「異次元緩和」の補完措置を発表(2015/12/18作成)

*グローバル投資環境
No1228 *
ご参考資料
髙木証券投資情報部
日銀金融政策決定会合~「異次元緩和」の補完措置を発表
2015年12月18日作成
日銀は12月17日から18日にかけて金融政策決定会合を開催、マネタリーベースを年間約80兆
円に相当するペースで増加させるという金融市場の調節方針を維持した。
一方、資産買入れについては、「『量的・質的金融緩和』を補完するための諸措置」として、
主に以下の内容からなる修正を6対3の賛成多数で決定した。
① 長期国債の買入れペースは年間80兆円で変らないが、買入れの平均残存期間を本年中の7
~10年程度から、来年は7~12年程度に延長する。
② ETFおよびJ-REITの買入れペースは年間3兆円、900億円でそれぞれ変らないが、ETFに
ついては従来の買入れに加え、新たに年間約3,000億円の枠を設け、「設備・人材投資
に積極的に取り組んでいる企業」の株式を投資対象とするETFを買入れる(実施は2016
年4月より)。
③ J-REITの銘柄別の買入限度額を当該銘柄の発行済投資口総数の「5%以内」から「10%
『当面の金融政策運営について』要旨
以内」に引き上げる。
景気判断
輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられ
るものの、緩やかな回復を続けている。
「補完措置」の決定を受けた金融市場では国 海外経済 新興国が減速しているが、先進国を中心とした緩や
かな成長が続いている。
内株式市場が急上昇するとともに、為替市場
輸出
一部に鈍さを残しつつも、持ち直している。
でも円が急落したが、その詳細が伝わるとと 設備投資 企業収益が明確な改善を続けるなかで、緩やかな
増加基調にある。
もに往って来いとなった。以前から髙木証券
雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費
個人消費・
では日銀の追加緩和の必要性は低いと考えて 住宅投資 は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直して
いる。
公共投資
高水準ながら緩やかな減少傾向にある。
いたのに対して、市場の一部では昨年10月
鉱工業生産
横這い圏の動きが続いている。
の追加緩和の再来を期待した日銀のアクショ
ンが一貫して待望されてきたが、彼らが求め 企業の景況感 一部にやや慎重な動きもみられるが、総じて良好な
水準を維持している。
消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度と
ていたものとの比較という点で、今回の「補
なっている。予想物価上昇率は、このところ弱めの
物価
指標もみられているが、やや長い目でみれば、全体
完措置」は逆の意味で「異次元」であり、と
として上昇しているとみられる。
先行きのわが国経済については、緩やかな回復を
りわけ為替市場に与える影響は全くないとい
景気
続けていくとみられる。
えるだろう。
消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影
物価
響から、当面0%程度で推移するとみられる。
また、景気全般に関する「緩やかに拡大し
リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧
ている」という判断は維持されたが、輸出につ リスク要因 州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタ
ム、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。
「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮してお
いては「横這い圏の動き」から「持ち直しつつ
り、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目
標」の実現を目指し、これを安定的に持続するため
ある」に引き上げられている。さらに、物価に
に必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続
する。その際、経済・物価情勢について上下双方向
関しては現状、先行きともに前回から認識が変
のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。こうした
わっていないことを考えると、今回の措置の大
方針に沿って「量的・質的金融緩和」を推進していく
に当たっては、国債市場の動向や金融機関の保有
金融政策
義名分にも疑問符が付くかもしれない。
資産の状況などを踏まえ、より円滑にイールドカーブ
全体の金利低下を促していくことが適切である。ま
但し、日銀は「補完措置」を決定した理由の
た、「量的・質的金融緩和」のもとで企業や家計のデ
フレマインドは転換してきており、設備・人材投資に積
一つとして「設備・人材投資に対する積極的な
極的に取り組んでいる企業も多いが、そうした動きが
さらに広がっていくことが期待される。こうした観点に
取り組み」が広がることに対する期待を挙げて
立って、日本銀行は、「量的・質的金融緩和」を補
完するための諸措置を決定した。
いる。この点については黒田総裁が11月30日
に行った講演で「まず動くべきは日銀」と述べたことを実践しようとしたものだとはいえる
かもしれない。
(文責:勇崎 聡)
(出所:日本銀行より髙木証券作成)
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