別紙 諮問第513号 答 1 申 審査会の結論 「苦情処理票」ほか5件を一部開示とした決定及び「苦情処理一覧簿(B)」ほか1 件を開示とした決定は、いずれも妥当である。 2 審査請求の内容 (1)審査請求の趣旨 本件審査請求の趣旨は、東京都個人情報の保護に関する条例(平成2年東京都条例第 113号。以下「条例」という。)に基づき、審査請求人が行った「私が公安委員会に申 し出た苦情(平成26年○月○日受理、都公委第○号)の処理に関し警視庁が作成・取得 した保有個人情報一切」の開示請求(以下「本件開示請求」という。)に対して、警視 総監が平成27年3月12日付けで行った一部開示決定及び開示決定について、その取消し を求めるというものである。 (2)審査請求の理由 審査請求書における審査請求人の主張を要約すると、以下のとおりである。 ア 原処分を取消し、処分庁が保有している審査請求人の個人情報開示請求に係る他 の保有個人情報について開示決定等を行うよう求めるとともに、警察職員の氏名及 び印影以外の不開示部分について開示すると変更するよう求める。 イ 審査請求人は、平成 27 年2月 12 日、処分庁に対し、「私が公安委員会に申し出 た苦情(平成 26 年○月○日受理、都公委第○○号)の処理に関し警視庁が作成・ 取得した保有個人情報一切」について開示請求をした。 ウ 処分庁は、平成 27 年3月 12 日に審査請求に係る処分をした。処分庁は、苦情処 - 1 - 理一覧簿、苦情処理票、苦情申出にかかる事実調査結果について開示ないし一部開 示をした。 エ ○○警察署地域課長が作成した「苦情申出に係る事実調査結果について」は、平 成 26 年○月○日付けで作成されている。その後東京都公安委員会(以下「公安委 員会」という。)による苦情処理結果の公安委員会への報告が平成 27 年○月○日に 行われていることから、3か月弱に渡って○○警察署内や本部広報課内で検討が行 われたと思料され、その間に苦情処理票以外に何らの文書も作成することなく処理 結果についての検討がなされたとは考えにくい。 よって、○○警察署地域課長作成の事実調査結果についての検討に関する資料が 存在すると解され、未だ開示決定等の対象とされていない保有個人情報があると思 料され、原処分を取り消し、改めて開示決定等をするよう求める。 オ さらに、原処分は職務質問の取扱状況について、条例 16 条4号に該当すること を理由に非開示としている。 非開示部分は、主として審査請求人の警察官職務執行法(昭和 23 年法律第 136 号)上の不審事由や所持品検査を求めた事由に関する部分であると解されるが、職 務質問を行うに際しては「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何ら かの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又 は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて 知っていると認められる者」のみが対象とされ、警察官による恣意的な根拠に基づ く職務質問を行うことは許されないものといえる。 処分庁は非開示とした理由について、職務質問の着眼点や手法が明らかになるお それがあるとする。しかし、職務質問自体は審査請求人に明らかになる態様で行わ れ、行われた場所も公道上であり秘匿性を有する形態で行われたものではないこと、 非開示部分を開示したとしても個別具体的な事案における着眼点及び手法が明ら かになるに過ぎず、一般的に警視庁として組織的に共有している職務質問に関する 着眼点及び手法が明らかになるわけではないこと、保有個人情報開示は審査請求人 のみに対する開示に過ぎず、これを開示したからといって犯罪の予防その他の公共 の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるとは認められないというべきで - 2 - ある。 更にいえば、仮に審査請求人が東京都に対して職務質問や所持品検査の違法性を 主張して国家賠償請求訴訟をすれば、東京都としては結局のところ審査請求人に不 審事由を認めた一応の根拠を訴訟の場で明らかにしなければいけなくなる関係に もあり、結局処分庁において秘匿することができない情報という性格を有する。 カ 仮に条例 16 条4号に該当するとしても、条例 17 条の2に基づき裁量開示をすべ きである。すなわち、条例 17 条の2は個人の権利利益の保護のために特に必要が あると認められるときは、開示することができると定められているところ、職務質 問の不審事由等が明らかにならなければ、審査請求人として職務質問や所持品検査 の違法性の有無を判断することができず、違法性があった場合におけるその立証に も支障を及ぼすものである。 したがって、これが開示されないときには、審査請求人に対して東京都に対する 違法な職務質問に対する国家賠償請求権の行使に重大な支障を及ぼすものであっ て、これを開示することが個人の権利利益の保護のため特に必要があると認められ る。他方で、これを開示することによる弊害は前記オで記載したとおり比較的小さ いと認められる。 よって、処分庁が裁量開示しなかった原処分は違法又は不当であり、この点をも ってしても原処分は取消しを免れない。 