ルジャンドルの記号の性質について 風あざみ 2016/02/06 目次 1 用語の説明編 2 2 証明の準備編 2 3 ルジャンドルの記号の性質編 3 4 ルジャンドルの記号の値編 6 1 1 用語の説明編 [x] を x を超えない最大の整数を意味する。 p を素数、a を p で割り切れないな正の整数とする。 ah ≡ 1 (mod p) をみたす正の整数 h のうち、最小になる整数 e のことを、 法 p に関する a の位数と呼び、e = ordp (a) と書くことにする。 とくに ordp (a) = p − 1 となるとき、a を p に関する原始根ということにする。 2 証明の準備編 命題1:素数 p と p で割り切れない正の整数 a を任意にとるとき、以下が 成り立つ。 ap−1 ≡ 1 (mod p) 証明:下記サイトを参照 http://puit578.web.fc2.com/flt.pdf a, n を互いに素な正の整数 (ただし、n ≥ 2) とするとき、整数 ϵ(a, n) を以下 にように定義する。 a を n で割ったときの絶対値最小の余りが正のとき、ϵ(a, n) = 1 a を n で割ったときの絶対値最小の余りが負のとき、ϵ(a, n) = −1 以降簡単のため、ϵ(a, n) を ϵ(a) と書くことにする。 命題2:奇数の素数 p と p で割り切れない正の整数 a を任意にとるとき、以 下が成り立つ。 a p−1 2 ≡ ϵ(a)ϵ(2a) · · · ϵ( p−1 a) (mod p) 2 証明:下記サイトを参照 http://puit578.web.fc2.com/gauss.pdf 命題3:p を奇数の素数とする。p に関する原始根は必ず存在する。 証明:下記サイトの定理8を参照 http://puit578.web.fc2.com/opr.pdf 2 ルジャンドルの記号の性質編 3 命題4:奇数の素数 p と p で割り切れない正の整数 a に対して以下が言 える。 x2 ≡ a (mod p) が解を持つ ⇐⇒ a p−1 2 ≡ 1 (mod p) 証明:x2 ≡ a (mod p) が整数解 x0 を持つとき このとき、x0 > 0 と考えて問題はないので、以後そうする。 明らかに、x0 は p で割り切れないので、命題1より a p−1 2 ≡ xp−1 ≡ 1 (mod p) 0 がいえる。 p−1 a 2 ≡ 1 (mod p) となるとき g を p に関する原始根とする。このとき g i ≡ a (mod p) をみたす正の整数 i の存在が言える。このとき g i· p−1 2 ≡a p−1 2 ここで、ordp (g) = p − 1 より、i · ≡ 1 (mod p) p−1 2 = (p − 1) · j をみたす正の整数 j の存 在が言える。 よって、i = 2j がいえる。したがって、x = g j とおくと (g j )2 ≡ g i ≡ a (mod p) がいえる。以上より、命題4はいえた。 □ 命題5:奇数の素数 p と p で割り切れない正の整数 a に対して以下が言える。 a p−1 2 ̸≡ 1 (mod p) ⇐⇒ a p−1 2 ≡ −1 (mod p) p−1 2 ̸ 1 (mod p) となるとき ≡ 命題1より以下が言える。 証明:a (a ここで、a p−1 2 p−1 2 − 1)(a a p−1 a 2 + 1) ≡ ap−1 − 1 ≡ 0 − 1 は素数 p で割り切れないから、a p−1 2 (mod p) p−1 2 + 1 が素数 p で割り切 ≡ −1 (mod p) であることがいえた。 ≡ −1 (mod p) となるとき p−1 − 1 ≡ −2 ̸≡ 0 (mod p) だから、a 2 ̸≡ 1 (mod p) であることがい れる。したがって、a p−1 2 p−1 2 3 えた。 □ 命題5より素数 p と p で割り切れない正の整数 a に対して以下が言える。 x2 ≡ a (mod p) が解を持たない ⇐⇒ a p−1 2 ≡ −1 (mod p) したがって命題4と合わせて以下が言える。 