表面基礎化学と触媒開発の融合 - つくば物質科学週間 2013

物質工学域研究紹介
表面基礎化学と触媒開発の融合
中村表面化学研究室 実験室 総研 B0121, 総研 B0424,etc
教員名 中村 潤児(教授)総研 B308、 近藤 剛弘(講師)総研 B307
1. はじめに
中村研究室では表面化学(科学)と触媒開発
(技術)を融合し,社会的ニーズの高い環境エ
ネルギー技術に貢献することを目指して研究
を行っています.カーボンナノチューブやグラ
フェンなどの新しい炭素材料を用いて,二酸化
炭素からメタノールに室温で変換する触媒の
開発や 固体高分子形燃料電池の白金代替触媒
の開発に,挑戦しています.表面化学において
は原子分解能での顕微鏡観察や電子分光計測
など最先端計測を駆使して,炭素の化学的性質
を原子レベルで調べています.これは新しい化
学分野の開拓です.未来の環境に調和する社会
に大きく役立つと考えています.
リットを持ちます.通常の電極触媒では Pt 粒子
の平均径が約 2~5 nm であり,表面積は 40~80
nm2 です.したがって普通よりも 2,3 倍大きな
活性となります.さらに Pt サブナノクラスター
は Pt とグラフェンが弱く結合することに起因
して,通常の Pt 以上の触媒性能を示すことがあ
ります.原理的には,燃料電池における Pt の使
用量を 3 分の 1 程度減らせることになります.
このことは燃料電池普及にも関わり大変魅力
的です.Pt は 1g 当たり 4000 円程度と高価です
が,炭素は資源豊富な元素なので安価に作れる
表面基礎化学と触媒開発の融合
~ 基礎科学の成果を社会的ニーズへ還元 ~
触媒開発
表面化学
融
合
社会のニーズに貢献
エネルギー・資源・環境問題の解決

CO2
NOx
H2
H2O
燃料電池車
家庭用燃料電池
2. 最近の研究内容
最近の中村研究室の研究成果としてグラフ
ェンに Pt を担持すると直径が 1 ナノメートルよ
りも小さいサブナノメートルの Pt クラスター
が多数生成することを見出し,その生成メカニ
ズムを明らかにしたことが挙げられます.最初
の論文は 2009 年に発表いたしましたが,2013
年 5 月現在で 300 回以上引用されており,大変
注目されています. Pt サブナノクラスターを
構成する Pt 原子数はたかだか 20 個ほどです.
それ以下のものもあります.このようにクラス
ターが小さくなると,量子サイズ効果も出てき
ます.Pt サブナノクラスターは Pt の表面積が
170m2/g と著しく大きく,触媒として大きなメ
CO2から
メタノールへの室温変換
中村研の研究開発例 : なぜ窒素を添加した炭素が高価な白金触媒の性質を持つかを解明し 触媒開発!
研究開発 窒素を添加した炭素が高性能触媒となる
基礎科学研究 原子レベルで炭素の表面を観察・分光
窒素を添加することで炭素の性質が変化!
なぜか?
メカニズムは?
窒素を添加させると
高性能触媒に!
N
より良い
触媒に!
安価な炭素の新材料:グラフェンを利用
(2010年にノーベル物理学賞を受賞)
窒素を添加したグラフェン
ピリジン型窒素
融合
通常の炭素
燃料電池の白金代替触媒材料を実現させる
窒素を添加した炭素
Phys. Rev. B 86, 035436 (2012)
中村研の最近の発見例
(1)安価な炭素が高価な白金の性質を変えることを発見!
Nano Lett. 9, 2255 (2009)
白金触媒の使用量の低減が可能になった!
カーボンナノチューブ
グラフェンシート
dI/dV (arb. units)
Chem. Commu, 840 (2004)
Catal Today. 90, 277 (2004)
グラフェンにPtを担持すると1nm以下の
Ptクラスターが多数生成することを発見
K-free
2009年に発表した
論文が300回以上
も引用され
大変注目されている
ものと期待されます.たとえば多層カーボンナ
ノチューブは 1g 当たり 10 円程度まで安価にな
っています.このように安い炭素材料が高価な
白金を活性にすることは非常に魅力的なこと
と考えています.
私たちはこのような触媒開発を進めると同
時に,例えば Pt サブナノクラスターの場合には,
なぜ Pt サブナノクラスターが生成し,なぜ高い
触媒活性を示すのかというメカニズムを表面
基礎化学研究によるアプローチで解明する研
究を同時に行っています.このような表面化学
と触媒開発の融合により社会のニーズに貢献
する技術を開発すると同時に,広く一般化した
新しい概念を構築することを目標として日々
研究活動を行っています。
印可した際に出現する特異な
8
2
0.2
3
7
4 5 6
-600 -400 -200
0
ランダウ準位がカリウムをドープ
200 400 600
300
0
-300
-600
-900
1
2
3
4
56
したグラファイトにおいて
無磁場下でも出現することを発見
600
7
8
新しい化学反応性の制御方法につながる発見
-1200
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0
n
K-dope
2004‐2008年の
引用件数でTop 50入りを果たす
画期的な研究成果!
グラフェンに垂直に磁場を
1
0.4
Sample bias (mV)
K-HOPG
J. Power. Sources 196, 110 (2010)
J. Phys. Chem. C 116, 22947 (2012)
J. Phys. Chem. C 117, 3635 (2013)
50nm
0.6
0.0
K-free domain
STS peak energy (meV)
カーボンナノチューブにPtを
担持すると触媒活性向上!
(2)無磁場下で出現するランダウ準位の発見!
Landau levels without
magnetic field
Nature Comm. 3, 1068 (2012)
連絡先と担当授業
中村 潤児 教授
TEL029-853-5279
e-mail [email protected]
(学類)化学 IA、化学 IB、触媒・工業化学
(大学院)触媒化学特論
近藤剛弘 講師
TEL029-853-5934
e-mail [email protected]
(学類)電磁気学 III、応用理工学基礎実験
(大学院)表面化学概論
もっと知りたい方は以下の
研究室ホームページをご覧ください!
http://www.ims.tsukuba.ac.jp/~nakamura_lab/
平成 25 年度 中村研究室メンバー