Nara Women's University Digital Information Repository Title 『都城制研究(9)』発刊にあたって Author(s) 舘野, 和己 Citation 都城制研究(9)東アジア古代都城の立地環境 (奈良女子大学古 代学学術研究センター)、序文 Issue Date 2016-03-27 Description URL http://hdl.handle.net/10935/4119 Textversion publisher This document is downloaded at: 2016-02-02T08:57:17Z http://nwudir.lib.nara-w.ac.jp/dspace 『都城制研究(9)』発刊にあたって 奈良女子大学古代学学術研究センターは、奈良女子大学 2 1世紀 COEプログラム「古代日 本形成の特質解明の研究教育拠点」 (2004∼2008年度)で、行ってきた古代都城制研究を、 引き継いで実施しています。その活動の一環として、 2006年度から都城制研究集会を毎年 2月 1 5 日に行った第 8回都城制 開催してきました。本書『都城制研究( 9)』は、 2013年 1 研究集会の内容を報告するものです。同研究集会は、都城制研究会(「大阪上町台地の総 合的研究−東アジア史における都市の誕生・成長・再生の一類型−」研究代表:脇田修) と科学研究費補助金基盤研究(B)「古代都城・都市をめぐる環境論」(研究代表:舘野和己) の 2つの研究グループpと共同で 国際シンポジウムとして開催しました。 第 8回都城制研究集会のテーマは、 「東アジア古代都城の立地環境」でした。古代都城 は王権の本拠地として、支配を実現し維持するのにふさわしい場所に造営されました。そ れは自然環境や地勢・立地の良さ、防御、交通の便宜などの観点から選ばれたものです。 しかし選地の理由はそれにとどまりません。自然環境などは解釈し直されて、思想的にも 良い場所とされたのです。そのことは和銅元( 708)年 2月に出された平城遷都の詔の中でも 明確に示されています。すなわち平城の地は、 「四禽図に叶い、三山鎮めをなし、亀笈並 びに従う」ので、都城を造営すると宣言されています。東・西・北の三方を山に固まれ(「三 山鎮めをなし」)、南に開けた奈良盆地北端の地は「四禽図に叶い」、占いの結果も良い (「亀筆並びに従う J )場所であると見なされ、思想的にも都城にふさわしい場となるこ とができたわけです。そして奈良盆地を南北に貫く下ツ道が平城京の中心軸として選ばれ て朱雀大路となり、京内には大安寺・薬師寺などの諸寺院が造られ、都城を鎮護しました。 都城にとって、自然の立地環境とともに、思想的環境も重要な要素でした。そして日本 古代都城を研究する場合には、東アジア諸国の都城も姐上に載せ、それぞれの共通性と独 自性を見ていかねばなりません。いずれも中国都城の影響を強く受けつつも、独自性を主 張しているからです。そこでシンポジウムでは、日本のみならず中国・韓国の研究者を交 え、さらにベトナムも対象に加え、各国の都城をめぐる立地環境と思想的環境の問題、そ れにふさわしい都市計画や施設のあり方などを論じました。お忙しい中、シンポジウムで の報告、及び論文執筆・翻訳にご尽力いただいた皆さまに、厚くお礼申し上げます。 古代学学術研究センターでは今後も東アジアにおける古代都城制の研究を深めるべく、 研究を続けていきます。皆様方のご理解・ご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。 2015年 3月 奈良女子大学古代学学術研究センター長 舘野和己
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