「各国政府外国人留学生奨学金等による修了生への

ウェブマガジン『留学交流』
』2015 年 3 月号
月 Vol.488
外国人
人留学生
生のフォ
ォロー アップ
プ施策に
に関する
る6つの
の提言
-「各国
国政府外国
国人留学
学生奨学
学金等による修了
了生への
の
フォローアップ方策
策に関す
する調査研
研究」よ
より-
Six Policy Prop
posalss for Develo
oping Effective
Folloow-up Programs foor Int
ternat
tional Stude
ents:
A Summaary of Coomparative Res earch of Follow
w-up Schhemes Provided
by Var
rious S cholars
ship Pro
ograms
立命館
館大学国際教
教育推進機構
構
准教授
堀江
未来
来
HORIE Miki
(AAssociate Professor,
P
Ritsumeika
an Internat
tional, Rittsumeikan University)
U
キ
キーワード:
外国人留学生
生政策、外国
国人留学生フ
フォローアッ プ
はじめに
外国人留
留学生のフォ
ォローアップ
プとは、政府
府機関・高等
等教育機関・奨学金授与
与機関等が、学修課程を
終えた元留
留学生に対し
して提供する
る様々な取り 組みのことである。日本を含めた
た外国人留学
学生受入主要
要
国における
る具体的なフ
フォローアッ
ップ活動例に
には、卒業生
生ネットワー
ークの構築、 各国におけ
ける同窓会組
組
織の設立・ 運営、キャ
ャリア支援、機関紙の定
定期発行、再
再訪問機会の提供などが
がある(谷口他 2012)。
その目的は
は、留学中に
に獲得された
た学修成果を
を引き続き高
高めること、本人の希望
望するキャリア展開の実
実
現支援など
ど多様である
る。
こういっ
った元留学生
生に対する取
取り組みの意
意義が、日本
本の外国人留学生受入政
政策の議論の中で注目さ
れるように
になったのは
は、ごく最近のことであ る。1980 年代
代に始まった
たいわゆる「留学生 10 万人計画」
は、戦後か
から続く「経
経済支援モデ
デル」(芦沢 2012)を踏
踏襲した設計
計となってお
おり、外国人
人留学生は日
本における
る学修課程修
修了後直ちに
に帰国し、母
母国の発展に
に寄与することが前提と されていた。つまり、
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元留学生に
に対する制度
度的な支援は
は設計されて
ておらず、指
指導教員や友
友人等との間
間で個別に構
構築された関
係を維持す
する以外は、元留学生の
の力量におい
いて先へ進む
むことが暗黙
黙の前提とな
なっていたといえる。し
かし、近年
年「新成長戦略」の一環として留学生
生 30 万人計
計画が政策展
展開する中で
では、外国人
人留学生が修
修
了後引き続
続き日本社会
会において活
活躍する、ま
または、他国
国における活
活躍の中で日 本社会の活
活性化に貢献
献
するしくみ
みをつくるこ
ことが目指さ
されるように
になった。
フォローア
アップの重要
要性
国費外国
国人留学生制
制度の成果に
に関する研究
究(谷口他 2011)では、多くの元国
国費留学生が
が日本で学ん
ん
だことを誇
誇りに思い、日本留学中
中に獲得した
た人的関係を
を維持してい
いることが明
明らかとなった一方で、
元国費留学
学生のネット
トワークが公
公的に出来上
上がっていな
ないこと、また留学経験
験の効果を「
「長期的」か
か
つ「波及的」
」に高める仕
仕組みとして
てのフォロー
ーアップ制度
度の充実が課
課題であるこ
ことを指摘し
した。また、
元日本留学
学生が社会で
で活躍する姿
姿を見せるこ
ことによって
て、日本留学
学の価値を次
次の世代に伝
伝えられると
の考えから
ら、フォローア
アップ施策の
の充実は、優
優秀な外国人
人留学生の獲
獲得にもつな
ながることを指摘した。
有効なフ
フォローアッ
ップ施策を展
展開すること
とは、以下の
の二つの側面
面から重要で
である。一つは、元留学
学
生個人の成
成長という視
視点から見た
た場合、留学
学後は、留学
学中の学修や
や経験を通じ
じて学んだことを振り返
返
り、成長を
を認識する上
上で重要な時
時期である。 しかし、そ
そういった自己の変化を
を適切に認識
識するために
は、自分の
