2016年度大学入試センター試験(本試験)分析詳細 ■ベネッセ・駿台共催/データネット実行委員会 地学 1.総評 【2016年度センター試験の特徴】 大問数減少。「地球の大気と鉱物」「宇宙膨張」から選択。問題難易は昨年より易化 第2問と第3問で出題されてきた「岩石・鉱物」と「地質・地史」が1大問となり、大問数は減少した。「地球の大 気と鉱物」と「宇宙膨張」から1問選択であった。複数の学習事項を融合した問題がみられた。選択肢の数は減少 し、問題難易は昨年より易化した。 2.全体概況 【大問数・解答数】 大問数は昨年の7から6に減少。第1問~第4問が必答で、第5問「地球の大気と 鉱物」と第6問「宇宙膨張」から1問選択。解答数は30個。 【出題形式】 昨年同様、文章選択問題を中心に出題されたが、図・グラフ選択問題、数値選 択問題が増加した。昨年10問あった7択以上の問題はなくなり、4択の問題が中 心の出題であった。 【出題分野】 特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。 【問題量】 昨年並。 【難易】 問題難易は昨年より易化。(現役生・既卒生の受験生比率が異なるため、平均 点ではなく、問題自体の難易を比較) 3.大問構成 大問 出題分野・大問名 配点 難易 備考(使用素材・テーマなど) A 活断層 B 沈み込み境界とホットスポット C 残留磁気とプレート運動 第1問 「地球の内部構造」 27点 標準 第2問 「地質と岩石」 17点 標準 第3問 「大気と海洋」 27点 やや難 A 大気と海洋による熱輸送 B 潮汐 第4問 「地球と恒星」 17点 やや難 A 地球の運動 B 恒星 第5問 「地球の大気と鉱物」 12点 標準 第6問 「宇宙膨張」 12点 難 A 地球とその大気 B 鉱物 4.大問別分析 第1問「地球の内部構造」 ●Aは、活断層とその地下構造に関する出題であり、地震の初動の押し引きと断層のずれ、ブーゲー異常、2方 向に向かう地震波の走時曲線についての知識と考察が問われた。 ●問1は、与えられた図に対しての地震の初動における押し引き分布と地震に伴う地殻変動の向きを答えさせる 問題であった。押し引き分布について、鉛直方向で問うことは目新しい。地震の初動の方向については、昨 年の第1問問5でも出題されていた。 ●問2は、ブーゲー異常を表した図を選ぶ典型的な問題であり、地下の密度分布によるブーゲー異常の違いにつ いての知識が問われた。 ●問3は、密度の小さい層の厚さによる地震波の走時曲線の違いを答えさせる問題であった。2本の走時曲線が 一つの図で表されているものを扱った設問は目新しい。 ●Bは、沈み込み境界とホットスポットについての出題であり、沈み込み帯での地震の震源分布、ホットスポッ トの成因とプルームについての知識が問われた。 ●問4は、日本列島付近での、太平洋プレートが沈み込む部分における地震の震源分布を表す図を選ぶ問題で、 大陸プレート内での地震と沈み込んだ海洋プレート内での地震についての知識が問われた。 ●問5では、地震波トモグラフィーに関連して、プルームにおける地震波の伝わる速さと、ホットスポットにお けるマグマの生成過程についての知識が問われた。 ●問6では、スーパープルームの分布とホットスポットについての知識が問われた。 ●Cは、残留磁気についての出題で、残留磁気の成因、地磁気の逆転についての知識が問われ、残留磁気から島 の移動を推定することが求められた。 ●問7では、残留磁気の成因と地磁気逆転の歴史、また、残留磁気から地層年代を推定することについての知識 が問われた。 ●問8では、島が形成されてから現在までの移動について、残留磁気に関する情報を用いて考察することが求め られた。 第2問「地質と岩石」 ●地質図を題材として、近年では第2問、第3問に分けて出題されてきた「岩石・鉱物」と「地質・地史」を一 つの大問として問う出題であった。 ●問1は、砂岩層と岩脈の傾斜を地質図から正しく読み取る問題で、典型的な内容であった。 ●問2は、深成岩であることと有色鉱物の割合から岩石名を答える、基礎的な問題であった。有色鉱物の占める 体積比の情報のみから中性岩であることを考えさせる出題は珍しい。 ●問3は、肉眼で観察したときの色と形から造岩鉱物の名称を答える基礎的な問題であった。問2が正答できて いれば、正答しやすかったと思われる。 ●問4は、気候変動を推定するために用いる酸素の同位体と、最終氷期の海水準に関する知識を問う、標準的な 問題であった。 ●問5は、付加体の形成と伊豆・小笠原弧の衝突の順序を問う知識問題であった。内陸ほど古い付加体が分布す ることがわかっていれば、個々の名称は覚えていなくても正答できる。 第3問「大気と海洋」 ●Aは、大気と海洋による熱輸送に関する問題であり、低緯度から高緯度への熱輸送の特徴、ハドレー循環、亜 熱帯高気圧、偏西風波動、海流などが総合的に問われた。 ●問1は、地球放射の南北差と太陽放射の南北差の比較と、海流の成因に関する知識問題であった。 ●問2は、低緯度から高緯度への熱輸送についての知識問題であった。地球放射についての知識があれば、正答 は容易である。 ●問3では、ハドレー循環と亜熱帯高圧帯についての知識が問われた。誤答の選択肢を判断するのが比較的容易 な設問であった。 ●問4は、日本列島の四季に関連して、偏西風と偏西風波動についての知識を問う問題であった。「偏西風」と 「ジェット気流」の用語の使い方で混乱した受験生がいたかもしれない。 ●問5は、海流について、表層だけでなく深層も扱った、総合的な知識問題であった。 ●Bは、潮汐に関する問題であり、月と太陽の両方に関わる潮汐の原因と特徴、潮汐の波の伝わる速さについて 問われた。 ●問6は、潮汐が起こる原因についての標準的な知識問題であった。 ●問7は、月-地球-太陽の位置と潮汐との関係についての知識・考察問題であった。「上弦の月」の語に戸惑 った受験生がいたかもしれない。 ●問8は、潮汐を津波と同じ長波とみなしてよいことに着目して、水深の異なる2地点での潮汐の波の伝わる速 さを比較する計算問題であった。 第4問「地球と恒星」 ●Aは、恒星の年周光行差についての考察と、うるう年、均時差についての基礎知識を問う出題であった。 ●問1は、地球の公転に伴う年周光行差と恒星の視線速度を考えさせる問題であり、目新しい。 ●問2は、うるう年のしくみ(グレゴリオ暦)について知っていれば簡単だが、1年の長さに注目しすぎると迷っ たかもしれない。 ●問3は、均時差の生じる原因を問う、基本的な問題である。知識問題だが、1年周期の変化であることに着目 して考察すれば、比較的容易に誤文を判断できる。 ●Bは、恒星のスペクトルと質量光度関係に関する設問と、シュテファン・ボルツマンの法則に関する計算問題 が出題された。 ●問4は、吸収線とスペクトル型に関する理解と、恒星の質量と寿命の関係に関する理解が求められる設問であ った。bの正誤については、質量光度関係がわかっていれば、考察によって正答することもできたと思われ る。 ●問5は、典型的な計算問題であったが、恒星の真の明るさ(光度)と半径・表面温度の関係式を理解しておく 必要がある。 第5問「地球の大気と鉱物」 ●Aは、原始地球の層構造の形成、および、原始大気の進化に関する問題であった。 ●問1は、原始地球の層構造の形成に関する、教科書に基づいた基礎知識を問う出題であった。 ●問2は、地史を通して原始大気の進化を理解できているかを問う出題であった。正答は容易に判断できたと思 われる。 ●Bは、鉱物の構造と固溶体に関する基礎知識を問う問題であった。 ●問3は、鉱物の構造と陽イオンの配置の関係を問う出題であった。図を用いた鉱物の構造に関する出題は過去 にもあったが、最近の出題は目新しい。 ●問4は、固溶体に関する出題であった。正答の選択は比較的簡単で、誤答の選択肢も判断のつきやすい内容で あった。 第6問「宇宙膨張」 ●超新星の光度と距離、宇宙背景放射、宇宙の晴れ上がり、赤方偏移に関して問われた。 ●問1は、超新星の光度と距離の測定についての空欄補充問題であった。 ●問2は、問題文の情報から、宇宙放射のエネルギーが最大となる波長と宇宙の温度を求める問題であった。題 意の理解が非常に難しく、戸惑った受験生が多かったと思われる。 ●問3では、宇宙の晴れ上がりに関する基本的な知識が問われた。 ●問4は、問題文の内容と与えられた図から情報を読み取って、赤方偏移と光が放射された時期を求める問題で あった。多くの受験生にとって見慣れない内容であったと思われるが、問題文の説明に従って計算・考察を 行えば、正答することができる。 5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値) 年度 2015 2014 2013 2012 2011 平均点 40.91 ― ― ― ― 6.センター試験攻略のポイント ●基本的な知識から深い理解まで、幅広く正確な知識が求められた。まずは、教科書に記載されている基本的 な内容を正しく理解しておくことが大切である。また、特定の分野に偏ることなく幅広く出題されたため、 苦手分野をつくらない学習を心がけたい。 ●図やグラフを用いて考えさせる問題が多く出題された。教科書などで扱われている図やグラフを正しく理解 し、示された情報を正しく読み取れるように、演習を積んでおきたい。 ●複数の学習事項を融合した問題がみられた。学習する際には関連分野も振り返るなどし、分野間で関係性が 深いものを関連付けて理解しておきたい。
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