パーソナルデータの利活用目指し、 法改正を含めた環境作りが進行中

エンタープライズICT総合誌 月刊ビジネスコミューニケーション(Webサイトへ)
2:インタビュー
パーソナルデータの利活用目指し、
法改正を含めた環境作りが進行中
さらに「暗号」でビジネス拡大を
2015 年 3 月 10 日、個人情報保護法の改正案が閣議決定され、国会に同日提出された。
政府
IT総合戦略本部が開催した「パーソナルデータに関する検討会」の技術ワーキンググ
ループに参加するなど、同法案の作成に関わってきた高橋 克巳企画部長に、同法案のポイ
ントや、パーソナルデータの安心安全な利活用のための技術などについてうかがった。
NTT セキュアプラットフォーム研究所
企画部長 高橋 克巳氏
パーソナルデータ利用に道拓く
個人情報保護法改正案
す。
匿名化とは、個人の特定ができな
す。あるデータを匿名化したとして、
くなるようにデータを加工すること
それに本当に問題がないかどうか
̶個人情報保護法の改正目的は何で
です。NTT セキュアプラットフォ
は、ケースバイケースで判断するし
ーム研究所では、データをランダム
かありません。単一の匿名化方式が
な操作で書き換えることで個人を一
あって、それで加工すれば安全なデ
定確率以下で特定できないようにす
ータが出てくるわけではないという
る「Pk- 匿名化」という独自の匿名
ことを意識する必要があります。
しょうか。また、法案のポイントにつ
いて教えてください。
高橋 法改正が求められている背景
には、個人に関するパーソナルデータ
を含んだビッグデータをビジネスなど
に利活用するケースが増えている現
状があります。これらのデータが安心
して使われるようになるために、どの
ような情 報 が 保 護 対 象であるべき
か、どのような取り扱いをすべきか、
を明らかにする必要がありました。
改正法案のポイントの一つ目は個
人情報の定義です。これまでの定義
は個人が特定できることでしたが、
化技術を開発しています。今回求め
パーソナルデータを匿名化しない
られる取り扱いのルールが緩やかな
で安全に活用していくには、暗号を
ものとされたため、その分プライバ
利用すると良いでしょう。従来から
シー保護の観点から匿名化の程度を
暗号はデータの秘匿のために用いら
安全側に倒すことがより重要になっ
れてきましたが、現代の暗号はデー
たと考えています。このため「Pk-
タを秘匿したまま演算をすることが
匿名化」をはじめとしたプライバシ
できます。この性質を応用したもの
ーが評価できる匿名化の技術を適切
が「秘密計算システム」です。秘密
に駆使していく必要があります。
計算システムを使えば、データの利
の」が加わりました。詳細は政令で
匿名化で対応できないデータは
暗号の利用を
定めるとされていますが、バイタル
̶匿名化でパーソナルデータは完全
情報やユーザ ID などが個人情報の
に安全になるのでしょうか。
定義に入ってきます。
高橋 匿名化に過度に期待するのは
それに「個人識別符号が含まれるも
これにより、保護対象となる情報
の範囲が広がりました。
良くないと思っています。匿名化は、
あくまでも情報と個人との結び付き
法案のもう一つのポイントは、個
を一定割合以下に下げるための技術
人情報を「匿名化」すれば、所定の
に過ぎません。しかも結び付きをど
ルールの下で自由に利活用して良い
の程度下げるかは、データのセンシ
という規定が盛り込まれたことで
ティブさと使い方によって変わりま
ビジネスコミュニケーション 2015 Vol.52 No.4
用者(分析者)に元データが漏れる
心配なく、パーソナルデータを安心
して利活用できます。当研究所は、基
本的な統計演算をサポートした実用
レベルの秘密計算システムを世界に
先駆けて開発しており、すでに商用
フェーズに移行しています。秘密計
算を用いたデータもプライバシーも
漏れないパーソナルデータ活用の仕
組みを提案しています。
̶本日は有難うございました。
(聞き手・構成:末安 泰三)
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