. . ( . ): ∼ 一般講演 1 0 静注アミオダロンで起こした間質性肺炎の1例 宗次 裕美 西村 英樹 河村 光晴 浅野 拓 横田 裕哉 濱嵜 裕司 正司 真 丹野 郁 小林 洋一* 律,Ⅱ,Ⅲ,aVF,V5,V6でST上昇が認められたため はじめに 急性心筋梗塞と診断し,緊急PCIを施行して,入院と アミオダロン静注薬投与後に急性間質性肺炎を発症 なった. し,ステロイドパルス療法が著効した症例を経験した 経 過:冠動脈造影により右冠状動脈 (RCA),左冠 ので報告する. 動脈主幹部 (LMT) ,左前下行枝 (LAD)に有意な狭窄 は認めず,左回旋枝 (#11) の完全閉塞が認められたた 症例提示 め同部位にPCIを施行した.PCI後は特に問題なく経過 症 例:7 7歳,女性. したが,血流再開後も血圧の上昇が不良であり,血圧 主 訴:胸背部痛. 6 0 mmHg台で推移していたため,PCI後大動脈内バ 既往歴:高血圧. ルーンパンピング(IABP)を入し,ノルアドレナリ 生活歴:喫煙歴および飲酒歴なし. ン投与が開始され,CCU入室となった. 家族歴:特記事項なし. PCI施行翌日には心エコー検査により下行壁の壁運 現病歴:高血圧で近医に通院していた.以前より咳 動低下を認めたが,左室駆出率 (LVEF)は60%であり, 嗽は頻回であったが,明らかな胸部症状を自覚したこ 左室収縮能は維持されていた.この頃から心室性期外 とはなかった.20 0 9年9月,突然胸背部痛を自覚した 収縮(PVC)および非持続性心室頻拍 (non―sustained ため救急要請し,近医に救急搬送された.心電図上, VT:NSVT)が出現し,第3病日には脈拍260回/分の Ⅱ,Ⅲ,aVF,V5,V6でST上昇を認めたため当院を紹 心室頻拍が出現した.直流電流除細動(DC 200J) を施 介受診し,急性心筋梗塞の診断で緊急心臓カテーテル 行し,いったんVTは停止したが,その後もVTが頻回 検査を施行された.左回旋枝 (#1 1) が完全閉塞であり, に出現したため (図1) ,アミオダロン7 5 0 mgの急速静 同部位に対して経皮的冠動脈形成術を施行され,CCU 注を行い,その後維持投与を開始した.投与後,QTc 入室となった. は05 . 8とQT延長が認められたが,その後もPVCおよび 入院時現症:血圧は66/3 4 mmHgと低下しており, NSVTが認められた. 酸素飽和度 (SpO2) は9 8%と比較的保たれている (O2 心筋梗塞に伴う循環不全の結果,心不全へと進展し nasal3 L/min).下腿浮腫,頸静脈怒張は認められない. ており,IABP,ノルアドレナリン,利尿薬で加療開始 血液検査所見:トロポニンⅠ,ミオグロビン,LDHは し,循環動態改善に伴って心不全は改善したが,その 高値であった. 後もSpO2の低下が認められていた.全身状態安定後に 入院時検査:胸部X線検査により,心胸郭比は5 8%と 一般病棟へ転棟し,X線検査を行ったところ,両側に 心拡大を認めたが,肺門部うっ血および胸水は認めら 擦りガラス陰影が認められた(図2) .また,血液検査 れなかった.また,心電図検査では脈拍4 9回/分,洞調 からKL―6は18 , 95 U/mLと著明に上昇しており (図2), 同日緊急で胸部CT検査を施行した. * Y. Munetsugu,M. Kawamura,Y. Yokota,M. Shoji,H. Nishimura,T. Asano,Y. Hamazaki,K. Tanno,Y. Kobayashi: 昭和大学医学部内科学講座循環器内科部門 CT画像から両側肺野に間質性肺炎が認められ,こ れがアミオダロン投与によるものと考え,アミオダロ ― ( 681)― . ¿ À Á VR a VL a VF a V1 V2 V3 V4 V5 V6 図1 心電図所見 VT⇒DC 200Jで停止(第3病日) 9/10 150 9/13 9/16 9/19 SBP IABP 9/22 9/25 DBP 血圧(mmHç) ノルアドレナリン 100 50 VT NSVT アミオダロン NSVT 750 mç/day 静注 200 mç/day 内服 0 ランジオロール 1μç/kç/min アミオダロン 2,778 nç/mL KL−6 1,895 U/mL DEA 376 nç/mL SP−D 371 nç/mL 図2 臨床経過1 ン投与を中止し,ステロイドパルス療法を開始した が,基準値に戻るまで半年を要した. に低下した (図3) (メチルプレドニゾロン10 , 00mg/日,3日間).その結 考 果SpO2は改善し,KL―6とSP―Dはともに低下した.そ 察 の後プレドニゾロン2 0 mg/日へと漸減し,間質性肺炎 既に①高い維持投与量,高齢,DLco異常,血清DEA が再燃しなかったので退院となった.退院後のKL―6 高値がアミオダロンの肺障害の発生因子である1),② およびSP―Dの上昇は認められなかった(図3) . 年齢,投与期間,累積投与がアミオダロンによる肺合 一方,アミオダロン投与中止後, アミオダロンおよび 併症の危険因子である2),③アミオダロンによる副作 デスエチルアミオダロン(DEA) の血中濃度は速やか 用は血中濃度が25 . mg/L以上で起こりやすい3),④ア ― ( 682)― 第15回アミオダロン研究会講演集 メチルプレドニゾロン1,000 mç/日,3日間 プレドニゾロン50 mç/日 3,000 500 KL−6 アミオダロン DEA SP−D 2,500 2,000 450 400 350 300 250 1,500 200 1,000 (nç/mL) SP−D アミオダロン,DEA(nç/mL) ,KL−6 (U/mL) プレドニゾロン20 mç/日 150 100 500 50 0 9/19 9/26 10/3 10/7 10/16 11/5 11/24 1/15 3/9 5/7 7/9 0 図3 臨床経過2 ミオダロンは脂溶性であり,BMIの高い患者では血清 アミオダロン,DEAの低下後も肺合併症が再発する可 能性がある4),といったことが報告されている.