitative EPMAの 校 正 表 〔6〕 を用 い た 。 この 表 を用 い る こ とに よ る組 成 の 精 度 は 士
0.5%で
あ る 。 EPMAに よる ス パ ッタ膜 の 組 成 の 測 定 方 向は 図
2-3に
示す 。 Rは ター
ゲ ッ ト上 の 金 属線 に対 して 直角 方 向 で あ り,Rノ は 金 属 線 に対 して 平 行 方行 で あ る。
2…
4
細 線 を用 いた 複 合 タ ー ゲ ッ ト法 に よ る ス パ ック膜 の 組 成 分 布 に
関 す る実験 結 果 と考 察
2-4-1
ター ゲ ッ ト上 の 金属線 間 隔 と基板 の 幅 の 関係 が 膜 の
組 成 分布 に与 え る影響
タ ー ゲ ッ ト上 の 金 属 線 間 隔 が組 成 の 均 一 性 に どの 程 度 影 響 を与 え るか を調 べ るた め
図
2-4に
,
示す よ うに , メー ダ ッ ト板 (チ タ ン)の 金 属線 (鉄 )間 隔 と基板 の 大 き さ
を変 え て ,ス パ ツ タ膜 の 組 成 分布 を 調 べ た 。 図
2-4は )は ,
ター ダ ッ トの 金属線 間 隔
よ り基 板 の 幅 が 小 さ い 場 合 で あ り,金 属 線 間 隔 の 半 分 の大 きさの基 板 を並 べ て ス パ ソ
タ膜 を作 製 した 。金 属 線 の真下 に あ る基 板上 の ス パ ッタ膜 と,金 属 線 の 間 に あ る基 板
上 の ス パ ッ タ膜 の 組 成 は 明 らか に異 な った 。金 属 線 が
下 の 膜 の 組 成 は約 12at.%Fe,鉄 線 の 間 の膜 は 約
上 の 膜 組 成 はそ れぞ れ 均 一 で あ つた 。 図
*
8at.%Feの 組 成 を示 した 。各 基 板
2-4(b)は ,
付録 として本章 の終 わ りに示 した。
-16-
0.2mmφ の 鉄 線 の 場 合 ,鉄 線 真
ターゲ ッ トの 鉄線 間 隔
(10mm)
torget
E E nn
plole
ヽ
substrote
図 2…
3
細 線 複 合 タ ー ゲ ッ ト法 にお け る タ ー ゲ ッ トと基 板 の 幾 何学 的 配 置
R :金
R′
属 線 に 直角 方 向
:金 属 線 に 平 行 方 向
〆
-17-
つてい
と同 じ幅 の基板 を並 べ た 場 合 で あ る 。膜 組 成 は全 て 均 一 で 10at.Feの 組 成 を も
た 。 この 値 は ,図
とが 図
2-5で
2-4幅 )の 金 属線 真 下 の膜 と金 属線 間 の膜 の組 成 の平 均値 で あ る こ
わ か る。 図
2-4{c)は ,図 2-4(a)と
金 属 線 間 隔 を基 板 の 幅 と等 し くと つた 場 合 で あ る 。 図
約
同 じ幅
2-5に
(5mm)の 基 板 を用いて
,
示 す よ うに鉄 の 組 成 は
2倍 に増 加す る と と もに ,基 板 相 互 間 の 組 成 の 差 は な くな る こ とが わ か つた 。 図
2-4は )の よ うに基 板 の幅が ,金 属 線 間 隔 よ り大 きな場 合 も同様 に基板 相 互 間 の 組 成
タ ン線 を用 い た ター ダ ッ ト
は 均 一 で あ る こ とが 図 2-5か らわ か る。 また ,鉄 板 とチ
の 場 合 も同様 の 結 果 が 得 られ た 。
メ
これ らの こ とか ら基 板 相 互 間 の 組 成 を再 現 性 良 く均 一 にす るた め には 基 板 の 幅 を
ー ゲ ッ トの金 属線 間 隔 よ り大 き くと る こ とで 解 決 で きる こ とが わ か つた 。
´
「
-18-
I E E nn il
H
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│
国
│
│
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:
│
│
│i │10mm
…
〔bl
図
2-4
ldl
タ ー ゲ ッ ト上 の 金 属 線間 隔 と基 板 の 幅 の 関 係
基板 の幅
金 属線 間 隔
幅)
l0
(b)
10 mm
(c)
5mm
5mm
{d)
5mm
10 mm
5mm
mm
l0
-19-
mm
center
r
ヽ
〇〇
n● ュ F 一
︻ oL 重 rぶ o ︺ E● 〓 一
20
Ic〕 {d〕
0〕
bl
10
-20
-:0
:0
20 mm
R
図
2-5
複 合 タ ー ゲ ッ ト上 の 金 属 線 間隔 及 び 基 板 の 幅 の ちが い に よ る
ス パ ッタ膜 の 組 成分 布
横軸は図
2-3の
0/か らの R方 向の距 離
伍),幅 ),に )及 び個)は そ れ ぞ れ 図
及 び基 板 の 幅 に対応す る。
√
-20-
2-4の
金 属 線 間隔
2-4-2
膜 組 成 が 基 板上 で 均 一 に な る 原 因
基板 上 の 組 成 の 均 一 性 を確 め るた め に ,図
2-6に
示す よ うに , ター ゲ ッ トの 形 状
を変 えず に基 板 の 幅 を 変 え て 組 成分布 を 調 べ た 。 メー ダ ッ トは チ タン板 に 鉄線 を 一 本
張 つた もの を 用 い た 。 基 板 は鉄線 に 対 して 直角 方 向 の 幅 を
5,10,20及
び
40mmと
長 さ を変 え た 場 合 に つい て 組 成分布 を調 べ た 。鉄 成 分が 希薄 で あ るた め 定 量 的精度 は
望 め な い が ,そ れぞれ の基 板 上 に鉄 原 子 が 均 ― に分 布 して い る こ とが わ か った 。組 成
分布及 び 測 定 値 を図
2-7に
示 した 。 組 成 はそれぞ れ ,
6,4,3及
び
2at.%Feで
あ つた 。
この よ うに ,基 板 上 で は ,鉄 原子 及 び チ メン原子 が 均 一 に 分 布 で き る こ とが わか る 。
この 原 因 が ス パ ッ タ原 子 の エ ネル ギ ー に よる もの で あ るか ,基 板 温 度 に起 因す る もの
で あ るか を 調 べ るた め に ,基 板 温度 を 50° ,180° ,250° 及 び 380° Cの それぞれ の 場
合 に つい て ,土 記 の 実験 を お こ な つた 。 結 果は図
2-7と
ま った く同 じ演1定 値 を示 し
た。
基板 上 に お け る膜 の 均 一 性 に つい て は ,ス パ ッ タ リ ン グの 際 の 膜 の 成 長 機 構 が 複雑
で あ るた め ,明 確 な結 論 は得 られ な い が 主 な原因 と して 次 の 因子 が 考 え られ る。 イ オ
ンボ ンバ ー ドされ プ ラ ズマ 中 で生 成 した 金 属 原子 の エ ネ ル ギ ーは非 常 に 大 き く,例 え
ば ,30∼
1,200eVの エ ネ ル ギ ーの ク リ プ トン ・ イオ ンで ス パ ッタされ た 銅 原 子 の エ
ネ ル ギ ー 分 布 の ピー クが 約
2eVと な り,そ の 等価 温 度 は 20,000K以 上 とな る こ とが
S tuartと Wehrer〔 7]に よ って報 告 され てい る。 さ らに イ オ ン化 した 原 子 は表 面付近
に おけ る高 い 電 界 に よ つて 表 面 に お け る 移動 の確 率 が 非 常 に高 い もの と考 え られ る 。
した が つて ,Ti及 び Feの 基 板表 面 で の 混 合が 充 分 に お こ なわれ 均 一 な組 成 の膜 をつ
くる もの と考 え られ る 。 また ,本 節 の 実 験 結 果 で ,基 板 の 幅 を 変 え る こ とに よ つて膜
の 組 成 が 変 化 す る こ とは ,こ の よ うな表 面 拡 散 が 膜 の 組 成 の 均 一 性 に 重 要 な役割 を演
じてい る こ とを示す もの と考 え られ る 。 しか し明確 な結 論 を得 るた め に は ,さ らに詳
細 な実験 が 必 要 で あ ろ ぅ。
√ヽ
′
︲
-21-
ヽ
15 mm
1●
I E E nn l▼
0
〕
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IcI
i+omm
ld}
図
2-6
タ ー ゲ ッ ト上 の 金 属 線 が 1本 の と き ,基 板 の 幅 を種 々に変化 させ た
場 合 の タ ー ゲ ッ トに 対 す る基 板 の 幾 何学 的 配 置
基板 の幅
b)
5mm
(b)
10 mm
(c)
20 mm
ld)
40 mm
/
-22-
cen† er
■0■E 00
一● ︸ LO〓 一
一 OL ■r.