の経験を振り返り、客観
観的に分析し
したり、多面
面的な視点か
から検討した
たりといった、経験学習
特有のスキ
キルが必要と
となる。また
た、異文化経
経験を通じた
た学びは留学
学中やその直
直後で完結す
するものでは
は
なく、長い
い生涯にわた
たって、多様
様な社会的立
立場を経験す
する中でさらに深まるこ とがある。つまり、そ
れぞれの元
元留学生が留
留学経験の新
新たな価値に
に気づき、継
継続的な学び
びの姿勢を持
持ち続けるための働きか
か
けを行うと
という点にお
おいて、フォ
ォローアップ
プ施策は重要
要な役割を果
果たす。
もう一つ
つの視点は、政府機関・高等教育機
機関・奨学金
金授与機関等
等、留学機会
会を提供する側が、フォ
ローアップ
プによってその教育プログラム本体 の価値を高めうるということである
る。先に述べ
べたように、
留学後の時
時期は個人の
の学びの質を
を高める機会
会であり、この部分に対
対して有効な
な取り組みが
が提供できれ
れ
ば、プログ
グラム本体の
の教育的価値
値が高まるだ
だけでなく、様々なキャリア支援を
を通じて社会
会的な活躍を
後押しする
ることで、プ
プログラムの
の「ブランド
ド力」を高め
めることができる。また
た、同窓会などの修了生
生
ネットワー
ークは、世代
代や職種を超
超えたつなが
がりとして活
活用される場
場となりうる し、それ自身が特別な
コミュニテ
ティとして社
社会的に認知
知される可能
能性もある。
フォロー
ーアップの重
重要性は、ア
アメリカ、イ
イギリス、オ
オーストラリア、フラン
ンス、ドイツ
ツなど外国人
人
留学生受入
入主要国にお
おいても強く認識され、 その外国人
人留学生受入
入政策や国費
費留学生制度
度(またはそ
れに準ずる
る制度)に組
組み込まれて
ている。しか
かし同時に、どの国の政
政府関係者も 、制度の充
充実が課題で
あると感じ
じており、現
現行の制度に
に満足してい
いないことも共通点として指摘され
れた(谷口他
他 2012)。
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日本の外国
国人留学生政
政策における
るフォローア
アップ施策に
についての6つの提言
本稿では
は、平成 23 年度文部科学
年
学省先導的大
大学改革推進
進委託事業と
として筆者が
が関わった『各国政府外
『
外
国人留学生
生奨学金等に
による修了生
生へのフォロ
ローアップ方
方策に関する調査研究』
(以下、
「本調
調査」)の結
結
果をもとに
に、以下議論
論を進める。
本調査で
では、外国人
人留学生受入
入主要国であ
あるアメリカ、イギリス、フランス
ス、ドイツの他、近年積
積
極的な外国
国人留学生政
政策を展開し
しているオー
ーストラリア
ア、中国、韓
韓国、台湾を
を対象とし、各政府が外
外
国人留学生
生受入の意義
義をどうとら
らえているか
かを比較検討
討した上で、政府機関・ 高等教育機
機関・奨学金
金
団体等によ
よるフォロー
ーアップ制度
度の事例を収
収集した。そ
その結果、日本の国費留
留学生制度は
は、人数規模
模
や支給額、 年間予算等
等の面で非常
常に充実して
ている一方、フォローアップ(及び
び、そこに連
連動するリク
ルーティン
ング活動)の
の面で他国か
から学ぶべき
き点が多いことがわかった。言い換
換えれば、日本の国費留
学生制度は
は、留学中の
の諸条件は非
非常に充実し
しているもの
のの、留学前
前と留学後の
の段階におい
いてそのプロ
グラム本体
体の価値を高
高めるしくみ
みを有してい
いない。つま
まり、これら留学前後の
の段階におい
いて、既存の
制度の価値
値を高める余
余地が大いに
にあると考え
えられる。
本調査に
においては、日本の外国
国人留学生政
政策における
るフォローアップ施策に
に対し、6つの提言を試
試
みている。 ここでは、国費留学生
生に限らず、 広く日本の
の高等教育機
機関で学ぶ外
外国人留学生
生を対象と考
考
え、これら
ら6つの提言
言について一
一つずつ検討
討する。なお
お、フォロー
ーアップの具
具体的な各種
種事例につい
い
ては、本報
報告書(谷口
口他 2012)を
を参照された
たい。
1.文化外
外交政策とし
しての国際教
教育交流政策
策のとらえ直
直し
提言の一
一つ目は、フ
フォローアッ
ップのあり方
方を考える上
上で、まず外
外国人留学生
生受け入れ政
政策を文化外
外
交政策の一
一部としてと
とらえ直すということで
である。上記
記各国におい
いては、外国
