HIGH-VOLTAGE TEST OF A 500-KV PHOTOCATHODE DC

HIGH-VOLTAGE TEST OF A 500-KV PHOTOCATHODE
DC ELECTRON-GUN FOR A NEXT-GENERATION LIGHT-SOURCE
Ryoji Nagai1,A), Nobuyuki Nishimori A), Ryoichi HajimaA),
Toshiya MutoB), Masahiro Yamamoto B), Tsukasa Miyajima B), Yosuke Honda B),
Hokuto Iijima C),Masao KurikiC), Makoto KuwaharaD), Shoji Okumi D), Tsutomu Nakanishi D)
A)
JAEA, 2-4 Shirakata-Shirane, Tokai, Ibaraki, 319-1195
B)
KEK, 1-1 Oho, Tsukuba, Ibaraki 305-0801
C)
Hiroshima U., 1-3-1 Kagamiyama, Higashi-Hiroshima, Hiroshima 739-8530
D)
Nagoya U., Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya, Aichi 464-8601
Abstract
A 500-kV, 10-mA photocathode DC gun which is designed for next-generation light- sources based on energyrecovery linac has been developed in a collaboration effort of JAEA, KEK, Hiroshima Univ. and Nagoya Univ. We
have utilized a segmented cylindrical ceramic insulator and guard-ring electrodes to prevent any damage to the
insulator from electrons emitted by the support-rod electrode. The 500-kV gun was successfully conditioned up to a
voltage of 550 kV and a long-time holding test for 8 h was demonstrated at an acceleration voltage of 500 kV. The
cathode electrode, anode electrode, and beam line apparatuses are now under fabrication and beam tests of the gun will
be started soon.
次世代光源用500-kV光陰極DC電子銃の高電圧印加試験
1.はじめに
次世代光源とはこれまでの電子線加速器を基盤と
した光源では成し得なかった超短パルス、高コヒー
レンスを有する光源のことであり、そのひとつが、
エネルギー回収型リニアック(Energy-Recovery Linac;
ERL)を基盤とした光源である。ERLはこれまでにな
い高輝度かつ高平均電流の電子ビームを高繰り返し
で発生するための新型の電子線加速器である[1]。現
在、ERLは高出力自由電子レーザー [2],[3] 、次世代X
線放射光源[4]、高フラックスγ線源[5],[6]、高出力テラ
ヘルツ源[7]のような次世代光源を実現するための加
速器として期待されている。ERLでの電子ビームの
輝度と電流は電子銃の性能で決まるので、高輝度か
つ高平均電流の電子ビームを発生するための電子銃
はERLの性能を十分に発揮するために最も重要な要
素である。
高輝度の電子ビームを発生する際にもっとも問題
となるのが空間電荷力によるエミッタンスの増大で
ある。ERLの要求性能を満たすには電子銃の加速電
圧を500kV以上として空間電荷力を十分に小さくす
る必要がある[8],[9]。また、高輝度の電子ビームを発
生するためには、短い間隙に高い加速電圧を印加す
る必要がある[10]。そのために、光陰極直流電子銃で
はセラミック管の中央にカソード電極を保持するた
めのサポートロッドが通る構造をとらざるを得ない。
このような構造のために、サポートロッドから放出
された電界放出電子によりセラミック管に損傷を与
えて、高電圧での運転が難しくなっている [11]-[13] 。
その結果、世界中の研究機関で電子銃開発の努力が
1
E-mail: [email protected]
なされているにも関わらず、これまで500kV以上の
電圧での安定な運転は達成されていなかった。われ
われは、JAEA、KEK、広島大学、名古屋大学の共
同研究により開発した500-kV、10-mA光陰極直流電
子銃において世界で初めて500kVの加速電圧の安定
な印加に成功した[14]。われわれの500-kV、10-mA光
陰極直流電子銃において採用した高電圧を安定に印
加するための手法と高電圧印加試験およびビーム試
験に向けたビームラインについて報告する。
2.高電圧を安定に印加するための手法
直流電子銃においてセラミック管は最も重要な構
成要素の一つである。 セラミック管では、高電圧
に対する絶縁抵抗を保持するだけでなく、安定に高
電圧を保持するために、セラミック表面での局所的
帯電を避ける必要がる。この局所的帯電による放電
は時としてセラミック管に穴を開けるなど重大な損
傷を与える。われわれの開発した光陰極直流電子銃
は図1に示すように電子銃の高電圧部分を収納する
絶縁ガスタンク、高電圧電源、セラミック管、加速
電極を収納する真空チャンバから構成されている。
ガスタンク中の空気を排気後、SF6を+0.2MPa(ゲー
ジ圧)まで充填することで、高電圧部分を絶縁して
いる。セラミック管は後述する理由により分割型セ
ラミック管を採用しガードリングを備えている。光
陰極直流電子銃では高電圧かつ高電界で電子線を加
速するためにセラミック管の中央を高電圧端である
サポートロッドが通っている。これまでの光陰極直
流電子銃ではガードリングを備えていないので、サ
ポートロッド表面から電界放出により放出した電子
がセラミック管表面を叩くことにより局所的帯電が
起こり高電圧を安定に印加出来なくなるという問題
があり、これが光陰極直流電子銃における最大の開
発課題であった。
絶縁ガスタンク
分割型
セラミック管
高電圧電源
サポートロッド
出力抵抗
ガードリング
主要部分
カットモデル
分割型
セラミック管
真空
チャンバ
加速電極
図1.