20
10
-20
-:0
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20 mm
R
図
2-7
タ ー ゲ ッ トに 1本 の 鉄 線 を張 っ て ス パ ック した と き の 種 々の
基 板 幅 に 対す る基 板 上 におけ る 膜 の 鉄 組 成分 布
横軸 は図
2-3の
0′
か ら R方 向 の 距 離
la),b),に )及 びは)は 図 2-6に 対 応 してい る。
-23-
2-4-3
ター ゲ ッ ト上 の 金属線 間 隔 を変 化 させ た 場 合 の ス パ ッタ膜 の 組 成 と
そ の 均 一性 に つい て
表
2-Ⅲ
に示す
6通
りの 複 合 ター ゲ ッ トを用 い て 合 金膜 を作製 した 。 基 板 の 大 き さ
は 20× 20 cm2で 試 料 台 中央 に置 い た 。 基 板温度 は 380℃ で あ った 。 組 成 分布 は 図
2-3に
示す よ うに金 属 線 に対 して 直角 方 向
調 べ た 。そ れ ぞ れ の 測 定 結 果 を図
(R)及 び平行 方 向
(Rノ
)の 組成 分 布 を
2-8幅 )及 びわ)に 示 した 。 ナしての ス パ ッ タ膜 は 均 一
な組 成 分 布 を もつ こ とが わ か る 。
鉄 成 分 の 多 い 組 成 の ス パ ッ タ膜 を詳 し く観 測す る と表 面 に 直径 が lμ m程 度 の 純 鉄
の 偏析 が
な く,
EPMAに よ り認 め られ た 。この 偏析 は lcm2に つい て 1,2個
65∼ 90 at,%Feの 組 成領 域 に 限 られ た 。 図
2-9に
ときわ め て 少
, この 偏析 付近 の EPMA
プ ロ フ ァイ ル を示 した 。 チ タン成 分 の 減 少 は み られ ず ,鉄 成分が 増 加 してい る こ とが
わか る。 また ,周 辺 の 鉄 成 分 の 減 少 は認 め られ な い 。 この こ とか ら,直 径
lμ
m程
度
の 鉄 粒 子が 膜 の 表 面 に 島 状 に 載 って い る こ とが わ か る。 しか し,こ の 偏析 のお こ る 原
因 は 今 の と ころ 明 らか で は ない。 一 方 ,チ タン成 分 の 多 い 組成領 域 で は ,鉄 の よ うな
Tiの 偏析 は認 め られ なか つた 。
表
Somple
2-I
Mof erio
種 々の 複 合 タ ー ゲ ッ トとス パ ッタ膜 の組 成
I of
colhode d islt
Motcrio I of Scporotion of
the wlre (mm)
w ires
Fe contcnt
in of "/"
o
b
c
丁i looommダ
Fe
丁
to
Fe
丁
3
96
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Fe
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丁
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Fe
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Fe
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-24-
4
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■﹂ギギ
ce
(d)
10
5
nte r
R(mm)
{B〕
図
2-8 EPMA組
lAI R方 向
成 分 析 プ ロフ ァ イ ル
(金 属線 と直角 )の 線 分 析 結 果
(BI R′ 方 向 (金 属 線 と平 行 )の 線 分 析 結 果
-25
15
20
図
2-9
島状 鉄 粒 子 の
的
EPIA分 析 結 果
走 査 電 子顕 微 鏡 写真
(BI EPMAプ
-26-
ロ フ ァイ ル
陰極 ター ゲ ッ ト上 の 鉄 と チ タ ンの 面 積 比 とス パ ッ メ膜 の 組 成 との関 係
2-4-4
陰 極 メー ゲ ツ トの 鉄 の 占有 面 積 と チ メ ンの 占有 面積 の比が ,ス パ ッ タ膜 の組 成 と ど
の よ うな関係 に あ るか を検討 す る 。鉄 とチ タンの ス パ ッ タ率 は そ れぞ れ 1.35及 び
1.05と 異 な るた め ,計 算 値 は ,図
2-10で
一 点 鎖線 で 示 され る。 複 合 ター ゲ ッ トは
,
チ タ ン板 に鉄 線 ,ま た は鉄板 に チ タ ン線 を張 るた め ,平 坦 で は な い 。 この よ うな ター
ゲ ッ トは , どの 面 が ス パ ツタ リ ン グされ て 膜 を形 成す るのか は 非 常 に難 しい 問題 で あ
る 。 ス パ ッ タ リ ン グを数 回繰 り返 す と,金 属板 上 の 金属線 の 張 られた 部 分 は ,線 の 跡
が 残 こ る こ とか らス パ ッ メ リ ン グの 際 ,影 に な つて い る こ とが わ か る。 そ こで ,図
2-10Aに
示す よ うに ,金 属 線 の 下 半 分 の 表 面 積 と金 属板 の 金 属線 にか くれ る部分を
除 く面 積 比 を横 軸 に と り組 成 の実 験 値 を縦 軸 に示 す と,■ 印 の よ うに な る。 次 に ,
B
に示 す よ うに ス パ ッ タ リン グが 金 属 線 の全 表 面 と金属板全 表 面 か らお こ る もの と考 え
て ,面 積 比 を求 め ,実 験 値 を示 す と● 印 で示 され る よ うに ,一 点 鎖線 で 示 され る計 算
値 に見 か け 上 一 致す る こ とが わ か る。 以上 の 結 果 か ら ター グ ッ ト上 の 金 属線 は金 属板
よ り も多 くの金属 原 子が ス パ ッ タされ て とび 出 し,膜 の 組 成 に 影 響 を与え て い る と考
え られ る。 この理 由 に つい て は ,現 在 の と こ ろ 明確 な解 釈 は な され て い な い 。
2-5
ま と め
以 上 の 結 果か ら,細 線 を用 い た 複 合 ター グ ッ ト法 に関 して 次 の こ とが わか つた 。
{1)細 線 を用 い た 複 合 ターグ ッ ト上 の 細 線 間 隔 よ り も幅 の 広 い 基 板 を用 い て ,各 基 板 間
の組 成 の 均 一 性 を一様 に で き る。
{2)細 線 複 合 ター グ ッ ト法 に よ り Ti― Fe系 合金 膜 が 広 い組 成 範 囲
(組 成 の 誤 差 ±
2%)
に わ た つて 作製 で きる。
{3)基 板 上 で の 組 成 分 布 は膜 生 成 時 の 基板 温度 50∼ 400℃ で は 基 板 温度 の 影 響 が み とめ
られ な い 。
-27-
plate
J
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A
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100・/.Fe
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Rotio
陰極 タ ー ゲ ッ ト上 の 鉄 の 面積 占有 比 とス パ ッタ膜 の 組 成 の 関係
一 点鎖線 は ター ゲ ツ ト電 圧
(1.05)及
1.7kVに お け るチ タ ンの ス パ ッ タ効率
び ,鉄 の ス パ ッ タ効 率
(1.85)か
ら求 めた 計 算値
図 Aに 示 す よ うに斜 線 を つ け た 部 分す な わ ち
■ :基 板か ら見 た 金属線 及 び 金 属板 の 面 積 か らス パ ッ タ リ ン グが お って
い る とし て鉄 の 占有面 積 を求 めた場 合 の 実 験置
図 Bに 示 す よ うに
● :金 属線 及 び 金 属板 の全 面 積 か らス パ ッ タ リン グが お こ って い る と し
て 鉄 の 占有 面 積 を求 めた 場 合 の 実験 値
-28-
博
第 2章 の 参考文献
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7)K.N akaiima,A.I soya,Y.Oda and R,Tsuit i
Diagrams and Tables for Quantitative Electron Probe Microanalysis
(Toyota central R&D Labs.,N agoya, 1970)
8)R.V,Stuart and G.K.WVC h ner :J.Appl.Phys. 35(1964)1819.
9)MaisSel and Glang : Handbook of Thin Film(Mc Graw一
New York, 1970)3-28.
-29-
Hill,
Ti― Fe系 合金膜 の組成 と構造 〔1〕
第 3章
3-1
は じめ に ・
Ti― Fe系 合金膜 の構 造 を調 べ るた め に ,反 射 X線 回折 法 ,反 射 お よ び透 過 電 子 線 回
折法 を 用 い た 。 また ,膜 組 成 を調 べ るた め に Auger分 析 を お こない ,膜 表 面 化 学種 の 結
合状 態 を調 べ るた め に ,
ESCA(ElectrOn SpectrOscopy fOr Chemical Aralysis)
を使 用 した 。
3-2 X線
回 折 に よ る実 験 方 法
X線 回 析 法 は ,ガ
板は
ラス 基 板上 の ス パ ッ メ膜 の 構造 を解 析 す るた め に用 い た 。 ガ ラス 基
10X20cm2の 大 き さの もの を使 用 した 。 X線 源 は銅 の 管 球 を使 用 し,CuKα :線 を用
い た 。 測 定 はデ ィフ ラク トメー ター
(Rigaku,IuD IA)を 使 用 し,シ
ン チ ンー シ ョン ー カ
ウ ン ター で 計 測 し, レ コ ー ダで 記録 した 。 鉄 は CuKα 線 に よ り蛍 光 を発 す るの で ,バ ッ
ク グ ラ ン ドを 下げ 信 号 を大 き く得 るた め に ,シ ンチ L/一 シ ョ ン カ ウ ン ターの 前 方 に グ ラ
フ ァイ トの モ ノク ロ メ ー タを用 いた 。
ス パ ッ タ膜 の基 板 に使 用 した ガ ラス 基 板 の X線 回析 パ ター ンには , コ ー エ ン グ 7740
ガ ラス に よ る 2θ 生 23° 付 近 に ピー クを もつ ア モル フ ァス パ ター ンが 現 わ れ た 。 また
,
テ ンパ ック ス ガ ラス も同様 に 2θ 生 25° 付 近 に ピー クを もつ ア モル フ ァス パ ター ンを 示
した 。
ガ ラス 基 板 に ス パ ッ タ膜 を作 成す る 際 ,そ の膜 厚 を 2,000A∼
させ X線 回 折 パ ター プの 関 係 を調 べ た 。 図
3-1は
10,000Aの 範 囲 で 変 化
,Ti。 70 Fe。 30ア モ ル フ ァス 相 の ス
パ ッグ膜 の 膜 厚 2,000Aと l μmの 場 合 の X線 回折 の 結 果 で あ る。基 板 に よる回 折 パ ター
ンは約 lμ mで ほ とん ど消滅す る こ とが わ か る。この こ とか ら,X線 回 折 の 際 に基板 の 影
響 が 少 な くな る よ うに lμ mの 膜 厚 の 試 料 を用 いた 。 また ,サ フ ァイア単 結 晶 基 板 を 適
時使 用 して 基 板 に よる構造 の 影 響 を調 べ た 。
-30-
:5 mA
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J
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ヽ
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‐
/SubStr.le
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た Lコ .
︹.
CuKc
30 kV
*-l------_____:
´
メ
20
図
40
3-1
´
:
60
試 料 膜厚 を変 化 させ た 場 合 の X線 回折 パ タ ー ン
ガ ラス基 板 (コ ー ニ ン グ 7740)
2000Aの
膜 厚 の Tiom
lμ mの 膜 厚 の
-31-
Fc。 30膜
T iQ70 FeQ帥 膜
2e (deg)
3-3 X線
図 3-2に
回折 法 に よ る結 果
,膜 厚 lμ mの Tix― Fel_x合 金 膜 の X線 回折 像 の 代 表 的 な もの を模式的に
示 した 。 結 果 は 以 下 の 通 りで あ る 。
α 一 Fe相
(11 X=0
(2)0.05<xく
0.33
(b.c.c.)
図
[a - Fe fH ( n...c. ) +Ti Fe, fH ( hexagonal
図
{3)0.35<x<0.45
3-2(al
3-
の混合膜
)〕
2(b)
〔Ti Fe2相 十 Ti Fe相 (b,c ic.)] の 混 合膜
図
3-
2(c)
4
5
6
0.45<x<0。 55
Ti Fe本 日
図
3-
2{d)
0.55<x<0.80
0.80<x<0.83
ア モ ル フ ァス 相
図
3-
2(e)
β―Ti相 (b.c.c.)
図
3-
2{f)
β―Ti相 の格 子定 数 3,16A
(7)0,83<x<0.94
(β
―Ti相 +α ―Ti相 )混 合膜
α― Ti相 の格子 定数 3.16A,α 一Ti
(3)0.94<x<1
相 の格 子 定 数
a=2.93A,c=4.65A
図
3-2(g)
α― Ti相
図
3-2(h)
格 子定数
a=2.93A,c=4.65A
X線 回折法の結果,鉄 成分の多い組成領域でのTi一 Fe系 合金膜は二相以上の混合物
薄膜であることがわかつた。チ タン成分9多 い組成領域
(0.5<x<1)で は,ア モル
ファス相とβ―Ti相 が現われることがわかつた。そこで,
0,70<x<1の 組成範囲で
組成 を細 か く変化 させ て ス パ ツ タ膜 を作製 し,そ の X線 回折 の 結 果を図 3-3に 示 した 。
2)面 に よる回折線 は ,強 度 が弱 くな り,83at.
