だがしかし短編 クレモリス菌FC株 ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP DF化したものです。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作 品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁 じます。 ︻あらすじ︼ 電車に揺られながら唐突に思いついたネタをノリと勢いで書き上 げたモノ。ある意味、主人公最強モノです。 目 次 だがしかし │││││││││││││││││││││││ 1 だがしかし 今日も今日とて、のどかな田園風景の中にぽつんと佇むシカダ駄菓 子では、木製のエアコンがガタガタと、今にも壊れそうな音を出しな がら冷風を送り出している。外は絶賛真夏日で、僕なら外に出る気す ら起こらないよ、と鹿田ココノツは頬杖を付きながら独り言を呟い た。 しかし外がどれだけ暑い真夏日であろうと、そのようなことは我関 せずの態度の子供たちは、虫とりやら川遊びやらで元気に遊びまわる のだ。成長とともにインドア派と化したココノツには想像もつかな ココノツくん ﹂ い世界だった。ふわ、と欠伸をする。 ﹁来たわ ﹂ ? いなら⋮、くっ殺せ だ。ホタルさんなんかに負けたりしない 駄菓子屋を継がせるぐら からないが、分かって貰うまで言うしかない。気持ちは正に女騎士 ココノツは毅然な態度でNOを突き付ける。正直、何度言ったか分 ﹁いや、だから駄菓子屋は継ぎませんって、漫画家になります﹂ た。だがしかし、いくらホタルが可愛かろうと駄菓子屋は継げない。 人のくせにやることがいちいち可愛いなチクショウ、とココノツ思っ ホタルは口を尖らせてジト目になってなじるように言う。残念美 ﹁やれやれ⋮、そんな体たらくじゃ駄菓子屋は継げないわよ ノツのだらーっとしている様子を見て眉をひそめてこう言った。 の人はなんでこんなに元気なんだろう、と思う。一方、ホタルはココ ココノツは死んだ魚のような目でホタルを眩しそうに眺めた。こ ﹁こんにちは。こんなに暑いのに元気ですねー⋮﹂ 残念美人、そう枝垂ホタル、その人である。 スライドして颯爽と登場したのは、腰に手を当てドヤ顔をする紫髪の があった。ピシャッという鋭い音を響かせながら、スライド式の扉を のんびりとした時間が流れていたシカダ駄菓子に突然の来客の姿 ! ! ﹂ じゃあ早速未来の9代目であるココノツくん に駄菓子バトルを申し込むわ ! ﹁そうね、その意気よ ! ! 1 ! ス ルー しかしホタルは意に介した様子もなく両手を腰にあてて踏ん反り 返ってこう言い放った。あれ⋮、もしかしてこれは無視という奴なの だろうか、ココノツは狼狽した。 ︵あ、ありのまま今起こった事を話すぜ ﹃おれは奴に駄菓子屋は継が ﹂ 突然ジョ●ョみたいな劇画タッチになっちゃってココノツくん ﹁ハッ 僕は一体何を﹂ どうしちゃったの ﹁ かった⋮。頭がどうにかなりそうだった⋮︶ いるのか、わからねーと思うが、おれもどういうことなのかわからな 子バトルとかいう意味の分からないモノを挑まれた﹄な、何を言って ないと言ったのにいつの間にか継ぐことになっていた﹄﹃しかも駄菓 ! ﹂ ? 僕漫画家になるってちゃんと ! ﹁細かい事じゃないですってば 僕の人生に関わる問題です ⋮⋮は ! る。ホタルはしたり顔になった。 ! ﹁えっと、あ、はい﹂ ﹁ジャーン、きなこ棒よ ﹂ きっと何かとんでもないものなのだろう。ホタルが口を開く。 ゴクリ、とココノツが唾を飲み込む。ここまで引っ張ったのだから ﹁ふふーん、よくぞ聞いてくれました。