2016 年度総務省所管政府予算案と PDCA サイクルの進化

新・地方自治ニュース 2015 No.21 (2016 年2月 10 日)
2016 年度総務省所管政府予算案と PDCA サイクルの進化
地方自治体の経営全体に影響を与える 2016 年度総務省所管政府予算案についてまず概観する。総
務省所管予算のうち第1の柱となるのが「地域経済の再生と財政健全化の実現」に関する予算で総額
16 兆 8,707 億円である。本予算の太宗を占めるのは、地方財政の根幹を支える地方財政健全化に向
けた地方交付税交付金等の予算であり、地方交付税所要額確保(地方自治体への交付ベース)で 16
兆 7,003 億円となった。また、安倍内閣のコア政策である地方創生に向けた予算措置は、「ローカル
1万プロジェクト」や「自治体データ開放による公共サービスの産業化」等を推進する地域経済好循
環推進プロジェクト予算 23.7 億円、移住・交流の推進、地域まちおこし等を推進する地域の自立促
進予算 5.8 億円、連携中枢都市や定住自立圏構想などを図る地方自治体の連携やネットワーク圏形成
関連予算 5.3 億円、地方創生に資する ICT 活用の街づくり予算 4.7 億円となり総額約 40 億円、地域
の ICT 基盤整備予算は 61 兆円等となっている。
予算の第2の柱は、マイナンバー制度の円滑な導入と利活用の促進予算約 190 億円である。その太
宗を占めるのは、マイナンバーカードの発行等に関する経費 139 億円であり、マイナンバーカードの
有効性情報の周知を図る予算 12.2 億円が新規で計上されている。加えて、マイナンバーの利活用に
関する経費も調査研究を柱に 0.8 億円計上されている。地方自治体の現状では、マイナンバーカード
の着実な普及が喫緊の課題となっている。しかし、次のステップではマイナンバーを独自活用した公
共サービスの漸進的改革が求められ、今から如何に提案を計画的に積み重ね、PDCA として展開する
仕組みを構築するか大きな課題となる。マイナンバーを巡っては、個人情報の機密性確保が求められ
る一方で匿加工情報やマイナポータル等による広範な利活用が意図され、経済社会の時代的変化によ
って動的に変化する情報の機密性を踏まえつつ、地域メッシュ情報のハブ的集積・発信の場所になれ
るかが課題となる。
第1の柱の中のまち・ひと・しごと創生、一億総活躍政策による「地方創生の展開」は実質的に2
年度目を迎え、国の創生政策に対する基本原則を改めて認識し、PDCA サイクルの下で戦略化する必
要がある。その原則の第1は、自立性である。自立性とは、長期構造への対処であり短期的な対症療
法ではないことを意味し、同時に国からの支援が将来なくなった後も自治体自ら持続性確保が可能な
ことを求めている。したがって、足元での施設更新投資においても自治体の過度な財政負担が将来発
生する事業運営ではなく、指定管理による工夫、多機能化・複合化等による長期的視野からの工夫は
重要な視点となる。「あったら良いな」「あれもこれも」ではなく、「あれかこれか」的な発想の中
で融合させることである。第2は将来性である。将来性とは、各施設を通じて新たな地域のイメージ
を形成することである。第3は当然のことではあるものの、困難課題も抱える地域性の実現である。
特定の業界・領域等タテ割りではなく、地域経営として民間も含め横断的に形成され効果が帰着する
ことである。第4は、地域データに基づきプロセス検証が可能なことであり、①最終目標値だけでな
く段階的接近のプロセス検証が可能な体制を形成すること、②地方自治体単位に加え自治体内の地区
別データの活用を図ること、③金融機関や地域企業等地域組織との連携による地域メッシュ情報活用
の努力等が求められる。第5の直接性は、分析により原因を明確にし、因果関係による直近性を重視
することである。具体的には、体系化された因果関係の整理に基づく集中的内容であることが重要と
なる。第6は、結果重視であり、数値での検証可能性の確保が求められている。しかし、多くの地方
自治体の政策評価等は、事業に対する進行管理的役割は果たすものの、事業が体系化された施策ベー
ス、すなわち地域全体に対するのより広い実効性確保に対する機能となると十分とは言えない水準に
ある。形骸化・ルーティン的作業に陥っている PDCA サイクルの改革に本格的に取り組む時期に至
っている。加えて、東京都大田区の民泊等具体的特区制度がスタートしている。こうした取り組みは
新たな地域戦略の構図となる。但し、選考する特区の模倣だけでは、地域の競争力は平均値以上に至
らないことも理解する必要がある。
© 2015 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE