金融市場に激震:中国懸念と原油安から再び世界

【 緊急リポート 】
金融市場に激震:中国懸念と原油安から再び世界同時株安に
~世界連鎖不況の足音、各国政策対応で市場は落ち着きを取り戻せるか?~
2016.1.27
Copyright Mizuho Research Institute Ltd. All Rights Reserved.
《構 成》
1.中国ショック再び
~動揺するグローバル金融市場~
P 2
1.
P2
2.二つの懸念:中国経済と原油価格
2.
~中国政策対応が下支えも、元安、原油安不安は残存~P XX
P 7
3.各国金融政策対応
3.
~日欧は追加緩和検討、米国は利上げ先送りか~
4.各市場の動向と今後の見通し
P XX
P 15
P XX
~当面不安定な相場、各国政策対応が今後のポイント~P XX
P 23
5.世界連鎖不況の足音
~中国経済の減速が続く中、当面不安は拭えず~
P 31
1
1.中国ショック再び
~動揺するグローバル金融市場~
2
金融市場概況 ~年明け以降、中国経済への懸念などが意識され、リスクオフモードに
○ 年明け以降、中国経済への懸念や原油安、地政学的リスクが意識され、金融市場はリスクオフモードに
・ 中国株の急落、人民元安を受けて中国経済への警戒感が高まり、世界的に株価は下落。日経平均は17,000円割れ
・ 長期金利は、米利上げ後も上昇が抑制され、年明け後はリスク回避の動きから全般に低下基調。日本の10年国債利
回りは取引時間中に一時0.19%(1/14)まで低下し、過去最低を更新
・ 為替市場では、中国経済への不安や中東、北朝鮮における地政学的リスクの高まりなどを背景に円高が進行。一方、
新興国通貨安からドルの実効為替レートは底堅く推移
【 主要マーケットの推移 】
130
125
120
(2015年末=100)
日(日経平均)
MSCIエマージング
独(DAX)
米(ダウ平均)
115
110
3.0
2.8
2.6
2.4
(%)
(%)
米国10年国債(左目盛)
日本10年国債(右目盛)
ドイツ10年国債(右目盛)
2.0
115
(2015年末=100)
1.8
1.6
1.4
110
105
1.2
2.2
1.0
105
100
2.0
0.8
100
1.8
95
90
85
80
15/1 15/3 15/5 15/7 15/9 15/11 16/1
(年/月)
1.6
1.4
0.6
95
0.4
90
0.2
1.2
0.0
15/1 15/3 15/5 15/7 15/9 15/11 16/1
(年/月)
円
ドル
ユーロ
85
15/1 15/3 15/5 15/7 15/9 15/11 16/1
(年/月)
(注) 為替はBOE名目実効為替レート。
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
3
昨年夏場以来の世界同時株安再来。懸念新興国・資源国を中心に通貨も下落
○ 中国懸念を受け、世界同時株安が再燃
・ 中国株の急落をきっかけに2016年初から世界的な株安が進行。中国では1週間でサーキットブレーカーが2度発動
・ 中国は、サーキットブレーカーの一時停止、株式の大量売却を禁止する時限措置の実施で対応
○ 懸念新興国・資源国を中心に通貨も下落
・ 南アフリカランドが10%以上下落したほか、先進国通貨でも豪ドル、カナダドルといった資源国の通貨が下落している
・ 新興国ではCDSも上昇しており、新興国市場ならびに新興国経済の先行きに対する警戒感が高まっている
【 世界の株式相場 】
【 世界の為替相場(対ドルレート) 】
2015年夏(8/11→26)
2016年初(12/30→1/18)
(変化率、%)
2015年夏(8/11→26)
2016年初(12/30→1/18)
(変化率、%)
10
10
5
株高
↑
0
▲5
↓
株安
▲10
5
通貨高
↑
0
↓
通貨安
▲5
▲15
▲10
▲20
▲25
▲15
ー
ー
ー
ー
ー
ー
ー
ー
ー
ー
ー
ー
南 ロ ア 豪ポ カ メ ト コ 英韓マ チ ブ ハス ノ 台 ブ シ ユ チ イ ル中 イ タ ペ香サ米日
ア シ ル州 ナ キル ロ 国国 レ リ ラ ン イ ル湾ル ン
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ジ
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ー
ー
サ中 ア ル ノ ブ 日香 ド フ シ ロ 米豪 カ チ ス 南 ポ 英 ペ 台 コ イ メ チ 韓 タ ト マ ブ ハ イ
ウ 国ル ル ラ 本港 イ ラ ン シ 国州 ナ ェ イ ア 国ル湾 ロ ン キ リ 国 イ ル レ ル ン ン
ジ ゼマウジ
ツンガア
ダコスフラ
ンドシ
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シリ リネ
ア ンニェル
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リン
ビ コ
アア シ
ラ チア
カド
ア
ル
ビ ン
ア
ア
ー
▲30
(注)変化率は、上記期間中における2015/8/11もしくは2015/12/30との乖離の最大値。なお、米国の為替相場は名目実効レートの変化率、その他の国は対ドル騰落率。
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
4
各国の長期金利の変化幅は総じて小幅。世界規模の株安が頻発するリスクに留意
○ 各国の長期金利の変化は総じて小幅
・ 先進国に加えて新興国でも多くの国で長期金利が低下するも、変化幅は総じて小幅
・ ただし、トルコなど一部の国では、昨夏の世界同時株安のときと同様に債券安(金利上昇)を観測
○ 世界経済の先行きが不透明な状況下では、今後も世界規模の株安が頻発するリスクに留意が必要
・ 新興国不安を背景に新興国への資金流入は既に先細り傾向。昨夏に続く中国ショックでさらに縮小した可能性がある
・ 昨夏は米利上げ観測の後退で事態が収束。足元は利上げ観測の後退が米国の弱含みを連想させ懸念を高める要因に
【 各国の10年債利回り 】
【 新興国への資金流入 】
(4四半期移動平均)
2015年夏(8/11→26)
2016年初(12/30→1/18)
(変化幅、bp)
その他
香港
(10億ドル)
600
100
80
ブラジル
中国
ロシア
新興国
500
60
金利上昇
(債券安)
↑
40
20
0
↓
金利低下
(債券高)
▲20
▲40
▲60
400
300
200
100
▲80
ー
ー
ル メ ユ シ ノ ド 豪 フ ハ ブ チ ス中韓日 マ台 イ チ タ 南 コ ポ ト
ル
キ
ン ル イ 州 ラ ン ル リ イ 国国本 レ 湾 ン ェ イ ア ロ
マ シ ロ ガ ウ ツ
ド コ
ス
フ ン ラ コ
ン ガ ガ
シ
ニ コ 圏ポ ェ
リ ビ ン
ス リ リ
ア
ア
カ ア ド
ア
ル
ー
ー
ー
ー
ー
ブ 英米 カ イ
ラ 国国ナ ン
ダ ド
ジ
ル
ネ
シ
ア
(注)変化率は、上記期間中における2015/8/11もしくは2015/12/30との乖離の最大値。
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
0
▲ 100
2006
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(年)
(注)対内投資額。その他新興国=アルゼンチン、ブルガリア、チリ、コロンビア、クロアチア、
チェコ、ハンガリー、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、メキシコ、フィリピン、
ポーランド、ルーマニア、シンガポール、南アフリカ、タイ、トルコ、ウクライナ、ウルグアイ
(資料)IMFより、みずほ総合研究所作成
5
米利上げ開始を受けた金融相場終焉の思惑も
○ リスク回避度合いは昨年夏ほどには至っておらず、金融相場終焉の思惑がリスク資産売却圧力を強めている面も
‧ 投資家の不安心理を示すVIX指数はメルクマールの20は超えているものの、昨年夏ほどには上昇していない状況
‧ 一方、米利上げを受けて金融危機以降の金融相場終焉の始まりとの思惑から調整圧力が掛っている可能性も
【 VIX指数(投資家の不安心理を示す指標) 】
90
【 ワールドダラー 】
(10億ドル)
8,000
リーマン・ショック
80
7,000
欧州問題深刻化
(ギリシャ二次支援)
米国債格下げ
70
60
6,000
5,000
ギリシャ・ショック
50
チャイナ・ショック
4,000
40
3,000
30
2,000
20
1,000
10
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
(注) VIX指数はS&P500のオプション・インプライド・ボラティリティ指標で、20以上が投資家
の不安心理の高まりを示すメルクマール。。
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
0
1985
1990
1995
2000
2005
2010
2015
(年)
(注)ワールドダラーは、米マネタリーベースとFRBカストディ・アカウント残高の合計。
(資料) FRBより、みずほ総合研究所作成
6
2.二つの懸念:中国経済と原油価格
~中国政策対応が下支えも、元安、原油安不安は残存~
7
中国:上海株は年明けに続落
○ 上海総合指数は2016年1月4日以降下落が続き、1月26日には2014年12月ぶりの安値にまで低下
・ 1月4日の急落は、製造業PMI(財新版)悪化や元安進行を受けた資金流出懸念の高まりなどが要因
・ 7日には、当日の人民元基準値が約4年10カ月ぶりに安値水準に設定されたことが、中国の景気減速の強まりを受けた
当局の更なる元安容認姿勢であるとの観測につながり、株価が急落
・ 4日から導入されたサーキットブレーカーは4日、7日に発動されたものの、むしろ株価安定に悪影響として8日に一時停止
○ 大株主の株式売却規制などの対策により急落は避けられるとみられるが、景気の足腰は弱く、下落リスクは残存
【 上海総合指数 】
(1990年12月19日=100)
6,000
(倍)
70
2015年6月12日終値:5,166
60
5,000
上海総合指数(左目盛)
50
4,000
過去10年平均実績PER
(右目盛)
3,000
40
30
1月26日終値:2,750
2,000
20
1,000
10
実績PER(右目盛)
0
0
14/7
14/10
15/1
(注)直近の値は、1月26日。
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
15/4
15/7
15/10
16/1
(年/月)
8
中国:上海株は人民元の切り下げに怯える状況
○ 人民元安が資金流出や中国経済下振れの思惑から中国株下落の一因に
【 上海総合指数と人民元相場推移 】
5,300
(1990年12月19日=100)
4,800
4,300
上海総合指数
3,800
3,300
2,800
(元/ドル)
(年/月)
元高 6.15
6.20
6.25
6.30
6.35
6.40
6.45
6.50
元安 6.55
6.60
15/01
第1次人民元ショック
CNY
第2次人民元ショック
15/02 15/03
15/04 15/05
15/06 15/07
15/08
15/09 15/10
15/11 15/12
16/01
(年/月)
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
9
中国:年明け後、財新版PMIの弱含みや北朝鮮問題などから元安が進行
○ 対ドル人民元レートは、2015年末より元安基調が強まる。年明け後は財新版PMIの弱含みや北朝鮮問題などから元売
り圧力が高まり、元安が一段と進行
・ 1月6日、7日には基準値が前日参照値よりも元安に設定されたことが当局の元安容認と捉えられ、元安が進行
・ 新興国を巡るスーパーサイクルの転換とすれば、依然、人民元に下落余地
・ 外貨準備の減少に注目。元買い介入を背景に、2015年末の外貨準備高は2014年末と比べて約5,000億ドル減少
【 対ドル人民元レート 】
【 外貨準備高 】
(兆ドル)
4.0
(元/ドル)
4.5
元高
5.0
3.5
CNY
5.5
3.0
6.0
2.5
6.5
2.0
7.0
1.5
7.5
1.0
8.0
元安
0.5
8.5
0.0
9.0
90
95
00
05
10
15
(年)
(注)日次データ。直近は1月18日。
(資料) 中国外匯交易中心、Bloomberg、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
1990
1995
2000
2005
(注)年次データ。
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
2010
2015
(年末)
10
中国:先行きも、元安傾向が続く見込み
○ 市場での元安期待を受け、先行きも対ドルレートの元安が進む見込み
・ 11日に香港オフショア市場で大規模な元買い介入を行った一方、市場への資金供給を行わなかったことから、CNH
HIBORが12日には過去最高水準(66.815%)まで急上昇。投機的な元売りを抑え込む一方、当局への市場の不信感が
強まる結果に
・ 新為替指標(CFETS発表、13通貨で構成)では、足元の元安幅が2015年の下値水準程度にとどまるなど相対的に安定。
当局は通貨バスケットをより重視する方針で、対ドル人民元レートの元安は大幅でなければ許容する見通し
【 オフショア人民元レート(CNH)と同金利 】
(%)
【 新為替指標(CFETS発表) 】
(2014年12月31日=100)
(元/ドル)
110
6.1
70
CNH(右軸)
60
1/12
6.2
50
6.3
40
6.4
30
6.5
元高
元高
105
100
95
元安
20
6.6
CNH HIBOR 翌日物
10
6.7
0
6.8
15/6
15/7
15/8
15/9 15/10 15/11 15/12 16/1
(注)日次データ。直近は1月18日。
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
