陸運と安全衛生 - 陸上貨物運送事業労働災害防止協会

陸運と安全衛生 №559 平成 28 年 2 月 1 日(毎月 1 回 1 日発行)
(1)
安全は荷主と協力 みんなで実行
平成 28 年 2 月 №559
発行所 陸上貨物運送事業労働災害防止協会
〒108-0014 東京都港区芝 5 丁目 35 番 1 号
産業安全会館内 ☎03-3455-3857 代表
http://www.rikusai.or.jp
会員の方の購読料は会費に含まれております。
(印刷物による年間購読料 3,600 円)
○ フォークリフト荷役技能2級検定 申込み受付開始(1)~(2)
○ 平成27年度フォークリフト荷役技能検定2級の実施結果(3)
○ [第4回]陸運事業者のためのメンタルヘルス対策 (4)~(8)
○ 災害事例とその対策(荷役災害) ・・・・・・・・・・ (9)
○ 安全管理士の着眼点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
○ 小企業無災害記録表彰 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
○ 労働災害発生状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
○ 「STOP!転倒災害プロジェクト」を継続実施 ・・・
(10)
(11)
(11)
(11)
【陸災防の技能検定受付開始のお知らせ】
「フォークリフト荷役技能 2 級検定」申込み受付開始
~検定日は平成 28 年 4 月 27 日(水)~
フォークリフトは、製造業、陸運業、商業など幅広い業種において活用されていますが、不安全
な作業による重篤な労働災害も多く発生しており、フォークリフトによる安全な荷役作業の徹底が
求められています。
このため、陸上貨物運送事業労働災害防止協会では、荷役作業の労働災害の防止を推進すること
を目的として、フォークリフト運転者の安全、正確、迅速な荷役作業を評価・認定する「フォーク
リフト荷役技能検定」を平成 27 年度より実施しています。
平成 28 年度の第 1 回目の技能検定試験は、2 級検定を平成 28 年 4 月 27 日(水)に以下によ
り実施いたします。また、第 2 回目は 10 月~11 月に予定しております。
多数のフォ―クリフト運転者の皆様のご参加をお待ちしております。
フォークリフト荷役技能検定(2 級)とは
フォークリフト運転技能講習修了後 3 年程度のフォークリフトによる荷役作業の実務経験を有する
中級のフォークリフト運転者を標準として技能検定を実施します。
技能検定試験は、学科試験及び実技試験(点検試験・運転試験)で行います。
受検資格
フォークリフト運転技能講習修了後、2 年以上の実務経験を有する者
検定日、受検会場、スケジュール
検定日 平成 28 年 4 月 27 日(水)※
受検会場
都道府県
受検会場
住所
①
北海道
北海道トラック総合研修センター
札幌市中央区南 9 条西 1 丁目 1-10
②
福島県
福島県トラック研修センター
福島市飯坂町平野字若狭小屋 32
③
埼玉県
埼玉県トラック総合教育センター
深谷市黒田 2091-1
④
千葉県
千葉県トラック協会 長生研修所
長生郡長生村一松丙 4443-2
⑤
長野県
長野県トラック会館
長野市大字南長池 710-3
⑥
愛知県
西三河トラック輸送サービスセンター
岡崎市宇頭町字久屋名 1-2
陸運と安全衛生 №559 平成 28 年 2 月 1 日(毎月 1 回 1 日発行)
⑦
都道府県
受検会場
愛媛県
愛媛県トラック総合サービスセンター
(2)
住所
松山市井門町 1081 番地 1
※ ①北海道は、学科試験のみ実施し、実技試験は別日(調整中)に行います。
平成 28 年度第 2 回は、10 月~11 月に下記 11 道県での実施を予定しています。
(北海道、岩手県、宮城県、秋田県、福島県、神奈川県、長野県、静岡県、徳島県、愛媛県、福岡県)
定員 各受検地 約 20 名
お申込みについて
平成 28 年 2 月 1 日(月)から開始します。
陸災防本部ホームページで希望受検地の空き状況を確認後、受検申請書をダウンロードし、必要事
項を記載の上、陸災防本部にファックス又は郵送にてお申込みください。
受検費用の振り込み等については、下記「検定の詳細について」からご確認ください。
受検 2 週間前を目途に、受検票等をご本人様あてに郵送します。
試験科目と合格基準
試験科目
学科試験
実技試験
試験内容の概要
