2.4 ネットワーク手法

59
工程管 理
2.4 ネ ッ ト ワー ク 手法
ネ ッ ト ワ ー ク には作業を矢線で表示する ア ロ ー形 (ArrowDiagram) と 、 作業を丸印で表示す る サー
ク ル形 (CircleDiagram) ( イ ベン ト 形 ・ EventDiagram と も い う ) があ る 。 こ こ では広 く 使われて い
る ア ロ ー形について説明す る 。
(1) ア ロ ー型ネ ッ ト ワー ク は、図 2.
4.
aに示すように作業を矢線で表示す る方法で、正 しく表現出来な
い作業の相互関係をダ ミー (疑似作業)を用いて表示す る。
ドア窓入荷
窓取付け
壁下塗り
扉取付け
部屋塗装
5日
3日
4日
1日
2日
床材注文・入荷
床仕上げ
2日
3日
図2.
4.
a
(2) サー ク ル型ネ ッ ト ワー ク は、図 2.
4.
bに示すように作業を丸印で表示する方法である。
梁、 床型枠
3 日
梁、 床配筋
2 日
1 階
コンク リート
打ち 1 日
2階
墨出 し、 柱配筋 1日
柱、 内壁型枠 3日
外型枠、 締付け 2日
壁 配 筋
2 日
コンク リート
打ち 1 日
図 2.
4.
b
2.4.1 基本用語
(1) 作業 (Activity ・ アクティビティ)
ネ ッ ト ワー ク 表示に使われてい る 矢線 (――→) は一般にア ク テ ィ ビ テ ィ と 呼ばれ、 作業活動、 見積
り 、 材料入手な ど時間を必要 と する 諸活動を示す。 ア ク テ ィ ビ テ ィ の基本要点は次の と お り で あ る 。
① 作業に必要な時間の大 き さ を矢線の下に書 く 。 こ の時間をデ ュ レ イ シ ョ ン (Duration) と いい矢
線の長 さ と は無関係で あ る 。
② 矢線は作業が進行す る 方向に表す。
③ 作業の内容は矢線の上に表示す る 。
(2) 結合点 (Event ・ イベント)
結合点は丸印 (→○→) で表 さ れ、 作業の開始 ま たは終了時点を示す。 結合点の基本要点は次の と
お り であ る。
① 結合点には番号 (正整数) ま たは記号を付け る 。 こ れを結合点番号 ま たは イ ベン ト 番号 と 呼び、
作業を番号で呼ぶ こ と がで き る 。
② 1 つのネ ッ ト ワ ー ク では、 結合点番号は同 じ 番号が 2 つ以上あ っ てはな ら ない。
③ 番号は作業の進行す る 方向に向っ て大 き な数字にな る よ う に付け る 。
④ 作業はその矢線の尾が接す る 結合点に入っ て く る 矢線群 (作業群) がすべて終了 し てか ら で ない
と 着手で き ない。
⑤ 結合点は時間的には零で あ る 。
60
工程管 理
(3) ダミー (Dummy)
点線の矢印 (
) は架空の作業 (Dummy) の意味で、 作業の前後関係のみを表 し 作業お
よ び時間の要素は含ま ない。 図 2.4.1.a の よ う な作業において 、 作業 C は作業 A の作業が終わ る と
着工で き る が図 2.4.1.b では A の作業の他に作業 B に も 関係があ り 、 作業 A、 B 両方 と も 終 ら ない と
着手で き な い。 一方、 作業 D は作業 A には関係な く 作業 B が終わればス タ ー ト で き る 。
図 2.4.1.c では、 作業 C は作業 A の作業が終わ る と 着工で き 、 作業 B には関係 し な い。 同 じ よ う
に作業 D は作業 B の作業が終わ る と 着工で き 、 作業 A には関係 し ない。 し か も 、 作業 A、 B 両方 と も
終 ら な い と 着手で き な い作業 E が あ る 場合には図の用に表す。
こ の よ う にダ ミ ーは作業 と は区別 さ れ、 作業の相互関係を結び付け る のに用い る 。
0
1
A
3日
B
5日
3
2
C
D
A
0
3日
B
1
5日
図 2.
4.
