仮想デスクトップ 仮想デスクトップ 仮想デスクトップ;pdf

特集
仮想デスクトップの利用が急増している。そ
れに伴って、導入につまずくケースも増えて
いる。失敗の原因は、間違った設計にある。
性能、管理、コストの三つの面から、失敗
パターンとその回避策を示す。 (白井 良)
その設計で
大 丈夫ですか?
特 集
間違いだらけの
間違いだらけの仮想デスクトップ
仮想デスクトップ
仮想デスクトップが、本格的な普及
業が増えている」と口をそろえる。
実現可能になったことがある。
期に入った。インターネットイニシア
仮想デスクトップ導入の主な狙いは
ただし、仮想デスクトップの利用が
ティブの細野淳氏(ソリューション本
セキュリティ強化、ワークスタイル変
急激に膨らむ一方で、
「設計が不適切
部 エンタープライズソリューション部
革、管理負荷軽減、古いOSやアプリ
で “失敗プロジェクト” になり、困り
OfficeITソリューション課 担当課長)
ケーションの延命などにある(図1)
。
果てたユーザー企業の担当者から相談
をはじめ、仮想デスクトップの導入支
最近になって導入が急増している背景
を受けることが増えた」
(富士通エフサ
援にかかわる人は皆、
「規模を問わず、
には、仮想デスクトップとその周辺技
ス サービスビジネス本部 サービスイ
仮想デスクトップの導入を検討する企
術が成熟し、こうした目的を無理なく
ンテグレーション統括部 マネージャー
の内田優一氏)という声も聞かれる。
導入急増の要因
OSやアプリケーション
はサーバー側で動作
(1)
セキュリティ強化
PCにデータを残さないので、端末の紛失や盗
難に伴う情報漏えいリスクを低減できる
画面を転送
通常のPCと
同じ感 覚で
操作可能
(2)
ワークスタイル変革
仮想デスクトップ
のサーバー
操作情報を転送
社外からでもオフィス内と同じデスクトップ環境
を使え、外出先や在宅での勤務を可能にする
(3)管理負荷軽減
PCごとに実施していたパッチ適用やデータ
バックアップをサーバー側で一括実行できるの
で、
管理の手間が削減される
(4)古いOSやアプリケーションの延命
仮想デスクトップ
のクライアント
Windows XPやIE 6を延命させたり、新旧
バージョンのMicrosoft Officeを共存させたり
する目的で利用するケースもある
1 仮想デスクトップの概要と導入急増の要因
図
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NIKKEI SYSTEMS 2015.4
シトリックス・システムズ・ジャパン
サービス本部 本部長の藤野智宏氏は
「サーバー仮想化と同じ感覚で構築す
ると、仮想デスクトップでは失敗する」
と警鐘を鳴らす。
本特集では仮想デスクトップ設計に
おける典型的な失敗パターンとその回
避策について解説する。ただし、提示
する回避策は完全無欠なものではな
く、コスト増を招いたり、導入の手間
が増えたりする。従って、以降で紹介
する失敗パターンやその回避策を念頭
に置いて、要件を満たす設計になって
<イラスト:今井ヨージ>
いることを綿密に確認することが望ま
れる。
動作が遅く
て仕事に
ならない!
シンクライアントだけではない
パターン1 性能が低い
p.46
仮想デスクトップはサーバー上でPC
エンドユーザー
向けのアプリケーションを動かし、画
面をクライアント端末に転送する技術
管理負荷
がかえって
増えた!
だ。クライアント端末は転送された画
面を表示し、マウスやキーボードの操
作情報をサーバーに転送する。
仮想デスクトップにはいくつかの方
仮想デスクトップ
特有の管理
パターン2 管理が面倒
p.48
プ環境をそのままサーバー上の仮想マ
特 集
システム管理者
式がある。現在の主流は、デスクトッ
Desktop Infrastructure)方式」と、
パターン3 コストが高い
p.50
サーバー OS上で動作させたデスク
トップアプリケーションを画面転送す
る「S B C(S e r v e r B a s e d C o m p u
間違いだらけの仮想デスクトップ
導入
コストが
高過ぎる!
シン で 動 作 さ せ る「VDI(Virtual
経営層
2 起こりがちな三つの「失敗パターン」
図
ting)方式」の2種類だ。
設計面で気にしなければならないこ
ケースも増えている。
できる(図2)
。
とは、従来より減っている。4 ~ 5年
ハイブリッドクライアントは、イン
一つ目は「性能が低い」
。仮想デス
前の仮想デスクトップは「相性の問題
フラ担当者だけではなくアプリ担当
クトップは処理がサーバーに集中する
で一部ソフトや周辺機器が動かなかっ
エンジニアも知っておきたい使い方
ので、ストレージやネットワークが性
たり、動作が遅くてユーザーにストレ
だ。米Microsoftは2016年1月 以 降、
能のボトルネックになる。設計が不適
スが掛かったりした」
(日本マイクロソ
Internet Explorer(IE)のサポート
切だと、エンドユーザーの業務に支障
フト ビジネスプラットフォーム統括本
を最新版に限定する。古いバージョン
を来すほど動作が鈍くなる。
部の蔵本雄一氏)
。こうした問題がこ
のIEを使い続けると、セキュリティリ
二つ目は「管理が面倒」というパター
こ2年ほどで解消され、
「今では通常の
スクになる。しかし、業務システムは
ンだ。仮想デスクトップは「クライア
PCと同じ感覚で使えるようになって
頻繁に更新できないことが多い。ハイ
ント管理が楽になる」がうたい文句だ
いる」
(蔵本氏)
。
ブリッドクライアントを利用すれば
が、それは管理負荷を減らす設計が前
技術の成熟に伴って、仮想デスク
「インターネットに接続する最新の環
提となる。管理負荷に配慮せずに設計
トップの適用領域が広がっている。従
境」と「社内システムにアクセスする
すると、後で運用担当者が管理に苦し
来はシンクライアントを実現するため
古い環境」を併存させられる。
むことになる。
に使われることが多く、金融機関や
導入形態も広がっている。高額な初
三つ目は「コストが高い」という失
コールセンターなど限られた業界での
期費用が必要なオンプレミス型以外
敗。仮想デスクトップ1ユーザー当たり
採用にとどまっていた。しかし最近で
に、月額料金で利用できるクラウド
のコストは、一般にPC1台よりも高価
は、iPadなどタブレット端末からのリ
サービスが台頭してきた。
だ。コストを抑える工夫をしないと際
モートアクセス手段や、ローカルOSと
仮想デスクトップを併用する「ハイブ
リッドクライアント」として採用する
典型的な三つの失敗パターン
設計の失敗パターンは三つに類型化
限なくコストが膨らんでしまう。
次ページからはパターン別に、具体
的な落とし穴と回避策を説明する。
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