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【全訳】
英 語 へ の 興 味 を 高 め た い 学 校 教 育 で の 取 り 組 み
英語は嫌いだけど受験があるから、と仕方なく英語を勉強して来た人は多いだろう。
文部科学省の有識者会議でまとめられた英語教育の改革案では、子供達はアジアトップ
級の英語力という目標に向け、小学校のさらに早いうちから英語を学ぶことになる。
学校での英語教育のあり方を改善するという課題を前に、有識者会議では去る 9 月に、
英語教育の開始を現行の小学校 5 年生から 3 年生へと早めることや、大学入試を改善し、
リスニング、スピーキング、リーディング、ライティングといった英語の基本技能を正
しく評価することができるようにすることなどを推奨した。
実用英語の教授法に関する、中央教育審議会で近く始まる議論を前に、英語学習にお
いて生徒達の興味を高め、英語嫌いを減らす授業を二つ取材した。
まずは会話を
これは、東京都のとある中高一貫校の 3 年生の教室における最近の光景だ。流れてい
た英語の曲が終わると、授業が始まった。
教師は生徒達に「ペアになって」と指示を出した。まずはペアの相手との 2 分間のス
モール・トークから授業が始まる。
(2)各ペアは、好きな話題を選んで「ふーん」と相づちを打ったり、
「たぶん」
「ある意
味では」のような曖昧な表現を使ったりしながら英語を話そうとしていた。授業のねら
いは、何を話すか考えながら話せるようになることだ。その後、手始めにビンゴゲーム
のような英単語のゲームを行った。生徒達が前もって枠内に記入しておいたアルファベ
ットを、教師が読み上げた単語を聞き取りながら消していくというものである。
その後は「マップ・トーク」だ。生徒達は再びペアになり、現在の位置やその後の進
み方を相手に説明する旅行ゲームをしながら、過去形、現在完了形、未来形など動詞の
時制の使い分けを学んだ。
マップ・トークが終わった時点で、授業開始以来 20 分間が経っていた。授業はすべ
て英語で進められ、文法の説明は特にない。生徒達はほとんど皆、楽しそうだ。
「中学ではとにかく英語で話させるんです。そうすれば、書く力や聞く力もついてき
ます。ペアで話した内容をもとにエッセイを書き、外国語指導助手に添削してもらうこ
ともあります」と、教師は語った。
「文法の説明は最後にします。生徒達は、分かるよう
に説明すれば、楽しく英語を学べるのです」
中高一貫で、統合カリキュラムを実施している同校のモットーは、嫌いな教科を作ら
せるような指導をしないことだ。
「中学で英語が嫌いになると、高校での伸びはおそらく期待できないでしょう。です
から、中学では英語の基礎を教え、高校で厳しくするようにしています」と、同校の校
長は語った。
校長によれば、高校卒業程度とされる英検 2 級に、中学 3 年生 120 人中 20
30 名が
例年合格しているということだ。
他教科との連携
埼玉県にある公立小学校の 5 年生の教室では、外国語活動全 3 時間のうちの 1 時間目
に図工との合体授業を行った。この日のテーマは、好きな色の紙粘土で好きな動物を作
ることだった。
授業を担当する宇都宮大学講師と外国語指導助手が、英語で「何色が欲しいの?」と
生徒達に聞く。子供達は「ブルー」「イエロー」などと答えて、欲しい色の紙粘土をも
らう。
「何を作っているの?」という教師からの質問に、「エレファント」と答えるやりと
りも見られた。
紙粘土は、赤、青、黄、白、黒の 5 色を使うことが可能だ。灰色のゾウを作りたいの
なら、黒と白をもらって混ぜる必要がある。生徒達はある表現を英語でどう言うのかを、
教師に日本語で訪ねることもあった。
「先生、もう一つ紙粘土が必要なときは英語で何と言うの?」と聞く生徒もいた。
2 時間目は外国語活動に理科の要素が取り入れられた。教師達は、生徒が自分で作っ
た動物を生息地別に分けさせ、ゾウやキリンのいるサバンナ、クジラやウミガメのいる
海などを共同作業で作らせた。
授業のねらいは、生徒達が動物達の生息地について学び、野生動物達が直面している
問題を考えるという、3 時間目に予定している内容へとつないでいくことだ。
(4)最初、担任は内容が難しすぎると感じ、環境問題について教えることに反対した。
1,2 時間目がうまくいったのが、3 時間目で台無しになることを恐れたのだ。
しかし、生徒達はほとんど英語でなされる説明を注意深く聞き取り、絶滅の危機にあ
る動物達を救うためのメッセージを英語で表そうとした。