SURE: Shizuoka University REpository

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IC-2 古墳の造営と環境 (『人間と地球環境』研究報告 : 環
境変動と生態系・人間(生活)への影響)
滝沢, 誠
静岡大学学内特別研究報告. 2, p. 32-33
2000-03
http://doi.org/10.14945/00008233
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IC-2
古 墳 の 造 営 と環 境
人文学部
滝沢
誠
考古学的発掘 調査 に よつて 遺跡 か
ら検 出 され る遺構 や遺物 は 、過 去 の人間活動 を
復原 す るた めの 貴重 な資料 とな るが、近年 の遺
いては 、 これ まで意 外 と研究成果 が乏 しい 。 古
跡調査 で一 般化 しつつ ある花粉 分析 や珪 藻 分析
は 、人間 の 活動が周囲 の環境 を どの よ うに改変
墳 周溝 内 の 湛水 の有無 を探 る 目的 で珪 藻 分析 を
実施 した事例 はあるが 、古墳 の造営 自体 が 周辺
して きたのか を知 る有効 な手段 とな って い る.
環境 に及 ぼ した影響 を評 価 しよ うとす る取 り組
みはほ とん ど見受け られ ない の が呪状 で あ る。
研究 の 視点
本研 究で は 、従来 主 に検討 され てきた人間の
生業活動 に ともな う植 生 へ の影 響 とい う見方 と
は別 に、3世 紀 か ら 7世 紀 にか けて 日本列 島各
地 に築 かれ た古墳 と周辺植 生 との 関係 につい て
考 えてみた い 。
古墳 と周辺環境 弥生時代 以降 、水 田の 拡大 に
ともな う森 林 の伐採 が進み 、縄 文時代 まで の森
な くな っか っ た と推測 され る。
こ うした古墳 の造営 と周辺環 境 との 関係 につ
そ こで 本研 究 では 、古墳築造前後 の 周辺植 生
の変化 を探 る試み と して 、現在静岡県下 で 調 査
を進 めて い る大型古墳 を対象 と して土壌 サ ンプ
ルの採 取 を行 い、花粉分析 デ ー タの収集 に努 め
る こ とと した。
林 景観 が急速 に変化 した こ と、 また、古墳 時代
ここでは藤枝 市荘館 山 2号 墳 にお い
て実施 した 土壌サ ンプル の採 取状況 に つ い て 、
にな ると窯 業や製鉄 が 本格的 に開始 され 、台地
そ の概 要 を紹介 してお く。
や 丘 陵部 の 森 林 もそ の燃料 資源 と して大 き く変
貌 を遂 げて い つ た こ とが す で に 指 摘 され て い
る。 こ う した生 業活動 に ともな う周辺植 生 へ の
荘館 山 2号 墳 は、志太平野 に 3基 存在 す る前
方後 円墳 の 一つ で 、墳 丘全 長約 41mを 測 る前
影響 にカロえ 、古墳時代 には全 国 で 10万 基 以 上
に及ぶ 古墳 が 築 かれ、台地や 丘 陵部 を中心 と し
た森林景観 に少 なか らぬ影響 を与 えた こ とが予
想 され る。
実際 に、 古墳時代 の埴 輪窯 が 確 認 され た大阪
府 新池遺跡 の花粉 分析結果 か らは 、埴輪窯操業
開始後 に照 葉樹林 の破壊 が進 み、 二次林化 が進
行 して い っ た ことが指摘 され て い る。 この こ と
自体 は埴 輪窯操業 に ともな う燃 料 資源 の確保 に
分析資料
方後 円墳 で ある。 1999年 8月 、静岡大 学 人文
学部考 古学研 究室が調 査 を担 当 し、墳 丘 の 構 造
や規模 を詳 細 に把握す るため の発掘調 査 を実施
した。発 掘調査 は、墳 丘の要所 に合計 6ヶ 所 の
調査 区 (ト レンチ )を 設 けて行 い (図 1)、 そ
れぞれ にお いて墳 丘の構築状 況や墳端 を確 認す
るこ とが で きた。そ の際、古墳 周辺 の 古植 生 の
把握 を 目的 と した花 粉分析用 の上壌 サ ンプル を
合計 6ヶ 所 にお いて採 取 した (表 1)。
サ ンプ リングは、各 トレンチの断面 観 察 に よ
直接 的原 因 が求 め られ るが 、埴 輪生産 が 古墳造
営活動 の一 環 である こ とを思 えば 、埴輸供 給先
って確 定 した層序 に もとづ き、①古墳 築造 前 の
1目 表土 、② 古墳築造後 の 初期堆積 上 に つ い て 実
で あ る大型 前方後 円墳 の 造営 こそ森林破壊 の根
施 した (図
本的要因 で あると言 えよ う。
析 を行 うこ とによ り、古墳築 造前後 の 周 辺植 生
古墳 の 造 営、 とくに大型 古墳 の 造営 に際 して
は 、 墓域 は もちろんの こ と資 材 運搬路や作業場
の変化 を把握 しよ うとの狙 いか らであ る。
現在 、 土壊サ ンプル は (株 )古 環境研 究所 に
な どが確保 され、それ に ともな って 古墳 が 占地
す る一 帯 の植 生 環境 は大 きな改変 を迫 られ る こ
委託 して 分析 中であ り、残念 なが らまだ詳細 な
分析結 果 は得 られて い な い。 このほか 、清 水市
と とな ったに違 い な い 。 また 、6世 紀後半以降
神 明 1号 墳 (1998年 度 調査 )の 上 壌 サ ンプル
につい て も同様 に分析 中であ り、今 後 これ らの
に各 地 に爆 発的 に増 加す る群 集 墳 は 、一 古墳 の
規模 におい て大型前方後 円墳 に遠 く及 ばな い も
のの 、 そ の 群集規模 は 一つ の丘 陵 全体 を墓域化
す るほ どの もの で あ り、周辺植 生 へ の影響 は少
2)。
これ らの土 壌 に つい て花 粉分
分析結 果 を得 た上で 、引 き続 き古墳造営 に とも
な う周 辺 環 境 の 変化 に つい て 検討 して い きた
い.
―-32-―
l 11ヽ 1ヽ ヽ
2ト レン
迫
主
ア
10m
図1
藤 枝市荘館 山 2号 墳 発 掘調査 区位置 図 (s=1:400)
▲ は 図 2に 土層 断 面 図 を示 した 部 分
図 2 藤枝市荘館山 2号 墳 "
土壌サンプル採取位置
(3=1:80)
(上 )第
2ト レン チ
(下 )第
6ト レン チ
薄 いア ミ掛 け部 分 は 古 墳 盛 土 :濃 い
ア ミ掛 け部 分 は 古墳 築 造 前 の 旧表 土
_表
1藤 枝市荘館山2号 境土壌サンプルー覧
FS-1
FS-2
FS-3
FS-4
FS-5
FS-6
トレンチ
第 1ト レンチ
第 1ト レンチ
第 2ト レンチ
セクション
第 2ト レンチ
第 6ト レンチ
第 6ト レンチ
南 壁
西
壁
東 壁
南 壁
西
壁
西
壁
層
第 22層
第 7層
第 11層
第 13層
第Ⅵ層
第34層
-33-―
内
容
後 円部北側、墳 丘築造前の旧表 土
後 円部北側、墳 丘裾 部 の初期堆積 土
後 円部東側、墳 丘築造前の 旧表 土
後 円部東側、墳 丘裾 部 の初期堆積 土
前方部南側、墳 丘築造前の旧表 土
前方部南側、墳 丘裾 部 の初期堆積 土