荷役作業一般、関係法令及びフォークリフトの走行・荷役・力
学についての基本的な知識(計 50 問、○×方式、40 分)
。
配点
300 点
(点検試験)
作業開始前点検(43 項目)の各項目について点検を行う。
200 点
(実技試験)
所定の運転コースで、適切な走行、運搬、積卸し作業を行う。
500 点
【合格基準】
合格者は、学科試験及び実技試験のいずれにも合格した者です。
学科試験の合格者は、学科試験の点数が満点の 80%以上の者
実技試験の合格者は、点検試験と運転試験の合計点数が 80%以上で、かつ点検試験の点数及び
運転試験の点数がいずれも、それぞれの満点の 60%以上の者
受検費用
学科試験受検手数料 5,400 円(税込)
実技試験受検手数料 21,600 円(税込)
合計
27,000 円(税込)
検定の更新
検定合格者には、有効期間を記載した合格証を交付します。
合格証は、5 年毎にフォークリフト運転業務従事者教育を受講いただくことを条件に更新します。
検定の詳細について
本技能検定の受検案内等の詳細については、陸災防ホームページの「フォークリフト荷役技能検
定」ページからご覧いただけます。
http://www.rikusai.or.jp/public/ginou-kentei/
検定の申込み、問合せ先
陸上貨物運送事業労働災害防止協会 技術管理部
東京都港区芝 5-35-1 産業安全会館 6 階
TEL:03-3455-3857 / FAX:03-3453-7561 / MAIL:[email protected]
陸運と安全衛生 №559 平成 28 年 2 月 1 日(毎月 1 回 1 日発行)
(3)
【陸災防の技能検定について】
平成 27 年度 フォークリフト荷役技能検定2級の実施結果に
ついて
陸災防では、平成 27 年度より、フォークリフト荷役技能検定を実施しました。この検定制度は、フォ
ークリフト運転技能講習修了者等を対象として、より安全で正確かつ迅速な作業を評価・認定し、労働災
害の防止に寄与することを目的としているもので、平成 27 年度は 11 月 9 日(月)に全国 9 か所で検定 2
級試験を実施し(神奈川・長野は別日に実技を開催)
、96 名が受検、46 名が合格する結果となりました。
受検者と合格者の概要
受検者
学科のみ合格者
実技のみ合格者
両方合格者
合格率
96 名
50 名
61 名
46 名
48%
各試験科目の概要
試験科目
学科
最高点
平均点
実技
点検
運転
297 点
200 点
497.5 点
240 点
181 点
361 点
学科試験
学科試験の内容は、関係法令、荷役装置、走行
装置、力学、荷役一般から出題しました。
このうち、走行装置と荷役装置については正答
率が高かったものの、関係法令、荷役一般は誤解
答が多く見受けられました。
関係法令はフォークリフト運転士テキストから
出題しました。
荷役一般は、主にはい作業主任者テキスト、荷
役作業安全ガイドラインから出題しました。はい
作業と荷役ガイドラインの基本的な知識を問いま
した。
点検試験
実技のうち点検試験は、多数の受検者が合格レ
ベルに達していましたが、
「油圧ホースの状態の確
認」
「インチングペダルの点検」について、確認が
できていない方が比較的多く見受けられました。
運転試験
運転試験は、合格した方と不合格の方に大きな
学科試験
差がありました。まず、コースと手順が頭に入っ
ておらず、順路を間違える方や二段取りをしない
方が見受けられました。そして最も多かったのが、
必要な個所での指差呼称の安全確認をしない方で
した。安全確認はこの検定に限らず、日頃から必
ず実施しなければならないものですので、是非こ
の点に留意していただければと思います。また、
規定時間をオーバーする方も多くいました。でき
れば、事前に一度はコースを設定し、練習してい
ただければと思います。
次回は 4 月 27 日(水)に実施
次回の検定は 4 月 27 日(水)に第一回目を実
施します。今回、残念ながら不合格だった方、学
科・実技のいずれかに合格された方の再度の受検
をお待ちしています(当誌 1 頁~2 頁をご覧くだ
さい)
。
また、点検、実技については動画を用意するこ
とを予定します。2 月初旬からホームページで閲
覧できるようにしますので、ご参考にしていただ
ければと思います。
点検試験
運転試験
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(4)
陸運事業者のためのメンタルヘルス対策