われわれの開発した光陰極電子銃の模式図
アルミナセラミックの2次電子放出係数は2から9
と比較的大きいので、セラミック表面での局所的帯
電のプロセスについて以下のように考えられる。図
2に示すように、サポートロッド表面から放出した
電界放出電子によってセラミック表面が叩かれる。
すると、叩かれたセラミック表面からは叩いた電子
以上の2次電子が放出する。そのためにセラミック
表面が正に帯電すると考えられる。さらに放電が続
くと帯電した部分に電界放出電子が集中して衝突す
るので、セラミック管を貫通してしまうといった損
傷が起こる。このプロセスに対応する局所的帯電の
防止策が3つ考えられる。即ち、(1)セラミック管表
面に生じた電荷を逃がす方法(セラミック表面に導
電膜を形成する方法 [11],[12] )、(2)セラミック管表面
の2次電子放出係数を小さくする方法(表面に薄く
TiN膜を形成する方法[15])、(3)シールド電極により
電界放出電子がセラミックを叩かないようにする方
法(分割型セラミックとガードリングによる方法
[14]
)である。これまでの光陰極DC電子銃では、(1)
の方法での高電圧印加が試みられてきたが、500kV
の電圧での安定運転はまだ一度も達成されてなった。
2次電子
電界放出電子
-
-
+
「+」に帯電
-
+
-
サポートロッド
セラミック
図2.
セラミック管表面での局所的帯電のプロセス
そこで、われわれは最も効果的に局所的帯電を防
げ る 方 法 で あ る (3) の 方 法 を 採 用 し た 。 サ ポ ー ト
ロッドからセラミック管を完全に遮るようにガード
リングを設けることで、セラミック管にサポート
ロッドからの電界放出電子が当たらないようにする
ことができる。また、この方法は別の要因(表面の
付着物など)で放電したとしてもセラミック管の損
傷を防げるという利点がある。分割型セラミックで
は、電子が放出されやすい真空-セラミック-金属
のトリプル・ジャンクションを多く有するが、ガー
ドリングによりその部分の電界が緩和されるのでト
リプル・ジャンクションからの電子放出の影響は無
視できる。分割型セラミック管はセラミックのフー
プとコバールの板を交互に積み重ねロー付するとい
うもので、セラミックは99.8%のAl2O3を用いた。
電界分布をPOISSON[16] で計算し、最大電界強度
が小さくなるように設計を行った。光陰極直流電子
銃における最大の開発課題はセラミック管とサポー
トロッド間での高電圧の安定な印加であるので、こ
の計算および高電圧印加試験では加速電極は含まれ
ていない。500kV印加した際の最大電界強度はセラ
ミック管の底の端付近でロッド表面が8.34MV/mで
あり、ガードリング表面が6.83MV/mである。500kV
での一般的な真空間隙での絶縁破壊電界はおよそ
10MV/m[17] であるので、これらの値は十分に許容で
きる値である。サポートロッドから放出した電子の
軌道を上述の電界分布を用いてGPT[18]で計算し、サ
ポートロッドから放出された電子はガードリングに
よって完全に遮蔽されセラミック管に直接あたるこ
とはないことが確認できた。
3.高電圧印加試験
われわれの電子銃の高電圧試験の手順と結果につ
いて以下に述べる。高電圧、真空に悪影響を及ぼす
ホコリなどの侵入を避けるために、クリーンブース
内でセラミック管、真空容器などを接続した。その
後に真空チャンバおよびセラミック管表面に吸着し
ている水分などを除外するために真空排気後190°C
で8時間のベーキングを行った。排気速度1m3/sの磁
気浮上型ターボ分子ポンプのフォアラインに
0.06m3/sのターボ分子ポンプと0.2m3/min.のスクロー
ルポンプを用いるタンデム構成のターボ分子ポンプ
で真空の排気を行った。ベーキングの後に真空度は
3×10-8Pa以下まで到達した。
高電圧コンディショニングはベースの真空度5×
10-8Pa以下の条件で行った。コンディショニング時
の過剰な放電を避けるために高電圧電源には真空度
と放射線量でインターロックをかけ、設定値を超え
ると電圧を0Vに落とすようにした。真空度のイン
ターロックは5×10-6Paで働くように設定した。放射
線量のインターロックは真空容器から50cm離れた
位置で3μSv/hで働くようにした。
また、コンディショニングの際のセラミック管お
よび電極の致命的なダメージを避けるために放電電
流を2つの方法で制限した。一つは高電圧電源の
100MΩの出力抵抗により放電のピーク電流を制限し
た。もうひとつは放電の際の平均電流を1μA以下で
クリップするように高電圧電源に定電流回路を設け
た。図3は放電の際に定電流回路により電流が制限
されている様子であり、放電が起こると同時に出力
電流がクリップされて高電圧電源の出力電圧が低下
している。この電圧の低下により放電の大きさを十
分に小さな値に制御しながら、コンディショニング
を進めることができ、約110時間のコンディショニ
ングで最大印加電圧550kVまでのコンディショニン
グに成功した(図4参照)。また、実運転を想定し、
500kVの加速電圧で8時間、無放電で安定に電圧が
印加できることが確認できた。
500
210
499
200
498
190
497
180
電流制限
496
170
495
160
494
図3.