鉄 成 分 の増 加 に伴 い α―Ti相 の (00・
%Tiの 組 成 で完 全 に消滅す る こ とが わか る。 この組成が α―Ti相 の存 在 で き る限 界 で
あ る。 一 方 ,鉄 の 増 加 に伴 い β一Ti相
す る。 ここで ,α 一Ti相 の (01・
(200)面 の回折線が あ らわれ ,そ の 強度が増大
1)面 に相 当す る回折線 は回折角 の幅が ,
1° と広 が
るに もかかわ らず 回折強度 の 減 少 は認 め られ ない 。 ところが ,こ の回折 線 とほぼ重 なる
位 置 に β一Ti相
(110)面 の回折線 が 存在 し, 83at.%Tiの
組成 では β―Tiの 単 一 相
が形 成 された こ とを示す。 ここで 注 目す べ き こ とは , α―Tiの 格 子定数 も β―Tiの 格子
-32-
Tix‐Fel_x
101x80
aFe{200)
αFetl10)
(b)丁 iFe2{!卜 0〕 IiFe2
■30.31
ic〕
1i:0・
工=0。 4
TiFe{1003}
TiFe211!° ° 1
X・
0。
47
te'■・
0。
7
{d〕
a Fe〔
TiFe l‖
0)
200〕
TiFe1200〕
TiFe 1200)
・
βTi{200}
βT:{‖ 0〕
βTi{F‖ )
βTi{‖
・
(91x・ 0。 9
αTi1 00・ 2) ●Ti〔 Ol・
{h)α Ti100・
pTi ( zoo l
0〕
r)laTi101・
βtti{P!:)
│〕
i〕
50
40
60
70
,
2o{deg〕
x― roy Diffroction Dio9rom
図
3-2
Tix― Fel_x合 金薄 膜 の X線 回折 パ タ ー ン
x=0.90 ,
x=0.30,
x=o,70,
X=1
-33-
C f
x=0.47 ,
e 伍
わ l
g
a
< は <
x=0 ,
x=0.40
x=o.80
●Ti1 0!・ l)
αTi100・
〔H01
2〕
Ti
97● 11%Ti
βTi{2001
94o↑ .・/.Ti
92o,.%Ti
90o† .%Ti
87● l.%丁
i
85ol.%Ti
83o† .%Ti
80ot°/.Ti
75 ol.%丁
70ol。
i
%Ti
deg l
図
3-3 Ti成
分 の 多 い 組 成領 域
(│.7<Xく 1)の Tix― Fel_x
膜 の X線 回折 パ タ ー ンの 部 分的 表 示
-34-
定数 も変化 しない こ とで あ る。 β一Ti相 は ,鉄 成分 が 変化 して も格 子定数 3.16Aで 一 定
であ つた 。 鉄 が 33at.%Tiか らさ らに増 大す ると β―Ti相 の 回折線 は強度 が弱 くな り
ぼやけた ハ ロー と置 きか わ ることが わか つた。す なわ ち 0.33<x<1の 組 成 膜 は 83
at.%Tiの
β一Tiと
100at.%Tiの
α―Tiの 混合膜 で あ る と結論 され ,こ の組 成域 で
は鉄 は殆ん どα―Ti中 に固溶 してい ない こ とがわか つた 。
3-4
電子線回折 に よ る実験方法
電子線 回折法 は,X線 回折法 に比 らべ 分析感度 が 高 いた め ,混 合物 薄膜 の構造 解析 や
表面 構造 を調べ るた め に用 いた。 反射 回折法 のた め の 試 料 は ,X線 回折法 で使用 した
ス
パ ッタ膜 と同様約 lμ mの 膜 厚 の ものを用 い た。透過 電 子線 回折 用 の 試料 は(│)銅 の #200
メ ッシ ユ上 に コロ ジオ ン膜 を張 リス パ ッタ膜 を 500A程 度成長 させた もの
111〕
NaCl及 び
KCl基 板上 に ス パ ッ タ膜 を形 成 し,水 面 上 で銅 メ ッシ ュ #200上 に試料 をす くい あげ た
ス パ ッタ膜 の破 片 を
ものlDガ ラス基板上 に生 成 した薄膜 を基板 ご と割 る と きに得 られ る
ス
利 用 した 。 この場 合 , ガ ラス基板破 壊 の 際 に ガラス 片 の 混入が 考 え られ るが ガラ 基 板
の 回折 パ ター ンと合金 ア モル フ ァス パ ター ンとは明 らか に異 な るた め ,分 離は容易 で あ
った 。 ス パ ッタ膜 の 化 学 エ ッチ ン グは試料 の表面 状 態 をかえ るば か りで な く汚染 の原 因
とな りうるた め,本 研 究 で は使用 しなか つた 。
3…
5
電子線回折 に よ る結果
全組 成域 での Tix― Fel_x合 金膜 の透 過 回折 の結 果 は ,上 述 の X線 回折 の結 果 と 一 致
した。 た だ し,反 射 回折 は膜表面数 10∼
100A程 度 か ら得 られ る情報 で あ るため X線 回
折 と一 致 しない場 合 が あ つた。た とえば鉄成 分 の 多 い 組 成域 に ついて は X線 回折及 び透
ン
過電子線 回折 と異 な る結 果 を得た ので図 3-4に 代表 的 な もの を示 した。 また ,チ メ
成分 の 多 い 組成域 に つい て は ア モ ル フ ァス を明確 に示す た めに透過 電子線 回折 の 代表 的
な結 果 を示 した。
(1, x=0.30 :図 3-4(Jの 反射電子線 回折 パ ター ンは方位配 列 した α一Fe相 と,酸
化物 も し くは ア モル フ ァス相 との 混 合膜 で あ る こ とを示 した。
-35-
{2)x=0.47 :図 3-4(b)の 反射電子線 回折 パ ター ンは方位配列 した Ti
Fe相 と酸 化
物 もしくは ア モル フ ァス 相 との混合膜 であ るこ とを示 した。
椰)x=0.50
:図 3-5は )の 透過電 子線 回折 パ ター ンは Ti
に)x=o.70
:図 3-5b)の 透過電子線 回折 パ ター ンは ア モル フ ァス相 の存在 を示 し
Fe相 を示 した。
た。
6)x=0.80 :図 3-5に )の 透過電 子線 回折 パ ター ンは β―Ti相 の b.c.c.構 造 を 示
パ
した。 この 組成 で は , β一Ti相 の部 分 と図 3-5(b)と 同 じア モル フ ァス 相 ター ン と
が 観 測 され た 。
16)x=1
:図
3-5幅 )の 透過電 子線 回折 パ ター ンは h.cep.構 造 の α―Ti相 を示
した。
透過電 子 回折 の パ ター ンを ミク ロフ ォ トメー タで 測 定 した もの を図 3-6に 示 した 。
図 3-6の
(b)に
示 され る よ うに ア モル フ ァス パ ター ンは ,Ti一 Fe系 合金 に含 まれ る 相
の もので な い こ とがわか る。
-36-
C)
30at %Ti
lb)47at.%Ti
図
3-4 Ti=―
r01_.膜 の 反射電子線 回 折 パ ター ン
(b)x=047
(a)x=0.3
-37-
(膜 厚 lμ ■)
∈ .
「
に,
(b)70at.%Ti
(a)50at.%Ti
0
lc)
図
80at %Ti
Ti
3-5 Tlx― Fel_x膜 の 透過 電 子 線 回折 パ タ ー ン
(膜 厚 500■
x=050,(b)x=0.70,{c)x=080,ld)x=1
)
-3 8-
)
1 2 3
4 5 6 7
{o)
TiFe
‖
101
12001
(2111
β―Ti
{│101
1200)
1210)
12201
C― Ti
8(Ol口 01
9〔 00.2)
10〔 │● .‖
│:{l● .3〕
〔
b)
12〔 ll.0〕
:311● .3〕
:4〔 20。 01
:5〔 ││.2〕
16120。 │)
ic〕
16
1413
{dl
│.4 1.6 1.82.0
:.2
図
3-6
2.53.0 4。 O dIA〕
透 過電子 線 回折 の ミク ロ フ オ トメ ー タ曲線
(強 度 は相対 値 を示 し,横 軸 は 面 間 隔 を表 わす 。
面 間 隔 dは 金 を標 準 と して 計 算 した 。)
b)70at.%Ti :ア モル フ ァス相
(a)50at.%Ti :TiFe相
(c)80at。 %Ti :β 一Ti相
(d) 100at.%Ti:α
-39-
― Ti相
3-6
回折 法 に よ る結果 の 考 察
X線 回折 お よび電 子線 回 折 の 結 果 を ま とめた もの を図 3-7に
示 した 。 Ti一
Fe系
合
金 膜 は い くつ か の 相 の混 りあ つた 混 合膜 に な ってい る場 合 が 多 い こ とが わか つた 。鉄 成
分 の 多 い 組 成 領 域 では ,X線 回 折 の 結 果 と電 子線 回折法 の 結 果 は幾 分異 つて い る。 X線
回 折法 で は ,比 較 的広 い 面積 (l X 10mm2)に
X線 が 深 い 角 度
(2θ =20° ∼ 90°
)で 入
射 す るた め ,膜 の 平 均 的 な構 造 を 調 べ る こ とに な る。 と ころが ,反 射 電子 線 回 折 の 場 合
,
電 子 ビー ムは試 料 に対 して 非 常 に 浅 い 角 度 で 表 面 に入射す る 。 この た め非 常 に平 らな面
だ とす る と表 面 下数
10Aの 情 報 が 得
られ る 。 空 気 中に さ ら した ス パ ッ タ膜 表面 での構造
は ス パ ッ タ膜 の 内部 の構 造 と異 な る こ とが 予 想 され る。反 射 電 子 線 回折 で は ,ア モル フ
ァス パ ター ンが 観 慣1さ れ た が , Ti―
Fe系 合金 の もの で あ るか ,酸 化物 に よる ものであ る
か は 同定 は 困難 で あ つた 。 そ れ は鉄 お よび チ タンの 酸 化物 は 数 多 く存 在す るた めで あ る。
後 述 す る よ うに Auger分 析 及 び
ESCAの 結 果か ら,表 面 は 酸 化物 を形 成 してい ることを
考 え あわ せ る と鉄 成 分 の 多 い 組 成 領 域 での ア モル フ ァス パ ター ンは酸化物 の 可能性 も考
え られ る。
Ti成 分 の 多 い 組 成領域 に 存 在 す るア モル フ ァス 相 は ,X線
果 か ら確 認 され て お りTi一
Fe系
回 折 及 び電 子線 回 折 の 結
合 金 の ア モル フ ァス で あ る と考 え られ る。 この 事実 を
確 認 す るた め ,第 5章 で 加熱 処 理 に よるアモル ファス 相 の 構 造 の 変化 お よび 電 気 的特 性 に
つ い て 考 察 を お こ な う。
r―
-40-
仄 ―Fe
氏 ―丁
i
―
丁iFe
―
│′ Ti
Arnorphou
s
50
0
83
100
Composi† ion{o† .つも丁│)
図
3-7 Ti― Fo系 合金 膜 の 構 造
(X線 回折 及 び 電 子 線 回折 の 結 果 を ま とめた 。)
メ 反射笥 写線 口新 い耗采
3-7 Auttr電
EPMAに
子 分 光 及び
ESCAに
よ る分析 結 果 とそ の 検 討
よる組 成 分析 の 補 助 と して 高 感度 の Auger分 析法 に よる ス パ ッ タ膜 の深 さ方
向 の 組 成 分 析 を お こ な い ス パ ッ タ膜 に含 まれ る不 純物 の 検 討 を お こ な った 。 また ,ESCA
に よ り, Ti―
Fe系 合 金 膜 の 表 面 の 化 学 種 の 結 合状 態 を調 べ た 。
チ タ ンは イ オ ンポ ン プの グ ッ ター材 料 と して知 られ る よ うに ,酸 化 物 を つ くりやす く
,
また 炭 化 傾 向が 大 きい 。 このた め ,ス パ ッ タ膜 に 含 まれ る 酸 素 及 び 炭 素 の 量 を調 べ る こ
とに した 。 また ,ス パ ッ メ リ ン グ用 ガ ス と して使 用 した ア ル ゴ ン `ガ スが どの 程度 含 ま
れ る の か も同時 に調 べ た 。 測 定 に は ,Auger分 析法 を用 いた 。装 置 は Phi,Model ll,
18,20及 び 32を 使 用 した 。
図
3-3に
測定 した Augerス ペ ク トル の 一 例 を 示す 。 ス パ ツ タ後 Ar中 に 封 入 後 の 試
料表 面 の ス ペ ク トル をは)に 示 した 。 また Arに よ り 50Aエ ッチ ン グを お こ な つた 場 合 の
ス ペ ク トル が 幅)で あ る 。
-41-
Ti o.zo - Fe o.