≪第 4 回(最終回) 「心理的負荷による精神障害の認定基準」≫
最終回の第 4 回は、
「心理的負荷による精神障害の認定基準」について解説します。
Ⅰ 精神障害に関する事案の労災補償状況
平成 24 年度~平成 26 年度までの 3 年間の労災補償状況は次のとおりです。
連載第 1 回に記載したとおり、平成 26 年度の業種別(中分類)の支給決定件数において、
「道路貨
物運送業」41 件(全産業の 8.2%)と前年度の 24 件から大幅に増加し、最も多い業種となってしまし
ました。さらに、申請件数も 84 件と前年の 73 件と増加している状況であり、支給決定件数の増加も
懸念されます。
Ⅱ「心理的負荷による精神障害の認定基準」について
1 労働災害としての精神障害
精神障害は、外部からのストレス(仕事によるストレスや私生活でのストレス)とそのストレ
スヘの個人の対応力の強さとの関係で発病に至ると考えられています。発病した精神障害が労災
認定されるのは、その発病が仕事による強いストレスによるものと判断できる揚合に限ります。
仕事によるストレス(業務による心理的負荷)が強かった場合でも、同時に私生活での強いス
トレス(業務以外の心理的負荷)
、その人の既往症やアルコール依存など(個体側要因)が関係
している揚合には、どれが発病の原因なのかを医学的に慎重に判断しなければなりません。
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(5)
精神障害は、さまざまな要因で発病します
業務による心理的負荷
業務以外の心理的負荷
例 事故や災害の体験
仕事の失敗
過重な責任の発生
仕事の量・質の変化
など
例 自分の仕事
家族・親族の出来事
金銭関係
など
精神障害の発病
個体側要因
既往歴
アルコール依存症
生活史(社会適応状況)
など
2 労災認定のための要件
①認定基準の対象となる精神障害を発病していること
②認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね 6 か月の間に、業務による強い心理的負荷が
認められること
③業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
○ 「業務による強い心理的負荷が認められる」とは、業務による具体的な出来事があり、その
出来事とその後の状況が、労働者に強い心理的負荷を与えたことをいいます。
○ 心理的負荷の強度は、精神璋害を発病した労働者がその出来事とその後の状況を主観的にと
う受け止めたかではなく、同種の労働者が一般的にどう受け止めるかという観点から評価し
ます。
「同種の労働者」とは職種、職場における立揚や職責、年齢、経験などが類似する人を
いいます。
3 認定要件を満たすかどうかの判断方法
①認定基準の対象となる精神障害かどうか
認定基準の対象となる精神障害は、国際疾病分類第 10 回修正版(ICD-10)第V章「精神およ
び行動の障害」
(表)に分類される精神障害であって、認知症や頭部外傷などによる障害(FO)
およびアルコールや薬物による障害(F1)は除きます。
業務に関連して発病する可能性のある精神障害の代表的なものは、うつ病(F3)や急性ストレ
ス反応(F4)などです。
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(6)
表 ICD-10 第Ⅴ章「精神及び行動の障害」分類
疾病の種類
分類コード
FO
症状性を含む器質性精神障害
FI
精神作用物質使用による精神および行動の障害
F2
統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害
F3
気分[感情]障害
F4
神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害
F5
生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群
F6
成人のパーソナリティおよび行動の障害
F7
精神遅滞〔知的障害〕
F8
心理的発達の障害
F9
小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害、特定不能の精神障害
②業務による強い心理的負荷が認められるかどうか
労働基準監督署の調査に基づき、発病前おおむね 6 か月の間に起きた業務による出来事につい
て、別表1「業務による心理的負荷評価表」
(以下、
「別表1」という。