(年/月)
元安
90
85
13/01
13/07
14/01
14/07
15/01
15/07
(注)日次データ。直近は1月18日。主要通貨を貿易額で加重平均してみずほ
総合研究所が試算。
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
16/01
(年/月)
11
中国:実質GDPは減速、政策による下支えで景気腰折れは回避の見込み
○ 10~12月期の実質GDPは減速。主要指標の多くは政策効果により持ち直したが、金融業が成長を下押しした可能性
・ 10~12月期の実質GDPは前年比+6.8%と7~9月期(同+6.9%)から減速。2015年通年では同+6.9%と25年ぶりの低成長
・ 一方、10 ~12月期の主要指標は、固定資産投資・消費の伸びが高まったほか、輸出の前年比マイナス幅が縮小するなど
概ね持ち直しを示したが、株取引など金融活動の鈍化が、GDPの減速につながった模様
・ 12月のPMIは、国家統計局版で製造・非製造業とも改善するも、中小企業が多く含まれる財新版は共に低下と、まだら模様
○ 自律的回復が弱い中、政策による下支え強化で腰折れを防ぎ、緩やかな減速にとどめる構図が2016年も続く見込み
【 主要経済指標 】
(前年比、%)
25
実質GDP成長率(右目盛)
社会消費品小売総額(左目盛)
固定資産投資(左目盛)
輸出(左目盛)
20
(前年比、%)
10
60
【 製造業・非製造業PMI 】
〔国家統計局版〕
〔財新版〕
60
製造業
8
58
製造業
58
非製造業
非製造業
56
15
6
56
54
54
10
4
5
2
景気
拡大
50
52
48
50
0
景気
拡大
52
0
46
景気
縮小
48
▲5
44
▲2
46
▲ 10
12
13
14
15
▲4
(年)
(注)1.社会消費品小売総額は小売物価指数、固定資産投資は 固定資産価格
指数で実質化(みずほ総合研究所推計値)。輸出は名目ドルベース。
2. 2013年1~3月期の輸出は虚偽報告による水増しの可能性大。
(資料)国家統計局、海関総署、CEICより、みずほ総合研究所作成
44
10/01 11/01 12/01 13/01 14/01 15/01
景気
縮小
(年/月)
42
40
10/01
11/01
12/01
13/01
14/01
15/01
(年/月)
(注)1. 春節などの季節性が完全には除去されていない点に注意。
2. 国家統計局版のサンプル数は、製造業で3,000社、非製造業で4000社。財新版のサンプル数
は製造業で420社、非製造業で400社強。
(資料)中国国家統計局、CEIC Data、WIND、財新より、みずほ総合研究所作成
12
原油:新興国の減速観測から、株安と原油安のスパイラルに
○ 原油相場はWTIが30ドル割れに
・ ブレントも30ドルを下回り、ドバイ原油については20ドル台半ばまで値を下げる展開に
・ 米国の生産調整が進まない中でイランが原油輸出を再開する見通しとなったことや、世界的な株安が一段安を助長
○ 新興国の減速観測を背景にした株安と原油安のスパイラル
・ 原油安には新興国経済の先行き懸念が織り込まれており、更にそれが減速観測を高める株安要因になるという悪循環
・ 昨年半ば以降の原油安を境にしてSWFの資産残高は減少傾向。オイルマネーの縮小も金融市場が弱含む一因に
【 原油相場の推移 】
(WTI)
【 石油ガス関連SWFの資産残高 】
その他
石油ガス関連
SWFの資産残高
(億ドル)
(ドル/バレル)
400
120
110
200
100
90
0
80
▲ 200
70
60
▲ 400
50
▲72.6%
40
▲ 600
30
20
14/1
14/4
14/7
14/10
15/1
15/4
15/7
15/10
16/1 (年/月)
(注)図表中の変化率は、2014/6/20(終値)と2016/1/15(最安値)との比較。
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
▲ 800
14/9
14/12
15/3
15/6
15/9
15/12 (年/月)
(注)2014/6との比較。
(資料)Sovereign Wealth Fund Instituteより、みずほ総合研究所作成
13
原油:新興国の成長ペース鈍化によって、中期的な原油安局面に入った可能性も
○ 先安期待が高まる原油先物
・ 原油先物(WTI)は投機筋のショートポジションが過去最高に
・ 米国での生産調整の遅れやイランの輸出拡大による超過供給の長期化観測が背景に
・ 価格上昇材料は乏しいが、リスクオフモードが弱まれば短期的にはショートポジションの巻き戻しの可能性も
○ 2000年代半ばから10年続いた原油高トレンドは転換し、原油高が始まる前の2000年代前半の水準へ
・ 新興国経済の成長ペースの鈍化によって、中期的な原油安局面に入った可能性がある
【 原油の先物ポジション 】
【 原油相場の推移 】
万
(万枚)
投機筋のネットロング・ポジション
60
投機筋のロング・ポジション
投機筋のショート・ポジション
50
40
30
20
10
0
10
11
12
13
(注)WTI。
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
14
15
16
(年)
(ドル/バレル)
160
150
140
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
90
ブレント
95
00
WTI
05
(注)週次データ。
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
10
15
(年)
14
3.各国金融政策対応
~日欧は追加緩和検討、米国は利上げ先送りか~
15
米国:ゼロ金利解除決定も、低インフレ及び海外リスクが次の利上げの障害に
○ 12月FOMCは7年にわたるゼロ金利を解除。声明文では漸進的利上げの必要性を強調
・ 政策金利見通しによれば、2016年は4回。利上げを左右する最大のポイントはインフレ率の動向
・ FOMCはインフレ率の下振れリスクを強く警戒。足元では海外リスクが増大、金融市場が不安定化
─── 一段の原油安、ドル高や、中国不安の増大が続けば、今年前半の利上げもままならないことに
【 FOMC参加者が示したインフレ見通しへの不安材料】
【 FOMC参加者の政策金利見通し 】
(%)
4.50
-----------------------------------------------------------------------------------------------
4.00
──────────────────────────────────────────────────────────────────────── ● ────────── ○ ───────
-----------------------------------------------------------------------------------------------
○
●
○