(
o
I
surfoce
0﹁コ一一
五 Eく
Eiching
l kV
20 mA
4min
√
I・
200 400 600 800 :000 eV
E:ec† ron
図
Energy
3-8 Ti070 Fo030膜
の Augprス ペ ク トル
D
a ・
試 料 表 面 で の Augerス ペ ク トル 濃1定 結 果
試 料 表 面 か ら約
50Aエ ッチ ン グ した 場 合 の Augerス
ペ ク トル 測 定 結 果
エ ッチ ン グ条 件
:Arガ ス 使 用
lkV,20 mA
40A/min
F
-42-
丁:.口 71「 Fo。 。
30
aE ● 〓O oユ ー ● 一︱ 二〇 0﹂
● ■コ〓 一
だ
0
200
400
600
!600
丁hickness
図 3-9
T10.70 FoO.30ス パ ツタ膜 の上uger分 析結果
測定 元 素
Arエ
:Ti,Fe,0,C及
ッチ ン グ条 件
-43-
び Ar
:lkV,20mA
●AH
‐
図
3-9に
TioЮ ―Fe
Q30ア モル フ ァス 膜 の Auger分 析 の 結 果 を示す 。横 軸 は ,ス パ ッ
タ膜 の深 さ方 向 を示 し,原 点 は表 面 で あ る。 深 さ 方 向 の 分析 は ,ア ル ゴ ン ガ 不に よ り1
kV,20mAの
で エ ッチ ン グ し,お こ な つた 。 分析 元 素 は ,
条 件・
Ti,Fe,0,C及
び Ar
で ぁ る。
ス パ ッ タ膜 の 表 面は ,酸 素及 び 炭 素 が 多 量 に検 出 され た 。表 面 か ら 30∼
50Aエ ッチ ン
グを お こ な う と,酸 素及 び 炭 素 の 量 は急 激 に減 少 し,ほ とん ど ス パ ッタ膜 の 内部 には 含
まれ な い こ とが わか る。 Arは 表 面 で は検 出 され ず ,膜 内部 で ご くわ ず か ス ペ ク トル が
観 測 され た 。 これ は ,演 1定 の 際 に用 い た ア ル ゴ ンーエ ッチ ン グの た め で あ る と考 え られ
る 。 ス パ ッタ膜 表 面 に 存 在 す る酸 素 及 び炭 素 は ,ス パ ッ タ膜 形 成 後 に試 料 を空 気雰 囲気
中 に さ らす と同 時 に吸着 す る こ と も考 え られ るが , よ り正 確 な実 験 に よ らなけ れ ば 結論
づ け る こ とは不 可能 で あ る。 これ らの 酸 素 及 び 炭 素 が 存 在す る 深 さは ,ス パ ッ タ膜 の 表
面 の 凹凸 や ,Arエ ッチ ン グの 際 の 取 り残 しな どを考 え る と幾 分 ,演1定 値 よ り浅 い 可 能
性 もあ る。
ス パ ッ タ膜 表 面 の 酸 素 及 び炭 素 の状 態 を 検 べ るた め に ESCA(JESCA-3A)を
た。図
3-101a)に ,Ti。 70 Fe Q30の
ス パ ツ タ膜 の 表 面 の分 析 結 果 を示 す 。図 3二 10幅
は ,標 準 に用 い た Ti02(ル チ ル )の 01sの ス ペ ク トル と T i2Pの ス ペ ク トル ,ま
膜 上 に存在 す る HCと して 存 在す る C Isの ス ペ ク トル を示す 。 また ,図
2〕
I hara等 〔
の TiCの
用い
)
LAu薄
3-10韓 )は
,
ESCAの デ ー タで あ る 。 この 図 か ら明 らか な よ うに ,ス パ ッタ膜
表 面 の 酸 素 は Ti02を 形成 してい る ことが わか る。 また,炭 素は,ス パ ッタ膜表面 で HCと して
存 在す る こ とが わ か つた 。 また ,ス パ ッ タ膜 表 面 で の 鉄 の 状 態 は ,ス ペ ク トル 強度 が 弱
く,演 1定 され なか った 。
Fe成 分 の 多 い 組 成 の 膜 表 面 は鉄 酸 化物 の 形 成 が 予 想 され る。こ
の た め ,反 射 電 子 線 回折 の 結 果 現 わ れた ハ ロ ー は酸 化 物 ア モル フ ァス に よ る可 能性が あ
る と考 え られ る 。
この よ うに ,空 気 中に と りだ した場 合 ス パ ッ タ膜 表 面 は
50A程 度 の 厚 さ の 酸 化膜が形
成 され る こ とが わ か つた が ,電 気 的 測定 に使 用 した ス パ ッ タ膜 は膜 厚 5,000Aの もの使用
した た め ,こ の 表 面酸 化 物 の 影 響 は 非常 に 少 な い もの と考 え られ る。 さ らに ,こ の 酸 化
物 は ,ス パ ッ タ膜 を お お い ,パ ッシペ ー シ ョ ンの 役 割 をはた して い る もの と考 え られ
,
鉄 成 分 の 多 い ス パ ッ タ膜 に 比 らべ ,チ タン成 分 の 多 い ス パ ッ タ膜 は ,大 気 中 に 長 時 間放
置 して も,Auger分 析 の 結 果か ら表 面酸 化 物 の 厚 さは ほ とん ど変化 しな い こ とが わか っ
/
-44-
た 。 また ,電 気的特 性 の 変化 もみ られ ず ,パ ッ シベ ー シ ョンの 役 割 をは た してい る もの
と考 え られ る 。
/
ヽ
-45-
(ol Tio.zo-Feo.so
r;2fi2
C:s
535 530 525 470 465 460 455 290285 280
b〕 丁102
〔
T;,r',01',
■2叱
C〕 TIC
〔
535 530 525 470 465 460455 290 285 280
Bonding Energy ieV)
図
3-10 Ti― Feス パ ック膜 の ESCA実 験 結 果
ニ
横 軸 :結 合 エ ネ ル ギ ,縦 軸 :相 対 強度
a b c
TioЮ 一Fe Q30ス パ ツ タ膜 の 酸 素 ,チ タン及 び炭 素 の 結 合 エ ネ ル ギ ー
標 準 試料
Ti02及 び HC(Au薄
膜 上 )の 酸 素 ,チ メン及 び 炭 素 の 結 合 エ ネル ギ ー
2〕
標 準 試 料 TiCの チ タ ン及 び 炭 素 の 結 合 エ ネル ギ ー 〔
│
-46-
第 3章 の参考文 献
1)N.Kurita,YI Igasaki,Y.N akam ura,G.ShimaOka and Ho Mitsuhashi :
Jpn.J.A ppl.Phys,, 21〔
1〕
(1982)33,
2)H.Ihara,Y.Kumashiro,A.Itoh and K.Maeda i Jpn.J.Appl.Phys.,
12〔
9〕
(1973)1462.
F`
-47-
Ti‐
Fe
30kV
0
m 2
む︼︲一
一
里o匡
む︼︲●L .
卜 ゝ〓ocの一
三 ●≧・
40
50
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52.5° J r
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丁
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図
3-付 A
本 図 は EPMAの デ ー タか ら得 られ る組 成 補 正 のた め に使 用 した 。
な お ,こ の 図 を使 用す る こ とに よ る組 成 誤差 は ± 0.5%で あ る。
-48-
T卜 Fe
20kV
0 “ 5
0 欄 3
0
7
︲・
む︼ ︲一
o︼ ︲oL .
