3.5つの課題に対する基本的な考え方

3.5つの課題に対する基本的な考え方
・ 第3期推進計画において目指すべき方向を整理した。また、必要となる支援体系・環境の整備の考え方
を整理した。
・ 第3期推進計画においては、必要となる支援体系・環境の整備を「ステップアップ」と「コミュニケーション」
の考え方に基づき、戦略的な取組を展開する。
(1)戦略の基本的な考え方について
① 目指すべき方向
これまでの推進計画期間では、知財総合支援窓口、ポータルサイト、各種補助事業及び啓発事業等の
知的財産に関する様々な施策・事業を展開してきた。これらにより企業等において知的財産に関する必
要な情報を効率よく入手することができたり、
課題解決に資する補助制度等を受けることができたりと、
取組を進めるにあたって様々な支援を受ける環境が整いつつある。
しかしながら、中小企業に対するアンケート調査等の結果から、知的財産について十分な認識がなさ
れていない層が少なくないことが確認できるなど、ターゲットとなる中小企業等の知識やスキル等の段
階に応じた環境が提供できているとは言い難く、一定の段階に至っている中小企業等にとって有益な情
報収集や支援を受ける機会を確保すべく、取り組みの一層の充実が必要である。例えば、今後は知的財
産に無関心な中小企業等への気付きの機会の提供等を行うとともに、知的財産経営の定着に向けて取り
組む中小企業等を対象とした支援策の実施等、段階に応じた支援を実施していくことが挙げられる。
今後、知的財産戦略を推進するに当たっては、地域の中小企業等における知的財産経営の段階を4つ
に区分して考えていく。知的財産について無関心とされる層に対して、知識やスキルを段階的に身に付
けていく過程を示し、施策・事業の狙いや位置付けに対する理解を高めつつ、より上位の段階へ伸長で
きるよう支援していくこと(ステップアップ)が重要となる。中小企業等に対する段階的な支援の考え
方を下図に示す。
中小企業等に対する段階的な支援
活用
(理解・判断)
気付き
発展
(継続)
無関心
③「発展」のための支援
②「活用」のための支援
①「気付き」のための支援
・
地域の中小企業等における知的財産経営の定着を図るために、中小企業等が抱える様々な課題に応じて、段
階的に向上させる支援体系・環境を整備するもの。
・
中部地域の知的財産に関する課題に対し、①「気付き」のための支援、②「活用(理解・判断)
」のための支
援、③「発展(継続)
」のための支援とする段階に応じた支援を実施し、地域の中小企業等の知的財産経営を
着実に定着させる考え方となる。
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また、段階的な支援を実施していくにあたっては、企業等の支援ニーズを適確に踏まえた支援策の提
供が重要となる。例えば、セミナー事業を展開するにあたり、対象となる中小企業等における問題意識
等を事前に把握して内容等を精査するなどの事前準備を行い、中小企業等における活動の具体化を後押
しするものに仕立てることなどである。
さらに、中部地域に蓄積されてきた知見・経験を上手に活用していくことも重要である。知的財産に
関する知識やスキルを、人や組織が身につけていくことは容易ではなく、ただ知識として情報を入手し
ただけでは十分ではない。保有する知的財産を経営や事業活動に上手に活かしていく方策を先行する企
業等から引き出し、それが地域の知見や経験(先行企業事例等)として「道しるべ(マイルストーン)
」
、
あるいは「ベンチマーク」的に活かされていく視点が重要となる。
そのため、地域全体での情報共有を繰り返しつつ、知的財産経営の定着につながる支援体系や環境の
整備を重視すること(コミュニケーション)が重要である。例えば、知的財産の効果を理解・判断し、
活用できる段階にある中小企業等の知見やアドバイスを、その段階を目指す中小企業等(知的財産の効
用について気付きを得た段階にある中小企業等)に対する提供や地域内で共有するといった仕組みを展
開していくことが考えられる。こうした仕組みを継続して運用することで、中小企業等において、上位