------------------------------------------------------------ ○ -------- ● ● ------- ○ ○ ○ ----● ●
● 12月見通し
○ 9月見通し
○ ○ ○
○
3.50
------------------------------------------ ○ ------ ● ● -- ○ ○ ○ -- ● ● ● ● ● ● - ○ ○ ○ ○ ○ ---
3.00
─────────────── ─ ─────────────── ● ───── ○ ○ ────── ● ───── ○ ──────── ● ● ───────── ○ ───────
●
○ ○
● ● ●
○
---------------------------------------------------- ● ---- ○ ○ --- ● ● ● ● ● ●
● ●
○
○
●
● ● ● ●
○ ○ ○ ○ ○ ○ --
○ ○
○ ○ ○
----------------------------------------------------------------------------------------------● ●
2.50
○ ○ ○
---------------------------------------------------- ● ---------------------------------------○
● ● ● ●
○ ○
----------------------------------------------------------------------------------------------●
2.00
○ ○
● ●
○ ○
●
──────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────
○
● ● ● ● ●
○ ○
----------------------------------------------------------------------------------------------● ●
1.50
○ ○ ○
----------------------------------------------------------------------------------------------● ● ● ● ● ● ●
○ ○
----------------------------------------------------------------------------------------------● ● ●
1.00
①原油及び他の資源価格に対する追加的
なショック、または持続的なドル高が、イ
ンフレ率の持ち直しを遅らせる、もしくは
持ち直しを阻害する可能性がある
○ ○ ○ ○
②労働需給が一段とひっ迫しても、グロー
バルなディスインフレ圧力を相殺するに
は十分でないかも知れない
────────────────────────────────────────── ○ ─────────────────────────────────────────────────
● ● ● ●
○ ○
-----------------------------------------------------------------------------------------------
0.50
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
0.00
○
-----------------------------------------------------------------------------------------------
▲0.50
③(リスク・プレミアムや流動性プレミアムの
影響ではなく、実際に)インフレ期待が小
幅ながら低下しているおそれがある
-----------------------------------------------------------------------------------------------
2016年末
2017年末
(注)12月FOMC資料。
(資料) FRBより、みずほ総合研究所作成
2018年末
長期
(注)2015年12月FOMC議事録(2016年1月6日公表)。
(資料) FRBより、みずほ総合研究所作成
16
米国:インフレ面からは緩やかな利上げが続く公算
○ コア・インフレ率が前年比ベースで1%を割り込む可能性はかなり小さく、インフレ面からは緩やかな利上げが続く公算
・ シミュレーションは、原油市場、ドル、及び新興国成長率に関するショックを与えて実施(1000回)
・下位10%でもコア・インフレ率は上昇。ただし、このケースではインフレ率の持ち直しが遅れるため、利上げ回数は減少
・ 市場ベースのインフレ期待は低下しているが、遅行指標。コア・インフレ率に対する先行性は確認できず
【 コア・インフレ率に関するシミュレーション 】
上位10%
(前年比%)
上位25%
1.9
【 市場ベースのインフレ期待の推移と
他の指標との先行・遅行関係 】
(%)
2.5
1.8
2.4
1.7
2.3
メディアン
1.6
1.5
5年先5年の
フォワード・インフレ率
グレンジャーの 先行→遅行
因果性
コア・インフレ率
2.2
2.1
1.4
原油価格
(WTI)
2.0
1.3
下位25%
1.2
1.1
下位10%
1.0
市場ベースの
インフレ期待
1.9
1.8
1.7
2015
2016
(年/四半期)
1.6
1.5
2015/01
ドル
(貿易加重実効レート)
2016/01
(年/月)
(注)原油価格、原油生産、原油在庫、新興国生産、ドルについてランダムな
ショックを与えて実施。個人消費支出デフレーターベース。
(資料) 米国商務省等より、みずほ総合研究所作成
(注)グレンジャーの因果性は2003Q1~2015Q3のデータに基づく検定結果。ラグは8四半期とし、
インフレ期待以外は前年比変化率を用いている。
コア・インフレ率は個人消費支出デフレーターベース。
(資料) セントルイス連銀等より、みずほ総合研究所作成
17
米国:金融不安の米国経済への影響が懸念材料に。次回3月FOMCでの利上げ先送り
○ 低インフレよりも、金融不安による米経済への影響が重大な懸念材料に。次の利上げは3月から先送りに
・ ハイイールド市場ではベア・スターンズ破たん時並みのストレスが発生。投資家のリスクオフ度合いも昨夏並みに悪化
・ 原油安や金融市場のボラティリティが象徴する先行き不透明感の高まりが、足元まで堅調な雇用に影響する恐れ
─── 雇用統計参照週(12日を挟む1週間)を含め金融不安が持続。1月雇用統計(2/5発表)の下振れリスクが増大
・ 一方、中国(経済指標の回復、大規模な景気対策等)等の動向次第で、投資家心理が好転するアップサイド・リスクも
【 米ハイイールド債のクレジットスプレッド 】
【 国際金融市場のリスクオン・リスクオフ指標 】
0.6
(bp)
2000