一
卜 、〓”匡o一E ●≧・
里o匡
40
50
60
Welght percent
」
ノ
J「
「
52.5・
「
/30°
/
4 ■
ノ
図
本図は ,
EPMAの
3-付 B
デ ー タか ら得 られ る組 成の補正 と して 使用 した 。
なか,こ の 図 を使 用す る こ とに よる組 成 の誤差 は ± 0.5%で あ る。
-49-
第
4章 Ti― Fe系 合 金 膜 の 電 気 的 特 性
は じめに ・
4 1
合金膜 の 電気的 特 性 は膜構造 を よ く反映す るの で 第 3章 の結果 を参 照 して,Ti― Fe
系合金膜 の 電気 抵抗 特 性 の考察 をお こな い ,電 気伝 導 機構 について 検討 す る。
この 中 で
,
ス パ ッタ リン グで得 られた ア モル フ ァス 相及 び β一Ti相 の 電気的 性 質 に ついて 実験 結果
をの べ ,考 察 を くわ え る。
「
1
4-2
電気的測 定
電 気 的抵 抗 漫1定 用 試 料 は ,膜 厚
15mm2に 整 形 し,両
5,000Aの
ス パ ッタ膜 の 化学 エ ッチ ンダ に よ り 2×
端 に金 電 極 を蒸 着 し,10
mmの
長 さ と した 。抵 抗 率 ρの 濃1定 は 四
端子 法 を用 い てお こ な った。測 定 器 は メケ ダ型 TR-6856を 使 用 した。残 留抵 抗 ρOは
液 体 ヘ リ ウ ム温 度 で 測 定 した抵抗 率 ρを近 似 値 と して 用 い た。抵抗 温 度 係数
(÷ 需
)は
,
TCR
ρか ら言
十算 で 求 めた 。
-50℃ か ら 100℃ まで の dρ /dT室 温 に お け る抵抗 率 ‐
プテ イ カ ル ゴ ニ
膜 厚 の 演1定 には ,繰 り返 し干 渉 計 を使 用 し,抵 抗 素 子 の寸 法 の 測定 は オ
オ メ ー タ を使 用 した 。
4-3
実験 結 果 及 び 考 察
4-3-1
ス パ ッ タ膜 の 電気 的特 性 にお よぼ す 膜 生 成 時 の 基 板 温 度 の 影 響
抵 抗 率 ρ及 び 抵 抗 温 度係 数 TCRは
図 4-1に
,膜 の生 成 の ときの 基 板 温 度 TSの 影 響 を うけ る。
,金 属 間 化合 物 Ti― Fc相 か らな る T io47 FeQ53膜 の測定 温 度 変 化 に対す
る抵 抗 率 ρの 変 化 の 代 表 的 な もの を示 した。膜 生 成 の 際 の 基 板 温 度 Tsは ,180℃
,
スパ
250℃ お よび 380℃ で ,そ れ ぞれ同 ,lb)お よび (C)に 示 した。基 板 温 度 が低 い ほ ど
* tv?rY
I't-l
IINO'r : HF
:HrO:1 :1:
/r
-50-
10
ッタ膜 の 抵 抗 率 は大 き く,抵 抗温 度 係 数 が 減 少 す る傾 向 を示 した 。 180℃ と 250℃ の
基板 温 度 で は ,温 度 変 化 に 対 す る電 気 抵 抗 の 再 現 性 が な く, 100℃
, 100hrの 加 熱 処
理 に よ り抵 抗 率 が 減 少す る こ とが わ か った。 これ らの 高 い 抵抗 率 の 原 因 は ,膜 生成 時
の 基 板 温 度 に基 づ く膜 構 造 の ちが い に よる もの と考 え られ る 。 す な わ ち,X線 回折法
の 結 果 で は ,基 板 温 度 250℃ 以下 で 作 成 した試料 の 回折 線 が , 380℃ で 作 成 した試 料
の 回折 線 よ りぼ け る こ とに よ り,か な リア モル フ ァス の 多 い膜 構 造 とな る もの と考 え
られ る 。 したが って ,こ の こ とか ら,残 留抵 抗 を増 大 させ ,そ の 結 果 ,抵 抗 率 が 大 き
くな った もの と考 え られ る。
次に図
4-2に ,ア モル フ ァス 相 か らな る Ti
Q70 Fe Q30の 膜 の 温 度 変 化 に 対 す る抵
抗 率 ρの 変 化 に つ い ての 代 表 的 な もの を示 した 。膜 生 成 の 基 板温 度
Tsが 250℃
およ
び 380℃ の 場 合 で あ る。 基 板 温度 が 250℃ の と き,11は 負 の 値 を示 し,抵 抗 率 は大
き くな る傾 向 を示 した。 しか し,温 度 変 化 に 対 して 同 じ抵抗 率 を と らず 再 現 性 が 劣 っ
てい た。 膜 生 成 時 の 基 板 温 度 380℃ の 場合 ,抵 抗 率 の 減 少範 囲 は , 100℃
加熱 処 理 で 約
6%で あ った 。 また ,基 板温 度 420℃
は , 380℃ で 作 製 した試料 の 抵抗 率 (20℃
,100hrの
で 作 製 した 試 料 の 抵 抗 率 (20℃
)の 値 と数 %の
)
ちが い しか み られ ず ,温 度
変化 に 対 す る抵 抗 率 の 変 化 も同様 で あ った。
4-3-2
全組 成 領 域 の Ti一 Fe系 合 金 膜 の 抵 抗 率 ρ
図 4-3に
,Ti― Fe合 金膜 で種 々の組成 に対す る,室 温 での抵 抗率 の 変化 を示 し
た。抵抗 率 (20℃
)は ,金 属間化合物 T
iFe2相 と TiFe相 が存在 す る X=0.33及 び
X=0。 47で 急激 な抵抗率 の 減少 が認 め られた 。 バ ル クの 金属化合物 の 抵抗率 は
Ti Fe2相 が 約 230μ Ω―cm〔
よ り17∼ 47μ θ―cm〔
2〕
1〕
,
:TiFe相 は,数 %固 溶体 を形成 し,組 成 の ちがいに
の 範 囲にある こ とが報告 され てい る。 図
らつ きが み られ るの は ,膜 の 組成 の 測 定 の 際 ,±
4-3で 抵抗 率 の ば
2%の 誤差 を含 む た めで あ る と考え
られ る 。抵抗 率 は ,金 属及 び金 属間 化合物 の 間 の組成 で大 きな値 を示 し,ア モル フ ァ
ス相 を形 成す る
x=0.70の 組 成 で抵 抗 率 の平 均 が 700
μΩ一 の 最 大値 を示 した。 こ
`π
れ は ,固 溶体 を形成す る抵抗 薄膜体 (Ti一 N膜
大 きな値 で ある。
-51-
,TaN2膜 及び TiA′ 膜 )の 3倍 以上
470
一
聟 oo〓
︹■ ol●t ︺ h一写 一
(
100
300
290
200
170
o
200
200
lo0
Temperoture
図
4-l T10.47 F00.53膜
膜 生成 時 の 基板温度 Ts:(a}180℃
lK)
の温度変化 に 対 す る抵 抗率 の 変化
lb)250℃
●
加 熱 曲線
○
冷却 曲線 (図 Cは 加熱 曲線 も一 致す る)
-52-
300
帳)380℃
980
〔
o)
960
- 9430
E
0
0
:
920
■
ゝ
0
1001
200
300
>
"
3
に
{b)
820
800
780
0
100
200
丁emperalure
図
4-2 TiO,70 F00.30膜
300
(K)
の 温度 変化 に対す る抵抗 率 の 変化
膜 生成 時 の 基板温度 Ts:(a)250℃
,lb)380℃
● 加熱 曲線
○ 冷却 曲線 (図 bは 加熱 曲線 も一致す る)
-53-
800
● ・
・︲ ・
﹁ ト ニ●
︲ I
劃 JI .
●︱111︲︲ ■
ノ√
lH r
●F
i ll︲︲︱ I I t r
ノ
Q ゝ一〓 一
ち 覇 ●〓
。
。
。
。 。 。
2
4
6
t ︶
︹E o l C
ノ
0
0
20
40
60
80
100
Composil:● n l ot.・/.丁 il
図
4- 3 Tix― Fel― x合 金 膜 の 組 成 に 対 す る室 温
変化
膜厚 :5,000Å
-54-
(20℃
)で の
4-3-3
図
残 留 抵 抗 ρo
4-4に ,組 成 に 対 す る 液 体 ヘ リ ウ ム温 度 で の 抵 抗 率 ρo(残 留 抵 抗
)を 示 す 。
ρOは 金 属 及 び金 属 間化 合 物 での 組 成 で は小 さ な値 を示 す が ,そ れ らの 間 の 組 成 で は
,
の
急、
激 な増 大 を示 して い る こ とが わか る。 この こ とか ら Feと Tiの 電子 構 造 相違 と膜
の
構造 を 生 じ る原子 の 不 規 則 性 が電子散 乱 を増 大 させ 抵 抗 率 増 加 の 原 因 に な る も と考
ム
え られ る。 ア モ ル フ ァス 相 で は特 に組 成 原 子 の ラ ン ダ な配 列 に よる,電 子 散 乱が 大
きな抵 抗 率 を生 み 出す もの と思 われ る 。
4-3-4
抵 抗 率 ρ 一 ρ0
O+ρ Tで 表 わ
結 晶格 子 を形 成す る金 属 及 金 属 間化 合 物 の 抵抗 率 ρは ,一 般 に ρ=ρ
され る 〔3〕 。 こ こで ρOは ,フ ォ ノン に よる 電子 散 乱 に起 因す る抵抗 率 と考 え られ る 。
図 4-5に
,組 成 に対 す る抵 抗 率 ρ 一 ρoの 関係 を示 した 。格 子 散 乱 に起 因 す る
ρ一ρOは 金 属 及び TiFe2本 日とT iFe相 の二 つの 金属間化合物 で正の値 を示 し,結 晶格子が形
べ き点 は ,β ―Ti相 と α一Ti相 の
成 され て い る こ とに対応 して い る。 この 図 で 注 目す
一
混合膜 の 存 在 す る組 成領 域 で あ る。抵 抗 率 ρ一 ρoは 約 100ノ 哺 cmと 非 常に高 い値 を
示 してい る。 さ らに純 チ メ ンの ρ 一ρOよ り は るか に 大 き な値 で あ る こ とが わ か る 。
この 大 きな値 の ρ 一 ρoは ,β ―Ti相 の 格 子 散舌Lに 起 因 して い る もの と考 え られ る。
の
β―Ti相 の 電 気 的特 性 を測 定 で きた の は新 しい 実験 で あ る 。 また ,負 値 を示す 組 成
の
は いず れ もア モ ル フ ァス 相 に相 当 してい る こ とが第 3章 の 膜構造 の電子 回線折 結果
か らわか る。
4-3-5
抵抗温度係数 TCR
図 4-6に
, Ti成 分 の 多 い組 成領 域 で の抵 抗 温度 係 数 (TCR)の 値 を示 した。
TCRは -50℃
か ら 100℃ の 温 度 範 囲 で ,抵 抗 率 が 温 度 に よ り直 線 的 に 変 化 す る もの
と して 最 小 二 乗 法 に よ り傾 さを求 め ,室 温 での抵 抗 率 ρ300 を用 いて 計 算 した。
`
`
`
〆
-55-
ρ
T
一
d
一ρ
相 か らな る
d
1
純 チ タ ンの
/′1ヽ
TCR I
=端
{
P,n't- P zzt
100-(-50)
TCRは 約 3,000 ppm/℃ と非 常 に大 きな値 を と り,金 属 間化 合 物 TiFe
x=0.5の
組 成 の 膜 も TCRは 正 の 値 を示 し てい る 。 TCRは
ス 相 で構 成 され る膜 で 負 の 値 を と り,抵 抗 率 で 最 大 値 を示 した
成 で ,最 小 値 を と リ ー200
,
ア モ ル ファ
x=0,7に
相 当す る組
ppm/℃ の 値 を示 した 。 ア モル フ ァ ス 相 が負 の TCRを 示す
理 由 に つい ては ,い くつ か の 説 が あ る。
zimanの 液 体 金 属 の理 論 〔5,6〕
3π θ0
・
〆
ヽ
∫︲i
ρ
ここで
=
4ezhvpt kr,,
に よれ ば 抵抗 率 ρは 次 式 で 与 え られ る 。
.[tuu aK) lvfro l't<3dK
イ オ ンの pseudopOte ntialの フ ー リエ成 分
V国
α国
構 造 因子 の 共 役 二 乗 で 干 渉 関 数
θ0
原子 容
e
電子 の電荷
VF
フ ェル ミ速 度
kF
フ ェル ミ波 数
々
多 くの 液体金 属 の I VIKI 12, α国 の波 数 K依 存 性 は類似 してお り,個 の 金属 に
お け る電気抵抗 の 特長 は,積 分 の 上限 2kFの 値 が ど こに くるか で決 ま る。 図 4-7は
は
lv国 12ぉ
ょび α国 の K一 依 存性 を示す 。 自由電子近似 で あれば ,
2kF=2(3π
(e/α )/,o)1/3で 与え られ るか ら,抵 抗 の振舞 いは e/α (電 子価)に 強 く依存す る
こ とに なる。定性 的 にいえば, 2k Fが α国 の 第 一 ピー ク
(K=Kp)の 左側
(例 えば
1
価 金 属 )あ るいは右 側 (例 えば 3価 以上 の 金属 )に 位置す る場合 には ,温 度 の上 昇
(T2>Tl)と
ともに第 1ピ ー クは裾 を広げ るた め ,抵 抗 は増 大す るこ と になる。
2kFが α崎 の ピーク とほぼ 一 致す る場合
(例 えば
2価 金属 )に は ,温 度 の 上 昇 と共 に
ピー クは低下 し,抵 抗 へ の寄 与 は低下す る。 前者 は TCR>0と な り,後 者 す なわ ち
2kF=Kpが 満 され る ときには TCR<0と
なる。 さ らに この理 論 に よれば
の とき ρの 絶対値 は最大 とな る。 この理論 を Ti一
2KF=Kp
Fe系 合金 に適用す る場合 には,Ti
と Feの 電子価 が わか つてい なければ な らな い 。 ところが
2つ の原子 は ど ち らも遷移
金 属 で あ るた め組 成 の変化 に 伴 な い電 子構造が変 化す るこ とが 予想 され解 析 は非常 に
-56-
/
800
, ︲
: 600
1
C
t
L 、主 ン〓n一
〇0に
一︵
●0に 一●コ一一
400
200
20
40
compos:↑ :on
図
4-4
60
80
!00
lo↑ .・/.丁 i〕
Ti― Fe系 合金 膜 の 組 成 に 対 す る残 留 抵抗 率 ρOの 変 化
ヘ リウ ム温 度で の 抵抗 率 ρo(4K)
│
-57-
●
100
●
r
│
ヽ
ヽ
●
0
︻ E o l C t ︺ 50
Q lQ
.
