「北海道版カラマツ人工林収穫予測ソフト」使用手引き 1 はじめに 本ソフトは北海道のカラマツ人工林において,様々な間伐を実施したときの収穫予測が実 施できるソフトです。ソフトの開発にあたっては,道内民有林約 2,700 林分(林齢 10~100 年)での樹高や直径の調査データと,18 林分(林齢 12~76 年)で2~5年間隔で約 7,000 回直径成長量を継続調査したデータを用いました。これらのデータを用いカラマツの地位指 数曲線,収量-密度図を作成し,直径成長量をモデル化することにより収穫予測を行ってい ます。 2 ファイルの説明 配布ファイルには,この“使用手引き”と, “カラマツ収穫予測ソフト ver.#” ,“カラマツ 収穫予測ソフト 2003ver.#”のエクセルファイルがあります。 “カラマツ収穫予測ソフト ver.#” は, Microsoft Office Excel 2010 で作成しており,2007 以降ではこちらを使用します。 “カ ラマツ収穫予測ソフト 2003ver.#”は 2003 用のファイルです。CPU1GHz 以下のパソコンでは 計算に時間がかかる場合があるので注意してください。 3 使用方法 対象林分の直径や樹高のデータがある場合と,ない場合の収穫予測のおおまかな流れを図 ―1に示しました。旧バージョンではデータがある場合とない場合は異なるファイルで予測 をしていましたが、Ver.2.0 からは1つのファイルで予測ができるようになりました。 “カラ マツ収穫予測ソフト ver.2.0”からは6つのワークシートから構成されています。どのワー クシートでも水色のセルが入力可能なセルです。 図―1 収穫予測の流れ 1 “地位指数”ワークシート “地位指数”のワークシートで,対象林分の林齢と上層高を水色セルに入力すると,黄色 のセルに地位指数が計算されます。ここでの地位指数は 40 年生時の上層高(1ヘクタール当 たり上位 100 本の平均樹高)で表しています。樹高のデータがある場合に利用できます。 “収穫予測”ワークシート 立木データの欄では、胸高直径と樹高のデータのあるなしとデータの入力方法を選択しま す(図―2:注1参照) 。入力方法1では各立木のデータを直接入力します。入力方法2では 胸高直径別の立木本数を入力します。各立木のデータを直接入力する場合は、胸高直径の大 きい順番に入力してください。データは 300 まで入力できますが、300 を超える場合は入力 方法2を使用します。次に林分データの欄に標準地の林齢(10 年生以降) ,地位指数,面積, 植栽本数を入力します。なお、水色セルにはサンプルデータが入っています。立木データが ない場合は林齢、調査面積は空欄にしてください。 地位指数や植栽本数が不明な場合は,地域の標準的な値を入力してください。その際, “地 位別地域区分”のワークシートが参考になります。地位指数は対象地が特等地・Ⅰ等地 25, Ⅱ等地 21,Ⅲ等地 17 を目安としてください。次に,間伐スケジュールのセルに 2 年ごとに 林齢が記載されているので,適当な林齢で本数間伐率を入力します(図―2)。本ソフトでは 全層間伐が標準ですが,下層間伐,上層間伐も実施できます。列状間伐の場合は全層間伐を 利用してください。間伐率を入力すると林齢 80 年までの平均胸高直径,林分材積,立木密度 などが表示されます。 図―2 “収穫予測”ワークシート 2 注1:入力方法による胸高直径と樹高の関係の違い ① 胸高直径が“データあり” 、樹高が“データなし”のとき(入力方法1および2) 胸高直径、上層高、立木密度などから樹高曲線を作成し各立木の樹高を推定しています。 ② 胸高直径が“データあり” 、樹高が“データあり”のとき(入力方法1) 胸高直径、樹高は実測値を用いています。なお、できるだけ多くの立木の樹高を測定した ほうが精度は高くなりますが、樹高データに欠測値がある場合でも、優勢木から劣勢木まで 万遍なく調査している場合は“データあり”として調査した樹高を入力してください。この 場合は樹高を測定した立木は実測値を用い、直径のみを測定した立木は直径、上層高、立木 密度などから樹高曲線を作成し欠測値の樹高を推定しています。 “胸高直径別立木本数”ワークシート “胸高直径別立木本数”のワークシートには間伐前および間伐木、間伐後の胸高直径別立 木本数径級分布が表示されます(図―4) 。これにより林分の平均直径だけでなく,何センチ 以上の立木が何本収穫できるのかという予測ができます。胸高直径階が“直径階”と書かれ た右どなりの水色セルを変えることで調節できます(バージョン 2.0 で追加)。ただし、次の 末口系別丸太本数を予測したいときには2cm で固定してください。 図―4 “胸高直径別立木本数”ワークシート “間伐前末口径別丸太本数”および“間伐木末口径別丸太本数”ワークシート “間伐前末口径別丸太本数”および“間伐木末口径別丸太本数”ワークシートでは、間伐 前および間伐木の末口径別丸太本数が表示されます。これにより丸太本数がわかることで末 口二乗法等を用いて丸太材積の評価も可能です。この機能はバーション 2.0 から追加しまし た。 3 図―5の上部の表で1~20 番玉までの材長や追上高を指定します。すると下部に1~20 番 玉までの末口径別丸太本数が表示されます。