プラス=リスク・オン
0.3
1500
0.0
1000
▲0.3
500
▲0.6
マイナス=リスク・オフ
0
88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
(年)
▲0.9
2014/10
2015/4
2015/10
2016/4
(年/月)
(注)米国債10年利回り、世界株価指数(除く米国)、ドル実効レート等より作成。
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
18
米国の景気拡張期間は前回を超える長さに
○ 途切れ途切れながら、前回の73カ月を超えた景気拡張期間
・ 景気拡張期の長さに加えて気がかりなのは、過去の拡張局面に比べた場合の成長率の低さ
【 米国の実質GDP成長率の推移 】
(前期比年率%)
12
92カ 月
10
120カ月
73カ 月
今年1月で
79カ 月目
8
6
4
2
0
-2
-4
-6
-8
-10
1980
85
90
95
2000
05
10
15 (年)
(注)網掛けは景気後退期。
(資料)米国商務省、NBERより、みずほ総合研究所作成
19
ユーロ圏:ECBは3月に追加緩和を決定する見込み
○ ECBは1月21日の政策理事会において、次回理事会(3/10)での追加緩和の可能性を示唆
・ 1月21日の理事会では、声明文に「金融政策の方針を評価し、場合によっては再検討する必要がある」との文言が追加
・ 追加緩和策としては、預金金利の▲0.4%への0.1%ポイントの引き下げを予想。国債購入増額については、12/3の前回
理事会において、一部メンバー(ドイツ)からの強い懸念が示されていたことが明らかになっており、見送る見込み
【 ECBの政策理事会(12/3)の議事要旨(抜粋) 】
インフレ見通しについて
短期的には、過去の油価変動のベース効果の剥落がインフレ率を押し上げる
とみられる。しかし、再び物価が上昇する前に、20 1 6年の春にかけて 新た
な油価の下落が、物価の一時的下落を主導するだろう。
国債購入について
国債購入は、法的に許容されていても、重大なリスクと副作用を伴う。従っ
て、デフレのような 極端な リス クシナリオが顕在化しない限り、非常用手
段として保存されるべきであり、インフレ見通しの多少の修正によって用
いられるべきではない。
月次国債購入額の増額等の手段については、今回は見送るという広範な合
意があった。一方で、これらの再評価を将来行うことも可能だ。
預金金利引き下げについて
(執行部より提案された10bpの預金金利引き下げについて、)あるメンバー
は、特に銀行等の収益性などへの将来にわたる副作用があると指摘した。・・
(中略)・・同時に、あるメンバーは、今の所、マイナス金利の銀行マージンや
金融安定等への副作用は顕在化していないとの見方を示し、今回の理事会
で2 0bpの預金金利の引き下げを志向した。
(注)筆者による抜粋、抄訳、太字は筆者
(資料)ECBより、みずほ総合研究所作成
20
日本:日銀は春闘の行方を注視。為替動向などをにらみ追加緩和の可能性
○ 日銀は1月8日に「(12月)金融政策決定会合における主な意見」を発表。量的緩和補完措置について、日銀に目標達成
の手段と意思があることを示すべきとの発言が出る一方、国債管理政策への関与が強まることや政策長期化への懸念も
○ 日銀は春先の賃金交渉を注視。為替動向などを踏まえ追加緩和を行う可能性
・ 黒田総裁は年初の挨拶で「必要があれば、さらに思い切った対応をする用意がある」と、これまでよりも踏み込んだ発言
・ 追加緩和が行われる場合、国債・ETF・REITなどの資産買入れ増額や、成長基盤融資のドル特則拡充などが想定
【 金融政策決定会合における主な意見 】
【 追加緩和の選択肢 】
緩和策
補完措置
導入について
国債買入れ
について
・現状、外需の不確実性が残るもとで
着実に作用しつつある経済の好循環
を推進する正念場。
・日銀が目標達成のための手段を有し、
かつそれを実施する意思があることを
示すことを最優先すべき。
・国債買入れは新たな発行計画のもと
でも現行の7~10年程度という柔軟な
支持のもとで運営可能。
・国債買入れ平均残存期間の長期化
は、日銀の国債管理政策への事実上
の関与を強め、金融政策の正常化に
要する時間を長期化させる。
(資料)日銀より、みずほ総合研究所作成
現状
検討点等
ETF買い増し
年間3兆円増加
・2015年最大の買入れ額となった6月のペース(月4,400億円)
で買入れを行うには年間5.3兆円の増加ペースが必要
REIT買い増し
年間900億円増加
・2015年最大の買入れ額となった7月のペース(月125億円)
で買入れを行うには年間1,500億円の増加ペースが必要
・銘柄毎の買入れ限度額引き上げにより買入れ余力
国債買い増し
年間80兆円増加
・国債市場の流動性への影響
・国債買入れ持続性への影響
補完策により超長期ゾーンに買入れ余力
米ドル特則拡充
貸付枠120億米ドル ・金融機関のドル調達コスト増加への対応
付利引き下げ
超過準備:0.1%
・金融機関収益への影響
付利を0%とした場合、金融機関の利息収入は約1,000億円
減少
・マネタリーベース目標への影響
・市場とのコミュニケーションへの影響
(総裁は付利引き下げを否定)
(資料)みずほ総合研究所作成
21
新興国:二極化する新興国の金融政策
○ 新興国の金融政策対応はまちまち
‧ 中南米では資金流出やインフレを抑えるため、メキシコ、チリ、コロンビア、ペルーが相次いで利上げ
‧ 一方アジアでは、原油安でインフレ圧力が和らいでいることから景気に配慮した利下げが目立つ
――― ただし、通貨安対応の利上げは景気減速を助長するほか、景気配慮の利下げは通貨安圧力を高めるといった副
作用が懸念される
【 新興国の政策金利 】
( 中南米・アフリカ )
( アジア )
(%)
(%)
15
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
ブラジル
8
インドネシア
7
6
インド
5
南アフリカ
コロンビア
ペルー
チリ
メキシコ
中国
フィリピン
4
マレーシア
3
韓国
タイ
2
台湾
1
10
11
12
13
14
15
16
(年)
0
10
11
12
13
14
15
16
(年)
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
22
4.各市場の動向と今後の見通し
~当面不安定な相場、各国政策対応が今後のポイント~
23
米国株式市場:当面は先行きへの警戒感から不安定な推移を予想
○ 新年入り後、人民元安・中国株安をきっかけに急速に投資家のリスク回避姿勢が強まり、下落。地政学リスクの高まりや
軟調な原油価格も悪材料となっており、下げ止まりの動きが一時的に見られるも、不安定な推移が継続
・ 2015年の企業業績はエネルギー業種が▲6%程度全体の増益率を押し下げる見込み
○ 原油価格の低位での推移や冴えない中国経済減速への警戒感が残存する見込みであり、さらに米国の10~12月期の
企業業績も悪化傾向が確認される予想である等、本格的な反転の材料に乏しく、不安定な推移が続き易い