)により「強」と評価さ
れる場合、認定要件の②を満たします。
「別表1」URLhttp://www.rikusai.or.jp/public/e-mail_magazine/no.63/beppyou1_gyoumuniyoru-shinritekihukahyoukahyou.pdf
認定基準では、出来事と出来事後を一連のものとして総合評価を行います。具体的な評価手順
は、次のとおりです。
「特別な出来事」に該当する出来事がある場合
別表1の「特別な出来事」に該当する出来事が認められた場合には、心理的負荷の総合評価を
「強」とします。
「特別な出来事」に該当する出来事がない場合
以下の手順により心理的負荷の強度を「強」
「中」
「弱」と評価します。
(1)
「具体的出来事」への当てはめ業務による出来事が、別表1の「具体的出来事」のどれに
当てはまるか、あるいは近いかを判断します。
なお、別表1では、
「具体的出来事」ごとにその平均的な心理的負荷の強度を、 強い 方
から「Ⅲ」
「Ⅱ」
「I」と示しています。
(2)出来事ごとの心理的負荷の総合評価
当てはめた「具体的出来事」の欄に示されている具体例の内容に、事実関係が合致する
場合には、その強度で評価します。
事実関係が具体例に合致しない揚合には、
「心理的負荷の総合評価の視点」の欄に示す事
項を考慮し、個別の事案ごとに評価します。
(3)出来事が複数ある場合の全体評価
a 複数の出来事が関連して場合には、その全体を一つの出来事として評価します。原則
として最初の出来事を具体的出来事として別表1に当てはめ、関連して生じたそれぞれ
の出来事は出来事後の伏況とみなし、全体の評価をします。
b 関連しない出来事が複数生じた場合には、出来事の数、それぞれの出来事の内容、時
間的な近接の程度を考慮して全体の評価をします(次の図を参照)
。
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強
中
中
中
中
弱
中
弱
弱
弱
または
弱
・・・
(「中」が複数)
(7)
強
強
または
中
近接の程度、出来事の数、
その内容を考慮して全体を
評価します
長時間労働がある場合の評価方法
長時間労働に従事することも精神障害発病の原因となり得ることから、長時間労働を次の 3 通
りの視点から評価します。
(1)
「特別な出来事」としての「極度の長時間労働」
発病直前の極めて長い労働時間を評価します。
【
「強」になる例】
・発病直前の 1 か月におおむね 160 時開以上の時開外労働を行った揚合
・発病直前の 3 週問におおむね 120 時間以上の時間外労働を行った揚合
(2)
「出来事」としての長時間労働(具体的出来事 16)
発病前の 1 か月から 3 か月間の長時間労働を出来事として評価します。
【
「強」になる例】
・発病直前の 2 か月間連続して 1 月当たりおおむね 120 時間以上の時間外労働を行った
場合
・発病直前の 3 か月間連続して 1 月当たりおおむね 100 時間以上の時間外労働を行った
場合
(3)他の出来事と関達した長時間労働(恒常的長時間労働が認められる場合の総合評価)
出来事が発生した前や後に恒常的な長時開労働(月 100 時開程度の時開外労働)があっ
た場合、心理的負荷の強度を修正する要素として評価します。
【
「強」になる例】
・転勤して新たな業務に従事し、その後月 100 時間程度の時間外労働を行った揚合
上記の時開外労働時間数は目安であり、この基準に至らない場合でも、心理的負荷を「強」と
判断することがあります。
※ ここでの「時間外労働」は、週 40 時間を超える労働時間をいいます。
評価期間の特例
認定基準では、発病前おおむね 6 か月の開に起こった出来事について評価します。ただし、い
じめやセクシュアルハラスメントのように、出来事が繰り返されるものについては、発病の 6 か
月よりも前にそれが始まり、発病まで継続していたときは、それが始まった時点からの心理的負
荷を評価します。
陸運と安全衛生 №559 平成 28 年 2 月 1 日(毎月 1 回 1 日発行)
(8)
③‐1 業務以外の心理的負荷による発病かどうか
「業務以外の心理的負荷評価表」を用い、心理的負荷の強度を評価します。
「Ⅲ」に該当する出来事が複数ある揚合などは、それが発病の原因であるといえるか、慎重に
判断します。
業務以外の心理的負荷評価表
心理的負荷の強度
出来事の類型
具 体 的 出 来 事
Ⅰ
① 自分の出来事
Ⅱ
離婚又は夫婦が別居した
Ⅲ
☆
自分が重い病気やケガをした又は流産した
