上智大学 - 増田塾

2016 増田塾
入試解答速報
上智大学(2/7)総合人間科・法学部
― 上智大学 ―
2月7日
総合人間科・法学部
国語
解 答
一
(解答例)
問一 = a
問七 = d
問二 = d
問八 = a
二
問一 = b
問七 = c
問二 = d
問八 = d
三
問一 X = d
Y=a
問二 = b
問三 = c
問六 ① = a
② =b
問三 = a
問九 = c
問四 = d
問十 = d
問五 = b
問十一 = b
問六 = b
問三 = c
問九 = b
問四 = d
問十 = d
問五 = c
問六 = b
問十一 = a
Z=c
問四 = d
問五 = a
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解 説
一
解説の際の基本ルールとして、①「できるだけ選択肢を見る前に本文中の根拠を探し確認
すること」、その上で最終決定するために②「選択肢を種類分けして判断すること」という
2 点を説明しておく。①は、本文傍線部とそのイコール部分、同内容を言い換えた部分より
「正解の選択肢はこの内容を踏まえたものであるはず」と、選択肢を見る前に答えの根拠を
本文から確定する、ということである。②について、選択肢の種類は「◎=本文と完全に一
致」
「○=本文とほぼ一致」
「×=本文と矛盾する」
「ナシ=本文中に書かれていない」
「ズレ=本
文中に書かれてはいるが、視点や論理関係がズレている」
「△=曖昧でどちらとも取れる(間
違ってはいないが部分的な説明しかしていない、明記してないが論理関係上内容は正しい)
ので他の選択肢との相対比較が必要」という 6 種類で検討する。「◎」「○」は正解、「△」
は相対比較で正解になるときもある(例えば、選択肢が四本あって、◎○が無く、△が 1 つ、
×が三つなら△が正解になる、ということ)。
「×」
「ナシ」
「ズレ」は不正解である。また傍線
問題も空欄問題も、基本は「傍線、空欄のある文→前後の文→その段落全体→前後の段落→
論理構成上イコールになる段落」という順番で根拠となるイコール部分を探してく。
本文は全 8 段落からなる。本解説では該当箇所を「○段落○行目」、という言い方で説明
していく。
問一
傍線部の内容は 1 段落 2~4 行目で説明されている。a の内容は 2、3 行目に、b の内
容は 3 行目に書かれている。そして c には「亀裂」に該当する言葉が無いので×、d は「わ
れわれ自身のアイデンティティが固定」がナシ、この段階で正解は a か b である。あらため
て傍線部を見てみると「亀裂を隠蔽する」とある。意味を考えると、
「亀裂」 = 「区別」
「差
異」であり、それを「隠蔽する」
( = 隠す)といっているのだから b の「区別が固定されて
しまう」では傍線部の直接的な理由にならないのでズレ。a の「表徴の差異に還元されてし
まう」は傍線部の「内在する亀裂を隠蔽する」と表現は裏返しだが意味は同じである。「内
在」と「表徴」は対義語であり、「亀裂は内在しているのに表徴の差異だけを見るから」と
言っているのである。
「表徴」=「表面」「見える」⇔「内在」=「奥底」「見えない」
という関係性である。つまり「内在する見えない亀裂を隠す」ことの原因、理由は「表面だ
けの目に見える差異に還元されてしまうから」である。よって正解は a である。
問二 傍線部のある 2 段落から考える。1 行目「けっして理解し尽すことはできない」、2 行
目「病床に横たわる友人~苦しみを味わうことではない」、4 行目「自分と異なる以上、自分
を投影して理解することは不可能」とある。つまり「近い人であっても他者なのだから、自
分を投影して理解しつくすことはできない」ということ。この内容を踏まえているのは d で
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あり、これが正解。a は「努力して」では説明不十分(「努力」の中身が曖昧)で×。b は「ま
ったくない」と全否定している点が×。1 行目には「理解し尽すことはできない」とあるの
だから「理解できる部分もあるが、完全には理解しきれない」ということ。c は「部分」と
いっているので内容的にはおかしくないが、本文との対応関係の強さを d と比べると、d の
方には「自分自身の基準では~理解できない」という、本文 2 段落 4 行目「自分を投影して
理解することは不可能」と同じ意味の表現があるので、こちらを優先すべき。やはり正解は
d である。
問三 適切で「ない」ものを選ぶ点に注意。どの選択肢も 3 段落中の言葉を使って作られて
