「産学連携による学生の主体性を引き出す授業の取り組み ~Future Skills Project(FSP)研究会 産学協同 PBL 講座~」 東京薬科大学 生命科学部応用生命科学科 高橋 勇二 【講座導入の背景】理系大学で、学ぶことへの意欲が入学後に徐々に低下する学生が散見 される。また、卒論研究や大学院での研究が開始された後に、実験研究に強い興味を持っ ていながら、実験上のつまずきで、研究をやり遂げることのできない学生および院生がお り、教育的な観点から問題となっている。一方、生命科学関連企業においても、少しの失 敗でも意欲を消失する社員の増加、そして、就職 3 年以内離職率の増加など、大学卒業あ るいは大学院修了者の質的な変化が企業の人材育成に困難をもたらす一因となっている。 大学と企業が共有しているこのような問題背景から、主体性を備えた学生を育成すること が産学双方の緊急な課題として浮上してきている。そこで我々は、Future Skills Project (FSP)研究会が開発した「産学協同 PBL (Project Based Learning)講座」を東京薬科大学 生命科学部の初年次生に導入し、本講座の生命科学分野での有用性を評価することを試み た。 【講座内容】2013 年 4 月に東京薬科大学生命科学部応用生命科学科に入学した初年次生 69 人に前期必修科目として、FSP 研究会が開発した「産学協同 PBL 講座」を基本設計に沿っ て実施した。また、受講前後に勉学意欲に関するアンケートを実施した。FSP 研究会は 5 大学(青山学院大学、上智大学、東京理科大学、明治大学、立教大学)と 6 企業が参加し て始まり、主体性と応用力を 1 年次から育てるコースカリキュラムを立案し実践している。 「産学協同 PBL 講座」は、初年次生を受講対象者として開発されており、90 分 14 回のコ ース構成で、前半と後半のそれぞれに、異なる企業が正解のない課題を学生に与え、学生 はグループワークを通して課題への対応策を立案して発表する。企業からの講師は、課題 の提示、中間発表、そして、最終発表回の 3 回、前半および後半の計 6 回講座に参加する。 学生は仮の社員という位置づけで、先輩社員から出される課題に取り組む。学生の中間発 表に対しては、社員講師が厳しい批評や指摘を学生に与えて受講生の成長を促す。この講 座では、提示された課題に対する解決策の内容ではなく、課題解決に取り組む過程と姿勢 を評価の対象としている。 【実施の結果と考察】講座終了後の学生には、仲間意識、コミュニケーション力、および、 積極性の向上が認められた。さらに、座学的な基礎科学科目に積極的に取り組むなど、勉 学意欲の高まりも認められた。以上の結果は、本講座が生命科学分野を含む理系大学初年 次生の主体性を育成する上で有効である可能性を示している。 参考 WEB サイト FSP 研究会(http://www.benesse.co.jp/univ/event2013_fsp/about /index.html) 東京薬科大学生命科学部(http://pathos.ls.toyaku.ac.jp/applife/産学協同 PBL 講座)
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