実践のまとめ(第3学年 英語) 自分の思いや気持ちを表現できる生徒の

実践のまとめ(第3学年
英語)
佐渡市立金井中学校教諭 吉野 めぐみ
1
研究テーマ
自分の思いや気持ちを表現できる生徒の育成
~ ペア活動・グループ活動の充実を通して ~
2
テーマ設定について
(1)テーマ設定の意図
当該学級は、比較的学力差が感じられ、現時点では学習意欲に乏しい生徒も存在する。一方、ALTとの
会話は意欲的で、既習文法を意識しながら、自分の思いや気持ちを伝えようと熱心に話しかける生徒も少な
くない。生徒アンケートからも「英語を用いて、自分のことや友達のことを伝えたい」
「英語の文を正しく
書けるようになりたい」と積極的に英語を使いたいと考える生徒も多いことが読み取れる。よって、ペアや
グループ活動において座席の配置を工夫し、生徒一人一人に役割分担を決めるなどの手立てを講じ、生徒の
興味関心を喚起する状況設定を工夫することで、個々ではできなかったことや諦めていたことでも、友達の
協力があれば、課題解決や目標達成ができるのではないかと考え、本テーマを設定した。
学習指導要領では、4技能を統合的に育成する指導の充実が重視されている。そこで、スピーチの活動で
生徒同士が英語による問答を行ったり、自分の考えを英語で書いてまとめたりすることや、「話すこと、聞
くこと」の活動、
「話すこと、書くこと」の活動をセットで行うことで、4技能を統合した授業を無理なく、
また、必然性をもって授業を展開することができる。
本校は佐渡ヶ島にあり、独自の伝統文化や歴史を築いてきた。課題(タスク)の設定もオリジナリティ豊
かなものが可能である。生徒の身近にある伝統文化やイベント等を英語で表現することにより、生徒の興味
関心を刺激しながら、郷土愛を育む効果も期待できる。
(2)研究テーマに迫るために
① ペア活動・グループ活動の工夫
日常の授業で、学力低位の生徒は、
「自分は英語ができない」
「英語を将来使う場面がないから、勉強し
ても無駄」などとつぶやいている。よって、課題に取り組む前の段階から諦めて、挫折する生徒をなくす
ためにも、班の中に、周りの生徒とコミュニケーションがとれ、意欲的に学習に取り組む生徒をサブティ
ーチャーとして配置し、質問したいことがあれば、気軽に相談できる環境を作る。しかし、自分の意見が
まとまる前から、
サブティーチャーに頼ってしまうことも懸念されるため、
個で考える時間を必ず確保し、
考えがまとまってから、グループ活動に移行していく。また、毎時の授業で、ペアでの音読、ペアで既習
文法を用いた会話表現を行うことで、ペアの活動が自然にできるようにする。単元のまとめ活動(Mini
project 「私の好きな言葉」
「尊敬する人物を紹介しよう」など)では、英文を音読したり、未習単語や熟
語調べをしたりし、学力上位の生徒は要約やまとめ活動とするというように、能力に応じて多少努力すれ
ば達成できる課題を分担し、協力しながら、ひとつのものを作り上げていく活動を行っていく。
② 課題設定の明確化
普段の授業では、黒板に「本時の課題」
・
「まとめ」のマグネットシート張り、大切なことは何か、身に
付けるべきものは何かを示している。ねらいがはっきりしていれば、生徒も大切なことを聞こうとする。
これを Mini project(英作文やスピーチ)にも活用し、何のために、誰のためにスピーチの原稿を書くの
か、活動の目的をはっきりと意識させる。この時に、生徒の興味関心を引き、地域独自の課題を設定すれ
ば、課題解決に向けて、さらに意欲的に取り組むことができる。また、英作文やスピーチ原稿を書く際も、
ねらいである「いつ」
「どこで」
「だれが」
「何を」
「どれくらい」
「どうやって」を考えさせ、文の中に入れ
る。
③ 基礎・基本の定着
英作文を書く際、核として使用する語彙や文構造等の言語材料が身に付いていないと、課題解決は極め
て困難である。基本文を中心に、単語を変えて、反復練習を行うなどの練習も必要である。これらの活動
もコミュニケーションを支える大切な過程である。本校では、宿題や授業のまとめとして、縦横ドリルを
