別紙 諮問第516号 答 1 申 審査会の結論 「110 番処理簿」を一部開示とした決定は、妥当である。 2 審査請求の内容 (1)審査請求の趣旨 本件審査請求の趣旨は、東京都個人情報の保護に関する条例(平成2年東京都条例 第 113 号。以下「条例」という。)に基づき、審査請求人が行った「平成 26 年3月 から9月までの間に私が警察官に取扱いを受けたときの 110 番処理簿(○○署のも の)」の開示請求に対し、警視総監が平成 27 年4月 28 日付けで行った一部開示決定 について、その取消しを求めるというものである。 (2)審査請求の理由 審査請求書及び意見書における審査請求人の主張を要約すると、以下のとおりであ る。 ア 「110 番処理簿、○○警察署、平成 26 年3月○日、整理番号○○」の「処理てん 末状況」欄の2行目、3行目、5行目から8行目、9行目及び 17 行目、「110 番処 理簿、○○警察署、平成 26 年9月○日、整理番号○○」の「処理てん末状況」欄 の1行目から2行目及び5行目の非開示部分の開示を求める。 イ 本件処分は、「事件の概要、処理が分からない」、「警察官の記載事項に事実の捏 造、虚偽がないことを確認できない」、「警察官の業務責任として関係者の個人情報 以外の必要な情報を開示するべきである」の理由により納得できない。 現状開示された内容では審査請求人の個人情報が正しく書かれている以外、確認 できない。 - 1 - ウ 実施機関は理由説明書において、非開示理由を「事案処理に係る評価、判断に関 する情報であって、開示することにより今後の 110 番処理事務の適正かつ円滑な遂 行に支障を及ぼすおそれがあるため」と説明しているが、非開示とされたことで審 査請求人は警察業務への強い不信感を禁じ得ない。 2件の 110 番処理簿の状況について、どのような内容が記載されているか補足又 は概要の説明を請求する。 3 審査請求書に対する実施機関の説明要旨 理由説明書及び口頭による説明における実施機関の主張を要約すると、以下のとおり である。 (1)「110 番処理簿、○○警察署、平成 26 年3月○日、整理番号○○」の非開示部分及 び理由 ア 警察職員の「氏名」及び「印影」 (ア)条例16条2号に該当 開示請求者以外の個人に関する情報で、特定の個人を識別することができるも のであるため。 (イ)条例16条4号に該当 開示することにより、犯罪の予防、捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支 障を及ぼすおそれがあると認められるため。 イ 「通報場所」、「事件内容及び犯人人相等、訴出人等」、「通報者」、「通報局」 及び「通知電話番号」の各欄並びに「処理てん末状況」欄の5行目から8行目及び 13行目から16行目の非開示とした部分 (ア)条例16条2号に該当 開示請求者以外の個人に関する情報で、特定の個人を識別することができるも のであるため。 (イ)条例16条6号に該当 - 2 - 110番通報は、関係者との信頼関係に基づいており、開示することにより、今 後の当庁における通信指令業務等の円滑な運用ができなくなるなど、警察業務の 適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。 ウ 「処理てん末状況」欄の2行目、3行目、9行目及び17行目のそれぞれ非開示と した部分 条例16条6号に該当 事案処理に係る評価、判断に関する情報であって、開示することにより、今後の 110番処理事務の適正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。 (2)「110番処理簿、○○警察署、平成26年9月○日、整理番号○○」の非開示部分及び 理由 ア 警察職員の「氏名」及び「印影」 (ア)条例16条2号に該当 開示請求者以外の個人に関する情報で、特定の個人を識別することができるも のであるため。 (イ)条例16条4号に該当 開示することにより、犯罪の予防、捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支 障を及ぼすおそれがあると認められるため。 イ 「処理てん末状況」欄の1行目から2行目及び5行目の非開示とした部分 条例16条6号に該当 事案処理に係る評価、判断に関する情報であって、開示することにより、今後の 110番処理事務の適正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。 ウ 「処理てん末状況」欄の10行目から16行目の非開示とした部分 条例16条2号に該当 開示請求者以外の個人に関する情報で、特定の個人を識別することができるもの であるため。 - 3 - 4 審査会の判断 (1)審議の経過 審査会は、本件審査請求について、以下のように審議した。 年 月 日 審 議 経 過 平成27年 8月13日 諮問 平成27年 9月18日 新規概要説明(第96回第三部会) 平成27年12月 4日 実施機関から理由説明書収受 平成27年12月18日 実施機関から説明聴取(第99回第三部会) 平成27年12月21日 審査請求人から意見書収受 平成28年 1月22日 審議(第100回第三部会) 平成28年 2月19日 審議(第101回第三部会) (2)審査会の判断 審査会は、審査請求の対象となった保有個人情報並びに実施機関及び審査請求 人の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。 ア 110 番処理簿について 110 番処理簿は、110 番通報を受理した警視庁通信指令本部(以下「通信指令本 部」という。)の指令担当者が事案を管轄する警察署に指令を発し、当該警察署に おいて 110 番通報の内容や現場に到着した警察官の活動結果を明らかにするため に作成されるものである。 同処理簿は、「入電日時」、「処理結果」、「通報場所」、「発生場所」、「入 電事案名」、「通報者」、「通報局」、「通知電話番号」、「聴取電話番号」、「緊 配種別」、「『事件内容及び犯人人相等』及び『訴出人等』」、「処理てん末状況」 - 4 - 等の欄から構成されている。 