GL理論による磁場中での超伝導2段転移の研究 数理物理学講座 41405007 関根 征裕 近年、PrOS4Sb12 が超伝導を示すことが比熱測定から発見された。PrOS4Sb12 の注目されている点 は、他の異方的超伝導体と比べてもかなり異色な超伝導を示すことが明らかになったことである。 その一つが多重超伝導相の存在である。試料の純良化に伴い、ゼロ磁場での超伝導転移が 1.85 Kと 1.75Kの2段に分裂していることが明確になってきた。この超伝導多重相図は、超伝導対 称性と絡めて議論されている。そこで、ギャップ構造の変化を伴う超伝導2段転移を Ginzburg-Landau(GL)理論により研究することにした。 図1は、熱伝導面内磁場回転の実験より、示唆された PrOS4Sb12 の磁場―温度相図である。こ の4回対称から2回対称への超伝導対称性で、2段転移を説明するためには、4回対称から2回 対称への転移を4回対称のオーダーパラメーターが最初に現れ、2回目の転移で2回対称のオー ダーパラメーターが現れると考えられている。しかし、Tayama らの磁化測定実験では,H*付近で 相転移の異常は観測されなかった。[1] では、なぜ2段転移は観測されないのか?その原因を Gradient Coupling 項を考慮に入れたG L方程式を用いて研究する。Gradient Coupling 項は、ゼロになる超伝導対称性の組み合わせは、 極めて難しい。そこで、これを考慮に入れると、H=H*で期待される熱力学量の異常(相転移) はぼやけてしまい、実験での観測では、異常は見つからないだろうという問題提起が本研究の目 的である。発表では、図1の相図で、ゼロ磁場、低温 T/Tc=0.1 と低磁場 H/Hc2=0.1 に対しての Gradient Coupling 項の値を変えて計算し、H=H*で期待される熱力学量の異常(相転移)に対 して議論する。下に計算結果をのせた。低温 T/Tc=0.1 でH*∼0.4 での磁化Mの様子を比較し ている。○は、Gradient Coupling 項=0 の時の磁化M,●は、Gradient Coupling 項=0.2 の時 の磁化Mである。 [1] T.Tayama et al, J.Phys.Soc.Jpn.72,1516 (2003). 図1 熱伝導面内磁場回転の実験より、 図2 低温 T/Tc=0.1 で磁化Mの磁場Hの依存性 示唆された PrOS4Sb12 の磁場―温度相図 ○は、Gradient Coupling 項=0 の時の磁化M ●は、Gradient Coupling 項=0.2 の時の磁化M
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