【 S&P500指数採用企業の利益成長率の業種別寄与度 】
【 投資家センチメントとS&P500指数 】
(pt)
(%)
80
2,200
強気派
弱気派
S&P500指数
70
その他
ヘルスケア
資本財・サービス
消費関連
金融
情報技術
エネルギー
S&P500計
(%)
12
2,000
60
1,800
10
8
6
50
1,600
40
4
2
1,400
30
1,200
20
10
13/1
14
0
▲2
▲4
13/7
14/1
14/7
15/1
15/7
1,000
16/1
(年/月)
(注)強気(弱気)派:機関投資家アンケートにおいて現在の株式相場に対して強気(弱気)と
答えた人の比率。
(資料)Investors Intelligence、Bloombergより、みずほ総合研究所作成
▲6
予想
▲8
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年(予) 2016年(予)
資料)Datastreamより、みずほ総合研究所作成
24
国内株式 :目先は中国金融市場の動向等を材料に荒い値動きが続き易い
○ 人民元安・中国株安をきっかけに円高・日本株安が進行。一時1年3カ月ぶりの安値(日経平均:16,017円)まで下落
・ 中国経済の減速が日本企業に与える悪影響への懸念も高まってきており、中国関連銘柄は特に下げ幅が大きい
・ 12月以降の下落は先物を中心に下落しており、日銀の金融政策への思惑等から一部に投機的取引もある模様
○ 当面は中国の景気減速等への警戒感が燻る一方、日銀による追加緩和期待も意識され易く、ボラタイルな推移を予想
・ 追加緩和期待が後退すれば一時的に円高・日本株安基調が一段と強まる可能性もあり、留意が必要
【 中国株と日経平均、日経中国関連株の推移 】
【 海外投資家の売買動向(週次) 】
(千億円)
(千億円)
180
(2014年末=100)
20
日経平均
日経中国関連株50
上海総合指数
160
現物
15
先物
合計
↑
買
い
越
し
10
5
140
0
120
売
り
越
し
↓
▲5
▲ 10
100
▲ 15
80
15/1
15/3
15/5
15/7
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
15/9
15/11
16/1
(年/月)
▲ 20
15/01
15/03
15/05
15/07
(資料)日本取引所グループより、みずほ総合研究所作成
15/09
15/11
16/01
(年/月)
25
日米株:大幅下落を受けて日米株とも割高感は後退。日本株については割安感も
○ 年初の株価の大幅下落を受けて、TOPIXの予想PERは13倍台、S&P500は15倍台に
・ 日本株については、割安感が意識される水準。米国株は一時台頭していた高値警戒感が後退
【 日米株価の予想PERの推移 】
(倍)
24
日本(TOPIX)
米国(S&P500)
22
20
18
16
14
12
10
12/01
12/07
13/01
13/07
14/01
14/07
15/01
15/07
16/01
(年/月)
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
26
為替:円高ドル安が進展。日銀緩和期待が円安材料も、ドルの上値は重い見通し
○中国金融市場の混乱と原油相場の低迷を受け、円高ドル安が進展
・中国株下落や人民元安の進展、原油価格低迷から先行き不透明感が高まり、安全資産としての円買いが進む
・年明け後の油価下落などにより米独長期金利が共に低迷するなか、ユーロドル相場はもみ合い
○ドル円相場はしばらくドルの上値が重い展開に
・日銀追加緩和期待は円安材料。しかし更なる人民元安や中国株下落のリスクは残存。円先物相場は約3年振りに円買い
持ちに転じており、ドル円相場はしばらくドルの上値が重い状況が続く見通し
【 ドル円相場とユーロドル相場 】
(円/ドル)
【 ドル円相場と円通貨先物ポジション 】
(ドル/ユーロ)
1.25
130
128
ドル円相場
ユーロドル相場(右目盛)
1.20
(円/ ドル)
130
(兆円)
▲ 2.0
IMM通貨先物・円ネットポジション(非商業)(右目盛)
ドル円相場
▲ 1.6
120
126
124
▲ 1.2
1.15
122
120
円売り
持ち高
110
▲ 0.8
100
▲ 0.4
1.10
90
0.0
118
1.05
15/1/5
114 115.86
15/1 15/2 15/3 15/4 15/5 15/6 15/7 15/8 15/9 15/1015/1115/12 16/1
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
0.4
80
116
0.8
1.00
(年/月)
70
12/7
13/1
13/7
14/1
14/7
15/1
15/7
16/1
(年/月)
円買い
持ち高
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
27
米国長期金利:米10年国債利回りは油価下落を受けて低下、当面低下圧力残存
○ 年明け後の油価下落等の市場急変を受けて、米10年国債利回りは2.0%を割り込む水準まで低下
・ FRBの3月利上げ期待の低下もあり、米国債のイールドカーブは全体的に下方シフト
○ 米10年国債利回りは、油価や株価にらみの展開で低下圧力は残存
・ 社債プレミアムや株価ボラティリティと米国債の連動は強まっており、リスクオフモードが続けば更なる低下のリスクも
【 米国債のイールドカーブの変化 】
【 米10年債利回りと市場のリスク姿勢 】
(%)
(bp)
(%)
変化幅(右目盛)
12月15日 (FOMC前)
1月26日 (直近)
2.4
2.2
(前週差平均=0)
▲ 2リスク
0.10
オン
50
40
2.0
30
1.8
20
1.6
10
1.4
0
0.05
▲1
0.00
0
▲ 0.05
1
米10年国債利回り(前週差)
1.2
▲ 10
1.0
▲ 20
0.8
▲ 30
0.6
▲ 40
2年
3年
4年
5年
6年
7年
8年
9年
10年
(注)4年、6年、8年、9年国債利回りは3次スプライン補間により作成。
(資料)Bloombergよりみずほ総合研究所作成
▲ 0.10
2
社債ETFリスクプレミアム
(前週差、右目盛、上下逆)
▲ 0.15
3
VIX指数
(前週差、右目盛、上下逆)
▲ 0.20
リスク
オフ
4
(月/日)
(注)社債ETFリスクプレミアムは、iシェアーズiBoxxドル建てハイイールド社債ETFと
同投資適格社債ETFの価格差。社債ETFリスクプレミアム、VIX指数ともに2015年
7月以降の前週差の平均値を0として標準化。
(資料)Bloomberg より、みずほ総合研究所作成
28
国内長期金利:10年国債利回りは一時過去最低水準を更新 、当面低位で推移
○ 10年国債利回りは中国景気への懸念、原油価格下落、1月以降の日銀による国債買入れ増額を受け低下。2015年1月
につけた過去最低水準(0.195%)を一時下回った後、0.2%台前半に上昇