素数 p と p で割り切れない正の整数 a に対して x2 ≡ a (mod p) が解を持つとき a x ≡a 2 p−1 2 ≡ 1 (mod p) (mod p) が解を持たないとき a p−1 2 ≡ −1 (mod p) ここでルジャンドルの記号を、以下のように定義する。 奇数の素数 p と p で割り切れない正の整数 a に対して x2 ≡ a x2 ≡ a (mod p) が解を持つとき a ( )=1 p (mod p) が解を持たないとき a ( ) = −1 p このとき、以下の命題6がいえる。 命題6:p を奇数の素数、a, b を p で割り切れない正の整数とするとき、以下 が言える。 a b ( )≡( ) p p 証明:( ap ) ≡ ( pb ) a b (mod p) ならば、( ) = ( ) p p (mod p) がいえるとき、( ap ) = ±1, ( pb ) = ∓1(複号同順) とはなり得ない、よって ( ap ) = ( pb ) = ±1 がいえる。 したがって、命題6がいえた。 □ 再び上記のルジャンドル記号の定義より、以下が言える。 素数 p と p で割り切れない正の整数 a に対して p−1 a ( )≡a 2 p (mod p) · · · (R) 4 したがって、以下の命題7がいえる。 命題7:p を奇数の素数、a, b を p で割り切れない正の整数とするとき、以下 が言える。 ( a b ab ) = ( )( ) p p p a≡b a b (mod p) ならば、( ) = ( ) p p a b 証明:( ab p ) = ( p )( p ) であること (R) より ( p−1 p−1 p−1 a b ab ) ≡ (ab) 2 ≡ a 2 b 2 ≡ ( )( ) p p p (mod p) a b よって、命題6より ( ab p ) = ( p )( p ) がいえる。 a≡b (mod p) ならば、( ap ) = ( pb ) であること (R) より p−1 p−1 b a ( ) ≡ a 2 ≡ b 2 ≡ ( ) (mod p) p p よって、命題6より ( ap ) = ( pb ) がいえる。 したがって命題7はいえた。 □ 命題8:奇数の素数 p と p で割り切れない正の整数 a を任意にとるとき、以 下が成り立つ。 a p−1 ( ) = ϵ(a)ϵ(2a) · · · ϵ( a) p 2 証明:命題2より a p−1 2 ≡ ϵ(a)ϵ(2a) · · · ϵ( p−1 a) (mod p) 2 また、(R) より p−1 a ( )≡a 2 p (mod p) よって、以下が言える。 p−1 a a) (mod p) ( ) ≡ ϵ(a)ϵ(2a) · · · ϵ( p 2 ( ap ) = ±1, ϵ(a)ϵ(2a) · · · ϵ( p−1 2 a) = ∓1(複号同順) とはなり得ない、よって a) = ±1 がいえる。 ( ap ) = ϵ(a)ϵ(2a) · · · ϵ( p−1 2 したがって、命題8がいえた。 □ 5 ルジャンドルの記号の値編 4 命題9:奇数の素数 p を任意にとるとき、以下が成り立つ。 ( p−1 p−1 ) = (−1) 2 p 証明:命題8より以下が言える。 ( p−1 2 p−1 p−1 ) = ϵ(p − 1)ϵ(2(p − 1) ) · · · ϵ( (p − 1) ) p 2 以下の任意の正の整数 r に対して、(p − 1)r ≡ −r (mod p) がいえるか ら、(p − 1)r の絶対値最小の余りは負の値になる。よって以下が言える ϵ(p − 1)ϵ(2(p − 1) ) · · · ϵ( p−1 p−1 (p − 1) ) = (−1) 2 2 したがって、命題9はいえた。 □ 命題10:奇数の素数 p を任意にとるとき、以下が成り立つ。 p2 −1 2 ( ) = (−1) 8 p 証明:命題8より以下が言える。 2 ( ) = ϵ(2)ϵ(4) · · · ϵ(p − 1) p p ≡ 1 (mod 4) のとき p−1 4 以下の任意の正の整数 r に対して、0 < 2r ≤ p−1 2 がいえるから、2r の 絶対値最小の余りは正の値になる。 