☆
自分が病気やケガをした
☆
夫婦のトラブル、不和があった
☆
自分が妊娠した
☆
定年退職した
☆
② 自分以外の家族・
配偶者や子供、親又は兄弟が死亡した
☆
親族の出来事
配偶者や子供が重い病気やケガをした
☆
親類の誰かで世間的にまずいことをした人が出た
☆
親族とのつきあいで困ったり、辛い思いをしたことがあった
③ 金銭関係
☆
親が重い病気やケガをした
☆
家族が婚約した又はその話が具体化した
☆
子供の入試・進学があった又は子供が受験勉強を始めた
☆
親子の不和、子供の問題行動、非行があった
☆
家族が増えた(子供が産まれた)又は減った(子供が独立して家を離れた)
☆
配偶者が仕事を始めた又は辞めた
☆
多額の財産を損失した又は突然大きな支出があった
☆
収入が減少した
☆
借金返済の遅れ、困難があった
☆
住宅ローン又は消費者ローンを借りた
☆
④ 事件、事故、災害
天災や火災などにあった又は犯罪に巻き込まれた
の体験
自宅に泥棒が入った
☆
交通事故を起こした
☆
軽度の法律違反をした
⑤ 住環境の変化
☆
☆
騒音等、家の周囲の環境(人間環境を含む)が悪化した
☆
引越した
⑥ 他人との人間関係
☆
家屋や土地を売買した又はその具体的な計画が持ち上がった
☆
家族以外の人(知人、下宿人など)が一緒に住むようになった
☆
友人、先輩に裏切られショックを受けた
☆
親しい友人、先輩が死亡した
☆
失恋、異性関係のもつれがあった
☆
隣近所とのトラブルがあった
☆
③‐2 個体側要因による発病かどうか
精神障害の既往歴やアルコール依存状況などの個体側要因については、その有無とその内容
について確認し、個体側要因がある揚合には、それが発病の原因であるといえるか、慎重に判
断します。
Ⅲ まとめ
認定基準の別表1「業務による心理的負荷評価表」は、業務による心理的負荷を引き起こす具体
的出来事を掲げたものですが、言い換えれば、これらの出来事が職場におけるストレス要因です。
この要因、つまり出来事を低減、そして排除できれば、業務上の精神障害の発症予防つながり、職
場におけるメンタルヘルス対策を進める重要な手段となります。
陸運と安全衛生 №559 平成 28 年 2 月 1 日(毎月 1 回 1 日発行)
災害事例
と
その対策
1
(9)
ロールボックスパレット(かご台車)がスロ
ープで逸走、転倒したロールボックスパレ
ットの下敷きになる 「逸走」:無人の車両が重力等により動き出すこと
事業の種類:陸上貨物運送事業(道路貨物
運送業)
2 発生時刻 :午前 8 時 30 分頃
3 発生場所 :当該事業場営業所のプラット
ホーム
4 被災者
:トラック運転手 男 41 歳
経験年数 8 年
5 傷病の程度:死亡(死因:脳挫傷)
6 災害発生状況
① 被災者はロールボックスパレット(荷は書籍
で 900 ㎏)をトラックに乗せるため、同僚と二
人で当該ロールボックスパレットの両側から
押して移動していた。エプロンより約 25 ㎝低
いトラックの荷台の高さに合わせるために設
けられたレベラー(可動式の傾斜路)を下る際、
ロールボックスパレットのスピードが出過ぎ
ないよう二人はロールボックスパレットの下
側に回り込み、抑えながら下っていたが、抑え
きれず、危険を感じたもう一人の作業員は逃げ
たが、被災者は逃げられず、水平なトラックの
テールゲートでキャスターが引っかかり、倒れ
てきたロールボックスパレットの下敷きにな
り、脳挫傷で死亡した。
② 傾斜路の勾配は大半が 6 度であるが、下端に
近い部分で 12 度になり、さらに最後は 20 度
になる構造になっており、ロールボックスパレ
ットに勢いがつくとキャスターが平らな荷台
やテールゲートに掛かった時点で転倒しやす
い構造となっていた。(下欄の図を参照)
③ また、被災者はテールゲートの上で尻餅をつ
き、前屈状態で挟まれており、傾斜路を後ろ向
きで歩いてきて、水平のテールゲートにかかっ
た際、足を取られたものとみられる。
7 災害発生原因と問題点
⑴ 900 ㎏もの重量があるロールボックスパレ
ットを傾斜路で扱おうとしたこと
⑵ ロールボックスパレットが傾斜路で勢いが
付き、人手で扱いきれなくなったこと
⑶ 勢いのついたロールボックスパレットが、
20 度の勾配差につまずくように脚部のみ急減
速となり、転倒したこと
⑷ ロールボックスパレットを支えていた被災
者が、20 度の勾配差につまずき、転倒したこと
8 再発防止対策
900 ㎏のロールボックスパレットを 10 度の勾
配の傾斜路で静止させているためには、傾斜の方