1.
a
3
2
C
A
0
3日
C
2
4
D
1
図 2.
4.
1.
b
B
5日
3
E
D
図 2.
4.
1.
c
2.4.2 基本ルール
(1)先行作業と後続作業
結合点に入っ て く る 矢線 (先行作業) がすべて完了 し た後で ない と 、 結合点か ら 出 る 矢線 (後続作
業) は開始で き な い。
A
C
B
図 2.
4.
2.
a
A
C
A
B
D
B
図 2.
4.
2.
b
D
C
図 2.
4.
2.
c
図 2.4.2.a では A お よ び B の両方の作業 と も 完了 し ない と C は開始で き ない と い う 意味であ る 。 ま
た図 2.4.2.b では D は B が完了すれば開始で き る が、 C は A お よ び B が完了 し ない と 開始で き な い
こ と を表 し て い る 。 図 2.4.2.c の よ う に先行作業が 3 本以上あ る 場合 も 同様で あ る 。
(2)同一結合点間の矢線の数の制限
1 つの結合点か ら 次の後続結合点に入 る 矢線の数は 1 本で な ければな ら ない。 こ れはパ ソ コ ン で作業
時刻の計算を行 う 場合な ど各作業は矢線の両端の結合点番号で判別す る ので、 2 つの作業が並行 し て行
われ る 場合、 図 2.4.2.d の よ う に結合点② と ④の間に B と D の 2 本の矢線を入れて し ま う と ②→④ と
書いた のでは B と D の ど ち ら を示 し てい る のか解 ら な く な る か ら で あ る 。
こ の よ う な場合 (同時作業の指示) は、 図 2.4.2.e ま たは図 2.4.2.f の よ う に 2 つの結合点間の
1 つの作業の中間に新たに別の結合点③を設け、 ② と ③の間 (図 2.4.2.f の場合は③ と ④の間) を ダ
ミ ーで結ぶ。 こ の よ う にすれば作業 B は②→④、 作業 D は③→④で (図 2.4.2.f の場合は②→③) で
表す こ と がで き る 。
61
工程管 理
作業が 2 つの結合点間に図 2.4.2.g の よ う に D、 B、 E と 3 本あ る 場合に も 図 2.4.2.h、 ま たは
図 2.4.2.i の よ う に表示すれば よ い。
D
1
A
2
B
4
C
5
1
A
図 2.
4.
2.
d
2
A
2
B
B
4
C
5
1
A
C
6
1
A
2
E
B
4
図 2.
4.
2.
g
5
3
B
2
4
C
5
図 2.
4.
2.
f
D
3
5
D
図 2.
4.
2.
e
D
1
D
3
D
C
6
1
A
E
B
2
E
図 2.
4.
2.
h
3
5
C
6
4
図 2.
4.
2i
.
(3)開始点と終了点
1 つのネ ッ ト ワ ー ク では開始の結合点 と 終了の結合点はそれぞれ 1 つで な ければな ら ない。
(4)サイクルの禁止
図 2.4.2.j の よ う な作業が、 A、 B、 C、 D、 E、 F、 G のネ
F
A
ッ ト ワー ク では C、 D、 E はサ イ ク ル と な る 。 「C は D に先行 し 、
E は C に先行 し 、 D は E に先行す る 」 こ と にな り 、 作業は進行
C
B
E
G
せず日程計算が不能にな る が、 こ の よ う な こ と はあ り え ない。
D
図 2.
4.
2.
j
2.4.3 作業時刻
ネ ッ ト ワ ー ク は作業順序の組立てが終わ り 図が完成すれば、 次には時間の要素を組み込ん で日程計
画を立て る こ と にな る 。 工事は完成期限が決め ら れてい る ので、 こ の時間的な制約条件に対 し て それ
ぞれの作業時間を調整す る こ と が必要にな る 。 そ の管理に必要な管理時刻等を次に述べ る 。
(1) 最早開始時刻 (EST)
あ る 任意の結合点において、 そ の作業が最 も 早 く 開始で き る 時刻を最早開始時刻 (E ・ S ・ T) と い
う 。 最早開始時刻の表示方法は、 こ の テ キ ス ト では○で表示す る 。
B
5日
0
1
8
D
4日
12
3
A
3日
8
3
3
2
最早開始時刻
最早終了時刻
8
C
3日
6
4
5
12
F
1日 13
13
6
10
8
E
2日
図 2.
