APGC/MS/MS を用いた QuEChERs 抽出液中の 農薬定量分析 Dominic Roberts and Antonietta Wallace 目的 フルーツおよび野菜の QuEChERs 抽出液中の 野菜とフルーツ中の GC で影響を受けやすい農薬 多成分一斉分析において の検出と定量。 APGC/MS/MS による検出限界と濃度直線性の検証。 APGC/MS/MS を用いることにより 高感度で正確な検出が可能となります 背景 農薬は世界中の農業において広く使用されて います。行政当局と食品生産者は食料供給の 安全性を確保するため、日々増加するプレッ シャーの中で業務を行っています。残留農薬は 消費者の中で高い懸念事項であり、その結果、 分析ラボでは適切な工程時間の中において 1 回 の分析で可能な限り多くの農薬をスクリーニ ングしなければなりません。多くの国では残 留農薬を統制する規制が明確に定義されてい ます。法律制定では食品製品に対して最大残 留基準(MRLs )が設けられており、感度、正確さ、 頑健さがその分析に求められています。 APGC with Xevo TQ-S 多成分一斉分析では幅広い食品サンプル中の 多種多様な農薬の MRL を満たすため、低濃度 大気圧 GC( APGC )はソフトなイオン化技術であり、その結果フラグメンテーショ の検出下限を満たさなければならないという ンの程度が小さく、分子イオン種の感度と選択性を向上させます。APGC ソー 課題があります。 スは 1 つの MS プラットホームで ESI との切り替えが可能であり、LC と GC の 現在、1000 を越える農薬の使用が知られており、 分析ラボではルーチンでのモニタリングを目 的とした分析メソッドの適用範囲を広げるた め日々努力を重ねています。通常この分析に は GC/MS/MS(EI 法 )や LC/MS/MS が 用 い ら れ ています。EI 法はハードなイオン化技術のため、 多くはインソースにてフラグメンテーション が起こります。 両方の分析に使用することができ、残留農薬分析の完全な分析ソリューションを 提供します。このテクノロジーブリーフではイチゴ、洋ナシ、ほうれん草、トマ ト中のトレースレベルでの残留農薬ターゲット分析の新しい手法について 紹介します。 ソリューション イチゴ、洋ナシ、トマト、ほうれん草サンプルから DisQuE TM、QuEChERS( CEN )プロトコールによりアセ トニトリルでマトリックスブランク溶液を抽出しま した。マトリックスブランク溶液に標準溶液を添加 し 0 ∼ 50 ng/mL(µg/kg )の範囲で 9 濃度の検量線用 マトリックス添加溶液を調製しました。これに重水 素ラベル化の Chrysene-d12 を 2 ng/mL となるように 各バイアルに添加し標準溶液としました。各標準溶 液は 7890 GC/Xevo ® TQ-S タンデム四重極型質量分 。各農薬は 析計にて測定を行いました(各濃度 n=3) 2 つの MRM チャンネルでモニターし、強度の高い方 を定量用イオン、低い方を確認用イオンとしました。 対象農薬は EI イオン化法にて過剰なフラグメンテー 図 1. イチゴ中の Azinphos-methyl のマトリックス検量線(各濃度 n=3)と残差プロット スの再現性も良好な結果でした。 ションを起こす 20 農薬を選択しました。分析時の これらのデータにより APGC-Xevo TQ-S システムにおいて親イオン強度が向上し、 イオンソースコンディションにより分析者はプロト GC におけるフルーツや野菜中の農薬の高感度ルーチン分析が可能となります。 ントランスファーかチャージトランスファーのいず れかのイオンの促進を選択できます。プロトン供与 体(ウェットコンディション)の存在下では APGC は いても選択性が高く高感度の MRM トランジッション にてモニターできます。一方 E I イオン化法における 農薬の MRM では分子イオンに低分子イオンを使用 検出 下限値 (ng/mL) 相関係数 (R2) 定量用MRM Aldrin 363>159 13.4 0.5 0.992 Azinphos-Ethyl 289>261 14.2 0.05 0.99 Azinphos-Methyl 261>125 20.0 0.50 0.99 プロトンアダクトの [M+H]+ が主イオンとなります。 