向に約 156 ㎏の力を要する。本災害の場合、傾斜
は 20 度近くとなり、これを支えるためには 300
㎏を超える力が必要であり、人間には不可能なこ
とである。
傾斜路でロールボックスパレットを扱う場合
は、重量を 500 ㎏程度に制限するとともに、傾斜
路では複数の作業員で取り扱うこと、勾配が 10
度を超える場合は、フォークリフトで運搬するこ
とが必要である。
今後ロールボックスパレットの需要はいっそ
う広がるものと見られることから、ロールボック
スパレットは傾斜に弱いことを念頭に入れ、エプ
ロンにはレベラーではなく、リフターを設置する
ことを検討する必要がある。
参考
【厚生労働省及び独立行政
法人労働安全衛生総合研究
所がリーフレットを作成】
「ロールボックスパレッ
ト使用時の労働災害防止
マニュアル」
陸運と安全衛生 №559 平成 28 年 2 月 1 日(毎月 1 回 1 日発行)
(10)
安全管理士 労働安全衛生マネジメントシステムの ISO 化
安全管理士 酒井 雅彦
の着 眼 点
インターネットの情報によると、労働安全
因の調査からリスク低減措置の実施・見直し
衛生マネジメントシステムが、2016 年 10 月
まで、一連のシステムとして運用するもので
を目途にして、いよいよ ISO 化されるようで
す。ただ、このリスクアセスメントも、リスク
す。労働安全衛生に関する国際標準ができて
低減措置を決定・実施するところで終ってし
しまうわけです。かつて、ISO 認証取得が盛ん
まい、その効果の確認・見直しまでできている
であった頃のことを思い出しました。今回は、
事例は少ないようです。当然のことながら、災
どうなっていくのか。
害の防止に有用なものとするためには、リス
陸運業では、労働安全衛生マネジメントシ
ステムは少数派で、多くは運輸安全マネジメ
ント制度に取り組んでいると思いますが、労
クアセスメントをシステムとして行う必要が
あります。
ところで、リスクアセスメントの良い点は、
働安全衛生マネジメントシステムの ISO 化に
対策(リスク低減措置)を検討するにあたりそ
より、陸運業の荷主に多い製造業関連が、この
の順序があることと、残留するリスクの明確
ISO 化に伴いどのように対応するかは別とし
化、対策により発生する新たなリスクの有無
て、安全衛生に関する取組みについて今まで
の検証にあると思います。対策の検討順につ
以上のことを陸運業に求めてくるのではない
いていえば、まず「本質安全化」からスタート
かと思います。
するのですが、なかなか今までの考え方を変
災害が発生すると、事例研究会で災害の発
えることは難しいようで、研修を行うと、中に
生原因を調査・分析して再発防止対策を立て
は「そんなことを考えてもいいとは思わなか
るわけですが、事例研究会の出席者の多くは、
った。」と話された参加者もいました。
その経験から実施可能な対策の限界が分かっ
実際には対策がすでに見えていても、ちょ
てしまっているため、原因の調査・分析の結果、
っと原点に立ち戻り、できる・できないは別に
原因となった行動に焦点をあてる傾向が多い
して、そもそもから考えてみることは、結果と
ような気がします。そのため対策は、主に人の
して、人の行動に頼る「管理的対策」になった
行動面に軸を置いた「管理的対策」とか「個人
としても、残留リスク・新たなリスクを明確に
用保護具使用」が多くなってしまいます。
できるので、災害再発防止を検討するうえで
人の行動面に頼る対策なので、その継続性
は重要なことだと思います。
や効果が確認しにくく、災害が減少しても、対
労働安全衛生マネジメントシステムの ISO
策による効果なのか、結果として減少したの
化により、さらなる安全衛生への取組みを求
かが把握しにくいものとなっています。この
められると予想される中、安全衛生を災害原
ため、同様な災害が発生したとき、前回と比較
因の調査・分析から効果の検証・見直しまでシ
して何が不足していたのかが不明で、再び同
ステムとして行うことが重要になると思うの
じような対策を立てることになっているので
ですが、システムそのものの導入が難しくて
はないかと思います。
も、
「本質安全化」から考える、リスクアセス
さて、事例研究会での原因を調査・分析する
手法に、リスクアセスメントがあります。リス
クアセスメントの手順はご承知のとおり、原
メントの考え方を導入していただければ、と
思います。
陸運と安全衛生 №559 平成 28 年 2 月 1 日(毎月 1 回 1 日発行)
(11)