4.
3.
a
い ま 図 2.4.3.a の よ う なネ ッ ト ワ ー ク があ る 場合、 時間計算の手順 と し ては、 矢線の尾の接す る 結
合点の最早結合時刻にそ の作業の所用時間を加え て矢線の頭の接す る 結合点の最早開始時刻 と すれば
よ い。 ス タ ー ト を 0 と し ①→②の作業に 3 日かか る と すれば、 結合点②か ら 後続す る 作業の開始可能日
は 3 日で あ る 。 ただ し 、 結合点④の よ う に 2 つの作業が先行 し てい る 場合は①→②→③→④の経路では
8 日間、 ①→②→④の経路では 6 日間を要する 。 し たがっ て④の最早開始時刻 (E ・ S ・ T) は 8 日にな
る。
62
工程管 理
すな わち先行す る 作業群の最早終了時刻の内で最 も 時間の多い も のが後続す る 作業の最早開始時刻
(E ・ S ・ T) と な る 。
こ の よ う に し て最終結合点の最早開始時刻
(E ・ S ・ T) 13 日が求め ら れ る 。 こ れが計画
の所要時間を 表す こ と にな る 。 図 2.4.3.a
結合点
①
②
③
の各結合点の最早開始時刻 (E ・ S ・ T) を順
次計算す る と 右の表の よ う にな る 。
(2) 最早終了時刻
計 算
0
0+3=3
3+5=8
最早開始時刻 (E・
S・
T)
0日
3日
8日
④
8+0=8
3+3=6
8> 6で 8日
⑤
8+4=12
8+2=10
12> 10で 12日
⑥
12+1=13
13日
そ の作業が最 も 早 く 完了で き る 時刻の こ と で、 そ の作業の最早開始時刻に作業の所要時間を加え た
も ので あ る 。 図 2.4.3.a におけ る 作業②→④を例に と る と 、 最早開始時刻は 3 日、 作業の所要時間は
3 日で あ る か ら 、 最早終了時刻は 6 日で あ る 。
(3) 最遅開始時刻
その作業が遅 く と も その時刻に開始 さ れなければ予定工期ま でに完成で き ない と い う 時刻の こ と で、
その作業の最遅終了時刻か ら その作業に要す る 所要時間を引いた も ので あ る 。 図2.4.3.b におけ る 作
業②→④の最遅終了時刻は 10 日、 作業の所要時間は 3 日で あ る か ら 最遅開始時刻は 10 - 3 = 7 日で
あ る。
(4) 最遅終了時刻 (LFT)
工事を所要時間以内に完了す る ために各結合点が遅 く と も 終了 し な く てはな ら ない時刻を最遅終了
時刻 (L ・ F ・ T) と い う 。 最遅終了時刻の表示方法は こ のテ キ ス ト では□で表示す る 。
B
5日
3
0
0
1
0
A
3日
3
3
8
8
D
8
4日
10
12
3
2
最遅終了時刻
7
C
3日
最遅開始時刻
10
4
8
E
10
2日
12
5
12
F
1日
13
13
6
図 2.
4.
3.