3 審査請求書に対する実施機関の説明要旨 理由説明書及び口頭による説明における実施機関の主張を要約すると、以下のとおり である。 (1)非開示理由 審査請求人は、警察職員の氏名及び印影以外の非開示部分についてのみ開示を求め ているが、下記の理由により開示することはできない。 ア 警察職員の年齢 開示請求者以外の個人に関する情報で、特定の個人を識別することができるもの - 3 - であるため、条例 16 条2号に該当する。 イ 一部開示決定処分とした、苦情申出にかかる事実調査結果についてのうち、「4 取扱事実(1)取扱状況」の1頁目及び2頁目の非開示とした部分(警察職員の氏 名を除く。) 開示することにより、犯人の検挙、犯罪の端緒入手及び犯罪の未然防止を目的と して行う職務質問の着眼点等が明らかとなり、その結果これらの活動が阻害され若 しくは適正に行われなくなるなど犯罪の予防その他の公共の安全と秩序の維持に 支障を及ぼすおそれがあると認められるため、条例 16 条4号に該当する。 ウ 一部開示決定処分とした、苦情申出にかかる事実調査結果についてのうち、「4 取扱事実(1)取扱状況」の3頁目の非開示とした部分(警察職員の氏名を除く。) 開示することにより、犯人の検挙、犯罪の端緒入手及び犯罪の未然防止を目的と して行う職務質問の手法等が明らかとなり、その結果、これらの活動が阻害され若 しくは適正に行われなくなるなど、犯罪の予防その他の公共の安全と秩序の維持に 支障を及ぼすおそれがあると認められるため、条例 16 条4号に該当する。 (2)審査請求人の主張 審査請求人は、審査請求書において、 「未だ開示決定等の対象とされていない保有個 人情報があると思料される。」旨を主張しているが、処分庁では、本件開示請求の対 象とした保有個人情報以外に作成及び取得している文書は存在しない。 4 審査会の判断 (1)審議の経過 審査会は、本件審査請求について、以下のように審議した。 年 平成27年 月 日 6月18日 審 諮問 - 4 - 議 経 過 平成27年 7月24日 新規概要説明(第95回第三部会) 平成27年10月27日 実施機関から理由説明書収受 平成27年10月30日 実施機関から説明聴取(第97回第三部会) 平成27年11月27日 審議(第98回第三部会) 平成27年12月18日 審議(第99回第三部会) (2)審査会の判断 審査会は、審査請求の対象となった保有個人情報並びに実施機関及び審査請求人の 主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。 ア 苦情の処理手続について 実施機関における苦情の処理手続については、 「広聴事案の処理手続に関する規程」 (平成13年東京都公安委員会規程第3号。以下「処理規程」という。)及び「広聴事 案の処理手続に関する規程の運用について」(平成13年5月31日通達甲(副監.総. 広.聴1)第16号。以下「運用規程」という。)で定められ、所属長指揮の下、担当 幹部が事実関係等を調査し、所属長宛てに文書を作成することとしている。 イ 本件対象保有個人情報について 本件審査請求の対象となった保有個人情報は、「私が公安委員会に申し出た苦情 (平成 26 年○月○日受理、都公委第○号)の処理に関し警視庁が作成・取得した 保有個人情報一切」の開示請求に対し、実施機関が審査請求人の保有個人情報であ ると特定した「苦情処理一覧簿(B)(広報課、受理番号○号)」、「苦情処理一覧簿 (B) (○○署、受理番号公安委○号)」 (以下「本件対象保有個人情報1」という。) 並びに「苦情処理票(受理番号公安委員会室-○号、下段決裁欄の署長欄が○○の もので、苦情の申出書(平成 26 年○月○日付け、封筒の写し付きのもの)を含む)」、 「苦情申出にかかる事実調査結果について(広報課が保有するもの、○○警察署、 - 5 - 平成 26 年○月○日付け)」、「苦情処理票(受理番号公安委員会室-○号、下段決裁 欄の署長欄が○○のもの)」、「苦情処理票(受理番号公安委員会室-○号、欄外左 上に決裁欄のあるもので、苦情の申出書(平成 26 年○月○日付け、封筒の写し付 きのもの)を含む)」、「苦情申出にかかる事実調査結果について(○○警察署が保 有するもの、○○警察署、平成 26 年○月○日付け)」及び「苦情処理票(受理番号 公安委員会室-○号、上段決裁欄が空欄のもの)以下「本件対象保有個人情報2」 という。)である。 実施機関は、本件対象保有個人情報1については開示決定を行い、また、本件対 象保有個人情報2については、警察職員の氏名及び印影を条例 16 条2号及び4号 に、警察職員の年齢(以下「本件非開示情報1」という。)を条例 16 条2号に、 「苦 情申出にかかる事実調査結果について(広報課が保有するもの、○○警察署、平成 26 年○月○日付け)」及び「苦情申出にかかる事実調査結果について(○○警察署 が保有するもの、○○警察署、平成 26 年○月○日付け)」の「4取扱事実(1)取 扱状況」欄の職務質問の着眼点及び手法、職務質問の過程で得られた警察活動の結 果が記載されている部分(以下「本件非開示情報2」という。)を条例 16 条4号に 該当するとして、それぞれ非開示とする一部開示決定を行った。 審査請求人は、審査請求書において、本件対象保有個人情報2の実施機関が非開 示とした部分のうち、本件非開示情報1及び本件非開示情報2について開示を求め るとともに、平成 26 年○月○日に審査請求人が申し出た苦情(以下「本件苦情」 という。)