使用している。表には、主に動詞を入れる穴埋め問題、裏は同じ問題だが、一文を書かせる問題になって
いる。英語に苦手意識のある生徒も、できるのが分かっているため取組も順調である。
授業の導入では、既習文法を用いて、ペアで会話表現(弾丸インプット)を行っている。会話表現を繰
り返し行うことで、既習文法を忘れずに、また状況に応じて使い分けることができる。英作文は、ターゲ
ットとなる表現と既習文法の使い分けも必要なので、日頃から言葉に出して使用することで定着を図って
いる。
④ 自己表現活動の充実
スピーチや英作文の活動において、
最も大切なのは、
自分の意見がどうなのかを伝えることだと考える。
授業では、自分の意見を口頭で発表したり、自己表現文を書いたりするなど、正解が一つだけではなく、
多様な答え期待できる活動を毎時間行っている。
(a) イラストや写真を使っての自己表現活動(授業導入時)
生徒の興味関心のあるイラストや写真を使って、そのものを口頭で表現させる。前時の授業で学んだ
基本文を用いたものでもよいし、既習文法でも構わない。継続して行うことで、既習文法を忘れず、状
況に応じた英文で答えさせる。ヒントとして、弾丸インプットのプリントを見ることができる。学力低
位の生徒も簡単な英文は表現することができる。
(b) 基本文から自己表現文へ(授業のまとめ時)
基本文を確認したのち、質問に対して、自分の意見を書くまとめの時間をとっている。教科書の基本
文は、簡単で分かりやすいものだが、常に生徒の実態に合っているとは言えない。よって、基本文に沿
った内容の質問を示すことで、生徒一人一人の答えが異なったものになる。書くだけではなく、発表さ
せることで、友達の意見はどうなのかと、しっかりと耳を傾ける生徒も多くなる。
(3)研究テーマにかかわる評価
次の3つの観点から評価を行う。
① グループで協力して、充実したスピーチを行うことができた生徒が80%以上(生徒のアンケート)
(授業の見取り)
②
自分や班員の意見をしっかりと発表することができた生徒が80%以上
(生徒のアンケート)
(授業の見取り)
③ スピーチの内容が、
聞き手に理解されたと感じる生徒が80%以上
(生徒のアンケート)
(授業の見取り)
3
単元と指導計画
(1) 単元名
Lesson 5
Houses and Lives
( NEW CROWN ENGLISH SERIES 3 )
(2) 単元の目標
・ 世界の多様な家屋を知り、住まいと生活文化について知る。
・ 関係代名詞(主格・目的格)の用法を理解し、正しく使うことができる。
・ 関係代名詞を用いて、佐渡の伝統行事(文化)について、英語でプレゼンテーションすること
ができる。
(3) 単元の評価規準
コミュニケーションへの
表現の能力
理解の能力
言語や文化についての
関心・意欲・態度
知識・理解
・間違いを恐れずに積極的 ・関係代名詞を用いて、 ・関係代名詞の基本的 ・関係代名詞 that, who,
which に 関 す る 知 識
に関係代名詞を使って、
正しく人や物を説明
な文法を含む英文を
人や物について説明しよ
することができる。
読んだり、聞いたり (用法、意味、形)を身
うとする。
・関係代名詞、既習文
して、内容が理解で
きる。
に付けている。
・ALTに分かりやすく佐
法を用いて、佐渡の
・世界の家屋や生活文化
渡の行事を紹介できるよ
行事の説明を正しく
について知ることがで
うに、発表の仕方してい
書いたり、発表した
きる。
る。
りすることができ
る。
(4) 単元の指導計画と評価計画( 全17時間 、 本時17/17 )
時
学習内容
1
・本単元で扱う題材の導入
(2)
学習活動
主な評価規準と方法
・世界の家屋についての英 感導入文を意欲的に聞こうとし
文を聞き取る。
ている
【観察・記述】
・関係代名詞(主格)that ・関係代名詞 that を使って 理導入文の内容が聞き取ること
の導入・練習
物や人を説明する。
ができる
【観察・記述】
表自分の伝えたいことを自己表
現文として正しく書くことが
できる
・p.52 の新出単語、本文
の内容理解
・メイリンと健の会話を読 理教科書の内容を正しく読み取
