「通貨及び金融の調節に関する報告書」概要説明

「通貨及び金融の調節に関する報告書」概要説明
日 本 銀 行 総 裁
黒
──
田
東
彦
平成 28 年 2 月 18 日、参議院財政金融委員会
(はじめに)
日 本 銀 行 は 、毎 年 6 月 と 12月 に「 通 貨 及 び 金 融 の 調 節 に 関 す る 報 告
書 」を 国 会 に 提 出 し て お り ま す 。本 日 、わ が 国 経 済 の 動 向 と 日 本 銀 行
の 金 融 政 策 運 営 に つ い て 詳 し く ご 説 明 申 し 上 げ る 機 会 を 頂 き 、厚 く 御
礼申し上げます。
(わが国の経済金融情勢)
最初に、わが国の経済金融情勢について、ご説明申し上げます。
わ が 国 の 景 気 は 、輸 出・生 産 面 に 新 興 国 経 済 の 減 速 の 影 響 が み ら れ
る も の の 、企 業 部 門 ・ 家 計 部 門 と も に 所 得 か ら 支 出 へ の 前 向 き の 循 環
メ カ ニ ズ ム が 作 用 す る も と で 、緩 や か な 回 復 を 続 け て い ま す 。先 行 き
も 、国 内 需 要 が 増 加 基 調 を た ど り 、輸 出 も 、新 興 国 経 済 が 減 速 し た 状
態 か ら 脱 し て い く こ と な ど を 背 景 に 、緩 や か に 増 加 す る も と で 、わ が
国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられます。
物 価 面 を み る と 、生 鮮 食 品 を 除 く 消 費 者 物 価 の 前 年 比 は 、0 % 程 度
と な っ て い ま す 。も っ と も 、生 鮮 食 品 ・ エ ネ ル ギ ー を 除 く 消 費 者 物 価
の 前 年 比 は 、 27か 月 連 続 で プ ラ ス を 続 け 、 最 近 で は + 1.3% ま で 上 昇
す る な ど 、物 価 の 基 調 は 着 実 に 改 善 し て い ま す 。先 行 き 、生 鮮 食 品 を
除く消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面
0 % 程 度 で 推 移 す る と み ら れ ま す が 、需 給 ギ ャ ッ プ の 改 善 や 中 長 期 的
な 予 想 物 価 上 昇 率 の 上 昇 を 背 景 に 物 価 の 基 調 は 着 実 に 高 ま り 、「 物 価
安 定 の 目 標 」で あ る 2 % に 向 け て 上 昇 率 を 高 め て い く と 考 え て い ま す 。
原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にた
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て ば 、2 % 程 度 に 達 す る 時 期 は 、2017年 度 前 半 頃 に な る と 予 想 し て い
ます。
(金融政策運営)
こ の よ う に 、メ イ ン シ ナ リ オ と し て は 、わ が 国 経 済 は 基 調 と し て 緩
や か に 拡 大 し 、消 費 者 物 価 の 前 年 比 は 2 % に 向 け て 上 昇 率 を 高 め て い
く と 考 え て い ま す が 、年 初 来 、原 油 価 格 の 一 段 の 下 落 に 加 え 、中 国 を
はじめとする新興国・資源国経済に対する先行き不透明感などから、
金 融 市 場 は 世 界 的 に 不 安 定 な 動 き と な っ て い ま す 。こ の た め 、企 業 コ
ン フ ィ デ ン ス の 改 善 や 人 々 の デ フ レ マ イ ン ド の 転 換 が 遅 延 し 、物 価 の
基調に悪影響が及ぶリスクが増大しています。
日 本 銀 行 は 、こ う し た リ ス ク の 顕 在 化 を 未 然 に 防 ぎ 、2 % の「 物 価
安 定 の 目 標 」 に 向 け た モ メ ン タ ム を 維 持 す る た め 、先 月 、「 マ イ ナ ス
金 利 付 き 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」を 導 入 し ま し た 。日 本 銀 行 当 座 預 金 金
利 を マ イ ナ ス 化 す る こ と で イ ー ル ド カ ー ブ の 起 点 を 引 き 下 げ 、大 規 模
な 長 期 国 債 買 入 れ を 継 続 す る こ と と あ わ せ て 、金 利 全 般 に よ り 強 い 下
押 し 圧 力 を 加 え て い き ま す 。国 債 の イ ー ル ド カ ー ブ は 、「 マ イ ナ ス 金
利 付 き 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」の 導 入 以 降 、低 下 し て お り 、 政 策 効 果 は
現 れ て い ま す 。今 後 、 そ の 効 果 は 、実 体 経 済 や 物 価 面 に も 、着 実 に 波
及していくものと考えています。
日 本 銀 行 は 、2 % の「 物 価 安 定 の 目 標 」の 実 現 を 目 指 し 、こ れ を 安
定 的 に 持 続 す る た め に 必 要 な 時 点 ま で 、「 マ イ ナ ス 金 利 付 き 量 的 ・ 質
的 金 融 緩 和 」 を 継 続 し ま す 。今 後 と も 、 経 済 ・ 物 価 の リ ス ク 要 因 を 点
検し、「物価安定の目標」の実現のために必要な場合には、「量」・
「 質 」・「 金 利 」の 3 つ の 次 元 で 、追 加 的 な 金 融 緩 和 措 置 を 講 じ ま す 。
ま た 、国 際 金 融 市 場 で は 、こ こ に き て 、世 界 的 に 投 資 家 の リ ス ク 回
避 姿 勢 が 過 度 に 広 ま っ て い ま す 。日 本 銀 行 と し て は 、国 際 金 融 市 場 の
動きが、わが国の経済・物価にどのような影響を与えるかについて、
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しっかりと注視していく方針です。
ありがとうございました。
以
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上