の段階を目指す際の到達点について具体的にイメージしやすくなるといった利点が期待できる。
総括すると、知財戦略推進計画を展開するに当たっては、支援の対象となる中小企業等が一般的にど
のような段階を踏んで知的財産の活用を伸長させていくかを踏まえた上で、その段階に応じた必要な施
策・事業を実施していくこと(ステップアップ)及び中小企業等の段階的な伸長を促すため、地域内で
の知的財産に対する認識を共有できるよう、先行事例も活用しながら、第3期推進計画の推進の過程に
おいて双方向性を意識した施策・事業を展開していくこと(コミュニケーション)の2つを重要視して
いく。下図は知的財産の活用に関する段階と地域内での共有を行うことで計画推進を伸長させるイメー
ジである。
知財戦略推進計画の目指すべき方向
知的財産の効用を理解・判断
して活用できる企業
知的財産の効用を理解・判断
して活用できる企業
知的財産の効用について
気付きを得た企業
知的財産の効用について
気付きを得た企業
知的財産に無関心な企業
知的財産に無関心な企業
現在
将来
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コミュニケーションによる共有を支援
知的財産経営
定着企業
知的財産経営
定着企業
② 目指すべき方向の実現に向けた施策・事業の基本的な考え方
第3期推進計画における目指すべき方向の実現に向けた具体的な施策・事業の在り方・内容等の検討・
実施に当たっては、以下の2つを基本的な考え方として展開していく。この2つの基本的な考え方は、
あらゆる施策・事業に共通するものとする。
Ⅰ 段階に応じた知的財産経営の強化(ステップアップ)を支援
地域の中小企業等の知的財産経営の定着に向け、段階的に向上させる支援体系・環境を構築す
る。支援対象層の特性に応じた事業を実施することで、中小企業等自らが知的財産経営を実践す
ることが可能となる環境を提供する。
Ⅱ 「コミュニケーション型支援」の拡充
上記「Ⅰ 段階に応じた知的財産経営の強化(ステップアップ)
」を加速させる方法として、従
来の「インフォメーション型」での支援の実施に加えて、
「コミュニケーション型」の支援を充実
させる。先行する取組から得られる知見をフィードバックして活かすとともに、中小企業等の関
係者間での情報共有を強化し、地域を挙げた取組としていく。
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(2)5つの課題の相関について
・中部地域が目指すべき方向として、「5つの課題」を解決していくことに重点化する。
・「5つの課題」ごとに重点事業(核となる事業)と関連事業を位置付け、前述の2つの基本的な考え方を踏ま
えて事業等を展開する。
これまでの推進計画の展開により得られた解決すべき課題として、5つの課題を整理した。これらの
課題かを第 3 期推進計画の取組の柱として、必要な施策・事業を位置付けていく。
なお、5つの課題の相関を下図に整理した。
「1.中部地域の中小企業等における知的財産経営の導入・定着の促進」は、企業体制の切り口から
見た横断的課題と位置付け、
「2.中部地域の中小企業等のグローバル展開における知的財産の活用の促
進」
、
「3.中部地域の中小企業等における知的財産を活用したデザイン・ブランド化の促進」
、
「4.知
的財産の重要性の理解向上」は、知的財産経営の進展とともに伸長していく柱として位置付けた。
「5.
中部地域で活躍する知的財産支援人材等の育成」は、1.~4.の伸長を支える知的財産人材を強化さ
せるものであり、全て項目に関連するものと位置付けた。
中部地域の知的財産に係る5つの課題の相関図
1.中部地域の中小企業等における知的財産経営の
導入・定着の促進
2.中部地域の
中小企業等の
グローバル
展開における
知的財産の
活用の促進
3.中部地域の
中小企業等に
おける知的財
産を活用した
デザイン・ブラ
ンド化の促進
4.知的財産の
重要性の理解
向上
5.中部地域で活躍する知的財産支援人材等の育成
(1~4を支える知的財産人材の強化)
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