んで、話題になっている
ることができる。
家の特徴を読み取る。
・p.53 speak ペア活動
【記述】
・自分の興味のある家電を
関係代名詞を用いて、正
【観察・ワークシート】
感意欲的に相手の質問を聞こう
とし、答えようとしている
しく書き、ペアの相手に
質問する。
【観察】
表自分の興味ある家電を正しく
書くことができる。 【記述】
2
(2)
・関係代名詞(主格)who,
which の導入・練習
・p54 の新出単語、本文の
内容理解
・関係代名詞 who, which 表自分の伝えたいことを自己表
を使って物や人を説明す
現文として正しく書くことが
る。
できる
【記述】
・本文から和室の特徴や良 理教科書の内容を正しく読み取
さを読み取る。
ることができる。
【観察・ワークシート】
・p.55 speak ペア活動
・ペアで協力して、興味の 表興味ある家電を正しく書くこ
ある職業を他のペアに質
問する。
とができる。
【記述】
感ペアと協力して、他のペアに
興味ある職業について意欲的
に質問し、答えようとしてい
る。
【観察】
3
(2)
・関係代名詞(目的格)that, ・関係代名詞(目的格)を 表自分の伝えたいことを自己表
which の導入・練習
・p.56 の新出単語、本文
の内容理解
使って物や人を説明す
現文として正しく書くことが
る。
できる。
・本文から、こたつの特徴 理教科書の内容を正しく読み取
やよさを読み取ることが
できる。
・p.57 speak ペア活動
【記述】
ることができる。
【観察・ワークシート】
・ペアで協力して、興味の 表興味ある日本独自の物を正し
ある日本独自の物(うち
く書くことができる。【記述】
わやふすま)を他のペア 感ペアと協力して、他のペアに
に質問する。
興味ある日本独自の物につい
て意欲的に質問し、答えよう
としている。
4
(3)
【観察】
・p.58,p.59 の新出単語、本 ・本文を読み、福建土楼や 理教科書の内容を正しく読み取
文の内容理解
ゲルの特徴を読みとる。
・それぞれの家屋の特徴か
ることができる。
【観察・ワークシート】
ら、社会的・歴史的な背
景や家族のあり方を学
ぶ。
・p.58,p.59 の音読練習
・特徴を考えながら、正し 理本文を工夫しながら、流暢に
く本文を読むことができ
読むことができる。 【観察】
る。
5
(8)
・ p.60,p.61 Mini project ・Bhim からのメッセージ
日本紹介
(なぜ、佐渡の行事を知り
たいのか。
)
ネパール人 Bhim に佐渡の ・個人で、紹介文を作成す
行事・祭についてパワー
る。
ポイントを使って、紹介 ・個人の英作文を班でまと
しよう。
関意欲的に Bhim のメッセージを
聞こうとしている【観察】
理正しく英文を聞き取ることが
できる
【ワークシート】
表佐渡の行事について、正しく
文を書くことができる
め、班で分担をきめる。
【ワークシート】
(行事説明、班が薦める理 感班で協力して、意欲的に紹介
由、質問・答え)
文をまとめようとしている
・発表に関わる資料(写真
やイラスト)を探し出す
・班で練習し、暗記できる
【ワークシート】
表文を暗記して、正しく発表す
ることができる。
【記述・観察】
ように準備をしておく。
・班で協力して、聞き
手に伝わるように意
識しながら、プレゼン
テーションを行う。
・スピーチの後、他の
班に内容に関わる質
問をし、他の班は、回
答する。
表聞き手が内容を理解すること
ができる発表する。
【記述】
表内容に関した質問をすること
ができる。
【観察・記述】
理質問を正しく聞き取ることが
できる。
【観察・記述】
4
単元(題材)と生徒
(1)単元について
本単元では、関係代名詞(主格・目的格)を用いて、英語で人や物を紹介することを学習する。
関係代名詞については、生徒が頭で理解しても、定着するまでに時間がかかる。よって、ドリルや反復練習
を行わせることで、積極的に使えるようになるまで、徹底して練習させる。
また、この単元では、世界の様々な家屋や生活様式を題材として扱っているので、日本文化と比較させな