p+3 4 以上 p−1 2 以下の整数 r に対して、 p−1 2 < 2r ≤ p − 1 (mod p) がいえる から、2r の絶対値最小の余りは負の値になる。 このとき p+1 2 が奇数であるので ϵ(2)ϵ(4) · · · ϵ(p − 1) = (−1) p−1 4 = (−1) p2 −1 8 がいえる。 p ≡ 3 (mod 4) のとき p−3 4 以下の任意の正の整数 r に対して、0 < 2r ≤ p−3 2 がいえるから、2r の 絶対値最小の余りは正の値になる。 p+1 4 以上 p−1 2 以下の整数 r に対して、 p−3 2 < 2r ≤ p − 1 から、2r の絶対値最小の余りは負の値になる。 このとき p−1 2 が奇数であるので ϵ(2)ϵ(4) · · · ϵ(p − 1) = (−1) 6 p+1 4 = (−1) p2 −1 8 (mod p) がいえる がいえる。したがって、命題10はいえた。 □ 命題11:奇数の素数 p を任意にとるとき、以下が成り立つ。 ( p2 +4p−5 p−2 ) = (−1) 8 p 証明:(p − 1) · 2 ≡ p − 2 (mod p) がいえるから命題7より ( p−2 p−1 2 )=( )( ) p p p ここで命題9、命題10より ( p−1 p2 −1 p2 +4p−5 p−1 2 )( ) = (−1) 2 · (−1) 8 = (−1) 8 p p となる。したがって、命題11はいえた。 □ 命題12:5 以上の素数 p を任意にとるとき、以下が成り立つ。 p+1 3 ( ) = (−1)[ 6 ] p 証明:命題8より以下が言える。 3 p−1 ( ) = ϵ(3)ϵ(6) · · · ϵ(3 ) p 2 p ≡ 1 (mod 6) のとき p−1 6 以下の任意の正の整数 r に対して、0 < 3r ≤ p−1 2 がいえるから、3r の 絶対値最小の余りは正の値になる。 p+5 6 以上 p−1 3 以下の整数 r に対して、 p−1 2 < 3r ≤ p − 1 (mod p) がいえる から、3r の絶対値最小の余りは負の値になる。 p+2 3 以上 p−1 2 以下の整数 r に対して、p < 3r ≤ p − 1 + p−1 2 (mod p) がい えるから、3r の絶対値最小の余りは正の値になる。 したがって ϵ(3)ϵ(6) · · · ϵ(3(p − 1) ) = (−1) p−1 6 = (−1)[ p+1 6 ] がいえる。 p≡5 p−5 6 (mod 6) のとき 以下の任意の正の整数 r に対して、0 < 3r ≤ p−5 2 がいえるから、3r の 絶対値最小の余りは正の値になる。 p+1 6 以上 p−2 3 以下の整数 r に対して、 p−1 2 < 2r ≤ p − 2 (mod p) がいえる から、2r の絶対値最小の余りは負の値になる。 p+1 3 以上 p−1 2 以下の整数 r に対して、p < 2r ≤ p − 1 + 7 p−1 2 (mod p) がい えるから、2r の絶対値最小の余りは正の値になる。 したがって ϵ(3)ϵ(6) · · · ϵ(3(p − 1) ) = (−1) p+1 6 = (−1)[ p+1 6 ] がいえる。したがって、命題12はいえた。 □ 命題13:5 以上の素数 p を任意にとるとき、以下が成り立つ。 ( 証明:(p − 1) · 3 ≡ p − 3 p−1 p−3 ) = (−1)[ 3 ] p (mod p) がいえるから命題7より ( p−1 3 p−3 )=( )( ) p p p ここで命題9、命題10より ( p≡1 p+1 p−1 p−1 3 )( ) = (−1) 2 · (−1)[ 6 ] p p (mod 6) のとき (−1) p−1 2 · (−1)[ p+1 6 ] = (−1) 2p−2 3 = 1 = (−1)[ p−1 3 ] p ≡ 5 (mod 6) のとき (−1) p−1 2 · (−1)[ p+1 6 ] = (−1) 2p−1 3 となる。したがって、命題13はいえた。 8 = −1 = (−1)[ p−1 3 ] □
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