だがしかし短編 ID:76262

だがしかし短編
クレモリス菌FC株
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︻あらすじ︼
電車に揺られながら唐突に思いついたネタをノリと勢いで書き上
げたモノ。ある意味、主人公最強モノです。
目 次 だがしかし │││││││││││││││││││││││
1
だがしかし
今日も今日とて、のどかな田園風景の中にぽつんと佇むシカダ駄菓
子では、木製のエアコンがガタガタと、今にも壊れそうな音を出しな
がら冷風を送り出している。外は絶賛真夏日で、僕なら外に出る気す
ら起こらないよ、と鹿田ココノツは頬杖を付きながら独り言を呟い
た。
しかし外がどれだけ暑い真夏日であろうと、そのようなことは我関
せずの態度の子供たちは、虫とりやら川遊びやらで元気に遊びまわる
のだ。成長とともにインドア派と化したココノツには想像もつかな
ココノツくん
﹂
い世界だった。ふわ、と欠伸をする。
﹁来たわ
﹂
?
いなら⋮、くっ殺せ
だ。ホタルさんなんかに負けたりしない
駄菓子屋を継がせるぐら
からないが、分かって貰うまで言うしかない。気持ちは正に女騎士
ココノツは毅然な態度でNOを突き付ける。正直、何度言ったか分
﹁いや、だから駄菓子屋は継ぎませんって、漫画家になります﹂
た。だがしかし、いくらホタルが可愛かろうと駄菓子屋は継げない。
人のくせにやることがいちいち可愛いなチクショウ、とココノツ思っ
ホタルは口を尖らせてジト目になってなじるように言う。残念美
﹁やれやれ⋮、そんな体たらくじゃ駄菓子屋は継げないわよ
ノツのだらーっとしている様子を見て眉をひそめてこう言った。
の人はなんでこんなに元気なんだろう、と思う。一方、ホタルはココ
ココノツは死んだ魚のような目でホタルを眩しそうに眺めた。こ
﹁こんにちは。こんなに暑いのに元気ですねー⋮﹂
残念美人、そう枝垂ホタル、その人である。
スライドして颯爽と登場したのは、腰に手を当てドヤ顔をする紫髪の
があった。ピシャッという鋭い音を響かせながら、スライド式の扉を
のんびりとした時間が流れていたシカダ駄菓子に突然の来客の姿
!
!
﹂
じゃあ早速未来の9代目であるココノツくん
に駄菓子バトルを申し込むわ
!
﹁そうね、その意気よ
!
!
1
!
ス ルー
しかしホタルは意に介した様子もなく両手を腰にあてて踏ん反り
返ってこう言い放った。あれ⋮、もしかしてこれは無視という奴なの
だろうか、ココノツは狼狽した。
︵あ、ありのまま今起こった事を話すぜ ﹃おれは奴に駄菓子屋は継が
﹂
突然ジョ●ョみたいな劇画タッチになっちゃってココノツくん
﹁ハッ
僕は一体何を﹂
どうしちゃったの
﹁
かった⋮。頭がどうにかなりそうだった⋮︶
いるのか、わからねーと思うが、おれもどういうことなのかわからな
子バトルとかいう意味の分からないモノを挑まれた﹄な、何を言って
ないと言ったのにいつの間にか継ぐことになっていた﹄﹃しかも駄菓
!
﹂
?
僕漫画家になるってちゃんと
!
﹁細かい事じゃないですってば
僕の人生に関わる問題です
⋮⋮は
!
る。ホタルはしたり顔になった。
!
﹁えっと、あ、はい﹂
﹁ジャーン、きなこ棒よ
﹂
きっと何かとんでもないものなのだろう。ホタルが口を開く。
ゴクリ、とココノツが唾を飲み込む。ここまで引っ張ったのだから
﹁ふふーん、よくぞ聞いてくれました。今日のお題は⋮
﹂
タル相手に無駄だと悟ったか、ずっと気になっていた疑問をぶつけ
ホタルの物言いに強く抗議する姿勢を見せるココノツだったが、ホ
あ、所で駄菓子バトルってなにするんですか﹂
!
﹁うるさいわねえ、男の子なんだから細かい事は気にしないの﹂
を吐いてやれやれ、といったポーズを作ると、こう言う。
気を取り直したココノツがホタルに食い下がる。ホタルはため息
言いましたよね
﹁いやいや、意味が分からないですよ
しなければいけないから危ない所だった。間一髪である。
の愛嬌のある顔に戻る。これ以上は原作カテゴリにジ●ジョを追加
ホタルに呼びかけられてココノツがポル●レフのような顔から元
!?
不満気な顔をする。
ココノツは反応に困ってコミュ障のような返事をした。ホタルが
!
2
?
?
﹂
﹁なによ期待はずれみたいな顔しちゃって。今日はきなこ棒を如何に
きなこを落とさずに食べられるか勝負よ
﹁えっと、ホタルさん出口はあちらです﹂
駄菓子バトルしてくれた
ココノツがホタルの背中を押して出口へ向かわせようとする。ホ
ちょっとまってココノツくん
タルは踏ん張って慌ててこう言った。
﹁わーわー
ら私が大事にとっといたアレ、あげるから
﹂
そ
高校生鹿田ココノツ。
ココノツがぴたりと動きを止める。大事にとっといた、アレ⋮
れってファーストキスとか︵自主規制︶とか
?
﹁あ、受けてくれるのね
そんなにガリガリ君の当たり棒が欲しかっ
ココノツの意識が鮮明になる。別の人格が浮上してくる。
︵あっ、やばい。最近ご無沙汰だったから油断した⋮︶
ードクン、と血が体の芯に集まる感覚がした。
ホタルのあられもない姿を思い浮かべた。
ろん性欲だって人並みにはあるし、そういう願望もある。ココノツは
例え草食系な見た目をしていようは中身は健全な男子である。もち
!?
を持った。
﹁ココノツくん⋮
﹂
・・・
ルはココノツの様子がなにやらおかしい事に気付いて、ココノツの肩
ホタルがなにやら言っているがココノツの耳には入らない。ホタ
たのね、可愛いとこあるじゃない﹂
!
D
S 。脳 内 エ ン ド ル フ ィ
がるのもヨウがHDSの能力を持っていることが理由である。
を裏で支配できてきた理由であった。枝垂カンパニーがヨウを欲し
この能力の存在こそが、鹿田家が9代も前からずっと駄菓子屋業界
れを性的興奮によって発動させる。
力、駄菓子発想力を通常の30倍にも引き上げるのだ。ココノツはこ
ンの分泌によって、発動者の駄菓子神経や、駄菓子知識、駄菓子応用
な っ て い る。そ の 体 質 の 名 前 は H
ヒステリア・ダガシ・シンドローム
鹿田家には、1代に1人、特異体質を持った子供が生まれるように
ココノツの雰囲気がガラリと変わる。ホタルは疑問符を浮かべた。
﹁なんでもないよ、ホタル、その勝負、受けて立とう﹂
?
3
!
!
!
!
しかしHDSの存在は鹿田家以外には秘匿されていて、鹿田の家系
の者しか知らない。枝垂カンパニーが、ココノツを勧誘しないのに
は、そういう訳があった。枝垂カンパニーは、HDSの事をしらない
﹂
ために、ヨウだけが菓子について天才的なものを持っていると勘違い
しているために起こったことなのだ。
※ ※ ※
﹁じゃあまずは私からよ、私はこうするわ
ホタルが棒きなこ当の箱から、きなこ棒を一本取り出し、高くもち
あげると、口を受け皿のようにしてきなこ棒を食べた。しかしそれで
も粉は顔についている。あまり良い手とは言えないようだ。ホタル
が噎せる。
ココノツはホタルにおしぼりを渡すと、最高の微笑みを作ってこう
いった。
と疑問符を浮かべながら、
﹁僕がスマートな大人流の食べ方を教えてあげよう﹂
ココノツくんってこんな人だったっけ
ホタルは受け取ったおしぼりで顔を拭く。
︶
︵こんなに自信満々なんだから見せてもらおうじゃない、その大人流
とやらを⋮
から漏れた。
﹁期待しているわ⋮﹂
再びフッ、と笑ってココノツも棒きなこ当の箱からきなこ棒を一本
﹂
取り出す。そして、ポケットから黒蜜のボトルを取り出した。
﹁
さないままホタルに問いかけた。
﹁ホタル、きなこ棒の原材料を知っているかい
﹁ええ、きなこと黒蜜よね。あっ、黒蜜⋮
﹂
まさか⋮
﹂
ホタルはびくりと肩を震わせると慌ててココノツの問いに答える。
?
