平成二十六年度 国立大学法人岩手大学 卒業式 式辞 先日の重く湿った

平成二十六年度 国立大学法人岩手大学 卒業式 式辞
先日の重く湿った雪もようやく融け、新緑の待ち遠しい季節を迎えました。本日、多数のご来
賓の皆様、保護者の皆様をお迎えし、平成二十六年度岩手大学卒業式を挙行できますことは、本
学にとりまして大きな喜びであります。
千百二十二名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。また十二名の外国人留学生の皆
さんには、他の一般学生諸君と異なるご苦労もあったこととお察しします。おめでとうございま
す。
また、この日を心待ちにして来られた御家族の皆様にもお祝いを申し上げますとともに、皆様
の御支援に心から感謝と敬意を表します。
東日本大震災から、はや四年が経過しましたが、皆さんの多くは「震災復興元年」のその年に
入学しました。学生生活のスタートは四月ではなく、一ヶ月遅れの五月九日、大学の体育館での
「新入生歓迎の集い」によるものでした。当時入学された皆さんの中には、大学に進学し学び続
けることへの不安や葛藤を抱いた方もいたかもしれません。
岩手大学は震災後まもなく、
「『岩手の復興と再生に』オール岩大パワーを」をスローガンに掲
げ、地域の中核的拠点大学として、まさに全学をあげて復興支援の取組みを実施して参りました。
学生の皆さんもボランティア活動や地域貢献活動、研究活動等をとおし、復興支援に携わるなど、
たくましく成長してきたものと思います。一方、未だ復興途上にも関わらず、既に「風化」とい
う問題が指摘されております。その中で皆さんには、伝道師としての役割を担って欲しいと思い
ます。周りの人々に自分の経験を話してみてください。話し、伝えることが重要です。また機会
を見つけて沿岸部を訪問してみてください。それが地域への大きな貢献になるのです。それを長
く続けることが大切です。
さて、皆さんは講義や実験実習で所定の単位を取得されました。これを知識の習得と呼びまし
ょう。一方で様々な経験を通してたくましく生きる人間力も育まれたものと思います。その中で
教育学部の高橋英輝(えいき)君が、第九十八回日本陸上競技選手権大会二十キロ競歩において
日本新記録を出し優勝したという、うれしいニュースもありました。黙々と地道に努力を続けた、
自分との闘いであったろうと、その頑張りを讃えたいと思います。
一昨年、私は三人の学生が参加したアメリカ、サンノゼの海外研修に同行しました。短期・長
期合わせて六十人の日本人学生がグループを作り、異国の見知らぬ土地で、見知らぬ人達と共に
研修を行うのですが、最終日には英語でプレゼンテーションを行いました。英語ももどかしいメ
ンバーが協力しながら徹夜で文章を作りあげ、見事な発表ができたことの達成感は格別であった
と思います。同時に、今後の勉学や学生生活のモチベーションをも高めたと思います。この様に、
あることをきっかけに諸君は大きく変わることが出来ます。ぜひ自分の可能性を信じ、夢を持っ
て努力を惜しまず「自分の道」をつくってください。
今後皆さんは専門的な知識を得て、それぞれの道をプロフェッショナルとして歩むわけですが、
自分の描いたとおりには行かないことが多くあることでしょう。しかし、簡単に諦めることなく、
挑戦する姿勢を持ち続けてください。ただし、ダーウィンが言っているように「強い種ではなく、
環境に適するように変化できる種が生き延びるのだ」ということも覚えてほしいと思っています。
最後にお願いがあります。岩手大学の今後の発展のために、卒業生として力を貸してください。
私達も皆さんのお役に立てることがあると思います。
自分の人生は自分がつくるという自覚を持って、自分のため、地域のため、日本のため、ある
いは世界のために活躍することを大いに期待し、はなむけの言葉といたします。
平成二十七年三月二十三日
国立大学法人 岩手大学長
岩渕 明