●
-50
、
●
●
0
20
40
60
composit:● n
図
4-5 Ti―
100
lol.・/.丁 i〕
Fe系 合 全 膜 の 組 成 に 対 す る
抵抗 率 ρ一 ρOの 変 化
√
80
`
-58-
︲︲ ︲ ︲ ︲ ︲ ︲ ︲ 5
0
0
0
2 1 1
一
4-6 Ti一 Fe系 合金 膜 の組成 (0.5<X<1)に
図
対す る抵坑温度係数 TCRの 変化
-59-
100
90
80
70
60
0
_。
ヽ
0 0 0
0 0 0
0
●ト
0一
n●匡 卜● 一E●一
卜い000 0﹄コ一0﹂0﹂F﹄
︹y 、E na ︺ 、主>〓n一
0
0
0
3
0 0
Composit:on lo† .%Ti l
IV{K)12
al K)=l
K一
図
4-7
Z imanの 式 に現われ る被積分関数 IV(Kl 12
と αlK)の
K依 存性
α日 は温 度 の 上 昇 に 伴 い 点線 の よ うに 拡 が る 。
2k「 の 位 置 が
1原 子 あた りの 伝 導 電子 数 Z rC応 じて
図 中 に示 され て い る 〔7〕
Z :電 子 価
Kp:Kの
最大値
T:温
度
k「
:フ ェル ミ運 動 量
-60-
難 か し くな り,本 研 究 で は お こ なわれ なか った 。 一 般 に非 品質 合 金 の 伝 導 現 象 に 対 し
て ,こ の 試 み が い くつ か 報 告 され て い る 〔8,9,10〕 。 しか し,Mott〔
組 成領 域 に わ た つて
い と して ,
TCR<0の
11]は 幅広 い
領 域 が 存 在 す る こ とは Zimanの 理 論 で は説 明 で きな
S,p電 子 と d電 子 が 異 な った平 均
自 由 行 程 を もつ と仮 定 し,
s一 d相 互
作 用 に よる 液 体 遷 移 金 属合 金 の 電 気抵 抗 の理 論 を提 出 して い る 。 また Mooij〔 12]は
,
ラ ン ダ ム な原子 配 列 を もつ 遷 移 合 金 ア モル フ ァス で は電子 の 平 均 自由行程 が 結 晶金属
に 比 べ て 約 100分 の 1で あ り,電 子 は遷 移 金 属 に よ リ トラ ップ され ,こ れ が 伝 導電子
ィギ ー を必要 とす る ので ,TCRは 負 の 値 をもつ と述 べ て
に な る た め には ,活 性 化 エ ネ ノ
い る。 さ らlC, Oochranceら 〔13〕 は ア モ ル フ ァス 合金 の ρ 一 T依 存性 は ′π 型 が 多
く,KondO効 果 に よる トンネル 効 果 か ら,伝 導 電子 に 余 分 の 散 乱 機 構 を与 え ,温 度 が下 が
る と ともに電 気 抵 抗 が対 数 的 に増 大 す る と説 明 され ,現 段 階 で は Ti一
Fe系 ア モル フ
ァス 合 金 の 伝 導 機 構 を論 ず る ま で には至 って い な い 。
4-3-6
β―Ti相 を含む混合膜 の電気的性質
室温 で安定 な β―Ti相 の 電気的性質 を調 べ る こ とは,非 常 に興味の あ る と ころで あ
る。 図 4-3に
,Ti成
分 の 多 い組成領域 での 抵抗率 ρと過 剰抵抗 ρOの 詳 しい結果
を示 した ア モル フ ァス相が大 きな ρと ρOを 示 す 理 由は 4.3.5節 で述 べ た とお りで あ
る。 この 節 では,
0.83<x<1の 組成 で β―Tiホ ロと α―Ti相 が つ くる混 合膜 の 性質 に
つ いて検討 す る。 まず ,
X=0.33の 組成 の β一Ti単 一 相 の 過 剰抵抗 の 原因 を検討す る。
†
この組成 で βTiオ ロには 17 at.%の 鉄原子が固溶 しているが ,β ―Ti相 に固溶 した鉄原
子 の 不規則 分布が原 因 とな って起 こる過剰抵抗 ρexは ,ノ ル ドハ イ ムの 関係 式 〔3〕 で
表 わ され る 。
ρex=100'ρ
ここで,
*・
X(1-X)
μの 一 cm
(1)
ρ*は ,固 溶原子が l at.%増 加す ることにより上昇す る抵抗率 (μ θ一cm)
で あ る。
図
4-8
*を
ρ
か ら,x =0.83の 組 成 の β一Ti本 目の 実験値 ρ(ρ ex)を 使 って ,(1)式 か ら
求 め る と次 の よ うにな る。
† 付録参照
`
「
-61-
p
*:
18.4
P.A
(X=0.83)の
β―Ti相
- cm,/ at. %
*の 実験
ρ
値 が適 当 で あ るか を検討 す るために ,フ リー デ
ル の 総 和則 を用 い る 。す なわ ち,チ メ ン と鉄 の 電子 構造 はそれぞ れ 3d34 slと 3d6
4s2で ぁると仮定 して計 算す る と,17。
cm/at.%が 得 られ た。 この値 は実 験
Oμ ρ一
値 {2)と よ く一致す るこ とが わか る。 この結果 ,X=0.33の 組成 の β一Ti相 の 過剰抵抗
は ,β 一Ti相 に固溶 した鉄原子 に よる電子散乱 で あ ることが わか った 。
ノル ドハ イ ムの式 は図 4-5の 一 点 鎖線 の二 次 曲線 で示 され る。 0。 83<X<1の 組
成範 囲 で ρoの 実験値 は 明 らか に ,こ の 曲線か らはず れ ることが わか る。
0.83<X<1の 組成範 囲 で ,合 金膜 は α―Ti相
f´
と β―Tiの 混合 膜 で あ り,抵 抗 率 は
次式 で 表 わ され る。
ρex(X)=Σ ]ai ρ
α(Xi)十 Σ bjρ β(Xj)
こ こで , ぬ
(3)
(xi)と aiは そ れ ぞ れ ,組 成 Xiの α一Ti本 目の 抵 抗 率 と混 合 膜 に 占め る
α―Ti相 の 割 合 で あ る。 ま た ,
彎
(Xi)と bjは そ れ ぞ れ 組 成 Xjの
β一 Ti相 の 抵 抗
率 と混 合 膜 に 占 め る β一Ti相 の 割 合 で あ る 。 こ こ で ,前 章 の X回 線 折 の 結 果 か ら
,
0.83<X<1の 組成範 囲 で α一Tiオ ロの 組成 とβ一Ti相 の組成がそれ ぞれ Xi=1と
Xj=0.83と
み なされ るか ら,鱚 )式 は次 の よ うに簡単 に表わ され る。
ps)i
(x)
:
apt.(
xi :1 ) + bop ( xj :
0.s3 )
(4)
ここで, ρexの 実験値からρ
はそれぞれ40μ θ一cmと 300μ θ一cmで 与えら
αと′
シ
れ ,係 数 α
Jbの 間 には そ れ ぞれ 次 の 関係 が 成 り立 つ 。
a+b=1 , x=0.83b tt a
これ らの こ とか ら,組 成 に よる ρexの 変 化 は ,次 式 で 与え られ る 。
ρo(X)=-1.529X103x+1.569X103μ θ _cm
(5)
一 方 ,実 験値 か ら最小 二 乗法 で 求 めた一 次関数 は ,実 験誤差 内 で ,(5)式 に よ く一致
す る こ とがわか る。 以上 の 議論か ら,
α―Ti相
(X=1)と
0,83<X<1の
組成範囲 の Ti一 Feの 合金膜 は
,
β=Ti相 の二 つの 相 の混合膜 で ある こ とが結論 づ け られ た。
X回 線 折 の結果 か らは , 0.94<X<1の 組成範 囲 で β―Ti相 の 存在 は明確 で な いが
,
電気 的特性か らこの 組成範 囲で も β一Ti本 目が 存在 してい る と考 え る こ とが妥 当 で ある。
F
-62-
p
-fr
800
-Qr
,Oo
︵E o︲d■︸
600
h 主 > 〓 ∽葛 0 匡
`
400
`
`
`
ヽ
、
も
\
ρ(X〕 =10紫
{
200
50
60
70
80
Composi† ion {口
図
90
│.・/。
100
丁i… 〕
4-8 Ti― Fe系 合金膜 の組 成 (0.50<X<1.0)と
ρO(T=4K)及
び ρ
(T=293K)の 関係
一 点 鎖線 は β―Ti単 一 相 を形 成 す る X=0,83の 組 成 で の 抵 抗 率
の 値 を通 る ノル ドハ イ ムの 曲線 を示す 。
-63-
第
4章 の 参 考 文 献
1)N.Kurita,Y:Igasaki and H.Mitsuhashi :Jpn。 」.Appl,Phys.,21〔
2〕
(1982)287.
