骨盤内炎症性疾患 (PID; Pelvic Inflammatory Disease) 産婦人科 脇本尚子 まず,解剖をおさらい… 子宮 卵管 卵巣 腟 “腹痛”……婦人科疾患の場合 • 妊娠に関連するもの 異所性妊娠,流産 • 腫瘍に関連するもの 卵巣腫瘍破裂,卵巣腫瘍茎捻転 • 感染に関連するもの 骨盤内炎症性疾患 • その他 卵巣出血,子宮内膜症,子宮筋腫,月経困難症など 骨盤内炎症性疾患 (PID; Pelvic Inflammatory Disease) 骨盤腹膜を含む子宮,付属器の炎症性疾患の総称 • 子宮付属器炎 • 骨盤腹膜炎 • 付属器(卵巣・卵管)膿瘍 • ダグラス窩膿瘍 危険因子 ① 若年 ② 複数の性的パートナー ③ 子宮内避妊器具の挿入 ④ PIDの既往 ⑤月経 骨盤内炎症性疾患 (PID; Pelvic Inflammatory Disease) 【症状】 • 下腹部痛 • 発熱 • 不正性器出血 • 性交時痛 • 帯下の増加 • 右上腹部痛 (Fitz-Hugh-Curtis症候群発症時) 骨盤内炎症性疾患 (PID; Pelvic Inflammatory Disease) 【診断基準 〜産婦人科診療ガイドライン 2014〜】 《必須診断基準》 1. 下腹痛,下腹部圧痛 2. 子宮/付属器の圧痛(内診) 《付加診断基準》 1. 体温≧38.0℃ 2. 白血球増加 3. CRP上昇 《特異的診断基準》 1. 経腟超音波やMRIによる腫瘍像確認 2. ダグラス窩穿刺による膿汁の確認 3. 腹腔鏡による炎症の確認 骨盤内炎症性疾患 (PID; Pelvic Inflammatory Disease) 【治療】 ① 急性炎症の治療 ② 後遺症(不妊,子宮外妊娠,慢性骨盤痛)の予防 起炎菌: クラミジア,淋菌, グラム陰性桿菌(大腸菌),嫌気性菌,緑膿菌など 【経口薬治療】 例) アジスロマイシン 1g+レボフロキサシン 500mg/day+メトロニダゾール 500mgx2/day 【経静脈薬治療】 ✳︎ 注射用セフェム薬 例) セフトリアキソン 1-2g/day 今回の症例は… 骨盤内炎症性疾患 (PID; Pelvic Inflammatory Disease) 骨盤腹膜を含む内性器(子宮,付属器)の炎症性疾患の総称 • 子宮付属器炎 • 骨盤腹膜炎 • 付属器(卵巣・卵管)膿瘍 最も重篤なPIDのひとつ!! • ダグラス窩膿瘍 危険因子 ① 若年 ② 複数の性的パートナー ③ 子宮内避妊器具の挿入 ④ PIDの既往 ⑤月経 付属器(卵巣・卵管)膿瘍 …TOA; tubo-ovarian abscess • 画像上,膿瘍形成を認める. 抗生剤などの保存的治療にしばしば抵抗性 • グラム陰性桿菌や嫌気性菌を主体とした混合感染 クラミジアや淋菌が起炎菌となることは少ない. • 破裂および敗血症を合併した際の救命率は25〜50% 付属器(卵巣・卵管)膿瘍 …TOA; tubo-ovarian abscess 【保存的治療】 ✳点滴静注 アンピシリン 2g 6時間毎 +クリンダマイシン 900mg 8時間毎 +硫酸ゲンタマイシン 初回投与 2mg/kg/body (2回目以降 1.5mg/kg/body) 抵抗性の場合には… 外科的介入 (ドレナージ,子宮・付属器摘出術) 救急外来で女性の腹痛を診た場合… バイタルサイン,炎症所見 問診(妊娠の有無),画像 緊急疾患の除外 婦人科疾患もお忘れなく!
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