ポリマーブレンドにおける相構造

ポリマーブレンドにおける相構造
最近の自動車・電子情報産業などにおける技術革新はめざま
しく、高分子材料に要求される性能は高度化・多様化していま
す。これに対応できる材料の一つに高分子ブレンドがあります。
混ぜる
一相
A
+
B
分子オーダーで相溶 (透明)
二相
相分離 (不透明)
ほとんどのポリマーブレンドは異種高分子同士が溶け合わな
い二相系ですが、異分子間で水素結合的な相互作用を有す
るブレンドにおいては低温で一相、高温で二相となる低温臨
界共溶温度型(LCST型)の相図が見出されています。LCST
型の相図を有するブレンドを一相域から二相域へ温度ジャン
プさせて不安定領域で相分離させるとスピノーダル分解により
相互連結構造が形成され、準安定領域で相分離させると核形
成・成長により海島構造が形成されます。また、海島構造を熱
延伸すると層状構造が形成される場合もあります。このような
相構造の違いを利用して、様々な高性能ポリマーブレンド(ポ
リマーアロイ)が得られています。
様々な形状・サイズの構造
LCST型相図
(低温臨界共溶温度型)
海島
温度
ニ相
相互連結
一相
層状
組成
相分離構造なし
異分子間相互作用
反応誘起相分離を利用したナノ相分離構造
熱可塑性高分子同士をブレンドして液々相分離させると、巨視
的に相分離するためにその相構造のサイズはμmオーダーと
なり、nmオーダーの微細な相構造を得ることは困難でした。
熱硬化性高分子と熱可塑性高分子を反応誘起相分離させる
ことで、サイズがnmオーダーの微細な相分離構造を形成させ
ることができました。例えば、レゾール型フェノール樹脂とポリ
メタクリル酸メチルを反応誘起相分離させることで、サイズが
約150nmの相分離構造が得られました。
150nm
1µm
架橋前のフェノール樹脂とPMMAは熱処理前は一相です。そ
れを熱処理すると、フェノール樹脂が架橋されて分子量が増
加します。分子量の増加に伴い一相域から二相域へと移行す
ることで、液々相分離(反応誘起相分離)が生じます。液々相
分離と競争的に生じる架橋反応により分子運動性が低下する
ことで、液々相分離が停止します。液々相分離の速度に対し
て架橋反応が速い場合には、小さい相分離構造が形成された
段階で液々相分離が停止するためにナノメートル次元のナノ
相構造が形成されます。
温
度
二相
加熱温度
一相
Tg
0
0.5
φPMMA
1.0