各玉番の末口径別丸太本数も確認することがで きます(図-5の下部に各玉番の末口径別丸太本数を表示) 。なお、間伐木については 15 番 玉まで設定可能です。 図―5 “間伐前末口径別丸太本数”ワークシート “施業体系図”ワークシート “施業体系図”のワークシートには, “収穫予測”のワークシートで入力した間伐スケジュ ールを反映した施業体系図が作成されています(図―6)。施業経過を視覚的に理解する上で 利用してください。 4 間伐スケジュール決定のコツ 間伐の実施林齢や間伐率の決定には様々な方法があります。このソフトでは間伐率を入力 したときの結果がすぐに横の欄に表示されるので,林分の混み合い度を示す収量比数や,間 伐木の材積,平均直径などを見ながら実施林齢や間伐率を決めることが可能です。例えば, 中庸仕立てでは収量比数を 0.7~0.8 の範囲で管理するので,間伐前の収量比数が 0.8 を超え ていたら 30%程度の間伐を実施し,収量比数を 0.7 程度にします。このとき間伐木の材積が 少ないと判断されたときには間伐率を上げるなどの調整をします。逆に予定する主伐年での 収穫が少ないときには,間伐率を落としてみます。こうした作業を繰り返し経営目標に適し た間伐スケジュールを決定します。 4 図―6 間伐スケジュールに応じて作成される施業体系図 5 予測結果の評価 本ソフトの予測結果が現実林分とどの程度あっているかについて,全道 2,700 林分の各地 位での平均値と比較しました。まず、全道 2,700 林分の各地位指数での立木本数の経年的な 減少傾向を求め、その立木本数に合うようにソフト上で全層間伐を実施しました。その時の 上層高および平均胸高直径は 2,700 林分の平均値とよく合っていました(図―7)。したがっ て、本ソフトでの予測は各地位の平均的な成長傾向を再現できているといえます。旧バージ ョンでは地位指数の低い林分で平均胸高直径を過小評価してしまう傾向がありましたが、新 バージョンではこの点が改善されています。本ソフトでは下層間伐や上層間伐も実施できま すが、それらの予測値は今後現実林分での検証が必要です。また、無間伐で推移させた場合 は,材積と立木本数の関係は自然枯死線上を移動し最多密度線に達すると最多密度線上を移 動します(図―8)。この傾向は若齢林では,現実林分と同様なことが確認できていますが, より高齢な林分での推移については検証が必要です。 5 ■全道2700林分の平均値 30 20 10 30 上層高(m) 上層高(m) 上層高(m) 30 20 10 Ⅲ等地 20 10 Ⅱ等地 Ⅰ等地 0 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 林齢(年) 10 20 30 40 50 60 70 80 林齢(年) 10 20 30 40 50 60 70 80 林齢(年) 40 40 30 30 30 20 10 平均直径(cm) 40 平均直径(cm) 平均直径(cm) ―ソフト予測値 20 10 Ⅲ等地 0 10 Ⅱ等地 0 10 20 30 40 50 60 70 80 林齢(年) 20 Ⅰ等地 0 10 20 30 40 50 60 70 80 林齢(年) 10 20 30 40 50 60 70 80 林齢(年) 図―6 予測値の現実林分との適合性 図―8 無間伐林分での予測 6 本ソフトの今後の取り扱い 本ソフトは開発途上にある部分も多く,今後,できるだけ多くのユーザーの意見を取り入 れながら,予測精度の向上やインターフェースの改善などに迅速に対応していきたいと思い ます。本ソフトについてのご意見・ご要望は以下までご連絡ください。本ソフトウェアの著 作権は北海道立総合研究機構森林研究本部林業試験場に帰属します。本ソフトウェアの使用 による損害等については一切その責任を負いません。本ソフトウェアの改変は禁止します。 6 7 バージョンアップ情報 Ver2.01:ver2.0 では上層間伐と下層間伐で間伐経費に間違いが発生する場合がありましたが 修正しました。また、ver2.0 では一部の配布ファイルに二酸化炭素固定量の評価が欠落し ているものがあったので修正しました。 Ver2.02:Ver2.01 では末口径別丸太本数の予測が主林木、間伐木ともに 10 番玉まで設定可 能でしたが、Ver2.02 からは主林木は 15 番玉まで設定できるようになりました。また、 “入 力方法 2”を用いたときは、樹高データを“あり”に設定してしまうと初期林分材積に間 違いが生じる場合がありましたが、これを修正しました。 Ver2.03:末口径別丸太本数の予測が主林木では 20 番玉まで設定可能になりました。また、 丸太の材長の入力方法を改善ました。 Ver.2.04:立木データの樹高で“データあり”を選択し、樹高データに欠測値がある場合の 樹高推定方法を改良しました。また、胸高直径“データあり”の施業体系図において、間 伐年の木の図のズレを修正しました。 北海道立総合研究機構 林業試験場 森林資源部 経営G 八坂通泰 E-mail:[email protected] 〒079-0198 美唄市光珠内町東山 TEL:0126-63-4164 FAX:0126-63-4166 7
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