いるので「本文に書いてあるか、ないか」では判断できず、厳密に言葉を吟味する必要があ
る。a の内容は 3 段落 3 行目にあるが、「その輪郭なき姿」といっているのに、a のように
「正面から見ても」と具体的な実物を見ているように表記しているのはおかしい。よって a
が「適切でない」正解の選択肢である。bc は 3 段落 4 行目、d は同 7 行目に該当する表現
があるので正しい。
問四 まず傍線部の具体例として 4 段落に「母語」「人間」の例があることに気付こう。つ
まり c のように「言語」にだけ触れている選択肢はセマく不十分で×。さらに傍線部の「公
分母」という言葉、5 段落冒頭の「このように」に注目すれば 5 段落にも傍線部の説明があ
るとわかる。すると a は 2、3 行目に、b は 1、2 行目に、d も 2、3 行目にそれぞれ説明さ
れている。ではどれを選べばよいかだが、先にも触れたとおり「傍線部の」意味を問うてい
るのだから「分母」と関連する言葉である「共約」が含まれている d を優先すべき。よって
正解は d である。
問五 傍線部の前行に「それぞれ異質であるはずの者たちを自然の名の下で同質化したうえ
で」とある。
「~うえで」という表現は「前提」を示すので、これをヒントにする。a は「生
物どうしが異質であることを認め合って」がナシ。このことはどこにも書かれていないので
判断不可能である。b は「ちがった種類の生物」が本文の「それぞれ異質であるはずの者た
ち」、
「自然においては同質的」が「自然の名の下で同質化」とほぼ一致する内容であり、こ
れが正解。c は「異物」が×。4、5 行目より「異物」は「他者」のことであり、
「結局は異物
の排除を正当化してしまう」のだから明らかにおかしい。d は「安定的に共存」が×。傍線
部に「安定」という言葉はあるが、あくまで「共棲、共生」を「安定として思い描く」ので
ある。「ちがった種類の生物を」ではない。
問六 傍線部の説明は 7 段落中にあるが、なかでも 5 行目に「そのような二重の忘却にも
とづく『多文化』の『共生』」と傍線部と同じ表現があるのでこれをヒントにする。
「もとづ
く」というのは「前提」のことだから「そのような二重性」を「前提としている」と書かれ
ている選択肢が正解。では「二重」とは何と何かというと、7 段落 4 行目「そればかりか」
の前後に書かれている 2 つの内容である。つまり 2 行目「単一文化が多様にあると想定」と
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4 行目「普遍性を自称する西洋の特権的な立場」である。この点に触れている選択肢は b で
あり、これが正解。a は「普遍的に語りうるような特別な立場はない」が 4 行目に矛盾する
ので×、c は末尾の「認めているもの」が 4、5 行目「忘却されている」に反するので×、d も
「単一文化」と「異なる多文化」を、並存する別物と捕らえている点で 2、3 行目に矛盾す
る。
問七 傍線部を含む文は 7 段落 5 行目からはじまっている。その 5 行目を見ると「そのよ
うな二重の忘却にもとづく多文化の共生の観念が広く浸透するなら」と傍線部の「前提」 =
「根拠、理由」になっている部分がある。この部分は問五で見た内容を踏まえていなければ
ならない。各選択肢を見ると、a は「かつての植民地支配を招いた多文化共生」が×。
「かつ
て」の植民地支配は多文化共生によるものとは書かれておらず、本文の意味と異なる。b は
「評価を招いてしまう」、c は「調節しうる」がともにナシ。よって正解は d である。d の内
容は 7 段落 3 行目に書かれている。
問八 傍線部の前後を見てイコール部分を探すと、まず 7 段落 6 行目に「非対称で共約不
可能な他者とともに生きる」、さらに 10、11 行目に「ポストコロニアルな他者との共生」と
ある。よって「異質な他者と生きる」「植民地主義を脱する」という 2 つの内容を踏まえた
選択肢が正解のはず。すると正解候補は a か d である。両者の違いは「文化」に触れている
か否かであるが、傍線部はあくまで「他者にまさに他者として出会い直す」と言っているの
で、「文化」に限定するのはセマく不十分。したがって正解は a である。b も「文化」の話
でセマイし「文化の特殊性を重視」はナシ、c も「文化」がセマい上、「交渉」はナシ。
問九 傍線部前半の「他者の顔」については問三でも考察したので、参考にする。3 段落 6、
7 行目には「他者と同一の平面に立ちあえない」
「他者を理解しつくせない」とある。傍線部
後半の内容は、8 段落 1 行目「まったく無関心でいることはできない」、2、3 行目「何らか
