レスピーギ/交響詩「ローマの祭り」 交響詩「ローマの祭り」は「ローマ三部作」の最後の作品で、1928 年に完成された。バルカン半島へとイ タリアの領⼟を広げるための攻撃や強圧的な外交が⾏われていた時期である。強いイタリアは⼈々のナシ ョナリズムを煽り⽴てていた。「ローマの噴水」では同時代の美しい街を、「ローマの松」では古代ローマの幻 影を描いたレスピーギが、この作品で古代から現代にいたる4つの祭りを取り上げた背景にも、おそらく彼 の愛国心があったのだろう。 オーケストラの編成はさらに拡大され、華やかになっている。第1部「チェルチェンセス」は古代ローマの暴 君ネロが円形劇場で⾏った残忍な祭りを描く騒々しい音楽だ。キリスト教徒が⾒せしめに虐殺され、聖歌 が何度もさえぎられながら、演奏されていく。第 2 部「五⼗年祭」はロマネスク時代の巡礼者たちによるロ ーマ賛歌。クラリネットとファゴットが静かな祈りを強調しながら、ゆっくりと痛々しい歩みが描かれる。丘の上 にたつ彼らに教会の鐘の音が応える。続く第3部「⼗⽉祭」はルネサンスの城の祭り。収穫を祝う農⺠の 喜び、マンドリンにのせて歌われるセレナード・・・恋⼈たちの甘い恋が実る。第4部「主顕祭」はナヴォナ広 場の主顕節前夜の狂乱を描いている。途中から情熱的な舞曲サルタレロが始まり、ワルツや⺠謡、酩酊 した⼈々の戯画的表現を挟みながら、生気あふれる祭が激しい楽想で表現される。オーケストレーション の色彩的効果がすばらしい。 解説 音楽学者 白石美雪 ※掲載された曲目解説の無断転載、転写、複写を禁じます。
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