分子イオンの強度が高いため、ターゲット分析にお 保持時間 (min) 化合物 Buprofezin 306>106 15.9 0.05 0.99 Chlorfenvinphos 359>170 14.3 0.05 0.994 Chlorpyriphos 350>198 13.2 0.10 0.995 Chlorpyriphos-Methyl 322>125 12.1 0.05 0.99 Dichlorvos 221>145 6.3 0.01 0.99 図 1 にイチゴ中の Azinphos methyl のマトリックス Dicrotophos 238>112 9.6 0.05 0.99 検量線の直線性と残差プロットを示します。0.05 ∼ Dieldrin 379>325 16.0 0.10 0.995 50 ng/mL まで直線的なレスポンスを示し、相関係数 Endosulfan I 405>323 15.3 0.10 0.99 Endosulfan-Ether 341>205 18.7 0.01 0.995 Endosulfan-Sulphate 323>217 17.7 0.05 0.99 Endrin 379>243 16.5 0.05 0.997 Ethion 385>143 16.8 0.05 0.99 Fenarimol 331>139 20.7 0.10 0.997 Heptachlor Epox B 387>217 17.7 0.10 0.99 Mevinphos 225>127 7.5 0.05 0.99 Phenthoate 321>135 14.4 0.05 0.99 Phosphamidon 300>127 12.0 0.10 0.993 するため、それに基づく特定のフラグメントイオン が少なくなります。多くの種類の野菜やフルーツ中 の農薬分析においても確実な同定が可能となるのが APGC の特徴です。 は R2=0.997 でした。全ての濃度点において残差は 20 % 以下であり、APGC システムでの良好な直線性 と再現性が示されました。APGC-Xevo TQ-S を用い た全 20 農薬の検出限界と直線性を表 1 に示します。 検出限界は 0.01 ∼ 0.5 ng/mL であり全ての化合物で R2 が 0.99 以上と良好な直線性を示しました。図 2 に Heptachlor epoxB の標準溶液(1 ng/mL:溶媒希釈 液)と 4 つの異なるサンプルマトリックスに添加した 1 ng/mL の MRM クロマトグラムを示します。マトリッ クス効果がなく、保持時間、ピーク形状、レスポン 表 1. 各農薬の MRM トランジッションと測定結果 Solvent Tomato Spinach Strawberry Pear 図 2. Heptachlor Epox B の標準溶液とマトリックス添加溶液の APGC/MS/MS クロマトグラム(1 ng/mL ) まとめ APGC は [M+H]+ を供給できるソフトなイオン化技術のため、高い選択性で高感度分析に適した MRM トラン ジッションでの測定が可能となります。ウォーターズが提供するユニバーサルイオン源により、1 つの MS プラットホームで迅速で簡単に APGC 、UPLC ® 、UPC 2® の切り替えが可能であり、ラボの MS システムのユー ティリティーを最大限に活用することができます。 APGC-Xevo TQ-S システムによりフルーツや野菜中の 農薬を極低濃度レベルにおいても正確に定量することができます。 日本ウォーターズ株式会社 www.waters.com 東京本社 ࠛ140-0001 東京都品川区北品川 1-3-12 第 5 小池ビル TEL 03-3471-7191 FAX 03-3471-7118 大阪支社 ࠛ532-0011 大阪市淀川区西中島 5-14-10 サムティ新大阪フロントビル 11F TEL 06-6304-8888 FAX 06-6300-1734 ショールーム 東京 大阪 テクニカルセンター 東京 大阪 名古屋 福岡 札幌 富山 Waters、Xevo、UPLC 、UPC 2 および The Science of What ’s Possible は Waters Corporation の登録商標です。 DisQue は Waters Corporation の商標です。その他すべての登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。 ©2014 Waters Corporation. Printed in Japan. 2014 年 10月 720004776JA PDF
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