金融担当大臣 年頭所感

金融担当大臣 年頭所感
麻生 太郎
金融担当大臣
平成 28 年の年頭に当たり、謹んで新年のお慶び
を申し上げます。
おり、経済の持続的な成長を金融面から支えていく
ことであります。金融を取り巻く環境が変化する中
においても、①景気のサイクルに大きく左右される
安倍内閣では、日本経済の再生に向けて、平成
ことなく、質の高い金融仲介機能
( 直接金融・間接
24 年12月の政権発足以降、この3 年間、デフレ不
金融 )が発揮されること、②こうした金融仲介機能
況からの脱却を目指し 、①大胆な金融政策、②機
の発揮の前提として、将来にわたり金融機関・金融
動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略
システムの健全性が維持されるとともに、市場の公
を一体とした取組により「経済最優先 」で政権運営
正性・透明性が確保されること、を通じ 、企業・経済
にあたってきました。これらの取組の効果もあって、
の持続的成長と安定的な資産形成等による国民の
企業の経常利益は過去最高水準
( 2014 年度 64.6
厚生の増大がもたらされることが重要であり、金融
兆円)
となり、2012 年度
( 48.5 兆円)
から大幅に改善
庁は、このような姿の実現を目指して金融行政を推
しました。また、賃金上昇率は、17年ぶりの高水準
進していく所存です。
( 2.20% )、有効求人倍率も23 年ぶりの水準の1.25
倍
( 2015 年11月)
となり、これらいずれも2012 年末
特に皆様に関係の深い、活力ある資本市場と安
から大幅に改善しています。まさに、経済の「 好循
定的な資産形成の実現という観点からは、本年より
環 」が着実に回り始めることで良好な経済状況を達
NISAの限度額を引き上げると共にジュニアNISA
成しつつあると言えると思います。こうした好循環を
を開始します。家計金融資産を成長マネーにつなげ
さらに拡大するためには、企業が行動を起こし 、過
ていくために、制度の更なる普及と発展を目指さね
去最高水準の企業収益を設備投資や賃金引上げ
ばなりません。また、NISAの利用状況や販売され
等に回していくことが必要であり、この認識の共有
ている商品内容及び販売態勢等について総合的な
を図っていくことが重要と考えています。
制度の効果検証も実施します。
証券化という観点からは、昨年 4月には、東京証
こうした中で、金融庁の役割は、昨年9月に発表
いたしました「金融行政方針」でも示しておりますと
券取引所に新たに上場インフラファンド市場が開設
され 、更に、平成 28 年度税制改正大綱において、
January-February 2016
7
Special
一定の要件の下、再生可能エネルギー発電設備に
プ会議 」において、有識者による議論・提言やベスト
認められている税制優遇期間の延長が盛り込まれ
プラクティスを情報発信しながら、上場会社全体の
ました。また、不動産証券化協会の皆様方や国土
コーポレートガバナンスの更なる充実を促していきま
交通省等の関係団体と協力し 、ヘルスケアリートを
す。
活用した施設運営についての説明会を実施し 、その
更なる普及・啓発に取り組んで参ります。
なお、金融行政を遂行していくに際しては、金融
を取り巻く内外の環境変化に遅れをとらず、むしろ
他方で金融商品を提供する側のフィデューシャ
先取りする態勢構築が必要です。そのため、金融
リー・デューティの浸透・実践も求めていきます。こう
行政に対し外部からの提案や批判等が常に入る
「開
した観点から投資信託等の商品開発、販売、運用、
かれた体制」の構築に取り組んでいくこととしてい
資産管理それぞれに携わる金融機関等が、真に顧
ます。その一環として、金融機関等からの率直な意
客のために行動しているかを検証するとともに、こ
見や批判等を取り込んでいくために、
「 金融行政モ
の分野における業者や自主規制団体等の積極的な
ニター」
(仮称)
の設置を検討しております。さらに、
取組を支援して参ります。
金融庁職員の一人一人が、省益ではなく、真の意味
更に、活力ある資本市場の前提として、企業統治
改革を「 形式 」から「 実質の充実 」へと向上してい
で国益に貢献するための意識改革も推進していき
たいと考えています。
く必要があります。これまで、スチュワードシップ・
コード及びコーポレートガバナンス・コードを策定し
8
副大臣、政務官とともに、これらの施策を推進
てきましたが、これはゴールではなくスタートです。
し 、国民の皆様の信頼に応える金融行政に全力で
昨年 8月に新たに設置した
「スチュワードシップ・コー
取り組んで参りますので、本年も、皆様のご理解・
ド及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアッ
ご協力の程宜しくお願い申し上げます。
ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.29