b
こ れは最終結合点の最早開始時刻 (E ・ S ・ T) を所要工期 と し て最早開始時刻の計算の場合 と は逆
に先行作業の所要時間を図2.4.3.b の よ う に順次引き 算 し て算出す る 。 例えば結合点④の最遅終了時
刻は結合点⑤ ま での所要日数 12 日か ら ④→⑤の所要日数 2 日を引いた 10 日 と な る 。 し か し 結合点②
は②→④の経路で計算す る と 7 日 (10 - 3 = 7) に終了 し ていれば所要時間に間に合 う が、 ②→③の
経路では 3 日 (8 - 5 = 3) に終了 し ていない と 間に合わない。 し た がっ て、 結合点②の最遅終了時刻
は 3 日 と な る 。 図の□内の数値が最遅終了時刻 (L ・ F ・ T) で あ る 。 結合点②の よ う に矢線の尾が 2 つ
以上あ る 結合点については、 最小値を と る 。
結合点
⑥
⑤
④
計 算
13
13-1=12
12-2=10
最遅終了時刻 (L・
F・
T) 最早開始時刻 と 最遅終了時刻は、 工程管理上、
13日
次の よ う な重要な意味を も つ。
12日
① 暦日 と の関連をつけ ら れ る 。
10日
② フ ロ ー ト (余裕時間) 計算の も と と な る 。
③
12-4=8
10-0=10
10> 8で 8日
②
8-5=3
10-3=7
7> 3で 3日
①
3-3=0
0日
③ 最早開始時刻=最遅終了時刻の結合点は、 ク
リ テ ィ カル イ ベン ト (Critical Event) と 呼
び、 ク リ テ ィ カルパ ス (Critical Path) は必
ずそ こ を通 る 。
63
工程管 理
2.4.4 フ ロ ー ト (余裕時間)
結合点に 2 つ以上の作業が集ま る 場合、 それぞれの作業の所要時間に差があ る のが普通であ る 。 し た
が っ て、 それ ら の作業の中で最 も 遅 く 完了す る 作業以外の も のは時間的余裕が存在す る こ と にな る 。
それを フ ロ ー ト と 呼ぶ。 図 2.4.4.a の最早開始時刻を計算 し て い く と 、 結合点⑤では 15 と な り 、 工
事の全体を完成す る のに要す る 時間は 15 日で あ る こ と が分る 。 その経路 と し ては①→②→④→⑤ と ①
→②→③→④→⑤ と の 2 つがあ る が、 経路②→③→④は 5 日、 ②→④は 8 日かか る ので前者は 3 日延び
て、 8 日にな っ て も 工期に影響 し ない。 5 日でやれば、 開始を 3 日遅 ら せて も 間に合 う ので、 8 日の経
路に対 し て 3 日の余裕があ る こ と にな る 。
7
3日
0
1
3
2日
4日
15
12
4
2
4
8日
5
3日
図 2.
4.
4.
a
(1) ト ー タ ル フ ロ ー ト (最大余裕時間)
任意の作業内で と り 得 る 最大余裕時間を
ト ー タ ル フ ロ ー ト (T ・ F) と 呼ぶ。 例えば、 図 2.4.4.
b で作業②→④の作業は 3 日に開始 し て 3 日間かか る か ら 6 日には完了す る 。 し か し ④の最遅終了時刻
は 10 日で あ る か ら 10 日迄に完了 し ていれば工期 13 日に影響を与え な いので 10 - 6 = 4 日間の余裕
があ る 。 同様に し て④→⑤では 12 -10 =2 日間の余裕があ る 。 し か し なが ら ②→④の ト ータ ルフ ロー
ト (T ・ F) を全部 こ の作業で使い 10 日かか っ た と す る と ④の最早開始時刻 (E ・ S ・ T) は 10 日 と な
り 後続の④→⑤の作業の ト ー タ ルフ ロ ー ト (T ・ F) が無 く な る 。 こ の よ う に先行作業では ト ー タ ル フ
ロ ー ト を使 う と 後続作業の ト ー タ ル フ ロ ー ト に影響す る 場合があ る 。
ト ー タ ル フ ロ ー ト (T ・ F) は各々の作業に含 ま れ る フ リ ーフ ロ ー ト (F ・ F) と デペンデン ト フ ロ ー
ト (D ・ F) を合計 し た も のか ら 成立っ て い る 。
5日
0
0
1
3
3
3日
〔 0 〕
3
8
4日
8
〔 0 〕12
2
12
5
〔 0 〕
10
3日
1日
2日
〔 4 〕
6
〔 0 〕
8
4
13
13
図 2.
4.
4.
b
〔 2 〕
図 2.4.4.c の計算例を参照。 図 2.4.4.b の 〔 〕 内の数字が ト ー タ ルフ ロ ー ト (T ・ F) を表す。
ト ー タ ル フ ロ ー ト の性質は次の と お り で あ る 。
① ト ー タ ル フ ロ ー ト (T ・ F) = 0 の作業を ク リ テ ィ カル作業 と い う 。
② ト ー タ ル フ ロ ー ト (T ・ F) = 0 な ら ば他の フ ロ ー ト も 0 で あ る 。
③ ト ー タ ル フ ロ ー ト (T ・ F) はそ の
作業のみで な く 前後の作業に関係
があ り 、 1 つの経路上では ト ー タ ル
フ ロ ー ト (T ・F) に含ま れ る デペン
デン ト フ ロ ー ト (D・F) は共有 さ れ
てい る も ので あ る 。
10
8
4
12
12
2日
5
〔 2 〕
T・F=12日-8日-2日=2日
図 2.