2)K.Ikeda and T,Nakamich : J.P hys,Soc.J pn。
, 30(1971)1504.
3)K.Ikeda, T.Nakamichi and M.Yamamoto : J.Phys.Soc.Jpn., 32
(1972)280.
4)N.F.Mott and H.Jones i The Theory of the Properties of・
Metals
and AHoys〔 Dover Publications, Inc.New
√
、
ヽ
York, 1956〕
.
5)C.Kittel : Quantam theOry of Solids〔 Wiley, New YOrk, 1963〕
.
6)J,M.Ziman :Phil.Mag.,6(1961)1013.
7)T.E.Faber and」
.M.Ziman i Phil.Mag.,11(1965)153.
3)G.Bush and H.J,Gintherodt :Solid State Physics, 29 Ed・
〔Academic Press, New York, 1974〕
235.
9)A.K.Sinka :Phys.Rev.Bl(1970)4541,
10Y.Ⅵ rascda and H.S.Chen i Phys.Stato Sol.(b), 87(1973)777.
lD S.Basak,R.Clarke and S.R.Nagel : Phys.Rev,,B2(1979)4278.
10N.F.Mott :Phil.Mag.,26(1972)1249.
10J・
Lり
H・
M00 ij :Phys.S tat,S ol.(a),17(1973)521.
R.W.Oochrance,R.H arris, J.0,S trttm-01son and M.J.Zuckerman i
Phys.R ev.Lett.,5(1975)676.
〆
-64-
フ リー デ ル ・ モ デ ル
付録
母金属 中
(Ti)に 不 純物 (Fe)を 入れ た とき,母 金属 の フ ェル ミ準位 は この過 程 で
変化 しな い こ とを示 す こ とが で きる。 不純物原子 が母 金属 の 原子 よ りZ個 だけ電子 を余
分の電子 を与え る とす る と,こ れが フ ェル ミ準位以 下 に新 し く生 ず る状態 の 数 で なけ れ
ば な らず ,そ の数 は 次 の 式 で与え られ る。
+1)
π2(2′
Z=
fl, imp
ここで ,π
δl=鶴 π
im p
tt irFlp
、 ′ /
鶴
か ら,
3π
2π
ヽ
1
υ
,
/11ヽ
(
imp
π imp
tt imp
切π
δl=― ―一
(2)
π imp
(1),(幼 式 か ら,
2
Z=―
(η +1)δ l
(3)
π
もっ と一 般 的に ,複 数 の位相 の ず れが 関係 してい る場合 に は,(3)式 は次 の よ うに 書 き
表 わ され る 。
Z=―
π
Σ (2ノ
+1)δ 』
に)
l
この 関係 を ア リー デ ル の 総 和 則 とい う。
フ リー デ ル の 総 和 則 を用 い て ,母 金 属 Tiに 不純 物
Feが l ati%入 りこむ こ とに よる極
低 温 (ヘ リウ ム温 度 )で の 抵抗 率 は (5)式 で 与 え られ る 。
p
Ca
T,
Po
-
poE (/+t )
:
4 tttl -
,^/
sinz
( dL- fl+I
at.%
だ
/
︲,
-65-
)
(5)
Ti及 び Fe原 の 電 子 構 造 は
3d3 4sl
Ti : ls2 2.s2 2p6 3s2 316
Fe
: l.st 2s2 Zpu
3s
2
3d6 4s2
3pu
S電 子 の 個 数 の 差 は ZO=1(′ =1), d電 子 の 個 数 の 差 は Z2=3(〃 =2)で
π
3
π
δ
O=百 Xl'δ 2=面 ×3=面 π
ヽ
3
、 ′
一
π
n
3
+
ノ
0
1
、 ′/
0
・
/′ 1ヽ
ヽ
一
-66-
π
`
一
- cm/ar,%
3
n
“
/ 1 \
,
+
π 一2
tT pQ
n
X
‐
〆
4
ρ
〓
_
第 5章
5-l
ア モ ル フ ァス相 の 構造 と電気 的性質 に お よぼ す加熱処理 効果
は じめ に
合 金 に 関 して ラ ン ダ ム な構 造 を工 学 的 に 扱 う よ うに な った の は ご く最 近 に な ってか ら
で あ る。 ア モ ル フ ァス 相 が 準 安 定状 態 で あ り,熱 と時 間 に よ り構 造 緩 和 を起 こ し,結 晶
化 してい くた め ,実 用 的 な立 場 か ら興 味 が とぼ しか った こ と もあ り,物 理 学 の 分野 で の
研 究 対 象 に しか な らな か った。 近 年 ,ア モ ル フ ァス の 製 作 技 術 の 発 達 に と もな い ,種 々
の 金 属 ア モ ル フ ァス が つ く られ る よ うに な った 。 ア モ ル フ ァス 相 の 評 価 方 法 も コ ン ピ ュ
F・
ー タ を用 い て ラ ンダ ム構 造 の 原 子 の 分布 状 態 を計算 で き る よ うに な り,合 金 ア モル フ ァ
ス の 諸 性 質 が 規 則 的 な 結 晶格 子 を もつ 金 属 や 合 金 と異 な る優 れ た性 質 を有 す る こ とが わ
か って きた 。 しか し,今 日 で もア モ ル フ ァス 状態 の 評 価 法 は まだ 確 立 され て お らず ,熱
に よる構 造 緩 和 ,構 造 変 化 に と もな う電 気 的 性質 の 変 化 ,従 来 の 回折法 を組 み合 わせ た
解 析が 使 われ て い る。
本 章 で は加 熱 処 理 に よるア モル ファス 相 の 構造 の 変 化 とそ れ に ともな う電気 的性 質 の 変
化 を調 べ る。 また ,示 差 熱 分析 に よる結 晶化 温度 の 測 定 結 果 を述 べ る。
5-.2
実験 方 法
試料 は ス パ ッメ リン ダ 法 に よ り作製 した 約 4μ mの 厚 さ の
い た。基 板 は ,こ れ ま で 使 用 した ガ ラス 基 板
(コ
x=0,70の 組 成 の もの を用
ー ニ ン グ 7740及 び テ ンパ ック ス ガ ラ
ス )の 他 に ,高 温 処 理 が 可 能 な サ フ ァイ ヤ ・ ガ ラス 及 び溶 融石 英 ガ ラ ス を用 い た。 加 熱
処理 は高真 空 の ベ ル ジ ャー 内 で カ ン タル 線 ヒー ター付 の ス テ ン レス 製 の 基 板 加 熱 板 を使
用 し,200℃ か ら 600℃ ま での 温 度 範 囲 で お こな った。 熱 処 理 後 の 膜構造 及 び電 気特 性
は ,室 温 まで徐 冷 し -50℃ か ら 100℃ の温 度 範 囲 で 測 定 した 。電 気 抵抗 測 定 の た め の 電
極 は ,金 の か わ りに ア ル ミニ ウ ム を使 用 し,加 熱 処 理 の 際 は と り去 つた 。
示差 熱 分析 は ,二 つ の 白金 ル ツボの 中 に ,一 方 は粉 体 の 試料 を 入 れ ,他 方 は標 準 試 料
として ア ル ミナ 粉 末 を入 れ ,一 つの 電 気 炉 の 中 で一 定 の 速 度 で 加 熱 した場 合 の 試料 の 発
熱 吸熱 に よる温 度変 化 か ら,相 の 状 態 の 変 化 を調 べ る方 法 を用 い た。 この た め ,試 料 を
-67-
粉状 にす る必要が あ るため, 4μ m程 度 の厚 さの膜 を ガラス基 板か ら機械 的 に■ll離 して
用 い た。電気炉 の 温度上昇 は , 5℃ /min及 び 10℃ /minの 速 度 で あ った。
5-3
実験 結 果 及 び 考察
5-3-1
図
ア モ ル フ ァス 相 の 結 品化 温 度
5-1は ,ア モ ル フ ァス 相 か らな る Ti Q70 Fe030ス
パ ツタ膜 と金 属 間化合 物
Ti Fe相 か らな る Ti Q45 FeQ55の 試 料 の示 差 熱 分析 結果 を示 す。
.試 料 は ガ ラス基 板
√
ヽ
の 破 片 を含 む こ とが 考 え られ るた め ,ガ ラス 基 板 の 示 差熱 分析 の 結果 を合 わ せ て 示 し
た 。縦 軸 に 標 準 試料 に対 す る試 料 の 温 度 変 化 を示 し,増 加 は 試 料 の 発 熱 反応 に 対応 し
,
減 少 は吸熱 反応 に対 応 して い る 。 ア モ ル フ ァス 相 では ,温 度 を下 げ て い くと 200℃ 付
近 か ら徐 々 に発 熱 反応 が起 こ り, 420℃ で 終 了す る こ とが わ か る。発 熱 反応 は ,試 料
の 構 造 が エ ン トロ ピーの 高 い 状 態か ら低 い 状 態 へ 遷 移す る 際 に生 ず る。 この た め ,ア
モ ル フ テス 相 は 200℃ か ら構 造 緩 和 を起 こ し, 420℃ で 安 定 な構 造 に遷 移 す る もの と
考 え られ る。 一 般 に合 金 相 の 相 変 態 は狭 い 温 度 範 囲 でお こ り,鋭 い ピー タ を示 す こ と
が 知 られ て い る 。 も し,ス パ ッタ膜 を基板 か ら争」
離 す る 際 の 歪 を緩 和 す るた め に起 こ
る反応 や酸 化 物 を つ くるた め の 反応 が原 因 で あ る とす る な ら,同 一 条 件 で 測 定 した
Ti Fe相 も発熱 反応 を示 して も よい は ず で あ るが ,図 に示 す よ うに ,温 度 変 化 はみ ら
れ なか った 。 ガ ラス 基板 も同様 に温 度 変 化 を示 さず ,遷 移 温 度 は 600℃ 以 上 で あ る と
考 え られ る。 Ti一
Fe系 の ア モ ル フ ァス 相 が 広 い 範 囲 で 構 造 緩 和 を お こす 理 由は よ く
わか って い な い 。 以 上 の 結 果 か らア モル フ ァス 相 の 結 晶温 度 は ,構 造 緩 和 の 終 了す る
約 420℃ で あ る と結 論 され た 。
5-3-2
加 熱 処 理 に よる ア モ ル フ ァス 相 の 構 造 変 化
§ 5-3-1で