の応答をしないわけにはいかない」とある。以上を踏まえ、選択肢を確認すると、a は「ま
ったく異質」が×。本文には「理解し尽くせない」とあり、
「尽くせない」ということは理解
できている部分もあるということ。b は「自分と同じ類」が×。
「他者と同一の平面に立ちえ
ない」に反する。c と d の前半は内容的には本文に書かれているものであり正しいが後半を
比べると、傍線部の「応答を迫る」に近いのは c の「共生せざるをえない」であり、これが
正解。d「受け入れて」では自分から前向きに受け入れている意味となり「応答を迫る」に
反する。
問十 傍線部の直前に「出会った他者に対する」とあるので前の行をみると「まず自分が出
会った他者を~あるがままに受け容れ~呼びかけに答えなければならない」、傍線部次の行
に「他者の特異な存在を肯定」とある。この 2 点を基準に選択肢を見ていくと、a は「応答
せねばならない」が×。間違えてはいけないのが「応答」自体は必要だと筆者は考えている、
ということ。ただ設問で問われている傍線部分が「引き受ける」の意味なので「受け容れる」
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が正しいのである。よって「応答」の a は×。b は「独自な存在」が×。8 段落 5 行目にある
とおり「他者を他者であるがままに受け容れ」るのである。c も「応答できる相手」が×、よ
って正解は d である。d は「受容せねばならない」と言っているし、前半も 8 段落 4 行目に
ある。
問十一
まず傍線部に「このこと」という指示語が含まれている点に注目。直前の一文を見
ると「他者に対する責任にもとづいて、他者の特異な存在を肯定し、他者と平和でいる関係
を築く」とある。指示語なのだからこの内容を踏まえていることが大前提である。つまり傍
線部の「何も共有していない者」とは「特異な存在である他者」であり、「共に生きる」は
「他者と平和でいる」ということである。この内容を正しく踏まえているのは b であり、こ
れが正解。a は「変革すること」が×。
「共生」には「応答」でなければならない。c は 1 段
落に書かれているが単なる「共生」の説明であり 8 段落、そして傍線部 11 の指示語の内容
を踏まえているとはいえないのでズレ、d「生態系」も 6 段落に書かれているが指示内容の
「平和的共生」と比較するとセマく不十分だし、「真の共生」が何なのかわからず曖昧なの
で×。
二
出典は心敬の連歌論なので、省略されている主語は原則として「筆者(私)」である。
連歌は多人数による連作形式である。受験生にとって連歌はあまり慣れていないと思われる
ので、読解はしにくいだろう。連歌の用語等は注で補われているので、目一杯活用する。
問一
傍線部 1 の上文に「まことの先達の句には、必ず云ひ捨てたるもの多かるべし。」と見える。
大意は「本当の先達の句には言い捨てただけの句が多い。」その先達に倣って、傍線部 1「身
を捨てて人の句を助け侍る句多かるべし。」と続け、傍線部 1 の下文では「つづりに錦を織
り交ぜよ」と古人の歌を引用して説を補強している。「多かるべし」の「べし」は「必要・
義務」。
冒頭部の大意として「本当の先達の句には言い捨てただけの句が多い。
(だから自分たちも)
当座の会の進行に努力することを重視して、場合により自分の立場を捨てて、人の立場を助
けるために詠む句を多くする必要がある。」と把握できれば選べる。
まず、
「身を捨てる」の「身」は「自分の身」なので、
「他人の句を生かすために」とある a
と b が正解候補で、「他人が、敢えて犠牲になって」とある c と d は落ちる。
a と b では傍線部 1 内の「べし」の意味の取り方が違っている。
冒頭に「先達の句には多いようだ。(だから)」と補えることからこの場合「べし」の意味は
「必要」と判断する。
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問二
傍線部 2 内に「うへ(上)」と見える。
「上」も多くの意味を持つ語だが、この場合は「人・物
に関すること」の用法。大意は「好ましく、珍しい句を聞き分け賞賛するのは普通の人に関
してで、」。選択肢を検討すると、
a… 「うへ(上)」を「高い」の意味にしており、合致しない。
b… 「うへ(上)」を「表面・うわべ」の意味で訳しているようだが、主語が不明瞭。
また、「こそ」も合致しない。
c… 「~ではなく、~だけ~」は本文内容と一致しない。
d… 本文内容と合致。
問三
「劫」は「未来永劫」とか「五劫の擦り切れ」などと使う、「長い時間」の意味。
選択肢を検討すれば、a と b は時間に関わっていないので落ちる。
