「考える音読」で創る文学の授業 『海の命』6年(光村図書) 山﨑 可織@山口県長門市立深川小学校 1 はじめに どの子も楽しく参加できるから、全員が自信をもって学べるようになる。これが、 「考え る音読」の良さだと思います。 「このときの主人公はどんな気持ちでしょう?」と発問した 場合、いつも決まった子が発言してしまっていませんか。それを打破するための活動が、 「考 える音読」です。 「ここをどのように読むといいだろう?」と問います。これだと、書かれ ていることを読むので全員参加が可能です。自分の考えを声にのせて読むだけで表現する ことができます。今回は文学作品「海の命」の実践を通じて、「考える音読」について紹介 したいと思います。 2 「色彩語置き換え読み」で、作品のイメージを読む 情景表現や色彩語には、作者の思いが隠されています。 本 文 太一は海草のゆれる穴のおくに、青い宝石の目を見た。海底の砂にもりをさして 場所を見失わないようにしてから、太一は銀色にゆれる水面にうかんでいった。息を吸って もどると、同じ所に同じ青い目がある。ひとみは黒いしんじゅのようだった。 刃物のような歯が並んだ灰色のくちびるは、ふくらんでいて大きい。 太一の心情が表れていますが、説明しても分かりにくいところもあるので、色をシャッ フルさせて音読してみます。 し か け 文 太一は海草のゆれる穴のおくに、灰色の宝石の目を見た。海底の砂にもりをさして場所を 見失わないようにしてから、太一は黒色にゆれる水面にうかんでいった。息を吸ってもどる と、同じ所に同じ灰色の目がある。ひとみは白いしんじゅのようだった。刃物のような歯が 並んだ青い宝石ようなくちびるは、ふくらんでいて大きい。 子どもたちは、おかしいことに気づきますが、あえてもう一度音読してみます。もう、 子どもたちは言いたくてたまらない状況です。 C「灰色の宝石って、輝いてなさそう。 」 T「どうして輝きがいるの?」 C「やっと見つけたから、うれしいんだよ。」 T「うれしさを宝石で例えたのですね。」 T「白はお祝い、黒は喪を C「白いしんじゅってお祝いの時につけるもの?」 イメージさせますね。 」 C「白い眼って死んでいるみたいだけど・・・」 C「刃物のような歯って言っているくらいだから C「喜びが恐怖に 怖いって思っているんじゃないのかな。 」 置き換えたことで、色の意味するところが見えてきたようです。 変わったんだね。」 3 「クライマックス読み」で、作品の論理(つながり)を読む 中心人物の気持ちの高まりに合わせて音読することで、クライマックスをつかむことが できます。主題にもかかわる大切なところです。 「『太一の気持ち』が一番高まるのは、どの文でしょうか。クライマックスだと思う文を、 立ちながら音読しましょう。 」 ①興奮していながら太一は冷静だった。 ②これが自分の追い求めてきたまぼろしの魚、村一番のもぐり漁師だった父を破った瀬 の主かもしれない。 ③太一は、鼻づらに向かってもりをつき出すのだが、クエは動こうとはしない。 太一は永遠にここにいられるような気さえした。 ・・・・・・。 ④この大魚は、自分位殺されたがって・・・こんな感情になったのは初めてだ。 ⑤水の中で太一はふっとほほえみ、 ・・・クエに向かってもう一度えがおを作った。 ⑥「おとう、ここにおられたのですか。また会いに来ますから。」 ⑦こう思うことによって、太一は瀬の主を殺さないで済んだのだ。大魚はこの海の命だ と思えた。 ※ この後に主題も考えさせたかったので、②の文を入れました。クラスの実態に応じて 選択文は、もっと焦ってもいいと思います。 C「①、②はハラハラするけど、クエを打つか打たないかが一番のメインだと思う。」 C「確かに、①、②、③は、まだ早すぎだね。」 C「逆に、⑦はおしまい。ってかんじで遅すぎのように感じるようね。」 C「かたき討ちしたかったクエをおとうと呼んだ⑥かな。」 C「クエを殺さないと一人前になれないと思っていたけど、殺さないことで、おと うを越えることに気づいた⑤だと思う。 」 クライマックスを考えながら音読させることで、主題も見えてきました。 4 おわりに 子どもの発言は急には増えないかもしれません。しかし、目的をもって音読することで、 授業に参加し、なかなか説明はできないのだけど、感覚的に「おかしい。 」 「いいかも。」を 感じることができます。友だちの考えを聞き、 「僕が感じたおかしいは、そういうことだ!」 「私の言いたかったことはそれに近い。 」と共感できる意見を、授業の終末に自分の言葉で 表現する機会をもたせることで、 「わかった。できた!」を実感させていけるのです。
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