これらのうち、「『事件内容及び犯人人相等』及び『訴出人等』」欄は、通信指 令本部が 110 番通報した者から聴取した通報者の氏名や聴取内容等を記載し、「処 理てん末状況」欄は、警察署の無線指令者が、事案の処理に当たった警察官からの 報告に基づき、事案の概要や処理てん末、関係者の氏名、住所等を記載することに なっている。 イ 本件対象保有個人情報について 本件審査請求に係る対象保有個人情報は、「110 番処理簿、○○警察署、平成 26 年3月○日、整理番号○○」(以下「本件対象保有個人情報1」という。)及び「110 番処理簿、○○警察署、平成 26 年9月○日、整理番号○○」(以下「本件対象保 有個人情報2」という。)である。 実施機関は、本件対象保有個人情報1のうち、警察職員の「氏名」及び「印影」 は条例 16 条2号及び4号に該当し、「通報場所」、「事件内容及び犯人人相等、訴 出人等」、「通報者」、「通報局」及び「通知電話番号」の各欄並びに「処理てん 末状況」欄の5行目から8行目及び 13 行目から 16 行目の非開示とした部分は条例 16 条2号及び6号に該当し、「処理てん末状況」欄の2行目、3行目、9行目及び 17 行目のそれぞれ非開示とした部分は条例 16 条6号に該当するとして、また、本 件対象保有個人情報2のうち、警察職員の「氏名」及び「印影」は条例 16 条2号 及び4号に該当し、「処理てん末状況」欄の1行目から2行目及び5行目の非開示 とした部分は条例 16 条6号に該当し、「処理てん末状況」欄の 10 行目から 16 行 目の非開示とした部分は条例 16 条2号に該当するとして、それぞれ当該部分を非 開示とする一部開示決定を行った。 審査請求人は、審査請求書及び意見書において、実施機関が非開示とした本件対 象保有個人情報1のうち、「処理てん末状況」欄の2行目から3行目、9行目及び 17 行目(以下「本件非開示情報1」という。)並びに5行目から8行目(以下「本 件非開示情報2」という。)、また、本件対象保有個人情報2のうち、「処理てん 末状況」欄の1行目から2行目及び5行目(以下「本件非開示情報3」という。) について開示を求めていることから、審査会は、本件非開示情報1、2及び3の非 開示妥当性について判断する。 - 5 - ウ 条例の定めについて 条例 16 条2号本文は、「開示請求者以外の個人に関する情報(事業を営む個人 の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日 その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの (他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することが できることとなるものを含む。)又は開示請求者以外の特定の個人を識別すること はできないが、開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害す るおそれがあるもの」を非開示情報として規定している。また、同号ただし書にお いて、「イ 法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又 は知ることが予定されている情報」、「ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護 するため、開示することが必要であると認められる情報」、「ハ 当該個人が公務 員等…である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、 当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」のいずれ かに該当する情報については、同号本文に該当するものであっても開示しなければ ならない旨規定している。 条例 16 条6号は、「都の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若し くは地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することに より、…当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼ すおそれがあるもの」を非開示情報と規定している。 エ 本件非開示情報の非開示妥当性について (ア)本件非開示情報1及び3について 審査会が見分したところ、本件非開示情報1及び3には、110 番通報の現場に 臨場した警察官が、通報者等の関係者から事情聴取し、事案を総合的に評価、判 断した内容が記載されており、これらの情報を開示することとなると、110 番処 理簿の記載内容が形骸化することにつながり、110 番通報に係る現場の状況、警 察官が執った措置、処理てん末等の必要な情報が得られなくなるなど、110 番処 理事務の適正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められることから、 条例 16 条6号に該当し、非開示が妥当である。 - 6 - (イ)本件非開示情報2について 審査会が見分したところ、本件非開示情報2には、開示請求者以外の個人に関す る情報が記載されており、これらの情報は、条例16条2号本文に該当し、その内容 及び性質から同号ただし書のいずれにも該当しない。 また、110番通報は、関係者の秘密を守るという信頼関係に基づき、関係者が事 案の早期解決を求めて氏名や事案の内容等、自らが知り得る情報を警察に託してい るものであり、その内容を開示することとなると、当該関係者との信頼関係が崩れ、 今後、関係者からの協力が得られにくくなるなど、警察業務の適正、円滑な運営に 支障を及ぼすおそれがあると認められることから、条例16条6号に該当する。 以上のことから、本件非開示情報2は条例16条2号及び6号に該当し、非開示が 妥当である。 よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。 (答申に関与した委員の氏名) 渡辺 忠嗣、鴨木 房子、寺田 麻佑、前田雅英 - 7 -
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