このこ とから,本症例では,高齢であること,アミオダロン 血中濃度が25 . mg/L以上であったこと,BMIが比較的 高いことなどが間質性肺炎の原因になったのではない かと思われる. おわりに アミオダロン静注使用の場合でも,早期から肺合併 症の発症に注意が必要である. tures of amiodarone―induced pulmonary toxicity. Circulation 19 90;8 2:51―59. 2)Ernawati DK, Stafford L, Hughes JD:Amiodarone―induced pulmonary toxicity. Br J Clin Pharmacol 2 00 8;6 6:8 2―87. 3)Rotmensch HH, Belhassen B, Swanson BN, et al: Steady―state serum amiodarone concentrations:relationships with antiarrhythmic efficacy and toxicity. 9. Ann Intern Med 19 84;1 01:4 62―46 4)Okayasu K, Takeda Y, Kojima J, et al:Amiodarone pulmonary toxicity:a patient with three recurrences of pulmonary toxicity and consideration of the probable risk for relapse. Intern Med 2 00 6;45:13 0 3― 13 07. 文 献 1)Dusman RE, Stanton MS, Miles WM, et al:Clinical fea- ― ( 683)― . 質疑応答 (長崎国際大学健康管理学部健康栄養学科教授) 座長/矢野 捷介 (東邦大学医療センター大橋病院循環器内科教授) 杉 薫 (昭和大学医学部内科学講座循環器内科部門) 演者/宗次 裕美 面家(岐阜県総合医療センター) 通常,投与を中止 る場合もあります.この症例の場合,逆に間質性肺炎 して数日後には血中濃度が十分に低下すると思います が認められないものの,KL―6高値であることは,どう が,アミオダロンとDEAの血中濃度が基準値に戻る 考えるべきでしょうか. まで半年も要したのはなぜでしょうか. 丹野(共同演者) 当科受診時に,既にCT画像から 宗次(演者) この症例は身長14 7 cm,体重55 kgと 間質性肺炎の陰影が確認されていました.入院時の血 肥満であり,アミオダロン血中濃度のピーク値がかな 清を後日測定したところKL―6が若干高値であり,も り高値を示していました.またアミオダロンが脂溶性 ともと間質性肺炎の疑いがあったと考えられます.し であり,高齢女性といった点から,脂肪組織にアミオ たがってステロイド治療を継続していくべきであった ダロンがかなり蓄積していたのではないかと考えられ と思います. ます. 田村 心室頻拍の治療を目的にアミオダロンを投与 菅原(自治医科大学さいたま医療センター) アミオ した場合,KL―6が高値のままで,何度CT画像を撮影 ダロンの添付文書には,静注は7日間までと記載され しても間質性肺炎の陰影をとらえられない症例を経験 ていますが,この症例では7日間以上投与していまし しますので,こういった症例では注意する必要があり たね. ます. 宗次 はい,投与期間が長かった症例です. 西田 (富山大) この症例では,はじめにアミオダロ 菅原 これまで,比較的短い期間に静注薬だけを投 ン75 0mg/日静注を行い,その後アミオダロン2 00mg/ 与した症例では,比較的間質性肺炎の頻度は少ないと 日内服を追加されていましたが,その投与方法は適切 考えて急性期治療を行っていましたが,今後このよう だったのでしょうか.また,ノルアドレナリン投与下 な症例には静注薬投与前にもCT画像撮影やKL―6測定 の,心筋梗塞急性期の心室頻拍に対して維持療法が本 などを行う必要がありますね. 当に必要だったと思われますか. 宗次 この患者さんは来院時に胸背部痛を訴えてお 宗次 この症例の結果から,静注を4日間程度とし, り,CT画像撮影の際に該当箇所を確認したところ,肺 その後内服薬10 0∼20 0 mg/日に変更する方がよいの 側に肺炎のような所見が若干認められました.また, ではないかと思います. 来院時から既にQT延長が認められていたため,アミ 心筋梗塞の超急性期は乗り切り,3日目に心室頻拍, オダロンを選択しています.このような症状がトリ その後非持続性心室頻拍が持続したので,維持投与を ガーとなって間質性肺炎が起こりやすい状態であった 選択しました. という可能性が考えられます. 矢野 (座長) 時間が来ました.宗次先生,ありがと 田村 (聖園病院) KL―6値とCT画像が必ずしもパラ うございました. レルではなく,KL―6低値でも間質性肺炎が認められ ― ( 684)―
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