・ 日銀が量的緩和の補完措置で買入れ国債の年限を長期化したことを受け、イールドカーブはフラットニング
○ 国債利回りは需給両面から金利上昇が抑制された展開が続くと予想
・ 市中国債発行額は2015年度比減額。40年債が増額される一方、2・5・20年債等が減額され、平均償還年限は長期化
【 イールドカーブ 】
【 カレンダーベース市中国債発行額 】
(単位:兆円)
(%)
区分
1.5
2015/11/30
2015/12/30
2015年度(当初) ①
2015年度(補正後) ②
2016年度(当初) ③
②-①
③-①
③-②
40年債
0.4×5回
2.0
0.4×5回
2.0
―
0.4×6回
2.4
0.4
0.4
30年債
0.8×12回
9.6
0.8×12回
9.6
―
0.8×12回
9.6
―
―
20年債
1.2×12回
14.4
1.2×12回
14.4
―
1.1×12回
13.2
▲ 1.2
▲ 1.2
0.9
10年債
2.4×12回
28.8
2.4×12回
28.8
―
2.4×12回
28.8
―
―
0.7
5年債
2.5×12回
30.0
2.5×12回
30.0
―
2.4×12回
28.8
▲ 1.2
▲ 1.2
0.5
2年債
2.5×12回
30.0
2.5×12回
30.0
―
2.3×12回
27.6
▲ 2.4
▲ 2.4
25.8
▲ 0.4
2.0×2回
2.1×10回
25.0
▲ 1.2
▲ 0.8
1.3
1.1
0.3
1年割引短期国債
2.1×2回
2.2×10回
26.2
2.0×2回
2.1×2回
2.2×8回
0.1
10年物価連動債
0.5×4回
2.0
0.5×4回
2.0
―
0.5×4回
2.0
―
―
流動性供給入札
0.8×12回
9.6
0.8×12回
9.6
―
―
9.6
―
―
152.2
▲ 0.4
147.0
▲ 5.6
▲ 5.2
▲ 0.1
5
10
15
20
25
30
(年)
計
152.6
(資料)みずほ総合研究所作成
(資料)財務省より、みずほ総合研究所作成
29
各国金融政策対応によって、市場が落ち着きを取り戻せるかが当面のポイント
○ 日銀、ECBが追加緩和を実施し、米国が利上げを先送りすれば、市場は一旦落ち着く展開か
‧ 一方、期待が高まっているため、各国対応が見送られれば、リスクオフが強まるリスクも
【 今後予定される主なイベント・経済指標(注目材料) 】
日付
1~3月の主なイベント・経済指標
日付
1~3月の主なイベント・経済指標
1/28・29
日・日銀金融政策決定会合
3/4
米・雇用統計
1/29
米・GDP(暫定値)、欧・CPI
3/7
中・外貨準備高
2/1
中・製造業/非製造業PMI、財新製造業PMI
3/8
2/3
中・財新サービス業PMI
日・GDP(2次速報)、中・貿易収支、
欧・GDP(確定値)
2/5
米・雇用統計
3/10
欧・ECB政策理事会、
2/7
中・外貨準備高
3/12
中・鉱工業生産、小売売上高、固定資産投資
2/12
欧・GDP(暫定値)
2/15
日・GDP(1次速報)、中・貿易収支
2/19
米・CPI
2/29
欧・CPI
3/1
中・製造業/非製造業PMI、財新製造業PMI
3/3
中・財新サービス業PMI
3/14・15
3/15
3/15・16
日・日銀金融政策決定会合
米・小売売上高
米・FOMC
3/16
米・CPI
3/25
日・CPI、米・GDP(確定値)
3/31
欧・CPI
(資料) みずほ総合研究所作成
30
5.世界連鎖不況の足音
~中国経済の減速が続く中、当面不安は拭えず~
31
中国の減速は、今後も新興国・資源国経済の下振れに波及する可能性
【 新興国不安の波及経路 】
(資料) みずほ総合研究所作成
32
円高・株安が続けば、輸出下振れや逆資産効果から日本経済を下押し
○ 足元の金融市場の変動は原油安が業績改善に寄与するが、株安や不確実性の高まりなどから最終需要にはマイナス
・金融市場の変動による業績への影響を試算すると、円高のマイナスを原油安の効果が上回る結果。ただし、設備投資に
ついては、不確実性の高まりによる先送りでマイナス効果大
・株安による個人消費への資産効果を計算すると、約1.4兆円のマイナス(以上の試算結果は幅を持ってみる必要がある)
○ 金融市場だけでなく、海外の実体経済の下振れによる日本の輸出への影響についても、注意が必要
【 金融市場の変動による業績・最終需要への影響試算 】
(原油安・円高・株安の影響)
原油安
円 高
株 安
約50ドル/バレル⇒
約25ドル/バレル
121円/ドル⇒
117円/ドル
約19,200円⇒
約17,000円
(不確実性の高まりによる設備投資への影響)
(%)
0.1
0.0
▲ 0.1
輸入コスト減
輸入コスト減
(約6兆円)
(2兆円弱)
輸出採算悪化
+第1次所得収支悪化
▲ 0.2
(2兆円弱)
▲ 0.3
輸入コスト:8兆円減
▲ 0.4
▲ 0.5
企業収益改善
(約5兆円)
▲ 0.6
▲ 0.7
実質設備投資増加
実質個人消費減少
(約1兆円)
(1.4兆円)
(注)1.2015年平均値をベースとして、直近(1/18)の値が続いた場合の影響をみずほ総合研
究所マクロモデルにより試算。
2.図中の矢印はすべての波及経路を網羅しているわけではない。
(資料)内閣府、財務省などによりみずほ総合研究所作成
▲ 0.8
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
(カ月)
(注) 2015年(平均)から2016年1月の株価のボラティリティの変化が与える設備投資
への効果を試算。
(資料) 総務省「消費者物価指数」より、みずほ総合研究所作成
33
ハイイールド債の価格下落が進行、投資適格債への波及リスクに警戒が必要
○ 社債市場では、ハイイールド債を中心とした価格下落が進行
・ 投資適格級社債については底堅さを維持しているが、スプレッド拡大の兆しも見られ、警戒が必要
・ ハイイールド社債を業種別に見ると、エネルギー社債の下落が顕著。素材、ユーティリティ(電力等)など一部の業種がこ
れに連れて価格が下落しつつある状況
【 業種別ハイイールド債価格指数(ドル建て) 】
【 社債価格指数の推移(ドル建て) 】
(2015年初=100)
(2015年初=100)
106
115
104
105
110
金融
消費財
ヘルスケア
テクノロジー
通信
工業
ユーティリティ
素材
100
102
95
90
100
85
98
80
96
投資適格債
ハイイールド債
94
15/01
15/07
70
16/01
(年/月)
(資料)Bloombergよりみずほ総合研究所作成
エネルギー
75
65
15/01
15/07
16/01
(年/月)
(資料)Bloomberg より、みずほ総合研究所作成
34
警戒すべきは新興国経済の下振れが世界連鎖不況につながるリスク
○ 当面新興国不安は拭えないが、最も警戒すべきなのは、新興国の減速が先進国にも波及し、世界連鎖不況に陥るリスク
‧ 世界経済は金融危機以降長期のバランスシート調整下にあるとみられるが、現在は新興国が債務調整下にある第3局面
―――バランスシート調整下にある新興国は、中国経済の減速や資源価格の下落などを通じて景気が下振れしやすい