がら、日本と他国の違いを学ばせたい。
(2)生徒の実態
男子11名女子11名の学級である。女子生徒に英語を得意とする生徒が多く、男子生徒に苦手意識をも
つ生徒が多い状況である。また、英語の学習に対してなかなか意欲的に取り組めない生徒もいた。そこで、
座席の配置を考え、意図的に教え合う環境を整えたことで、課題に対する取組が意欲的でない生徒も、4人
班で行うグループ活動においては、自分の役割や目標がはっきりしているので、班員と協力しながら課題に
取り組んでいる。2学期に長文の読解をグループ活動で行い、クラスで発表する活動を行った。①本文読み、
新出単語・熟語調べ、②主語・動詞探し③文法説明④日本語訳、要訳の4つの分担を生徒自身に決めさせた
ことで、難易度に応じた課題を各自取り組むことができた。一人でうまくいかないことも、班で協力すれば
できること、やれば達成感や充実感が得られることをこの活動を通して学ぶことができたと考える。
NRT の分析結果より、大領域の中で、
「話すこと」の領域が、他の領域に比べると低いことが分かった。
中でも「考えや気持ちを正しく伝える」「テーマにそってスピーチをする」の中領域が低い。この背景とし
て、新出文法を覚えればよい、単語や基本文が書ければよいと Writing 活動には取り組むが、単語や基本文
を聞こえる声で読む活動に力を入れない生徒が挙げられる。よって、間違った発音で単語を覚えてしまい、
正しい発音が定着しないケースも散見される。ALTとの日常会話も、あいさつ程度で、会話がそれ以上広
がらない。
また、昨年までも Speaking 活動や Speech 活動を行ってきたが、内容が既習文法だけで、自分の意見を
言えずスピーチを終えてしまう生徒や、スピーチ自体を行えない生徒がおり、原因の1つと考えられる。今
年度に入り、1 学期の Speech は全員の生徒が、前に出て、
“My favorite word”を発表することができ、よ
うやく生徒全員が課題に取り組む土台ができてきた。4人班のグループ活動を通じて、自分の役割を意識さ
せながら、個人の力ではうまくできないことも、班員が協力すればできることを味わわせて、英語の学習に
意欲的に取り組めるようにしていく。
5 本時の展開
(1)ねらい
関係代名詞を用いて、ネパール人 Bhim に「佐渡の行事や祭」を分かりやすく伝え、佐渡のよさを
Presentation 形式で発信する。
(2)展開の構想
Mini project「日本紹介」を学習した上で、これから佐渡で生活を始めるネパール人 Bhim(実在の人物)
に佐渡の伝統文化や行事を、パワーポイントを用いて、分かりやすく紹介する。
事前に Bhim からのビデオレターを生徒に見せ、Bhim が佐渡に来るにあたって、佐渡のことを
知りたいという、この課題の目的をはっきりと生徒に示しておく。発表前には、どうやったら聞く相手が関
心をもって話を聞いてくれるか確認しておく必要がある。また、presentation 活動は、話し手が一方的に話
をするだけの形式が多いので、発表後に、発表者から聞いている生徒に対して簡単な質問をさせることで、
話す活動と聞く活動を統合させ、即興的な英語の使用を含むコミュニケーションの場面にする。
今回の展開では、研修テーマに沿って、次の手立てを講じる。
①導入で、弾丸インプット(発表後の質問と回答)をペア活動として行なわせる。
②「本時の課題」マグネットを使って、相手に理解されるスピーチ方法の確認を行わせる。
③発表している間は、聞き手はメモをとり、発表者から出題される内容のメモをとれるように
ワークシートを準備する。
④自分のグループの振り返りとともに、他のグループの相互評価を行わせる。
統合的な活動(話すこと及び聞くこと)を行うためには、発表者は前時のプレ発表から、聞き手を意識
しながら練習をする必要がある。
(3)展開
時 間
学習内容
(分)
導入
・予想される生徒の反応
□評価
○支援
◇留意点
弾丸インプット
・ペアで、質問する人・答える人と時間を見て
DVD from Bhim
○机間支援を行う。
交代する。
・Bhim からのビデオレターを鑑賞すること ◇ 内 容 を 生 徒 か ら 聞 き 出
