インバウンド関連の価格上昇も頭打ちに

景気循環研究所レポート
インバウンド関連の価格上昇も頭打ちに
2016 年 2 月 26 日
16 年 1 月のコア CPI は前
年比横ばい
物価の停滞が続いている。16 年 1 月の消費者物価指数(生鮮食品を除
く総合=コア CPI)は前年比横ばいとなった。15 年 5 月以降、コア CPI
の前年比上昇率はマイナス 0.1%とプラス 0.1%の間で推移しており、反
転の兆しは依然として見受けられない。電気代やガソリン価格など、エネ
ルギー関連品目の値下がりが引き続きコア CPI を下押ししているが、エネ
ルギーや食料を除いた消費者物価指数(米国式コア CPI)の前年比上昇率
も、足元で縮小している。なお、比較的高い価格上昇率で推移してきた食
料(生鮮食品を除く)をみても、16 年 1 月の前年比上昇率は 2.1%と、15
年 12 月の 2.3%から 0.2%ポイント低下した。同品目の上昇率縮小は、15
年 7 月以来、6 ヵ月振りである。
これまでの食料価格の上昇については、天候不順等により原材料価格が
インバウンド消費の物価
押し上げ効果も及ばす
高騰した影響が大きい。加えて、これまで円安の進行に伴って急増してき
た訪日外国人観光客による消費(インバウンド消費)が、訪日客による購
入率が高い「菓子類」にも向かっていたため、菓子メーカーは原材料コス
トを商品価格に転嫁しやすかった面もあるとみられる。実際、訪日客によ
る購入率が相対的に高い 4 品目(宿泊料、一般外食、鉄道運賃、菓子類)
嶋中 雄二
景気循環研究所長
鹿野 達史
景気循環研究所副所長
の価格を合成した「インバウンド CPI」の前年比上昇率は 2%近傍に達し
ている(図 1、表 1)。但し、それでもコア CPI 全体の反転・上昇には繋が
っていない。
図 1. インバウンド関連品目の価格上昇率は相対的に高い
シニアエコノミスト
4
宮嵜
浩
シニアエコノミスト
03-6213-6573
(前年比、%)
3
インバウンドCPI
2
miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp
1
福田
圭亮
0
シニアエコノミスト
03-6213-2608
-1
fukuda-keisuke@sc.mufg.jp
本レポートは、嶋中雄二の見方に基づ
き、宮嵜・福田が執筆を担当しています。
-2
コアCPI
-3
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年、月次)
景気循環研究所
東京都千代田区丸の内 2-5-2
三菱ビルヂング
(注1)消費税率引上げの直接的な影響を除く。
(注2)コアCPIは消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)。インバウンドCPIは訪日外国人の購入率
が相対的に高い4品目(宿泊料、一般外食、鉄道運賃、菓子類)の加重平均値。
(資料)総務省「消費者物価指数」、観光庁「訪日外国人消費動向調査」をもとに三菱UFJモ
ルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
1
2016 年 2 月 26 日
円高進行なら一段の
足元では、訪日客の「購入率」上位品目のみならず、「購入者単価」が高
CPI 下押しも
い品目の価格上昇率も縮小している(表 1、図 2)。好調なインバウンド消費
も、現時点では、デフレ脱却に十分に活かされておらず、今後仮に円高が進
行する場合には、CPI の下押し要因になりかねないといえる(図 3)。
表 1. コア CPI とインバウンド CPI の最近の動き
コア
CPI
15年5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
16年1月
インバウンド
CPI
0.1
0.1
0.0
-0.1
-0.1
-0.1
0.1
0.1
0.0
2.0
2.3
2.2
2.5
2.2
2.3
2.5
2.1
2.1
購入率の高い品目
(前 年比 、%)
購入者単価が高い品目
飲食費
菓子類
鉄道など
宿泊料金
カメラなど
電気製品
服など
(76.3%)
(65.0%)
(53.8%)
(51.7%、6.1万円)
(6.4万円)
(4.2万円)
(3.9万円)
4.9
5.9
5.7
6.0
4.3
3.8
2.7
2.4
1.3
-6.1
-5.0
-2.8
1.5
1.9
2.2
4.1
5.7
3.5
2.0
2.2
2.2
2.4
2.3
2.2
2.3
2.4
2.4
1.4
1.8
1.8
1.9
1.7
1.7
1.7
1.7
1.5
3.9
3.9
3.1
4.1
4.0
4.8
4.9
4.7
4.5
0.1
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
3.5
3.9
4.9
4.5
3.4
2.4
4.1
1.0
1.9
(注1)インバウンドCPIの定義は図1注を参照。
(注2)カッコ内の数値は15年10-12月期の購入率および購入者単価。
(注3)CPI構成割合で加重平均して算出。飲食費はCPI一般外食、鉄道などはCPI鉄道運賃(JR+JR以外)、電気製品はCPI家事用耐久財。
時計はCPI腕時計。服(和服以外)はCPI洋服。
(資料)総務省「消費者物価指数」、観光庁「訪日外国人消費動向調査」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
図 2. インバウンド関連の高額品でも価格上昇ペースがやや鈍化
16
12
(前年比、%)
宿泊料金
服(和服以外)・かばん・靴
電気製品
8
4
0
-4
-8
カメラ・ビデオカメラ・時計
-12
14
15
16
(年、月次)
(注)カメラ・ビデオカメラ・時計と服(和服以外)・かばん・靴はCPI構成割合で加重平均して算出。
電気製品はCPI家事用耐久財。時計はCPI腕時計。服(和服以外)はCPI洋服。
(資料)総務省「消費者物価指数」、観光庁「訪日外国人消費動向調査」をもとに三菱UFJモ
ルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
図 3. ドル・円レートと訪日外客数の関係
40
30
(前年比、%)
(前年比、%)
ドル・円レート(左目盛)
60
円安・外客増
40
訪日外客数(右目盛)
20
20
10
0
0
-10
-20
-30
-40
-20
10円の円安・ドル高で、2014年の訪日外国人数は
38.5 万人増加
-40
円高・外客減
-60
85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (暦年)
(注1)16年のドル・円レートは年初から直近までの平均値、16年の訪日外客数は1月値をもとに試算。
(注2)ドル・円レートの1%上昇に伴う訪日外国人数の増加率は0.36%。訪日外国人の短期的変動を先進国GDPと
ドル・円レートで説明する回帰分析(誤差修正モデル)をもとに算出。
(資料)日本政府観光局「訪日外客数・出国日本人数」、日本経済新聞社資料などをもとに
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。
2
(以
上)
みやざき
ひろし
(16.2.26 宮嵜
浩)
2016 年 2 月 26 日
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引業協会
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巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。
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