共創型イノベーションによりITを使った新しい価値・サービス・ビジネスを創出

エンタープライズICT総合誌 月刊ビジネスコミューニケーション(Webサイトへ)
特集
1
共創型イノベーション創出に向けたNTTデータ
ソリューション&テクノロジーカンパニーの取り組み
共創型イノベーション
共創型イノベーションにより IT を使った
新しい価値・サービス・ビジネスを創出
従来主なIT 投資領域であった「業務効率化を目的とするシステム開発」が一巡し、新規開発が減少している。そこでフロント業務を中心
とした付加価値創造型の IT 活用を目的とする新たな領域を開拓していくために、NTTデータのソリューション&テクノロジー(以下、
S&T)カンパニー長である栗島聡副社長が中心となり推進している“共創型イノベーション”について紹介する。
IT 投資領域のシフトが大きな
ビジネスチャンスに
ビジネス上の付加価値を得るため
フロント業務に関わる領域への IT
投資を重視する企業が、特に欧米で
増えている。バックエンド業務の省
力化を目的とする IT システムが多
くの企業に行き渡り、新規開発が減
株式会社 NTT データ ソリューション&テクノロジー事業推進部
少している日本の IT 市場でも、今
箱守 聰氏
企画部 事業戦略担当(左)部長 小橋 哲郎氏(右)課長 渡辺 啓之氏
(中央)事業推進部長
後このような新しい領域(図 1)へ
のシフトが進むと考えられている。
この変化をチャンスと捉えていると
ること』のコモディティ化が進み、
することが予想される新しい IT 投
して、S&T 事業推進部 企画部 事業
IT 市場における競争が激しくなっ
資領域への対応が大きなビジネスチ
戦略担当 渡辺啓之課長は次のよう
ています。一方で、IT による新し
ャンスになると考えています。」
に語る。
いサービス・ビジネスの開発も、技
「開発技術の容易化やクラウドの
術面では容易になることを意味しま
普及などにより、『システムをつく
す。このような理由から、今後拡大
付加価値化
省力化・自動化
バックエンド
業務
定型的業務
生産管理
流通管理等
フロント業務
サービス開発
製品開発
マーケティング等
新しい IT 投資領域への対応に
適した“共創型イノベーション”
従来の IT 投資領域を対象とする
IT投資の目的
ビジネスモデルでは、基本的にお客
様からの要求を受け、NTT データ
はあくまでもベンダーとしてソリュ
従来のIT投資領域
「共創型イノベーション」
のターゲット
新しいIT投資領域
ーション提供やシステムの受託開発
を行なう。システムの規模は大きく、
その利用期間も長期に渡るものが多
かった。プロジェクトの成功に重要
なのは品質、納期、予算の管理で、
システムを「どうやって作るか」と
IT投資の対象
図 1 新しい IT 投資領域
36
いう点が重要と言える。
これに対し新しい IT 投資領域を
ビジネスコミュニケーション 2014 Vol.51 No.11
エンタープライズICT総合誌 月刊ビジネスコミューニケーション(Webサイトへ)
狙うビジネスモデルでは、
「何をす
お客様との共創
るか」を考えること自体が重要にな
お客様と当社の相互の強みを生かし、社会/
エンドユーザーに向けた新たな価値創出を行う
お客様と共同で新規ビジネスを展開する
る。お客様だけで、IT を活用して
何をするのかを検討し具体化してい
当社資産
×
顧客資産
新しい
価値創出
カンパニー/
グループ
事業部等
顧客企業
価値
創出
エンド
ユーザー
経営部門
事業部門
IT部門
くことは容易ではない。そこでお客
価値提供
様からの要求を待つのではなく、自
カンパニー内の共創、グループ内の共創
ら企画提案し、お客様企業やパート
一部門の事業領域に捉われない価値創造を
い、当社グループの価値提供力を強化する
新たな付加価値サービス・ソリューションの
構築により、受注機会を拡大する
ナー企業を巻き込み、大きな付加価
値を生み出す新しい IT サービスを
創り上げていくことが必要であると
当社資産
NTT データは考えている。S&T カ
×
当社資産
新しい
価値創出
カンパニー/
グループ
顧客企業
事業部等
価値
創出
エンド
ユーザー
経営部門
価値提供
事業部門
事業部等
IT部門
図 2 共創型イノベーションのパターン
ンパニー長である栗島副社長が“共
創型イノベーション”と表現し、カ
し、共同でビジネスを創出すること
めており、本特集ではその中からい
ンパニー全体で力を入れているこの
がゴールだ。よって「お客様とベン
くつかの例を次頁以降で紹介する。
コンセプトについて、S&T 事業推
ダー」の関係性ではなく、同じ目線
進部 企画部 事業戦略担当 小橋哲郎
で同じゴールを目指す「イコール・
部長は次のように述べている。
パートナー」の関係性を築くことと
「
『お客様はお客様の専門分野、私
なる。
成功事例を積み重ね、新たな
IT 投資領域の重要性をアピール
日本ではまだ業務の効率化を目的
どもは IT について、それぞれが持つ
たとえば、お客様と NTT データ
とした IT 投資を重視する企業が多
有形・無形の資産を持ち寄り、それ
グループとの共創によりアパレル
く、まずはビジネスの付加価値向上
らを掛け合わせることにより、共に
EC サイトを立上げた事例では、レ
を目的とする IT 活用の重要性をア
新しい価値を作り出していく』こと
ベニューシェア型の共同事業とし
ピールしていく必要があるとして、
が共創型イノベーションです。お客
て、双方がリスクとベネフィットを
S&T 事業推進部 箱守聰事業推進部
様から共創パートナーとして認めて
シェアするパートナービジネスを展
長は「『IT 活用といえばコスト削減
いただく必要があります。そのため
開している。
が最も重要な目的である』という意
には従来のようなプロジェクトマネ
さまざまな形で共創型
イノベーションを推進
ジメントや開発、運用技術ではなく、
新しいサービスにつながるアイディ
識を変えていただくのは、容易なこ
とではありません。まずは“共創型
イノベーション”による新たなビジ
共創型イノベーションにはさまざ
ネスやサービス創出の事例を増や
れます。システムのことだけでなく、
まなパターンがある(図 2)。共創
し、参考にしていただけるベストプ
お客様の事業について把握すること
の 相 手 は お 客 様 だ け に 限 ら な い。
ラクティスをまとめて行きたいと考
が不可欠であるため、話をする相手
S&T カンパニー内や NTT データグ
えています。お客様の要求を起点と
もシステム部門だけでなく、経営部
ループ内の共創も積極的に推進す
する受託型のシステム開発も引き続
門や事業部門など、さまざまな部門
る。これらは、お客様との共創にお
き重要なビジネスであり続けます
への働きかけが必要になります。
」
ける NTT データグループの価値提
が、今後は共創型イノベーションに
供力を高めることが狙いだ。
よる新しいビジネスを同じ程度の規
アや、関係者を巻き込む力が求めら
ソリューション提供やシステムの
受託開発がゴールではない。お客様
NTT データは既に“共創”を強
と一緒になって新たな価値を作り出
く意識したさまざまな取り組みを進
ビジネスコミュニケーション 2014 Vol.51 No.11
模に育てるような意識で取り組んで
いく考えです」と述べている。
37