シンガポール、香港日系地域統括会社の人事労務サービス体制について みずほ銀行 直投支援部 調査役 赤阪 健一 日本貿易振興機構 (ジェ トロ) が発表 した 「第3回在シンガポール日系企業 の地域統括機能に関するアンケート調 査」 によると、 地域統括機能を設置する 課題 本社からの派遣社員の役割 現地ローカル社員の起用方針につい て、本社/地域/拠点を含む関係者間 での合意形成ができない 合意形成するために、①グローバルリー ダーの需要分析②分析結果の関係者 間の共有③コンセンサスを形成できな い理由を共有④関係者間で納得ので きるグローバルリーダーのアセスメント サイクルを構築 日系以外の多国籍企業での経験を有 するローカル社員を地域統括会社の 人事部長に抜擢。同部長はグループ 各社と横比較をした時のバランス感 覚に優れているが、本社との方針の違 いから、 コンフリクトを起こすため本社 からの信用は低い 本社人事部所属経験のある派遣社員 が副部長に着任。本社の方針がローカ ル部長に無理なく届くよう副部長として 補佐役を務めている シンガポールで採用した人事企画実 務遂行責任者は、 シンガポールを除く ASEAN諸国の労働法 (会社都合で の解雇は難しい) に対応した経験が乏 しい 担当地域を見渡せる目線づくりを指導 中。 「労働市場の流動性の高低」 と 「業 務を理由にした解雇の難易度」 を軸に 作成したマトリックス表を使用し、サービ ス提供国の人事制度の方向性につい てローカル社員とコンセンサスを図る 目的として 「経営統制強化」 「 、効率化・ コスト削減」 と回答した企業がそれぞれ 70%以上を占めている。 回答企業が設置している機能を見 ると 「販売・マーケティング」 が最も多く、 赤阪調査役 次いで 「人事・労務管理・人材育成」 (以下、 「人事系」 ) 「 、金融・財務・ 為替」 が続き、 なかでも 「人事系」 にいたっては、 前回調査時点と比べ 24%増加していた。 地域統括機能として最も設置数が増加した 「人事系」機能は、 現 地の従業員とのコミュニケーションや本社と異なる労働環境 (採用市 場や労働法) など、 サービス提供が難しい機能であるといっても過言 ではない。当行でも2015年9月に 「人事系」機能を設置する日系地 域統括会社から同機能を設置した背景や課題についてヒアリングを 行っており、 この場を借りてその一部をご紹介差しあげたい。 提供している「人事労務サービス」取り組み事例 本社主導で 「人事系」 機能の設置を検討する場合と、 地域統括会 社主導で検討する場合とでは異なる場合がある。 本社主導で 検 討する場 合 所得税の申告点検、雇用契約書の作成、労務規程の作成など のシェアードサービスを提供。サービス提供先で勤務する本社か ら派遣された幹部社員のサポートを担う 地域統括会 社主導で検 討する場合 タイプ1:担当地域の最適化を目指し、人事企画を担当。サービ ス提供先企業の「異動・評価・報酬額」に係る業務遂行責任を 担う タイプ2: 「日本人にこだわらないグローバル社員」の育成を掲げ る本社の方針を支える人材育成拠点としての役割を担う 地域統括拠点の全てに「人事系」機能の設置が 必要とは限らない 現時点では、 「人事系」機能の設置ニーズが低いと考える企業の 特徴について紹介する。 チエックポイント 現在の状況 現法の主要ポストの 配置状況 本社からの派遣社員が主要ポジション を担当する サービス提供先 サービス提供先は限定的。そのため、 業務の効率性やガバナンス強化を推 進するニーズは低いと判断している 人事制度の考え方 人材が社内にとどまるかは、他社より魅 力のある賃金を提示できるかに依存す る部分が大きく、人事制度や研修・育 成制度の充実は、人材確保のうえで補 助的な機能しか果たさないと、判断して いる 「人事労務サービス」を支える本社からの 派遣社員の役割事例 本社からの派遣社員の役割は、 本社/地域/拠点間の合意形成を 以上、 シンガポール、 香港における日系地域統括会社へのヒアリン 図るための事前準備や、 ローカル社員の専門性を生かすための環境 グ結果の一部をご紹介した。 ご不明点などがあれば、 お気軽にお問い づくりなど、 多岐にわたっていた。 合わせいただきたい。 mizuho global news | 2016 JAN&FEB vol.83 1 5
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