共創・共育・共感 尾鷲市教育長だより 2016.2.12.(金) 第163号 「対話」の力をつけよう ガリレオ・ガリレイが書いた本に「新科学対話」という本があります。この 本は、3人による対話形式で書かれています。 対話形式をとることで、今何を問題としているのかがわかりやすく、たいへ ん読みやすい内容になっています。 シンプリチオはアリストテレスが書いたことを単純に信奉するだけで何も考 えない学者。サルヴィヤチは実験によって事実を積み上げ、真実を明らかにす る新しい科学者で、シンプリチオをやりこめていきます。サグレドはヴェネチ ア市民で、2人の学者の話を聞き、論点を明らかにします。 当時は、アリストテレスが「知」の大家として信奉され君臨していました。 新科学対話には、アリストテレスが「知」の大家として登場し、それに敬意を 表 し つ つ も 、「 問 答 」と い う カ タ チ を と り な が ら 、一 つ 一 つ 覆 し て い く 方 法 は 、 プラトンの書が示すギリシャ哲学の方法を真似たのかもしれません。 「対話」という形式は、西欧では、古代から多く見られた表現形式で、ひと つひとつの命題に対し、あくまでも論理的に論証を進めていく方法です。これ もアリストテレスが教えてくれたことであります。 ところで、この「対話」と、ふだんよく使われている「会話」とは、どう違 うのでしょうか。 「会話」とは、家族や友人のように、すでによく知り合った者同士のお喋り のことをいったりします。知っている者同士の“話し合い”です。 一方「対話」とは、初対面であったり、あまり深く話を交わしたりしたこと がないような場合、新たな情報交換や交流により、お互いの違いをすり合わせ て い く こ と を い い ま す 。異 な る 考 え や 価 値 観 を も っ た 人 と の“ 話 し 合 い ”で す 。 ごく親しい人との間でも、お互いの考えの違いを踏まえながら、何か新しい問 題 や 話 題 に つ い て 話 し 合 う 場 合 に は 、「 対 話 」 と い っ て も い い と 思 い ま す 。 また、こういった説明もあります。 「対話」は、基本的に「二者」の間で行われ、何らかの合意を意図的または 予定調和的に目指すものです。これに対して「会話」は、複数の話者の間で行 われ、さまざまな視点や関心が交叉し、話題がいろいろな方向に乱反射しなが ら、それぞれの予想や期待を超えて広がっていくものです。 対話とは、お互いの考えや価値観の違いを踏まえながら、お互いに意見をす り合わせていくことであり、会話は、親しい者同士が、わかり合うためにイロ イロと話をすることなのです。 「対話」と「会話」を、このように考えてみると、日本における組織は、西 欧 の 組 織 と 比 べ て 、「 会 話 」 は 多 く 「 対 話 」 は 少 な い よ う に 思 え ま す 。 そ れ は 、 日 本 の 文 化 は 「 和 」 の 精 神 と い っ た 、「 わ か り あ え る と い う こ と を 前提にした文化」であり、協調性が重視されてきたからではないでしょうか。 し か し 、 西 欧 の 文 化 は 「 個 々 の 考 え 」「 個 性 」 を 尊 重 し 、 そ れ を 積 極 的 に 表 現 し て 交 流 し な が ら 一 致 点 を み つ け て い く と い っ た 、「 わ か り あ え な い こ と を 前提にした文化」であり、協調性よりも、人と積極的に交わっていく社交性が 重視され、古くから「対話」の形式が発達してきたと考えられます。 ですから、グローバル化している社会や教育の現状を考えると、これからは 「 会 話 」 の 力 以 上 に 、「 対 話 」 の 力 が 要 求 さ れ て く る と 思 わ れ ま す 。 とくに、学校や市役所のようにチームとして動く必要のある組織では、会話 を も と に し た 人 間 関 係 づ く り を 基 盤 に し て 、「 す べ て は 子 ど も た ち の た め に 」 「すべては市民のために」を合言葉に、子どもや市民を中心に据えた対話や議 論を推し進めていくことが重要です。 <対話や議論を推し進めていく 5つのポイント> ・ 異 な る 意 見 を 歓 迎 す る( 同 じ 意 見 ば か り で は 、新 し い 考 え は 生 ま れ な い ) ・本音で語る(建前なし) ・簡潔に話す(飾り言葉なし) ・他人の話を聴く(聴くことによって、訊くことができる) ・全員対等(全員が会議に参画) 会議などで激しく意見を述べあっても、会議が終わればさわやかに!といっ た 心 構 え が 大 切 で す 。こ う し た 構 え で 対 話 や 議 論 を 推 し 進 め る こ と が で き れ ば 、 お互いの意見や考えから、新たな気づきや発見も生まれ、たくさん学ぶことが できます。そして、対話や議論が何よりも有意義で実りあるものになります。
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