記者会見要旨 日 時: 平 成 27 年 3 月 18 日 ( 水 ) 午 後 2 時 30 分 ~ 午 後 3 時 15 分 場 所: 東 京 証 券 会 館 9 階 第 1 ・ 2 会 議 室 記 者 数: 16 人 出 席 者: 稲 野 会 長 、 大 久 保 副 会 長 、 森 本 専 務 理 事 冒頭、大久保副会長から自主規制会議の審議事項等の概要につい て、森本専務理事から証券戦略会議の審議事項等の概要について、 説明が行われた後、大要、次のとおり質疑応答が行われた。 (記者) コーポレートガバナンス・コードが確定したが、コードに対する 評価や企業に期待すること、実際の運用にあたっての課題などをど のように考えているか。 (稲野会長) コーポレートガバナンス・コードは、昨年策定された日本再興戦 略において、「日本の『稼ぐ力』を取り戻す」ための施策の一つと して具体的に策定が求められたものであり、3月5日の有識者会議 において原案が確定したものである。私はこの内容については積極 的に評価している。各上場企業においてコードが適切に実施され、 企業の持続的な成長や企業価値向上のための対応が促進されること につながっていき、その結果、日本経済全体の発展につながるもの と期待している。 ここで、企業に対する「形式による規律」や「外部圧力による規 律」という観点に光を当て過ぎないようにすることが肝要であると 考える。それは企業経営にとって健全とは言えないからである。 実際、コードに定める原則の適用にあたっては、各企業の事業の 特性やそれを取り巻く環境が異なる以上、それぞれの企業の置かれ た状況に応じて創意工夫がなされるべきと原案には記されている。 そのような「プリンシプル・ベース」である以上、コードを形式的 1 な文言としてではなく、その趣旨や精神も踏まえた上で適切に解釈 し 、実 施 さ れ て い く こ と が 期 待 さ れ る 。し た が っ て 、「 コ ン プ ラ イ ・ オ ア・エ ク ス プ レ イ ン 」の 手 法 に よ り 、実 施 し な い 原 則 に つ い て は 、 株主等のステークホルダーの理解が得られるよう、十分な説明がな されるべきであるという点が重要と認識している。 一方、日本版スチュワードシップ・コードについては、2月末時 点 で は 、 受 入 れ 表 明 を し た 機 関 投 資 家 が 184 社 と 順 調 に 浸 透 し て い る。スチュワードシップ・コードに基づき、株主と会社との建設的 な目的を持った対話が促進されることにより、コーポレートガバナ ンスの強化や企業経営への刺激が期待できる。 そういった観点から、コーポレートガバナンス・コードと日本版 スチュワードシップ・コードという2つのコードは車の両輪と考え ている。この両輪がきちんと存在することで経済全体が底上げされ るものと思われる。その両輪を結ぶ車軸となるものが、エンゲージ メント、つまり目的を持った建設的な対話であると考えている。 実務的な課題として何点かあると思う。例えばコーポレートガバ ナンス・コード原案は、基本原則、原則、補充原則の三層構造にな っている。 まず、「基本原則5」にある「株主総会の場以外」における「株 主との間での建設的な対話」をどう確保するかという点は課題であ り、工夫が必要であると思うが、この点は補充原則において、複数 例示されており、具体的な指針になりうると思っている。 次 に 「 基 本 原 則 4 」 ( 取 締 役 会 等 の 責 務 ) を 受 け た 「 原 則 4 - 13 情報入手と支援体制」では、「社外取締役・社外監査役の指示を受 けて会社の情報を適確に提供できるよう社内との連絡・調整にあた る者の選任」、すなわち、社外取締役・社外監査役に対してサポー トするスタッフということを指摘しているわけであるが、そのよう な人員をどのように確保するか、そして、社外取締役・社外監査役 を活かすような組織的対応をどのように行っていくかは実践的な課 題であると思っている。 また、社外取締役の人材確保は課題である。既に東証第一部の企 業で6割以上、東証第二部の企業で3割以上が1人以上の独立社外 2 取締役を選任しているが、今後、社外取締役を迎え入れるニーズは ま す ま す 高 ま る わ け で あ り 、各 企 業 は 、そ の 置 か れ た 状 況 に 応 じ て 、 自らに相応しい独立社外取締役をどのように確保していくかという 人材面の課題があると思っている。 (記者) 最近の株価動向について、企業業績・景気回復などが評価された 妥当な上昇なのか、過熱感があると見ているか。 (稲野会長) 上昇スピードが速いというのは事実であり、そのように感じてい るが、過熱とまでは言えないというのが私の実感である。 