ア モ ル フ ァス 相 の 結 晶化温 度 が 約 420℃ で ぎる こ とが わ か った 。 そ
こで ,膜 厚 3.8μ mの
T1070 FeQ30ス
パ ツタ膜 を真空 中 500℃ で 50 hrの 加 熱 処理 を
お こな った結 果 ,加 熱処 理 前 と加 熱 処 理 後 の X線 回折 パ タ ー ン を図 5-2に 示 す。 加
r´
-68-
Ti● .75Fe。 .30
卜﹁
s
u
ヽb
s
TiO.45Fe..55
r
Differentiol Thermol Anolysis
図
上か ら
X=0.7:ア
5-1
示差 熱 分析 結 果
モル フ ァ ス 相
X=0,45:TiFe相
ガ ラス 基 板 を紛 末 に して そ の 示 差 熱 分析 を お こ な った 結果
1
-69-
熱処 理 前 , 2θ 笙
42・
と 2θ =70° に
2つ の 幅広 い ピー ク を もつ ア モ ル フ ァス パ タ ー ン
を示 した が ,熱 処 理 後 ,鋭 い 回折線 を示 し,ス パ ッタ膜 が 結 晶化 した こ とが わ か る。
これ らの 回折線 は ,.面 間 隔 d=11.3Å の Ti2
Fe相 の もの で あ る と固 定 され た。
Ti2 Fe相 は X=0,66の 組 成 付近 に形 成 可能 な金 属 間化 合 物 で あ るが ,現 在 の と ころ
,
この 相 の 格 子 定数が 報 告 され て い るだ け で ,そ の 他 の 性 質 につ い て は 明 らか に され て
い な い 。 本 実験 で も,膜 厚 が lμ m以 下 で は ,X線 回折 法 で 固定 す る こ とは困 難 で あ
った 。
5-3-3
熱処 理 に よる電気的性質 の 変化
「
図
5-3に
§ 5.3.2で 用 い た Ti
07 FeQ3の ス パ ッタ膜 の 加 熱 処 理 前 と加 熱 処 理 後
の温 度 変 化 に対 す る抵 抗 の 変 化 を示 した 。加熱 処理 前 , ρ=1200 μρ―cmと 非 常 に
高 い抵 抗 率 を示 した ア モ ル フ ァス 相 は結 晶化 に と もな い ,減 少 し ρ=340
とな った 。抵 抗 温度 係数
TCRも -370pμ プ℃ 負 の 値 か ら, 420 ppm/℃
μρ一cm
と正 の値 を示
した 。
5-4
ま と め
Ti一 Fe系 合金 ス パ ッメ膜 は 70 at.%Tiの 組成 を中心 として形成 され るア モル フ ァス
相 で 高抵 抗 か つ抵抗温度係 数 の小 さな抵抗 素子が得 られた。そ の抵 抗 率 と抵抗温度係数 は
それぞれ , ρ=700μ ρ一cm,TCR=-200ppm/℃ で あ った。
ア モル フ ァス相 の結 晶化温度 は,約 420℃ で あ り, 100℃ ,100 hrの 熱処 理 で抵抗 率
の減少範 囲は 6%以 内 で あ つた 。 ア モル フ ァス相は結 品化温度 以上 で加熱処 理 をお こ な
うと,Ti2
Fe相 を含む結 晶相 を形成 した。
Ti― Fe系 合金膜 は ,金 属間化合物 の 存在す る X=0.3(TiFe),X=0.5(TiFe),
0.5<X<0.3(ア
モル フ ァス 相 )及 び ,X=0.83(β 一Ti相 )を 含 む組成 では二 相以上
が らな る混合膜 にな った。 0,83<X<1で は β―Ti相 と α―Ti相 の 混合膜 を形成 し
,
組成 Xに 比例 して抵 抗 率 が 減 少す る こ とがわか った 。
β一Ti相 は フ ォノン散 乱 に よる抵抗 率 が 約 100μ ρ一Cmと 高 い。 また ,17at.%の 鉄
-70-
を固溶 し, β一Ti相 の 過 剰抵 抗 は ,鉄 原 子 の 電子 散 乱 に よる こ とが わか った 。
r
/ギ
`
-71-
Ti2Fe{5‖ 〕1333〕
一
√ ヽ
Eコ .
● ﹄o ︺ 、主 ●E●一EH
︻ 0一一
丁i2Fe{42F)
Ti2Fe
{‖ │)
丁i2Fei331〕
Ti2Fe 1622〕
40
X―
図
5-2
60
r●
ソ Diffroction
80
20 {degr)
加熱 処理 に よ るアモ ル フ ァ ス 相 の 構 造 の 変化
加 熱 処 理 前 :ア モ ル フ ァス 相 (ハ ッチ を附け た 部 分 )
加熱 処 理 後
:Ti2 Fe相 を含 む 結 晶相
Tix二 Fel_x(x=0,7), t=3.8μ
加 熱 処 理条 件
真 空 中 , 500℃ ,50 hr
-72-
m
n
口)
〔
substrote temp : eooo c
t= 3.8 ,,
14.│
〇0配
0●E●一゛一
:4。
P = l2OOp0'cm
TCR"-S7opprn/T
0
^
[
︺
﹀.
0
50
Temper● lure
n
5
4。
0
C
c
・cm
ρ =340μ ■
50h
〇0に
00E●一゛一
4。
(bl
o9ing : 500°
50
●
0
50
Telmperoture ・ c
丁i..7‐ Fe..3
図
5-3
加熱 処理 に よ る アモ ル フ ァ ス 相 の 抵抗 率 の 変 化
(a)加 熱処 理 前 の ア モル フ ァス 相 を含 む膜
幅)加 熱処 理 後 の 結 晶化 した膜
Tix― Fel_x(X=0,7), t=3,8μ
加 熱処 理 条 件 :真 空 中
-73-
m
500℃ ,50hr
第
6章
論
結
Ti一 Fe系 合金膜 の作製法 (第 2章 )か ら次 の こ とが わか った 。
。細線 を用 い た複合 ター グ ッ ト上の細線 間隔 よ りも幅 の 広 い基板 を用 い る こ とに よ り組
成 の 均 一 な膜 が で きる。
。細線 複合 タ ー ゲ ッ ト法 に よ り Ti一
Fe系 合金膜 が全 組成 域 にわた つて 作 製 で きる。
O基 板上 での組 成分布 にか ぎ って ,基 板温度 50℃ ∼ 400℃ では基板温度 の 影響 を うけ な
レヽ。
Ti一
(
、
Fe系 合 金 膜 の 構造
(第
3章 )か らわ か っ た こ と Ti一 Fe(Xは 組成 )膜 につ い て
o (x( 0.25
o.zs(x(0.40
α一Fe相
0.80<x<0.4s
Ti Fe2オ ロ十 TiFe本 目
o.4E(x(o.bE
TiFe相
0.55<x<0.80
ア モ ル フ ァス 単 一 相
0.80<x<0.83
ア モルフ ァス相 十 β―Ti相
0.83<x<1
β一Ti相 +α 一Ti相
X:1
α一Fe相
+TiFe2相
(ア モ ル フ ァ ス 相 を含 む )
α― Ti相
か ら構成 され てい るこ とが わか った。
電気的特性か ら次 の こ とが わか った。
。x=0.70で ア モル フ ァス 相か らなる ス パ ッタ膜 は ρ=700μ ρ―cmで 最大値 を とり
,
TCRは -200 ppm/℃
ox=0,83で
で あ った。
β―Ti単 一 相 が で き,フ ォ ノ ン散乱 に よる抵 抗率 が 高 い こ とがわか った 。
ア モル フ ァス 相 の 加熱処 理 に よる変化か ら次 の こ とが わか った 。
。アモル フ ァス 相 の結 晶化温 度 は約 420℃ で あ った 。
。ア モル フ ァス相 は加 熱処 理
`約
500℃ )に よ り,結 品化 し,Ti2 Fe相 を含む結 晶膜 に
なる こ とがわか った。
│
-74-
謝
辞
本 研究 は ,1978年 4月 か ら 1981年 3月 まで 静 岡大 学 大 学 院電子 科 学科
博士課 程 電
子 材 料 科 学専 攻 に お い て行 な わ れ た もの で あ ります 。
本研 究 を行 な うに 際 し て,静 岡大 学電子 工学 研 究所
三 橋 廣 二 教授 に は終 始 適切 な御 指
導 と御助 言 を賜 わ り,公 私 rcゎ た ってぉ 世 話 い ただ い た こ とを こ こに 深 く感 謝 い た します。
ま た ,本 論文 の 作成 に 当 り ,島 岡 五 朗 教授 ,藤 村全 戒 教 授
,林 敏 也教授 ,藤 安 洋教授
,
熊 川征 司 助教 授 の 諸 先 生 方 に は ,多 忙 な 中 を親 切 に 内容 の 検 討 を してい た だ き二有意 義 な
助 言 を賜 わ りま した事 を深 〈感 謝 い た します 。
〔
また , 日頃 か ら実 験面 で ひ とか た な らぬ 御指 導 と適切 な御 助 言 を い た だ い た 伊 ケ崎泰 宏
助 手 ,親 切 にお 世 話 下 さ った 中村 康 夫 技 官 に深 〈感謝 い た します 。
さ らに ,透 過 型顕 微 鏡 の 使 用 に 際 して親 切 な御指 導 を い た だ い た 中西 洋 一 郎 助手 ,示 差
熱 分 析 で お世 話 い た だ い た 鈴 木 佳 子氏 に深 〈感 謝 い た します 。
また 日頃 か ら公私 lrcゎ た っ て貴 重 な助 言 を い た だ い た 斉 藤 順 雄 助 手 ,石 川 知 貝」氏 に深 く
感謝 します 。本研 究 を行 な うに 際 し,静 岡大 学電 子 科 学研 究 科 な らび に 電 子 工 学研 究所 の
諸 先 生 方や 多 くの 皆様 方 1/Cな に か と御世 話 に な つた こ とを ,こ こに 謹ん で 感謝 い た します。
なか ,本 論 文 は 1981年 4月
の 際 ,電 波 機 器事 業部
, 東京 芝 浦 電 気
(株 )1/C入 社 後 完 成 した もの で あ ります 。 こ
宇 治 義 郎 技 監 ,マ イク ロ波 開発部
大 友 元春部長 ,岡 野進課 長 の
寛 大 な る御 理 解 と亀 井 清雄 主 務 をは じめ とす る当 開発部 の 皆様 方 の 御協 力 が あ った こ とを
深 く感謝 します 。
1
また ,本 論 文 の 完 成 1/Cあ た り ,両 親 の 深 い理 解 と協 力が あ った こ と ,大 川 弘 ,雅 子夫 妻
の 協 力 が あ った こ と に 心 か ら感謝 します 。
最 後 に ,本 年 静 岡大 学 を退 官 され る恩 師 三 橋 廣 二 教 授 の 御 健 康 と今度 の 御 活 躍 を心 か ら
祈 る と と もに 同教 授 に重 ね て 感 謝 の 意 を表 す 次第 で す 。
-75-