4.
4.
c トータルフロートの計算例
作 業
T・F
①→②
0
②→③
0
②→④
4
③→⑤
0
④→⑤
2
⑤→⑥
0
64
工程管 理
各作業の ト ー タ ル フ ロ ー ト (T ・ F) は、 それ を加え た分だけそ の経路に余裕時間があ る のではない。
先行作業で ト ー タ ル フ ロ ー ト (T ・ F) を使い切ればそ のなかの D ・ F 分だけ後続作業の ト ー タ ル フ
ロ ー ト (T ・ F) は少 く な る 。
(2) フ リ ー フ ロ ー ト (自由余裕時間)
ト ー タ ル フ ロ ー ト (T ・ F) を も つ先行作業が T ・ F の一部、 ま たは全部を使 う と 、 後続す る 作業は
最早開始時刻で始め る こ と がで き な く な る 。 そ こ で作業の中で自由に使っ て も 、 後続す る 作業に影響
を及ぼ さ ない余裕時間を
フ リ ー フ ロ ー ト (F ・ F) と 呼ぶ。 た と えば図 2.4.4.d の②→④の作業が
完了す る のが 6 日で、 ④の最早開始時刻は 8 日であ る か ら 8 - 6 = 2 日間は自由に使っ て も 後続す る 作
業④→⑤の フ ロ ー ト には影響はない。 F ・ F の計算では作業の最早終了時刻 と 後続す る 結合点の最早開
始時刻 と の差を求めれば よ い。
8
8
5日
0
1
3
3
0
3
3
( 0 )
4日
2
3日
2
( 0 )
12
12
5
( 0 )
4
3日
( 2 )
( 2 )
6
( 0 )
8
10
1日
4
3日
13
13
8
10
3
F・F=8日-3日-3日=2日
図 2.
4.
4.
e フリーフロートの計算例
2日
( 2 )
図 2.
4.
4.
d
フ リ ー フ ロ ー ト の性質は次の と お り で あ る 。
① フ リ ー フ ロ ー ト (F ・ F) は必ず T ・ F と 等 し いか小 さ い。 F ・ F ≦ T ・ F
② ク リ テ ィ カル イ ベン ト を終点 と す る 作業の F ・ F は T ・ F に等 し い。
③ フ リ ーフ ロ ー ト (F・F) は こ れを使用 し て も 、 後続す る 作業には何 ら の影響を及ぼす も のではな く 、
後続す る 作業は最早開始時刻で開始す る こ と がで き る 。 (図 2.4.4.e の F ・ F 計算例を参照)
(3) デペ ン デ ン ト フ ロ ー ト (影響余裕)
後続作業の持つ T ・ F に影響を与え る フ ロ ー ト を
デペンデン ト フ ロ ー ト (D ・ F) ま たは イ ン タ ー
フ ェ ア リ ン グ フ ロ ー ト (I ・ F) と 呼ぶ。
図 2.4.4.f の①→③の T ・ F 8 日には、 (8 日の T ・ F)-(6 日の F ・ F)= 2 日の D ・ F が含 ま れて
い る 。 こ の場合①→③で 8 日間の T ・ F を全部使用す る と 後続す る 工程の T ・ F はすべて 2 日ずつ減少
す る 。 同 じ よ う に③→⑤の作業が も つ 7 日の T ・ F は、 こ の作業の F ・ F が 0 なので全部が D ・ F で あ
り 、 こ こ で使っ た フ ロ ー ト はすべて後続す る 工程に影響を与え る 。
8
8
8日
2
4
9日
作 業 T・F F・F D・F
17
17
①→②
0
0
0
①→③
8
6
2
②→③
2
0
2
②→④
0
0
0
③→④
2
2
0
3日
③→⑤
7
0
7
〔 7 〕
( 7 )
④→⑥
0
0
0
⑤→⑥
7
7
0
7日
〔 0 〕
〔 0 〕
〔 0 〕
24
( 0 )
( 0 ) 2日( 0 )
〔
2
〕
6
〔 2 〕
5日
( 2 )
( 0 )
0
0
1
24
21
4日
〔 8 〕12
( 6 )
3
10
4日
〔 7 〕
( 0 )
図2.
