中国での危機管理 ①平時、平素の心得

浜銀総合研究所 中国ビジネスサテライト「中国コラム」 2014 年 4 月号 http://www.yokohama-ri.co.jp
中国での危機管理
①平時、平素の心得
∼いまのうちに考えておくべきこと∼
チャイナ・インフォメーション 21
筧武雄
一昨年秋に発生した尖閣問題、昨年末の安倍首相靖国参拝を巡り、日中関係にいまだ改善の
兆しも無く、今年も引き続き現状維持が続くと思われる。他方、中国経済から以前のような勢
いは失われ、昨年から GDP 成長率は 7%台の長期減速傾向にシフト、3 月の製造業購買担当者
「景気指数」(PMI)は 48.1 と 5 か月連続で低下、8 か月ぶりの低水準となった。
中国政府による贅沢禁止、腐敗一掃運動の影響もあって国内の個人消費が緊縮する一方、い
わゆる「シャドウバンキング問題」に端を発する不動産バブル崩壊危機説も流れ、3 月の人民
元レート変動幅拡大1と同時に為替変動リスクも拡大傾向にある。今後、コスト高から輸出だ
けでなく、海外からの直接投資と技術導入、委託加工貿易が減り始めるリスクもある。
同時に一人っ子政策緩和による人口増加、国民生活スタイルの近代化、高速道路整備と乗用
車の普及、耕地減少と環境汚染から、食糧・エネルギー問題も潜在的リスクとしてある。
これらの複合的リスク、および政治外交問題とともに中国経済は最終的なハードランディン
グに結びつく危険性もある。
今後の想定し得る様々な事態に対処すべく、日本企業が中国で平時、平素から留意しておく
べき危機管理の基本事項について整理する。
1. 思わぬトラブルに巻き込まれないための注意事項
① 中国人しか行かない大衆レストランやクラブ等で日本人同士のパーティー、会食はやめる。
会合、会食には外資系ホテルのレストラン、個室を利用する。
② 外出はできるだけ日本人単独行動は避け、複数で出かける。
③ 携帯電話はライフラインとして常時携帯する。日本で「文字化け」しない英語文(あるいは
ローマ字表記の日本語文)で携帯メール通信を利用する。
④ 外出時は開放気分で派手な服装や持ち物をひかえる。宴会等で泥酔しない。
⑤ 日本側主催のイベント、パーティーは各地条例に従い、必要な場合は当局の許認可を得る。
⑥ 宿泊や滞在は外国人に許された場所のみとし、法に定められた臨時宿泊登記をする。
⑦ 地方に長期出張・駐在員、研修生、留学生がいる場合は、定期的に連絡を入れさせる。
⑧ 中国政府の「抗日記念日2」に敢えて日本の国旗を掲げたり、開業式や新商品発表会等イ
ベント、パーティーを開催しない。
⑨ 「中国は人件費が安い」など、差別的ともとれる言葉を公の場で安易に発しない。
⑩ パスポートは紛失、盗難に注意しつつ携行する。
2. 緊急事態への対応について
万一の事態に備え、平素から親しい中国人スタッフとの間で非常時の相互連絡方法、緊急連
絡網、身辺安全確認法、日本人帰国時の留守体制などについて社内ルール(危機管理対策マニ
ュアル)を決めておく。天安門事件の際は「日本人スタッフ不在時の留守番管理マニュアル」
が功を奏し、SARS 騒動の際は Skype が広く活用された。
1 人民銀行公表仲値±1%から 2%に一日の変動幅を拡大
2 前月号参照
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① 一定の必要人民元現金(空港までの旅費、航空券代等)を常に手元に置く。
② 「.cn」のメールアドレス、URLは避けて「.jp」を使う。
3. ビジネストラブルについて
中国企業、中国人とのビジネストラブル(仲裁、裁判等)の現場には日本人はできるだけ顔
を出さず、報告を受け対処方針を決めたら現場は中国人どうしでの解決を図る。
また社内で日本人スタッフと現地スタッフの間でトラブルが発生した場合は、その場で両者
をすぐに引き離して個別に事情を聴き、まず周辺社員に極力早く(できれば当日中に)納得の
いく説明をする必要がある。トラブルを放置すると噂が噂を呼び、日本人社員の立場が追いつ
められるだけでなく、最悪の場合は監督官庁や公安警察に通報されるなど社外問題にまで発展
する危険もある。
中国の民事訴訟においては裁判所による出国禁止措置がとられることがあるので注意が必
要である。
以上
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