今日のお題は⋮ ﹂ タル相手に無駄だと悟ったか、ずっと気になっていた疑問をぶつけ ホタルの物言いに強く抗議する姿勢を見せるココノツだったが、ホ あ、所で駄菓子バトルってなにするんですか﹂ ! ﹁うるさいわねえ、男の子なんだから細かい事は気にしないの﹂ を吐いてやれやれ、といったポーズを作ると、こう言う。 気を取り直したココノツがホタルに食い下がる。ホタルはため息 言いましたよね ﹁いやいや、意味が分からないですよ しなければいけないから危ない所だった。間一髪である。 の愛嬌のある顔に戻る。これ以上は原作カテゴリにジ●ジョを追加 ホタルに呼びかけられてココノツがポル●レフのような顔から元 !? 不満気な顔をする。 ココノツは反応に困ってコミュ障のような返事をした。ホタルが ! 2 ? ? ﹂ ﹁なによ期待はずれみたいな顔しちゃって。今日はきなこ棒を如何に きなこを落とさずに食べられるか勝負よ ﹁えっと、ホタルさん出口はあちらです﹂ 駄菓子バトルしてくれた ココノツがホタルの背中を押して出口へ向かわせようとする。ホ ちょっとまってココノツくん タルは踏ん張って慌ててこう言った。 ﹁わーわー ら私が大事にとっといたアレ、あげるから ﹂ そ 高校生鹿田ココノツ。 ココノツがぴたりと動きを止める。大事にとっといた、アレ⋮ れってファーストキスとか︵自主規制︶とか ? ﹁あ、受けてくれるのね そんなにガリガリ君の当たり棒が欲しかっ ココノツの意識が鮮明になる。別の人格が浮上してくる。 ︵あっ、やばい。最近ご無沙汰だったから油断した⋮︶ ードクン、と血が体の芯に集まる感覚がした。 ホタルのあられもない姿を思い浮かべた。 ろん性欲だって人並みにはあるし、そういう願望もある。ココノツは 例え草食系な見た目をしていようは中身は健全な男子である。もち !? を持った。 ﹁ココノツくん⋮ ﹂ ・・・ ルはココノツの様子がなにやらおかしい事に気付いて、ココノツの肩 ホタルがなにやら言っているがココノツの耳には入らない。ホタ たのね、可愛いとこあるじゃない﹂ ! D S 。脳 内 エ ン ド ル フ ィ がるのもヨウがHDSの能力を持っていることが理由である。 を裏で支配できてきた理由であった。枝垂カンパニーがヨウを欲し この能力の存在こそが、鹿田家が9代も前からずっと駄菓子屋業界 れを性的興奮によって発動させる。 力、駄菓子発想力を通常の30倍にも引き上げるのだ。ココノツはこ ンの分泌によって、発動者の駄菓子神経や、駄菓子知識、駄菓子応用 な っ て い る。そ の 体 質 の 名 前 は H ヒステリア・ダガシ・シンドローム 鹿田家には、1代に1人、特異体質を持った子供が生まれるように ココノツの雰囲気がガラリと変わる。ホタルは疑問符を浮かべた。 ﹁なんでもないよ、ホタル、その勝負、受けて立とう﹂ ? 3 ! ! ! ! しかしHDSの存在は鹿田家以外には秘匿されていて、鹿田の家系 の者しか知らない。枝垂カンパニーが、ココノツを勧誘しないのに は、そういう訳があった。枝垂カンパニーは、HDSの事をしらない ﹂ ために、ヨウだけが菓子について天才的なものを持っていると勘違い しているために起こったことなのだ。 ※ ※ ※ ﹁じゃあまずは私からよ、私はこうするわ ホタルが棒きなこ当の箱から、きなこ棒を一本取り出し、高くもち あげると、口を受け皿のようにしてきなこ棒を食べた。しかしそれで も粉は顔についている。あまり良い手とは言えないようだ。ホタル が噎せる。 ココノツはホタルにおしぼりを渡すと、最高の微笑みを作ってこう いった。 