A03-364 P/L2 調整ハンドルが抜けない場合の対策

A03-364 P/L2 調整ハンドルが抜けない場合の対策
1 アジャスタブル・ハンドルが抜けない原因
Cause
1.1 スケール,不純物,溶剤などによる擬似的接着状態
水や汗の溶存成分が浸透し膠結(≒膠着,接着). 海水・汽水,
水質の悪い水域でリスクが高い. 非常に強く膠着することもあ
る. 膠着範囲は意外に狭く,端から3~4cm程度のことも.
1.2 細かな泥・砂などの異物の噛み込み
Release of Jammed adjustable handle
2.4 (応用) 専用の固定具,レンチ自作,その他の方法
(1) スリーブ側の固定には,「スリーブ形状に合わせた固定用ホ
ルダー」が自作できる. スカルオール用には「60角パイプ」(型
枠・吊足場用角管,60mm×60mm,厚さ2.3mm,内辺55m
m)とスリーブ断面にあわせたスペーサが使える. 古いカラー
を複数 (荷重分散のため多いほど良い.4枚以上)重ねて固定
枠に組み込むとか,スリーブを型にしてFRPで作る方法もある.
細かな泥・砂を噛み込んだ状態.軽症~重症まで多様.
1.3 パーツの不適合(無理やりの押し込み)
もともと少し堅いとか,交換時に間違え別のオールと混用した場
合. C2では,ウェッジ(中間のプラスチック部品)の内面にはめ
あい調整のためのスペーサ(シート)を貼ってあるが,その不適
合などもある.
1.4 不適切な整備
塗料,接着剤,樹脂,溶剤などを接合部に浸透させ接着させた状
態. 離脱が困難~不可能となる場合もある.
(2) ハンドル側のレンチには,車用の「オイル・フィルター・レン
チ」を加工し,専用のハンドル回しを作ることもできる.
(3) ハンドル側に滑り止めシートを薄く巻き,ハンドル側直径に
あわせた溝を持つ角材を挟み固定し,その端を「ハンドルを引き
抜く方向に」打撃する方法もある. (打撃を加えるが,後述の禁
忌の方法とは異なる.)
※いずれも,対象物を優しく広い面積で掴むことが重要である.
1.5 変形・損傷
大きな外力で変形・損傷して抜けない場合. 状況により,離脱
困難~不可能な場合もある.
3 注意すべき方法
2 外す方法
熱の作用について: 一般機器への(可使条件を超えた)急熱・
急冷,過熱・過冷は避けるべきだが,何か外れないとき,加熱や
冷却による膨張/収縮(や軟化)を利用して外すことはよくある.
熱膨張率が大きい,温度差を作りやすい,熱で軟化しやすい部
材で有効だが,その特性をよく理解しておくべきである.
Methods to release
外すには,いくつかの方法があるが「簡単で穏やかな方法」から
順に施す. 後述の「禁じ手」には注意すること.
2.1 潤滑剤
lubrication
潤滑剤(シリコン系)を浸透させ,少し待ってから外す. 次項(ス
トラップ・レンチ)のために,外面にはつかないよう注意. 離脱後
は,ウェスで拭き取るだけでなく,パーツクリーナーやシリコンオ
フなどでクリーニング.
2.2 強く引っ張る+ねじる
Maybe, Cooling is useful, Heating is NG
炭素繊維は,熱膨張率が極めて小さく,中でも「ピッチ系」はわず
かにマイナス(=加熱すると収縮)の性質がある. 一方,樹脂(エ
ポキシ)の熱膨張率は相対的に大きい. それらの複合材料(CF
RP)の熱膨張は,繊維とその方向に強く支配されるが,微視的
な微妙な挙動にも注目する必要がある. おそらく円筒状のCFR
Pを加熱すると,炭素繊維の骨組みが効き「平均直径」はやや大
きくなるが,樹脂の膨張で「内径は小さく,外径は大きくなる」とい
った現象が想像できる.
power up
固定ネジを緩め外す(内部に脱落した部品は,後で再装着でき
る). 手で,2~4人がかりで,固定と,「回す」+「引っ張る」力を
加える. すべり止めのついた手袋やシートも有用だが,周囲の
環境を整え,転倒・怪我の防止に注意すること.
冷却: 実際,釣竿(カーボンロッド)では,氷やエアダスター(逆さ
にするとナマ液が出るタイプ)を吹付けて外す方法がよく使われ
るらしい. ただし,実際にやってみた1回の結果では芳しくなか
った. ひきつづき色々試してみる価値はある.
2.3 ストラップ・レンチ (ベルト・レンチ)
加熱: 加熱は互いを締め付け,物理的には外すことに逆効果と
考えられる. ただ,膠着物への作用で効果がある可能性も残る.
なお,エポキシ樹脂は130℃あたりに「ガラス転移点」があるの
で,100℃以上の加熱は避けるべきである.
tools
強いトルクで回せるストラップ・レンチ(ベルト・レンチ)を使う. ス
トラップ・レンチと選択と使い方には注意しなければならない.
レンチの「当たり面」の形状や使い方を誤ると,狭い面積に応力
を集中させてしまい,シャフトを損傷する恐れがある. 平面タイ
プは要注意.
4 注意すべき方法,やってはいけない方法
Do NOT it!
ドライバーで隙間をこじらない! シャフト端のわずかな隙間に,
マイナスドライバーなどを差し込んでこじ開けてはいけない. 堅
く締まっていれば,パーツを破壊するだけに終わるし,これで外
れる程度であれば,前述2項の基本的方法で外せる.
薄いパイプでのストラップ・レンチのあて方(左) (REED 社 HP より抜粋)
また太いシャフト側とグリップ部の間をつなぐテーパー部では,
太い側に一点集中しやすく亀裂が入りやすいので注意.
2つのストラップ・レンチを用い,シャフト側はスリーブに,ハンド
ル側は接合部から「少し離して」かける. (近いとシャフトを変形
させるので外れにくくなる). 慎重にゆっくり力をかけることが重
要. 強力なので,一気に力をかけると,シャフトを破壊すること
になる. 滑る場合は,「滑り止めシート」をはさむこともある.
2015-05-03 23:32:00
叩かない! 膠着部を木やプラスチックハンマーなどで叩くのは
厳禁. 外れたとしても,シャフトに潜在的なダメージを与える.
「引き抜く方向」へ,ハンドル側にかけたストラップ・レンチを叩くと
いう「間接的な」ショック療法もあるが,ダメージを与えないよう,
熟練が必要である.
その他の注意: C2で,ハンドルとインナーウェッジがピンで位
置決めされているオールは,構造を特によく理解し,インナーま
たはピンを損傷しないよう注意しよう.
A03-364-P-141027-108-L2-抜けないハンドルの抜き方改訂版.doc
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