c と d を比較すれば、
「たしなみや修行をおろそかにしてその時間だけ長い人」の c が正解。
問四
まず設問は、「(心敬が)俊成の語を引用した意図」としてふさわしいものを選べ、とある。
俊成の語を見ると源俊頼に対する強烈な批判の言葉と受け取れるが、次に続く一文に「この
詞、艶深く修行高きことなるか」と見える。
「艶」は中世の美的理念のひとつで「優雅な美」のことなので、「強烈な批判」とは様子が
違ってくる。パターンとしては一見批判で、実は賞賛。この視点で選択肢を検討すると、
a… ストレートに「批判」と見える。
b… 「評価」と曖昧表現になっている。
c… 「源俊頼の才人ぶりを~一見非難のような言葉で示す」と見える。
d… 「実は源俊頼を賞賛した俊成の人柄を示す」と見える。
正解候補は c と d に絞れる。心敬が藤原俊成と源俊頼のどちらを重視しているかは、「俊成
卿の語り給へるは」の文脈からも「俊成」と判断できようから、正解は「賞賛」と明示もし
てある d。
問五
うっかりミスをしないように。「ありがたし」は「めったにない」の意味。正解候補は b か
c。「おぼろけなり」は「はっきりしないさま」の意味なので正解は c。
問六
傍線部 6 を含む一文に目を向ければ、「連歌だけをひたすら練習している連歌詠みは、ちょ
うど細工する小刀で家を造るようだ」と読み取れる。傍線部 6 下文は「ばらばらになり節く
れ立ってしまうだろう」と読み取れる。以上から、傍線部 6 はだめなことの例と把握でき
る。
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また、小さいことで大きいことは成し遂げられないと言っていることも把握できる。選択肢
を検討すれば、
c… 本文内容と合致しない。
d… 本文内容とは反対なので落ちる。
筆者は第二段落はじめで、連歌とは和歌を修めないと熟達しない、と言っている。先ほどの
例と組み合わせると、
「小さいこと」が「連歌」で、本文では「細工の小刀」
「大きいこと」が「和歌」で、本文では「家」
となる。
残る選択肢 a と b を比較すると、
a「良いものでも、それだけでは通用しない場合がある」
b「扱いかねる材料があると結果が良くない」
と見える。
後は注にある「疎句」の意味に目を向けて、第二段落の冒頭から「手を放ちたる所などにた
どり侍るべくや」までを把握できれば、b 内の「材料」と本文の「疎句」が結びつけられよ
う。
問七
問六の具体例。傍線部 7 内の「もろこし(唐土)」は中国のことであるから、具体的な表現と
言える。これを筆者は「幽遠余情遅れ侍るべし」と言う。
それに対して「堪能の人」の例の該当部は「松浦の沖をいづる舟人」と見え、船の行く先は
明記されておらず、解釈は読み手にまかされる。
以上から選択肢を検討すると、
a… 「下の句は乗船しての句」は本文の主旨と合致しない。
b… 本文と一致しない。
c… 正解。
d… 本文と一致しない。
問八
筆者は「代々の勅撰和歌集にもつまらない歌が入らないとはかぎらない」と指摘し、「古今
集」などでさえ同様だと続けて、「撰者の越度にはあるべからず」と記している。
その理由は本文に「ことに上臈・権門たち、数を知らず入り給へば、その内によろしからぬ、
なまなましく、あうらあらしき歌も多かるべくや」と見える。
以上の文脈を踏まえて選択肢を検討すれば、
a… 「度を過ぎているとまでは言えないから」は本文に合致しない。
b… 「越権行為であるから」は本文に合致しない。
c… 「特定の撰者の失態とは言えないから」は本文に合致しない。
d… 「むしろ編集方針の結果」は上記理由と合致する。
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問九
傍線部 9 内の「偏に」は「ひたすら、いちずに、むやみに」などの意味の副詞。
選択肢を検討すると、正解候補はaとbに絞れる。検討優先順位が高い。
b の「ひたすら真似ばかりをして」は「証歌」の注に「作歌の参考とする歌」と見えるので
許容。a「劣った者を切り捨てる」は本文と符号しない。
問十
『菟玖波集』は受験文学史でも基本文献。
問十一
少なくとも c と d を除き、a か b のどちらかと見当はつけたい。
三
漢文読解で気をつけることの一つに人物の把握がある。
古典世界の中国人の名には「姓・名・字」の三つがあり、普通、姓は漢字一字、名も漢字一
字、字は漢字二字であることが多い。
多くの場合、本文のようにはじめは「周処」と記されるが、進むうちに「処」のように一字
で表記されることもある。このとき、「処」が人物であることを認識すること。意外と難し
い。
問一
X
本文には「三横」と見えるので、
