やま 氏 名 学 位 論 文 題 目 山 だ 田 ひで 英 と 登 Effects of -1018G>A Polymorphism of HRH2 (rs2607474) on the Severity of Gastric Mucosal Atrophy (胃粘膜萎縮の程度に対する HRH2 -1018G>A (rs2607474) 遺伝子多型の影響) 学位論文内容の要旨 研究目的 ヒ ス タ ミ ン は H 2 受 容 体 に 作 用 し 胃 酸 分 泌 を 亢 進 さ せ る 一 方 で , Helicobacter pylori(HP)感染による胃粘膜の炎症や組織損傷を増悪させる。したがって,HRH2 プロモ ーターのエンハンサー領域に位置するrs2067474 遺伝子多型は,H2 受容体の発現調節を介 して胃粘膜萎縮の程度に影響する可能性がある。そこで,本研究では,rs2067474 遺伝子 多型と組織学的な胃粘膜萎縮とその指標であるペプシノーゲン(PG)Ⅰ/Ⅱ比との関連を検 討した。 実験方法 腫瘍性病変や消化性潰瘍を有さない 398 人を対象に上部消化管内視鏡検査を施行し,う ち 366 例では前庭部粘膜より生検組織を得た。生検標本の一部は 10%の緩衝ホルマリン で固定,パラフィンに包埋し,他は-80℃で凍結保存した。HP 感染は,血清学的検査,組 織学的検査,尿素呼気試験のうち,1 項目が陽性であれば,陽性とした。生検標本または 血液から分離した DNA を用い,PCR-SSCP 法で遺伝子型を決定した。組織学的評価は,改 訂シドニーシステムに基づき,非萎縮群(非 SA:萎縮スコア≤ 1 かつ化生スコアは=0)と 萎縮群(SA:萎縮スコア≥ 2 または化生スコア≥ 1)に分類した。胃粘膜萎縮の程度に応 じて減少するペプシノーゲン(PG)Ⅰ/Ⅱ比を血清学的マーカーとして使用した。アレル数 はフィッシャーの正確確立検定により比較した。遺伝子型と胃粘膜萎縮との関連性は,ロ ジステック回帰分析によりオッズ比と 95%信頼区間を算出し評価した。非萎縮群と萎縮群 の PGⅠ/Ⅱ比はマンホイットニーU 検定で比較した。年齢と PGⅠ/Ⅱ比との関係は ANOVA により評価した。有意水準 p <0.05 を有意とした。 実験成績 被験者398人のうち,rs2067474遺伝子型はGGが306人,GAが88人,AAが4人であり,ハー ディ·ワインベルグ平衡を満たしていた(P =0.77)。SA群の男性比,HP陽性率は,非SA群 よりも有意に高値であった。rs2067474遺伝子型の分布は,非SA群ではGGが194人,GAが63 人 , AA が 3 人 だ っ た の に 対 し , SA 群 で は GG が 89 人 , GA が 17 人 , AA が 0 人 で あ っ た 。 rs2067474のマイナーアレル頻度は,SA群で8.02%,非SA群で13.3%であり(P=0.057), GG型の頻度は,SA群で高値の傾向を認めた(p=0.055)。 - 1 - 年齢,性別,HP感染の有無を調整したロジスティック回帰分析では,GGでは胃粘膜萎縮の リスクが有意に増加していた(OR,2.03;95%CI,1.03-4.01)。 HP陰性者では遺伝子型分布の 有意な偏差が認められなかったのに対し,HP陽性者ではGGでは胃粘膜萎縮のリスクが増加 していた(OR,2.32;95%CI,1.12-4.81)。また,GGでは60才以上でも胃粘膜萎縮のリスクが 増加していた(OR,2.63;95%CI,1.15-6.00)。PG Ⅰ/Ⅱ比は,Aアレル保有者のHP陰性者とHP 陽性者では有意差は認めなかったが,GGではHP陽性者はHP陰性者よりも有意に低値であっ た。また,Aアレル保有者では年齢とPGⅠ/Ⅱ比に有意な相関がなかったのに対し,GGでは 血清PG Ⅰ/Ⅱ比は加齢に伴い有意な減少を認めた。 総括および結論 rs2067474GGホモ接合体ではヒスタミンH 2 作用がより強く発現する結果,胃粘膜萎縮が 高度に進展する可能性が示唆された。 - 2 -
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