!
て開ける。ホタルは必死で止めようとするも、間に合わなかった。
ココノツは更にフッ、と笑い、無言のまま黒蜜のキャップをひねっ
!
4
!
?
ホタルはココノツの一挙一動に注意を凝らす。ついその期待が口
!
ホタルに戦慄が走る。表情がこわばった。ココノツは微笑みを崩
!?
﹁ダメよそれは
⋮大人流だって﹂
駄菓子にしてはコストが高すぎる⋮
﹁だから言っただろう
﹁ダメっ、ダメええぇぇ
﹂
た。蜜はきなこ棒を目掛けて垂れていく。
﹂
ココノツが軽くボトルを握ると、黒くて光沢のある蜜が垂れてき
!
やら事件が起こっていた。
箱
﹁俺を受け入れろきなこ棒﹂
掛け黒蜜
あなたなんか受け入れないわ
!
う。きなこ棒は黒蜜をきっと睨むとこう言った。
夫 がいるの
練る時の黒蜜
!
てる﹂
﹁ダメ
ああっ
﹂
﹁そんな事言っても、体は正直だぜ⋮。俺のことを隅々まで受け入れ
﹁私にはもう、
﹂
衣服を無理やり脱がされたきなこ棒を前に、間男の黒蜜は獰猛に嗤
掛け黒蜜
ー太陽が辺りを赤く染める夕暮れ時、とある一軒家の勝手口でなに
※ ※ ※
ーきなこ棒は黒い蜜に侵食された。
ホタルがなにやら艶っぽい声で叫ぶのを尻目に、
!
﹂
身体中をテカテカとした粘液に犯されて、きなこ棒は艶やかに喘い
だ。
※ ※ ※
﹁ああ、なんて背徳的なの
を飲んだ。
?
ーさあ、召し上がれ。
ココノツはニヤリと嗤った。
﹁ああ、黒くて、テカテカしてて⋮立派ね⋮﹂
ら答える。
ココノツが問いかける。ホタルは少し逡巡して頬を朱に染めなが
﹁こいつを見てくれ、どう思う
﹂
まみれたきなこ棒をずい、とホタルに差し出す。ホタルはゴクリと唾
ホタルがいやんいやんと体をくねらせている。ココノツは黒蜜に
!
5
?
!
!
﹁もうグチョグチョだ⋮、くくっ⋮﹂
!
ココノツの悪魔のような囁きを受けて、ホタルはきなこ棒を一口で
頬張る。
もぐもぐと咀嚼する。
ーそして。
ジャンクな味がたまらないわ
﹂
きなこ棒に黒蜜が合わない訳がないじゃな
なんという甘みの暴力⋮
﹁あぁ⋮、最ッッッ高⋮
いの
!
ホタルは感激した。
﹁ええそうね、完璧よ
﹂
る﹃きなこを落とさないで食べる﹄という条件も満たしているのだ。
そして、黒蜜掛けきなこ棒は美味しいだけでなく、今回のお題であ
配もないよ﹂
﹁しかも黒蜜できなこがコーティングされるから、きなこを落とす心
!
!
︶
!
?
ルに差し出す。
﹂
﹁気に入ったようで何よりだよ、もっと食べるかい
﹁いただくわ
﹂
つの間にか用意していた皿にきなこ棒を載せ、黒蜜を掛けると、ホタ
ホタルにロックオンされたことなど気付いていないココノツは、い
が枝垂カンパニーに来てくれれば百人力よ⋮
︵この柔軟なアイデア、強引さ。ヨウさんじゃなくても、ココノツくん
!
つづく。
ココノツの提案にホタルは一も二もなく飛びついた。
!
6
!