「三つの横」と了解される。本文から「三」は「周処」
・
「蛟」
・
「虎」を指すと把握できよう。
また、本文の「並皆暴犯百姓」から「皆」は「三」と同じで、「暴犯」はこれらの性質とか
行動を表すと読み取れれば、この「横」の意味は「よこしま」と理解できる。選択肢の中で
は d が該当する。他にも「横行」などは同じ用法である。
○百姓…中国古典では「ひやくせい」と読み「国民」の意味なので、
「農民」と限定しない
ように。
Y
「具」は「つぶさニ」と読み、
「詳細に」の意味の副詞。
「くわしく事情を言う」と把握でき
よう。
Z
「令名」は「よい評判」とか「名声」という意味。「令」には「よい」意味とか「相手への
敬意を表す」用法がある。「令嬢」の「令」もこれらの用法。選択肢内で該当するものを探
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せば c であろう。
問二
傍線部で用言を探せば、「冀」はすぐに見つけられよう。何を願うのか下を見る。
「唯」が副詞「ただ」であるならば下の「余」はこの場合動詞の可能性がある。
一文の骨組みを考えれば「のこすことを願う」となる。ただし「余」は一字では動詞だが、
「余其一」で目的語となる。
書き下し… 実は三横唯だ其の一を余さんことを冀ふ。
大意… 実は三横のうち(二つを消してせめて)一つだけにしたいと願った。
問三
「蛟」が主語ならば、
「浮」と「没」は述語。
「或~、或~」という対比構造からもすぐに気
づけよう。読点が入るならば、まず「~或没」の次だと見当を付けて選択肢を見れば、a と
e は落ちる。
「行数十里処…」と見るうち、
「処」が「周処」と気づければ、
「行」が動詞で「行くこと数
十里」となり、「~数十里」の次に読点は入れられると気づける。
残りの選択肢のうち b と d はいずれも「~数十里処、」となっており、正解候補から落ちる。
正解は残った c となる。
与… 助詞「と」。
倶… 動詞「ともにス」。
書き下し… 蛟或いは浮き或いは没し、行くこと数十里、処之と倶にし、三日三夜を経た
り。
大意… 蛟は浮き沈みして、数十里流れていき、処も蛟とともに(戦いながら)三日三晩を過
ごした。
問四
傍線部を検討しておくと、「有」はラ変動詞「あり」なので、『「自改意」がある』と把握で
きる。
書き下し… 自ら改むる意有り。
大意… 自分を改めようという気持ちがおこった。
まずは傍線部を含む一文の確認。
「始知為人情所患、有自改意」(上は省略)。
「為~所」は受
身の句型。書き下せば「始めて人情の患ふる所と為るを知り、~」となり、大意は「はじめ
て郷里の人に嫌われていることを知り、自分を改めようという気持ちがおこった」となる。
また本文中に「郷里皆謂已死、更相慶」と見えることから、選択肢 a ではなく、「死ねばよ
いと思われる程に嫌われている」と見える d が正解。
問五
問四が理解できれば、傍線部 4 の前後は同じ事を言っていると判断できよう。周処は清河に
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事情を告げて相談をする。傍線部 4 の下に見える「終無所成」の書き下しは「終に成す所無
からん」、大意は「結局改めることはできないと思う」。
なぜ希望していながら達成できないと思うのか、それが傍線部 4「年已蹉○」である。「蹉
○」が何であるかわからなくても、「年」の語から文意の想像はつくだろう。
b… 「中途半端に終わった」は本文と合致しない。
c… 「年齢ゆえの失意を味わった」は本文と合致しない。本文ではまだ自己改革を始め
ていない。
d… 本文と合致しない。
問六
①
『論語』の有名な一節。知らないと辛いかもしれない。
書き下し… 朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり。
大意… 選択肢 a
②
①に立脚して b。そうは言っても、清河の回答をヒントに見当をつけることもできるかもし
れない。
「況君前途尚可」…自分の年齢を理由に躊躇する周処に「あなたの前途はまだまだ『可』」
と答え励ましている。
「人患志之不立、亦何憂令名不彰邪」…「さらに人は志を立てないことを憂えるのであっ
て、どうして名声が世に知れ渡らないことを嘆くことがありましょうか、いやない」
以上から、清河は「あなたには志があるのだから、人に賞めてもらうためではなく、自分の
ために実行しなさいよ、始める年齢は関係ないよ」と言っていると理解でき、b が選べれば、
①の a も目に入るかもしれない。
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