平 成 二 十 六 年 度 学 位 記 ・ 修 了 証 書 授 与 式 式 辞 本 日 こ こ に

平成二十六年度学位記・修了証書授与式
式辞
本日ここに学位記を授与された皆さん、修了証書を授与された皆さん、まことにおめでと
うございます。また、今日まで学生の皆さんの勉学を支援してこられたご両親、ご家族の方々、
さらに学生の指導に当ってこられた教職員の皆様にも心からお祝いを申し上げます。また、
ご多忙中にも関わらず、本日の式典にご臨席たまわりましたご来賓の皆様方にも厚くお礼申
し上げます。
学部を卒業される多くの皆さんは、平成二十三年四月に本学に入学されましたが、四年前
の三月十一日に起こりました東日本大震災の影響によって、この年入学式を実施することが
できませんでした。皆さんにとっても大変なこの四年間だったことと思います。
私たちは今回の震災を経験して多くの教訓を得ました。今日まで科学技術は現代文明の発
展に寄与し、人類の豊かな繁栄を支えてきましたが、一方では、科学技術に支えられた社会
システムの脆弱性も思い知らされることとなりました。又、今後も起こると想定される大き
な災害への準備もしなければなりません。
一方で、天然資源に乏しいわが国において、卓越した科学技術と優れた人材こそが他国に
優越する資源であり、ますます優秀な理工系人材の教育が求められています。
本学は創立以来百三十四年に亘り、
「一般教養とともに、理学、薬学及び工学の原理及びそ
の応用を教授研究し、人格高く、かつ、応用力に富む有為の人物を育成して、文化の進展に
寄与すること」を目的として、多くの理工系人材を輩出してまいりました。卒業生の方々は
優秀な研究者・技術者として企業や研究機関で活躍するほか、官公庁を始め各方面でも活躍
されています。特に本学の教員養成は高い評価を受けており、中学・高校など教育界での東
京理科大学への信頼は絶大です。
皆さんも本日伝統ある本学を卒業し、これから社会に出て活躍されるわけですが、必ずや、
人類繁栄のため、わが国の発展のために貢献していただけるものと期待しております。近年
では少子高齢化問題、製造業をはじめとする日本経済の減速問題等、直面する課題は山積し
ています。皆さんが本学で身につけた専門知識、応用力を遺憾なく発揮し、日本はもちろん、
世界の人類のために活躍して下さい。
本日、皆さんが本学の学位記または修了証書を手にしたということは、本学伝統の「実力
主義」の下で、それぞれの専門的知識を習得し、また多くの友人や教職員との触れあいの中
で、人間的にも立派に成長したことを証明するものです。
これは皆さんの社会的信用を裏付ける一方で、皆さん自身も本学の名に恥じない活躍をす
る責任を負ったことにもなります。どうか常に自らを高めるための努力をしつつ、自信と誇
りを持って新しい人生に船出してください。
さて、私は大学を卒業してから、一貫して研究者としての人生を歩んできました。
研究者は大きく三種類に分けることができると言われています。第一に基礎を中心にした
研究者、第二に応用を主に考える研究者、そして第三に基礎から応用も含めて行う研究者で
す。
基礎を中心とする研究者の一人として、原子モデルを考えたボーアが代表的な例です。水
素原子の外側の軌道を電子がまわる最も基本的な原子モデルを提案しました。
応用を中心とした研究者で有名なのが皆さん良く御存じのエジソンです。沢山の特許をと
り、多くの電気製品を作りました。
そして、基礎的研究から人類に直接役立つ技術までを作った人の代表例として、フランス
のルイ・パスツールがあげられます。どんなところにも菌があり、伝染病の原因が微生物に
よることを明らかにし、免疫という大きな学問領域を確立した人です。
「科学に国境はない」
とか、
「発見のチャンスは準備のできた者だけに微笑む」などのすばらしい言葉を残しておら
れます。私の尊敬する研究者の一人でもあります。私もまた、研究者人生を振り返ると、大
学院在学中に光触媒反応を発見して以来、基礎から応用まで行ってきた研究人生であったか
と考えています。
いずれの例も、それぞれに良し悪しはありません。同じ研究者という職業でも、そのあり
方は大きく異なっていながら、いずれも、人類に貢献しうる可能性を持っています。
皆さんは本学を卒業・修了し、各方面で活躍されていきます。様々なことに惑わされるこ
となく、御自身に合った形で、本学で得た力を発揮し、活躍し、人類に貢献されることと確
信しています。
皆さんはまだ若く、無限の可能性があります。
一方、これからの皆さんの人生の中で、時として立ち止まり、惑い、心細くなることもあ
るでしょう。
皆さんに悔いのない人生を歩んでいただくために、中国の孔子が論語の中で言っている言
葉を一つ御紹介します。
「これを知る者は、これを好む者に如かず、
これを好む者は、これを楽しむ者に如かず」
道を志す者にとって、ただ知っているだけの者は、それを好きな者には敵わない。そして、
好きな者であっても、それを楽しむ者には敵わない。という意味です。
皆さんが目指す道を進むためには、知識は必要です。どの分野のことでも、その分野のこ
とを良く勉強することが大切です。しかし「知る」ことで立ち止まるのではなく、その分野
を好きになってください。
「好きこそものの上手なれ」という言葉の通り、好きになればなる
ほどさらに良く知ろうと努力できるものです。そしてその分野のことが何でも楽しくなると
いう境地に至ってはじめて、本物になるのではないでしょうか。
皆さんも、ふと立ち止まった時、自らが楽しくなるようなことをしているのか、と己を振
り返り、様々なことに取り組み、新しい分野を切り拓き活躍してください。
「これを知る者は、これを好む者に如かず、
これを好む者は、これを楽しむ者に如かず」
本学は、創立百三十四年を迎えました。すばらしい葛飾キャンパスもオープンして二年が
過ぎました。神楽坂キャンパスや野田キャンパスの整備も継続するとともに、教育・研究組
織体制も大きく改善、充実してきています。
「日本の理科大から世界の理科大へ」を掲げ、
様々な面での国際化なども一層進める予定です。
皆様の母校、東京理科大学は、良心を持った科学者、技術者を養成し、秀れた教育・研究
を通して社会に貢献する大学として、今後もますます評価を高める努力をしてまいります。
皆さんの社会でのご活躍と、本学の進化が相俟って本学のブランド力がさらに高まり、それ
が皆さんの更なる自信と誇りにつながるという相乗効果を期待しております。
どうか卒業後も折にふれて大学時代に思いを馳せ、暖かく母校の発展を見守ってください。
大学在学中に築いた交友関係は一生の宝となるものです。昨年秋に開催しましたホームカミ
ングデーには一万二千名もの参加者がありました。今年も十月二十五日に予定されています。
ぜひこのホームカミングデーに積極的に参加いただき、友人や恩師と旧交を温め、卒業生の
絆を深める機会として利用してください。
人間の活力の源泉は心身ともに健康であることにあります。健康を保つためには、折に触
れて心身の休養をとるすべを心得ることが重要です。最後に、健康には十分留意されること
をお祈りして、卒業、修了のお祝いの挨拶といたします。
平成二十七年三月十九日
東京理科大学長 藤嶋 昭