と疑問符を浮かべながら、 ﹁僕がスマートな大人流の食べ方を教えてあげよう﹂ ココノツくんってこんな人だったっけ ホタルは受け取ったおしぼりで顔を拭く。 ︶ ︵こんなに自信満々なんだから見せてもらおうじゃない、その大人流 とやらを⋮ から漏れた。 ﹁期待しているわ⋮﹂ 再びフッ、と笑ってココノツも棒きなこ当の箱からきなこ棒を一本 ﹂ 取り出す。そして、ポケットから黒蜜のボトルを取り出した。 ﹁ さないままホタルに問いかけた。 ﹁ホタル、きなこ棒の原材料を知っているかい ﹁ええ、きなこと黒蜜よね。あっ、黒蜜⋮ ﹂ まさか⋮ ﹂ ホタルはびくりと肩を震わせると慌ててココノツの問いに答える。 ? ! て開ける。ホタルは必死で止めようとするも、間に合わなかった。 ココノツは更にフッ、と笑い、無言のまま黒蜜のキャップをひねっ ! 4 ! ? ホタルはココノツの一挙一動に注意を凝らす。ついその期待が口 ! ホタルに戦慄が走る。表情がこわばった。ココノツは微笑みを崩 !? ﹁ダメよそれは ⋮大人流だって﹂ 駄菓子にしてはコストが高すぎる⋮ ﹁だから言っただろう ﹁ダメっ、ダメええぇぇ ﹂ た。蜜はきなこ棒を目掛けて垂れていく。 ﹂ ココノツが軽くボトルを握ると、黒くて光沢のある蜜が垂れてき ! やら事件が起こっていた。 箱 ﹁俺を受け入れろきなこ棒﹂ 掛け黒蜜 あなたなんか受け入れないわ ! う。きなこ棒は黒蜜をきっと睨むとこう言った。 夫 がいるの 練る時の黒蜜 ! てる﹂ ﹁ダメ ああっ ﹂ ﹁そんな事言っても、体は正直だぜ⋮。俺のことを隅々まで受け入れ ﹁私にはもう、 ﹂ 衣服を無理やり脱がされたきなこ棒を前に、間男の黒蜜は獰猛に嗤 掛け黒蜜 ー太陽が辺りを赤く染める夕暮れ時、とある一軒家の勝手口でなに ※ ※ ※ ーきなこ棒は黒い蜜に侵食された。 ホタルがなにやら艶っぽい声で叫ぶのを尻目に、 ! ﹂ 身体中をテカテカとした粘液に犯されて、きなこ棒は艶やかに喘い だ。 ※ ※ ※ ﹁ああ、なんて背徳的なの を飲んだ。 ? ーさあ、召し上がれ。 ココノツはニヤリと嗤った。 ﹁ああ、黒くて、テカテカしてて⋮立派ね⋮﹂ ら答える。 ココノツが問いかける。ホタルは少し逡巡して頬を朱に染めなが ﹁こいつを見てくれ、どう思う ﹂ まみれたきなこ棒をずい、とホタルに差し出す。ホタルはゴクリと唾 ホタルがいやんいやんと体をくねらせている。ココノツは黒蜜に ! 5 ? ! ! ﹁もうグチョグチョだ⋮、くくっ⋮﹂ ! ココノツの悪魔のような囁きを受けて、ホタルはきなこ棒を一口で 頬張る。 もぐもぐと咀嚼する。 ーそして。 ジャンクな味がたまらないわ ﹂ きなこ棒に黒蜜が合わない訳がないじゃな なんという甘みの暴力⋮ ﹁あぁ⋮、最ッッッ高⋮ いの ! ホタルは感激した。 ﹁ええそうね、完璧よ ﹂ る﹃きなこを落とさないで食べる﹄という条件も満たしているのだ。 そして、黒蜜掛けきなこ棒は美味しいだけでなく、今回のお題であ 配もないよ﹂ ﹁しかも黒蜜できなこがコーティングされるから、きなこを落とす心 ! ! ︶ ! ? ルに差し出す。 ﹂ ﹁気に入ったようで何よりだよ、もっと食べるかい ﹁いただくわ ﹂ つの間にか用意していた皿にきなこ棒を載せ、黒蜜を掛けると、ホタ ホタルにロックオンされたことなど気付いていないココノツは、い が枝垂カンパニーに来てくれれば百人力よ⋮ ︵この柔軟なアイデア、強引さ。ヨウさんじゃなくても、ココノツくん ! つづく。 ココノツの提案にホタルは一も二もなく飛びついた。 ! 6 !
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