陸運労災防止協会の表彰制度による小企業無災害記録事業場 〔平成27年12月〕
第3種( 7年間) ・東金液輸株式会社
千葉県支部 第2種( 5年間) ・有限会社タカシン運輸サービス
業種別労働災害発生状況
死傷
平成27年1月~12月 平成26年1月~12月
[速報値]
[速報値]
死亡者数 構成比 死亡者数 構成比
(人)
(%)
(人)
(%)
業種
平成 28 年 1 月 7 日現在
死亡
項目
福島県支部
前年比較
増減数
(人)
増減率
(%)
平成27年1月~12月 平成26年1月~12月
[速報値]
[速報値]
死傷者数 構成比 死傷者数 構成比
(人)
(%)
(人)
(%)
前年比較
増減数
(人)
増減率
(%)
-1.9
全
産
業
885
100.0
969
100.0
-84
-8.7
104611
100.0
106674
100.0
-2063
製
造
業
146
16.5
171
17.6
-25
-14.6
24094
23.0
24910
23.4
-816
-3.3
業
10
1.1
12
1.2
-2
-16.7
195
0.2
230
0.2
-35
-15.2
鉱
建
業
310
35.0
359
37.0
-49
-13.6
14259
13.6
15792
14.8
-1533
-9.7
交 通 運 輸業
設
21
2.4
14
1.4
7
50.0
2932
2.8
2963
2.8
-31
-1.0
陸上貨物運送事業
108
12.2
120
12.4
-12
-10.0
12722
12.2
12834
12.0
-112
-0.9
港 湾 荷 役業
6
0.7
5
0.5
1
20.0
275
0.3
321
0.3
-46
-14.3
37
4.2
42
4.3
-5
-11.9
1541
1.5
1529
1.4
12
0.8
林
業
農業、畜産・水産業
33
3.7
29
3.0
4
13.8
2482
2.4
2444
2.3
38
1.6
第 三 次 産業
214
24.2
217
22.4
-3
-1.4
46111
44.1
45651
42.8
460
1.0
資料出所:厚生労働省
業種、事故の型別死亡災害発生状況 (平成 27 年 1 月~12 月)
項目
業種
合計
墜落・転落
平成 28 年 1 月 7 日現在
はさまれ・ 交通事故 交通事故
飛来・落下 崩壊・倒壊 激突され
巻き込まれ (道路)
(その他)
激突
その他
全
産
業
885
234
4
51
64
62
125
176
3
166
製
造
業
146
24
0
8
16
14
48
4
0
32
建
設
業
310
124
0
24
19
27
33
26
0
57
交 通 運 輸 業
21
4
0
0
0
0
0
9
2
6
他
300
66
4
12
17
18
34
84
1
64
陸上貨物運送事業
108
16
0
7
12
3
10
53
0
7
同 上 対 前 年 増減
-12
0
-1
1
7
-5
-5
-8
-1
0
そ
の
業種、事故の型別死傷災害発生状況 (平成 27 年 1 月~12 月)
業種
項目
合計
3,671
転倒
1,873
激突
954
681
410
675
その他
1,456
854
8
1,762
378
-112
-46
-73
26
-24
40
-14
-78
(注) 上記 2 表の右端の列の「その他」は、「墜落・転落」~「交通事故(その他)」以外をまとめたもの
詳細は、陸災防ホームページ http://www.rikusai.or.jp に掲載
-42
0
92
7
陸上貨物運送事業
同 上 対 前 年 増減
12,722
墜落・転落
平成 28 年 1 月 7 日現在
はさまれ・ 交通事故 交通事故 動作の反動・
飛来・落下 崩壊・倒壊 激突され
巻き込まれ (道路)
(その他) 無理な動作
「STOP!転倒災害プロジェクト」を継続実施!
厚生労働省及び当協会を含む労災防止団体は、昨年取り組みました「STOP!転倒災害プ
ロジェクト 2015」を、期限を設けずに継続することとし、本年から「STOP!転倒災害プロ
ジェクト」として取り組むこととしました。
今後も、身近な災害のひとつである転倒の防止対策をお願いします。
◆厚生労働省特設サイト→ http://anzeninfo.mhlw.go.jp/information/tentou1501.html
◆陸災防作成リーフレット→ http://www.rikusai.or.jp/public/leaflet/tentou-leaf.pdf