【 世界経済のバランスシート調整の変遷 】
(資料) みずほ総合研究所作成
35
世界の金利「水没」の中、「浮き輪」である米国が沈み始める不安も
○ 新興国の減速が米国に波及すれば、これまで相対的に高かった米国金利も低下傾向に
・ 日欧が金融緩和で金利が「水没」する一方、運用者にとって米国は「浮き輪」の役割を演じてきたが、沈み始める不安も
【 世界の金利水没マップ 】
スイス
ドイツ
デンマーク
スウェーデン
フィンランド
オランダ
オース トリア
フランス
アイルランド
日本
イタリア
スペイン
ノルウェー
英国
カナダ
米国
ポルトガル
中国
トルコ
インド
ロシア
ギリシャ
1年
-0 .74
-0 .40
-0 .26
-0 .50
-0 .42
-0 .41
-0 .40
-0 .38
-0 .18
-0 .02
-0 .06
-0 .06
0.57
0.37
0.46
0.45
0.01
2.46
10.84
7.21
10.04
2年
- 0.9 3
- 0.4 6
- 0.2 1
- 0.5 2
- 0.4 1
- 0.4 3
- 0.4 1
- 0.3 8
- 0.3 2
- 0.0 1
0.0 0
- 0.0 1
0.65
0.42
0.43
0.84
0.39
2.50
10.94
7.24
10.48
14.15
3年
-0 .9 2
-0 .4 3
-0 .1 0
-0 .4 2
-0 .3 6
-0 .3 8
-0 .3 6
-0 .3 1
-0 .2 2
0 .00
0.04
0.08
0.66
0.60
0.46
1.06
0.85
2.63
10.86
7.34
10.46
11.46
(注)2016年1月26日の値
(資料)Bloombergよりみずほ総合研究所作成
4年
-0 .80
-0 .37
0.02
-0 .32
-0 .28
-0 .31
-0 .26
-0 .19
-0 .06
0.01
0.27
0.28
0.67
0.80
0.54
1.25
1.29
2.74
10.84
7.48
10.48
8.78
5年
- 0.7 2
- 0.2 5
0.14
0.01
- 0.1 3
- 0.2 1
- 0.1 8
- 0.0 7
0.03
0.01
0.49
0.54
0.82
1.04
0.71
1.43
1.59
2.84
10.82
7.63
10.49
8.93
6年
7年
8年
9年
10 年 1 1年 12 年 1 3年 1 4年 15 年 2 0年 3 0年 40 年
-0 .60 -0 .52 - 0.4 0 -0 .29 -0 .22 - 0.1 7 -0 .13 - 0.06
0.00
0.07
0.21
0.39
0.43
-0 .12
0.01
0.14
0.30
0.45
0.49
0.54
0.58
0.63
0.68
0.95
1.20
0.31
0.35
0.40
0.56
0.73
0.75
0.78
0.81
0.84
0.87
1.01
1.30
0.15
0.29
0.48
0.58
0.68
0.76
0.83
0.91
0.98
1.06
1.44
-0 .06
0.16
0.28
0.46
0.71
0.81
0.91
1.01
1.11
1.22
1.27
1.37
-0 .07
0.07
0.23
0.37
0.55
0.59
0.63
0.68
0.72
0.76
1.17
1.33
-0 .03
0.19
0.33
0.50
0.68
0.71
0.74
0.77
0.81
0.84
1.07
1.52
0.05
0.22
0.35
0.57
0.75
0.87
0.98
1.10
1.22
1.33
1.48
1.80
0.25
0.48
0.73
0.89
1.03
1.11
1.19
1.27
1.35
1.43
1.61
1.99
0.01
0.03
0.08
0.14
0.22
0.28
0.33
0.39
0.44
0.50
0.92
1.17
1.29
0.78
0.95
1.10
1.36
1.51
1.59
1.67
1.75
1.83
1.92
2.22
2.65
0.88
1.15
1.30
1.52
1.64
1.75
1.86
1.96
2.07
2.18
2.40
2.83
0.96
1.10
1.23
1.32
1.43
1.16
1.35
1.48
1.59
1.69
1.76
1.83
1.90
1.97
2.04
2.26
2.45
2.28
0.73
0.90
1.05
1.15
1.27
1.34
1.42
1.50
1.58
1.65
2.04
2.07
1.59
1.75
1.83
1.91
1.99
2.03
2.07
2.11
2.15
2.19
2.39
2.78
1.69
2.14
2.59
2.78
2.99
3.07
3.16
3.25
3.34
3.43
3.78
3.97
2.88
2.91
2.90
2.90
2.90
2.96
3.02
3.08
3.14
3.20
10.82 10.81 10.88 10.73 10.81
7.76
7.82
7.75
7.78
7.80
7.96
8.01
8.02
8.05
8.07
8.20
8.17
10.47 10.45 10.43 10.41 10.39 10.38 10.37 10.36 10.34 10.33 10.30
9.08
9.24
9.39
9.54
9.70
9.65
9.61
9.57
9.53
9.49
9.29
0%未満
0%以上0.5%未満
0.5%以上1.0%未満
1.0%超
36
まとめ
○ 年明け以降、中国経済への懸念や原油安、地政学的リスクが意識され、金融市場はリスクオ
フモードから再び世界同時株安に
○ 中国経済は政策対応から景気腰折れは回避する見込みだが、株安、元安不安は残存
○ 原油価格は超過供給の長期化観測から下値リスクが残存。新興国経済の成長ペースの鈍化
によって、中期的な原油安局面に入った可能性も
○ 日欧は追加緩和を実施し、米国は利上げを先送りする可能性大
○ 金融市場は当面不安定な動きが続きやすいも、各国金融政策対応で一旦落ち着きを取り戻
す見通し
○ ただし、中国経済が減速を続ける中で新興国の下振れリスクは当面続く。一旦落ち着いたとし
ても、再び市場が不安定化するリスクは残存
○ 更に警戒すべきなのは、新興国の減速を受けた世界連鎖不況
37
(※) 本資料は、みずほ総合研究所調査本部が作成した。
〔本資料に関する問い合わせ先〕
みずほ総合研究所 調査本部
市場調査部 主席エコノミスト 武内 浩二
TEL :03-3591-1244
本資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、取引の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、弊社が
信頼に足り且つ正確であると判断した情報に基づき作成されておりますが、弊社はその正確性・確実性を保証するものではあ
りません。本資料のご利用に際しては、ご自身の判断にてなされますようお願い申し上げます。
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