で、Presentation の前向きな動機付けとする。 し、理解を確認する。
(10)
展開
○教師の働きかけ
課題確認
(35)
Presentation
◇テンポよく行わせる。
Presentation の効果的な方法
① 相手に聞こえる声量で ② 自分の意見は特にはっきり言う
③ カタカナ英語は×
○1 月・2月(行事や祭の実施月)の班から発
表させる
・生徒はあらかじめ決めておいた分担で発表
する。
①オープニング、祭名、会場、交通手段
②日時や携帯品、参加費用
③行事や祭りの内容
④体験者の話、お勧めした理由、締めの言葉
◇説明に時間をかけない。
◇辞書を準備しておく。
◇パワーポイントを準備し
ておく。
◇すべて英語で進行する。
感班で協力して、意欲的に
紹介文をまとめようとし
ている。
【ワークシート】
表文を暗記して、正しく発
・発表中、他の班は発表に関わるメモをワー
クシートにとる。
表することができる。
【記述・観察】
表聞き手が内容を理解する
・発表後は、発表した班は、他の班を指名し、 ことができる発表する。
【記述】
質問をする。
表内容に関した質問をする
ことができる。
・指名された班の代表者は、その質問に答え
【観察・記述】
る。
理質問を正しく聞き取るこ
・発表グループの回答者は、その回答をする。 とができる。【観察・記述】
○机間支援
まとめ
振り返りシート
○今日発表した自分のグループの振り返りと
○机間支援
他のグループの発表の振り返りさせる。
(5)
◇落ち着いた静かな雰囲気
で振り返りをさせる。
・自分の班の振り返りと他の班の振り返りをす
る。
(4)評価
① グループで協力して、充実したスピーチを行うことができた生徒が80%以上(生徒のアンケート)
(授業の見取り)
② 自分や班員の意見をしっかりと発表することができた生徒が80%以上
(生徒のアンケート)
(授業の見取り)
③ スピーチの内容が、
聞き手に理解されたと感じる生徒が80%以上
(生徒のアンケート)
(授業の見取り)
6
実践を振り返って
(1)実際の授業
本時の展開では、手立ての①~④すべてを行った。①の弾丸インプットでは、タイマーを使い、テンポ
よく進めることができた。また、生徒同士の弾丸インプットの練習を始める前に、ボランティアを募り、
教師と生徒のデモンストレーション、生徒同士のデモンストレーションを行ったことで、生徒の活動がよ
り活発になったと感じた。②の「本時の確認」では、
「日本語」が書かれたものを使い、その他の説明は
すべて口頭で簡単な英語のみで行い、時間がかかりすぎないように心がけた。③の発表時に、他の班はメ
モをとりながら、presentation を聞く活動については、メモをとることに集中してしまい、発表している
生徒の様子を見取ることができなかった生徒もいた。④の相互評価においても、他の班員の発表の様子を
耳で聞き取ることはできても、目で見取ることができなかったので、自己評価はよく振り返ることができ
ても、他の班の振り返りも「声の大きさ」
「滑らかさ」
「文の強調」といった聴覚の振り返りのみをする生
徒が多かった。発表者を見ることを意識させ、メモだけにとらわれないような指導を行う必要があった。
また、本時の評価の観点は、以下の3点であった。
① グループで協力して、充実したスピーチを行うことができた生徒が80%以上 (生徒のアンケート)
(授業の見取り)
② 自分や班員の意見をしっかりと発表することができた生徒が80%以上
(生徒のアンケート)
(授業の見取り)
③ スピーチの内容が、聞き手に理解されたと感じる生徒が80%以上
(生徒のアンケート)
(授業の見取り)
生徒のアンケート結果は次の通りである。
よくできた
① グループで協力して、充実したス
まあまあできた
少しできなかった
できなかった
72%
20%
8%
0%
83%
13%
4%
0%
67%
12%
11%
0%
ピーチを行うことができた。
② 自分や班員の意見をしっかりと
発表することができた。
③ スピーチの内容が、聞き手に理解
された。
