インフレ下方修正も「物価の基調」には変化なし(2015/3/17作成)

*グローバル投資環境 No.929*
ご参考資料
髙木証券投資情報部
現状の金融政策を維持。インフレ下方修
日銀金融政策決定会合~ 正も「物価の基調」には変化なし
2015年3月17日作成
日本銀行は3月16日から17日にかけて金融政策決定会合を開催した。
金融市場の調節については、マネタリーベースを年間約80兆円に相当するペースで増加させると
いう方針を維持するとともに、資産買入れについても、その保有残高を年間で、長期国債を80兆
円、 ETFを3兆円、J–REITを900億円に相当するペースで増加するように行う方針を維持した。な
お、以上の決定に対しては9名の委員のうち1名(木内委員)が5会合続けて、追加緩和前の金融市
場調節及び資産買入方針が適切であるとして反対票を投じている。
景気全般に関する判断は「緩やかな回復基調を続
けている」で前回(2月17~18日)会合と同じであ
り、細目についても一字一句変わっていない。前回
からの唯一の変化は、「消費者物価(除く生鮮食
品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響
を除いたベースでみて、0%台半ばとなっている」
が「0%台前半」に変わったことと、物価の先行き
に関する表現が、「当面プラス幅を縮小するとみら
れる」から「当面0%程度で推移するとみられる」
に変更されたことだが、「予想物価上昇率は、やや
長い目でみれば、全体として上昇しているとみられ
る」という見解は変わっていないほか、金融政策に
ついても「『量的・質的金融緩和』は所期の効果を
発揮しており、日本銀行は、2%の『物価安定の目
標』の実現を目指し、これを安定的に持続するため
に必要な時点まで『量的・質的金融緩和』を継続す
る」というスタンスにも変わりはない。
なお、会合終了後の午後3時半から開かれた会見
で黒田総裁は質問に答える形で、短期的に物価上昇
率がマイナスに転じる可能性は排除できないとしな
がらも、それによって需給ギャップや中長期的な予
想物価上昇率によって規定される「物価の基調」に
変化を与えることは考えにくいとの見方を示した。
《景気と物価の現状》
景気判断
わが国の景気は緩やかな回復基調を続けている。
一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に
海外経済
回復している。
輸出
持ち直している。
企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調に
設備投資
ある。
公共投資
高水準で横ばい圏内の動きとなっている。
個人消費は、一部で改善の動きに鈍さがみられる
ものの、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、
住宅投資・
全体としては底堅く推移している。住宅投資は、駆
個人消費
け込み需要の反動減が続いてきたが、足ともでは
下げ止まりつつある。
在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は持ち直し
鉱工業生産
ている
消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税
率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみ
物価
て、0%台前半となっている。予想物価上昇率は、
やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみ
られる。
《先行き》
今回
先行きのわが国経済については、緩やかな回復基
景気
調を続けていくとみられる。
消費者物価の前年比は、エネルギー価格の下落
物価
を反映して、当面0%程度で推移するとみられる。
リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、
欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化
リスク要因
のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられ
る。
「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮してお
り、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現
を目指し、これを安定的に持続するために必要な
金融政策
時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。そ
の際、経済・物価情勢について上下双方向のリス
ク要因を点検し、必要な調整を行う。
昨年10~12月のGDPは3四半期ぶりにプラス成長に転じたほか、内
閣府が発表している景気ウォッチャー調査でも、1月に「50」を上
回った「先行き」に続いて、2月には「現状」も拡大と縮小の境目を
上回るなど、経済指標の好転が続いている。一部の市場関係者の間
では今なお追加緩和に対する思惑があるようだが、現在起こってい
るインフレ率の低下は、需要が乏しいためではなく、あくまでも原
油安によるものであり、むしろ「良いディスインフレ」であると髙
木証券では考えており、こうした見方に立つのであれば、仮に、今
後物価上昇率がマイナスに転じたとしても、会見で総裁が述べたよ
うに、追加緩和の必要性は乏しいと思われる。(文責:勇崎 聡)
(出所:日銀及びBloombergのデータより髙木証券作成)
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