133.6
133.8
134
134.2
時間 [s]
134.4
出力電流 [A]
出力電圧 [-kV]
放電
150
放電時の定電流回路による電流制限の様子
5.まとめ
われわれはERL型次世代放射光源用に開発した
500-kV光陰極DC電子銃の高電圧印加試験を行った。
この結果、550kVまでのコンディショニングに成功
し、加速電圧500kVで8時間の電圧保持試験に成功
した。この電子銃の加速電圧は次世代X線光源や高
輝度γ線源のためのERLに必要な性能を十分に満た
しているものであり、これにより高輝度電子ビーム
の発生が可能となる。500-kV電子銃開発の最大の難
関である高電圧の安定な印加に成功したことで、電
子銃は完成へと大きく近づいたといえる。高電圧印
加の成功の鍵は分割型セラミック管とガードリング
である。ガードリングによりセラミック管がサポー
トロッドから放出される電界放出電子から保護され
致命的なダメージを受けることなく高電圧コンディ
ショニングを成功することができた。
現在、カソード電極、アノード電極、NEGポン
プ、ビームラインの組み立てを行っており、まもな
く500kVビームを引き出しての試験を開始する予定
である。
本研究の一部は、科研費基盤 (B) 20360424、文部
科学省受託研究:量子ビーム基盤技術開発プログラ
ム、KEK大学連携支援事業の成果である。
600
参考文献
印加電圧 [-kV]
500
[1]
400
[2]
300
[3]
200
[4]
[5]
100
0
図4.
120
[6]
550kVまでの高電圧コンディショニング
[7]
[8]
0
20
40
60
80
100
コンディショニング時間 [hrs.]
4.ビーム試験用ビームライン
高電圧の安定な印加に成功し、現在、500kVでの
ビーム引き出し試験を行うための加速電極、ビーム
ラインの組み立て等を行っている[19]。安定にビーム
が引き出せた後に、NEA光陰極の寿命試験を計画し
ており、このために、このビームラインは
5kW(500kV×10mA)のビームダンプを備えている。
また、光陰極の寿命は真空度に極めて敏感であるの
で、陰極付近で極高真空を得るためのNEGポンプ
を陰極付近に配置している。さらに、ビームライン
にもNEGポンプユニットを備え、ビームダンプは60
度偏向した位置に配置し、陰極を直接見込まないよ
うにすることで、ビームダンプで発生したガスによ
る真空度の劣化を抑え、NEA光陰極の寿命計測が行
えるようにしている。
[9]
[10]
[11]
[12]
[13]
[14]
[15]
[16]
[17]
[18]
[19]
R. Hajima, Proceedings of 2009 Particle Accelerator
Conference, MO4PBI01, (2009).
G. R. Neil, et al., Nucl. Instrum. Methods Phys. Res. A
557, 9 (2006).
E. J. Minehara, Nucl. Instrum. Methods Phys. Res. A 557,
16 (2006).
S. M. Gruner, et al., Rev. Sci. Instrum. 73, 1402 (2002).
R. Hajima, et al., Nucl. Instrum. Methods Phys. Res. A
608, S57 (2009).
V. N. Litvinenko, et al., IEEE Trans.Plasma Sci. 36, 1799
(2008).
K. Harada, et al., Infrared Phys. Technol. 51, 386 (2008).
R. Hajima and R. Nagai, Nucl. Instrum. Methods Phys.
Res. A 557, 103 (2006).
I. V. Bazarov and C. K. Sinclair, Phys. Rev. ST Accel.
Beams 8, 034202 (2005).
I. V. Bazarov, et al., Phys. Rev. Lett. 102, 104801 (2009).
K. Smolenski, et al., AIP Conf. Proc. 1149, 1077 (2009).
C. Hernandez-Garcia, et al., AIP Conf. Proc. 1149, 1071
(2009).
L. B. Jones, et al., AIP Conf. Proc. 1149, 1084 (2009).
R. Nagai, et al, Rev. Sci. Instrum. 81, 033304 (2010).
N. Matsuda, et al., J. Vac. Soc. Jpn. 30, 446 (1987) (in
Japanese).
J. H. Billen and L. M. Young, LA-UR-96–1834 (1996).
P. G. Slade, The Vacuum Interrupter: Theory, Design, and
Application (CRC Press, Boca Raton, FL, 2007).
M. J. de Loos and S. B. van der Geer, Proceedings of
EPAC-1996, pp. 1241–1243, (1996).
N. Nishimori, et al., in Proc. 7th annual meeting of Part.
Acc. Soc. of Japan