の処理に関して作成された他の保有個人情報を開示するよう求めている ことから、審査会は、本件非開示情報1及び2の非開示妥当性並びに対象保有個人 情報の特定の妥当性について判断する。 ウ 条例の定めについて 条例 16 条2号本文は、「開示請求者以外の個人に関する情報(事業を営む個人の 当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日そ の他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの(他 の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができ ることとなるものを含む。)又は開示請求者以外の特定の個人を識別することはで きないが、開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害するお - 6 - それがあるもの」を非開示情報として規定している。 また、同号ただし書において、 「イ 法令等の規定により又は慣行として開示請求 者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報」、 「ロ 人の生命、健康、 生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報」、「ハ 当該個人が公務員等・・・である場合において、当該情報がその職務の遂行 に係 る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容 に係る部分」のいずれかに該当する情報については、同号本文に該当するものであ っても開示しなければならない旨規定している。 条例 16 条4号は、「開示することにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維 持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施 機関が認めることにつき相当の理由がある情報」を非開示情報として規定している。 エ 本件非開示情報1及び2の非開示妥当性について (ア)本件非開示情報1について 審査会が見分したところ、本件非開示情報1には特定の警察職員の年齢が記載 されており、当該情報は審査請求人以外の個人に関する情報であって、他の情報 と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものと認 められる。 次に、同号ただし書該当性について検討すると、本件非開示情報1は、法令等 の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定 されている情報とは認められないことから、同号ただし書イには該当せず、その 内容及び性質から同号ただし書ロ及びハのいずれにも該当しないものと認められ る。 したがって、本件非開示情報1は条例 16 条2号に該当し、非開示が妥当であ る。 (イ)本件非開示情報2について 審査会が見分したところ、本件非開示情報2には犯罪の未然防止等を目的とす る職務質問の着眼点やその手法等が記載されており、当該情報を開示することに より、犯罪を犯した者や犯罪を企図する者等が対抗措置を執ることが可能となる - 7 - など、犯罪予防や検挙等の警察活動を阻害するおそれがあるものと認められる。 したがって、本件非開示情報2は、犯罪の予防、鎮圧又は捜査等公共の安全と 秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理 由がある情報と認められることから条例 16 条4号に該当し、非開示が妥当であ る。 オ 対象保有個人情報の特定の妥当性について 審査請求人は、審査請求書において、本件苦情の処理を検討する際に○○警察署 や本部広報課内で作成された他の公文書及び資料があるはずであり、他の公文書及 び資料を対象保有個人情報として開示すべき旨主張していることから、本件対象保 有個人情報1及び2の特定の妥当性について検討する。 実施機関は、苦情の処理について、処理規程及び運用規程に定められた手続によ り行っており、本件対象保有個人情報1及び2以外に苦情処理のために作成した公 文書は存在しないと説明する。 そこで審査会が、処理規程及び運用規程を調査見分したところ、本件対象保有個 人情報1及び2以外に実施機関で作成又は取得する必要のある公文書はないこと が確認できた。また、処理規程及び運用規程に定められた以外の公文書を実施機関 が作成又は取得したことを推認する特段の事情は認められないので、本件対象保有 個人情報1及び2を開示請求にかなう対象保有個人情報と特定した実施機関の決 定は妥当である。 なお、審査請求人は審査請求書において、種々の主張をしているが、これらはいず れも審査会の判断を左右するものではない。 よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。 (答申に関与した委員の氏名) 渡辺 忠嗣、鴨木 房子、寺田 麻佑、前田 - 8 - 雅英
© Copyright 2024 ExpyDoc