カブトムシの遺伝や体の内部を見てみよう! (農学部 生物生産学専攻)市石航 島田新平 普後一 *連絡先 1.性決定塩基配列 これまで、昆虫の性決定様式の中でも カイコガ(Bombix mori)やキイロショウジ ョウバエ(Drosophila melanogaster)はとて もよい実験動物としてよく研究されてき た。しかしこれが鞘翅目昆虫の性決定様 式となると例は非常に少なく、これだけ 日本では人気のあるカブトムシも、日本 に限らず海外でもいまだ分子遺伝学的な 研究は進んでいない。 そこで日本のカブトムシによく似てい る種である鞘翅目昆虫ヒメカブト (Xylotrupes Gideon)(フィリピン・サンタ ロサ島産)を用いて、この性決定様式はど のように決まっているのかを分子遺伝学 的に調べた。これは雌にはなく、雄のみ に存在する(雄特異的な)Y染色体を、 RAPD(Ramdam Amplified Polymorphic DNA)-PCR法と、より再現度の高い SCAR(sequence characterized amplified reigon)マーカーの作成により調査するこ とで明らかになる。すると、ヒメカブト の性別はXY型であろうということが分 かった。 2.内部形態 昆虫の内部形態に関しては多くの研究 が発表されてはいるが、発表から数十年 が経過しているものが少なくなく、また カブトムの詳細な解剖図に関してはあま り資料がない。そこで、上記ヒメカブト の各変態段階において消化管や生殖巣、 神経系の場所等の形態を確かめている。 今のところ、雌成虫では卵管が 12 本あ り、非常に貯卵嚢が大きいこと。成熟し た卵は平均して雌 1 個体あたり 30 個以上 は見られ、交尾器のすぐ近くに貯精嚢の 様なものが見られることからここに一時 的に雄からの精子を貯め、多くの卵を受 精させつつ産卵するのであろうというこ となどが明らかになった。また雄では、 阿部広明 E-mail: [email protected] 成虫の精巣はしっかりと観察できたが、 蛹、前蛹、幼虫期では成虫ほど大きな精 巣を持たないためか非常に観察がしにく い。今後も多くの個体を解剖し、調べて いく必要がある。 3.発生 内部形態同様、発生に関してもカブト ムシに関してはしっかりとした報告は見 られない。今回飼育しているカブトムシ から頭のない個体や、頭は一つだが胴を 二つもつといった異常発生をした個体を 得ることができた。こうした個体がなぜ 生まれてしまうのかといったことを解明 するためには、カブトムシ卵の胚子から 孵化までの発生の過程を調べることが必 要となる。今後取り組んでいくテーマで ある。 図1 カブトムシ成虫精巣 図2 1 頭 2 胴幼虫 図3 無頭幼虫
© Copyright 2024 ExpyDoc