4.
4.
f
14
5
いいか え る と D ・ F は使わずに と っ ておけば、 後続す る 他の工程でその分を使用で き る フ ロ ー ト で あ
り 、 F ・ F はそ の作業についてだけ し か使え ない フ ロ ー ト で、 た め込みの き かな い も ので あ る 。
工程管 理
65
2.4.5 ク リ テ ィ カ ルパス
図 2.4.4.f のネ ッ ト ワ ー ク において、 ①の開始結合点か ら ⑥の最終結合点に至 る 各ルー ト に沿っ て
日数を集計す る と 次の よ う に 5 本で き る 。
1) ①→②→③→④→⑥ ・・・・・・・・ 22 日
2) ①→②→③→⑤→⑥ ・・・・・・・・ 17 日
3) ①→②→④→⑥ ・・・・・・・・・・・・ 24 日
4) ①→③→④→⑥ ・・・・・・・・・・・・ 16 日
5) ①→③→⑤→⑥ ・・・・・・・・・・・・ 11 日
こ の工事に要す る 最大日数はルー ト 3) の 24 日にな る 。 つ ま り ルー ト 3) に沿っ た各作業が工期を
支配 し てい る わけで、 こ の よ う に各ルー ト の う ち最 も 長い日数を要す る ルー ト を ク リ テ ィ カルパ ス と
呼ぶ。
ネ ッ ト ワ ー ク を組む場合、 こ の よ う な ク リ テ ィ カルパ ス にな る 経路が、 必ず 1 本以上で き る 。 こ の経
路の通算日数が工期を決定 し てい る ので、 期限内に計画を完成す る ためには、 ク リ テ ィ カルパ ス 上の
作業を遅れな い よ う に工程管理を行 う こ と が、 最 も 効果的な手段で あ る と い っ て も よ い。 ク リ テ ィ カ
ルパ ス は作業工程上、 時間的に最 も 長い経路にあ た る ため、 作業が順調に進め ら れ る 限 り 、 ク リ テ ィ
カルパ ス には変動はな いが、 作業条件の変化で工期短縮が必要にな っ た場合には、 こ の経路上で最 も
多 く の日数 を短縮 し な く ては な ら ない。
ま た、 図 2.4.4.f の③→⑤の工程で 7 日間の ト ー タ ル フ ロ ー ト を全部使っ て し ま う と ③→⑤→⑥の
経路は T ・ F = 0 と な り 、 ク リ テ ィ カルパ ス にな る 。 逆に、 ク リ テ ィ カルパ ス も そ の経路上の作業時間
に余裕を生 じ 、 T ・ F を も つ こ と にな る と ク リ テ ィ カルパ ス ではな く な る 。 こ の よ う に、 ク リ テ ィ カル
パ ス は一定 し て い る も のでは ない。
ク リ テ ィ カ ルパスの性質は次の と お り で あ る 。
① ク リ テ ィ カルパ ス 上の作業の フ ロ ー ト (T ・ F、 F ・ F、 D ・ F) は必ず 0 で あ る 。
② ク リ テ ィ カルパ ス は開始点か ら 終了点 ま でのすべて の経路の中で も っ と も 時間が長い経路で あ る 。
いいか え る と 、 こ の経路の時間に よ っ て工期が き ま る 。
③ 工程短縮の場合は こ の経路に着目 し な ければな ら ない。
④ ク リ テ ィ カルパ ス は必ず し も 1 本では ない。
⑤ ク リ テ ィ カルパ ス 以外の作業で も 、 フ ロ ー ト を消化 し て し ま う と ク リ テ ィ カルパ ス にな る 。
⑥ ネ ッ ト ワ ー ク では ク リ テ ィ カルパ ス を通常、 太線で表す。