全体として、予想していたよりも高い数値になり、生徒たちの頑張りを再認識する機会となった。①に
ついては、発表原稿を練り上げている段階で諦めてしまい、班活動に意欲的に参加できない生徒が数名い
たので、
「少しできなかった」と感想を述べる生徒がいた。一方、本番の発表が近づくにつれ「班全員で成
功させたい」と考える生徒が増え、英語が苦手な生徒にも、熱心に教えようとする生徒の様子があちこち
で見受けられた。
3年間のスピーチの中で意欲的で、練習の成果が表れた一番よいものになったと生徒自身が実感できた
ので、②の結果が、特によかったのではないかと考えている。③については、思っていた以上にスピーチ
が早口になってしまい、聞き取りにくいのではないかと感想を述べた生徒が数名いた。日本語と同様に、
緊張した状態だとスピーチが早くなってしまう傾向があることを発見できたのも大きな収穫であった。
教師の見取りは次の通りである。
よくできた
① グループで協力して、充実したス
まあまあできた
少しできなかった
できなかった
60%
20%
10%
0%
72%
15%
13%
0%
55%
28%
17%
0%
ピーチを行うことができた。
② 自分や班員の意見をしっかりと
発表することができた。
③ スピーチの内容が、聞き手に理解
された。
①については生徒と同じく、原稿を推敲している段階で、他の班員と全く関われない生徒がおり、スピ
ーチ習を始める直前に慌てて取り組む生徒が数名いた。②については3年間の中で一番堂々と自信をもっ
て発表
できた生徒が多く、ただ発表するのではなく発音や強調や流れを意識しながら「相手に伝わる発表」を
心がけた生徒も多かった。③については緊張のあまり、声が小さく速すぎて聞き取りにくい発表をする生
徒も数人いた。全体としては、どの班もまとまりのある、すばらしい発表をすることができた。また、発
表後のQ&Aも生徒同士が英語で行うことができた。
【班でのスピーチを終えて個人の振り返り(個人の発表と比べて)
】
○自分ひとりでは覚えられないことも、班みんなで分担すれば、
個人の発表よりもうまくいくし、達成感が生まれることが分かっ
た。班が今まで以上に仲良くなった気がする。
○原稿を書く段階では、みんなでできるかどうか不安だったけど、
発表はみんなしっかり暗記してできたのでよかったと思う。
●全体的にはよかったけど、個人的には、何回かプリントを見てし
まったので、もう少し練習すればよかった。
●一人一人がしっかり発音を意識して発表していたのでよかった。
緊張のせいで早口になってしまった気がする。余裕をもって聞く
人の様子を見られればもっとわかりやすく伝えられたと思う。
(2)今後の課題
① 意欲的で生き生きとした presentation 活動にするためには
今後も、生徒が意欲的に取り組むことができる題材の開発をしていく必要がある。また、高度な表現を
使いたい生徒や、英語が苦手な生徒のためにヒントカードを作成し、頻繁に既習文法を用いることで、使
える表現を増やしていく必要がある。一方、まだ間違えることを恐れる生徒もいるので、スピーチ中は多
少間違った英語は許容し、後の振り返りで recast を行い、生徒に間違いを気付かせるように心がけていく。
言語の習得過程では、間違うことは決して恥ずかしいことではないという雰囲気を大切にし、生徒が安心
して学べるよう前向きな支援をしていきたい。また、聞き手の生徒は、メモをとるだけに集中するのでは
なく、発表者の発表を見るのを最優先させ、メモは必要最低限とるという指導を行っていく必要がある。
② 英語による授業の実践と継続
本時の授業では、ほぼ100% 英語で授業を行った。言語の習得は、その使用を通して身に付けられる
ものである。
文法や語彙の知識を積み上げても、
使用経験がなければコミュニケーション能力は育たない。
生徒のコミュニケーション能力を育てるために、
日本の英語教育が大きく変わろうとしている時代である。
公開授業だからと言って、がんばって classroom English 使用するのではなく、日頃の授業において生徒
の理解できる英語を最大限に用い、生徒との interaction を中心とした授業を実践していく。