上昇の背景については、企業業績など様々な要因があるかと思う が、経済全体が消費税増税の影響で伸び悩んだ中で企業業績が堅調 であること、その堅調な業績を受け、配当増・自社株買増加など株 主への還元が強化される方向にあること、さらに大企業各社のベー スアップが続々報じられているが、賃金上昇の効果で消費回復への 期待が高まっているという背景もあろうと思う。また、原油価格下 落は第三四半期決算では石油・商社などの業界でマイナスのインパ クトを与えたが、今後日本企業総体では大きなプラスの影響が想定 さ れ る こ と 、 コ ー ポ レ ー ト ガ バ ナ ン ス 強 化 や 各 企 業 の ROE 目 標 の 提 示など資本生産性を高める動きなどへの期待感が存在していること などが考えられる。 また、需給では、東証の投資部門別売買状況によると現物株式の 4週連続買い越しなど海外投資家の買い基調が続いていることや、 具体的な数字では測れないが、公的年金のポートフォリオ変更に伴 う売買があり、その買いへの期待があろうかと思う。さらに、個人 投資家の売買状況は総体でいうと直近では売り越しであるが、日証 協 が 集 計 し た 主 要 証 券 10 社 の NISA 買 付 金 額 で は 1 月 は 約 2,600 億 円 と 過 去 最 高 で あ り 、個 人 投 資 家 の 動 き も 活 発 で あ る と 考 え て い る 。 海外において、欧州でギリシャへの金融支援が4か月間延長する 合意がなされたことで、緊張が一時的に緩和されたことや、米国の 3 金融政策が本格的な引き締めに移行するまでは、高値圏推移を予測 する向きが多数であるように見えることなどが挙げられる。 このような欧米の情勢、為替水準、原油安、日本企業の業績など を 受 け て 、マ ー ケ ッ ト は 現 在 の 状 況 に あ る と 考 え て い る 。も ち ろ ん 、 今後マーケットの調整局面が生じることもあろうし、欧州のギリシ ャ問題は完全に解決したわけではないといったように、日々状況の 変化があろうかと思う。 いずれにしても、今後は賃上げなどによる国内の消費需要拡大、 実態を伴った企業業績のさらなる回復を期待し、その結果がマーケ ットに反映されることを個人的には期待している。 (記者) 日銀の黒田総裁が就任して2年が経過し、この間、異次元緩和な どにより株価が上昇しているものの、物価上昇にコミットしている 中で原油安による影響が生じているなどの状況であるが、これまで の日銀の政策について、どう評価しているか。 (稲野会長) 私は日銀の参与という立場であるので、個人的な見解を述べるの は控えさせていただきたい。 少なくともマーケットにおいては、日銀による金融緩和、デフレ 脱却に向けた強い意志は積極的に評価されてきたところであり、今 後も期待が高いというのは申し上げておきたい。 しかし、異次元緩和を続けている中で、今後、国の財政再建を考 えていくと、時期早尚であるが金融緩和からの出口の時期を考える のであれば、財政再建とどう折り合いを付けていくのかを考える必 要がある。金利上昇といったことも予想されるわけであるが、その 中でいかに財政再建を進めていくのかといったことが挙げられる。 政 府 は 2020 年 度 ま で に プ ラ イ マ リ ー バ ラ ン ス の 黒 字 化 と い う 財 政 再 建 目 標 を 掲 げ て い る が 、経 済 財 政 諮 問 会 議 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン で は 、 将 来 も 現 状 の よ う な 成 長 率 が 続 く 場 合 は 16 兆 円 以 上 の 赤 字 が 残 る と いう状況にあって、日銀が金融緩和を継続すればするほど一方で財 4 政再建というテーマが重くなっていくという点については相当な意 識を持つ必要があると思っている。 (記者) 株 式 決 済 期 間 短 縮( T+ 2)の 勉 強 会 の 報 告 書 は 両 論 併 記 と い う 形 だ が、今後の具体的な検討スケジュールや実現の可能性を現段階でど のように見ればよいか。また、決済期間が1日短縮した場合に、個 人投資家にどのようなメリットがあるのか。 (稲野会長) 具体的な検討スケジュールについて今は完全に見通せる状況では ない。ただ、今回の資料にもあるとおり、アメリカでの検討がどち ら の 方 向 に 向 か う の か 、あ る い は 、T+2 に な る の で あ れ ば ど の 時 期 に なるのかということはファクターとしては極めて大きいと思うし、 その時期如何によっては、我々も検討のスピードを速めなければな らないと認識している。 個人投資家への影響については、マイナスの影響というよりはプ ラスの影響の方が大きいと思う。個別の投資家にヒアリングしたわ けではないので確たることは言えないが、決済期間短縮化によって 利便性が高まり、資金活用余地も高まるということであり、マイナ スというよりはむしろプラスの影響の方が大きいと感じている。 以 5 上
© Copyright 2025 ExpyDoc