国人留学生政
政策を経済・
文化・外交
交戦略の一部
部として重視
視しており、 特に政府奨
奨学金制度の制度設計に
にその特徴が
が強く反映さ
れている。 例えば、ア
アメリカのフ
フルブライト
ト、イギリス
スのチーヴニングのほか
か、フランスやドイツの
国費留学生
生制度におい
いても、優秀
秀な学生を獲
獲得することが最重要課
課題とされて
ており、そういった世界
界
の優秀な若
若者が、当該
該国の「関係者」となり 、または「理
理解者」
「支
支持者」とし
して社会的な
な影響力をも
ちながら活
活躍すること
とが、将来的
的にその国の
の国益につな
ながるという考え方であ
ある。留学交流が、その
当該国のソ
ソフト・パワ
ワー構築に貢
貢献しうるこ
ことは諸調査
査(Mashiko & Horie 20008 等) でも
も指摘されて
て
いる。つま
まり、フォロ
ローアップの
の設計は、元
元留学生の個
個人の長期的
的な成長に資
資するものでありつつ、
国や組織に
にとっての有
有益性も考慮
慮すべきとい
いう観点であ
ある。
近年では
は、学生の国
国際流動性の
の高まりに伴
伴い、複数の
の留学経験をもち、その
のため複数の国・地域・
機関に対し
して留学先ア
アイデンティティを持つ
つものも増え
えている。い
いかに当該国
国・機関を際
際立たせ、愛
愛
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着を持たせ
せるかという
うことも、重
重要な視点と
となりつつあ
ある。
2.日本留
留学支援機関
関の海外拠点
点の量・質両
両面における
る拡充
効果的な
なフォローア
アップ活動を
を展開する上
上では、世界
界の各地で元
元留学生(及
及び留学希望
望層)にリー
ー
チアウトで
できる物理的
的な拠点があ
あるとよい。先の国費留学生制度調査(谷口他 2011)での
の各国比較に
に
よって、国
国外において
て日本留学を
を支援する公
公的な拠点数
数が圧倒的に少ないこと が明らかとなった。例
例
えばイギリ
リスのブリテ
ティッシュ・カウンシル
ルは世界 110 カ国 197 都市に拠点を
都
を設けているほか、中国
のように、海外の大学
学と連携することで、世界
界 96 カ国 332
3 カ所に孔
孔子学院を展
展開した例も
もある。一方
方
日本では、日
日本学生支援
援機構海外事
事務所が 4 カ
カ国 都市と
とグローバル
ル 30 拠点校が
が管轄するオ
オフィス(海
海
外共同利用
用事務所) が 8 カ所展開
開されている
る。日本の海
海外における公的な海外
外留学窓口を世界中の主
主
要都市をす
すべてカバー
ーする規模に
にまで増やす
すことは現実
実的ではない
いが、日本の
のその他の在
在外公的機関
(日本学術
術振興会海外
外研究連絡セ
センター、国
国際交流基金
金日本文化会
会館、日本文
文化センター
ー、科学技術
術
振興機構海
海外事務所な
など)や日本
本の各大学の
の海外オフィス等と連携
携すれば、同
同様の役割を果たすこと
ができると
と考えられる
る。
各国の例
例では、元留学
学生が母国(またはその
の他の地域)で本人の希
希望するキャ リア展開を実現させ、
より高い社
社会的地位を
を獲得する過
過程を支援す
することで、留学で得た経験や学位
位の社会的価
価値を高める
ことをめざ
ざす取り組み
みが見られた
た。元留学生
生の社会的活
活躍は、その当該国への
の留学のブランド力や市
市
場価値を高
高め、優秀人
人材の獲得に
にもつながる
る。こういった考えから、例えば、 ブリティッシュ・カウ
ンシルでは
は中東地域の
の元イギリス留学生の中 堅キャリアを対象とした
たリーダーシ
シップ・プログラムや、
香港ではイ
イギリスから
ら帰国した元
元留学生に対
対する就職ガ
ガイダンスが
が開催される といった例
例がある。こ
ういった活
活動を展開す
する上では、活動に便利
利な拠点を物
物理的に有す
するというだ
だけでなく、その現地社
社
会事情を良
良く理解した
た上で有効な
な内容を提供
供するため、地域に根ざ
ざしたスタッ フの働きに大きな意味
味
があること
とがわかる。
3.留学前
前から留学後
後まで連動し
した支援制度
度
先にも述
述べた通り、元留学生が
がそれぞれの
の社会で活躍
躍する姿は、そのまま留
留学プログラムの社会的
的
な評判につ
つながる。ま
また、次の世
世代に対して
て、元留学生
生が、留学経
経験をどう語
語るのか、積
積極的に勧め
てくれるの
のか、さらに
には、優秀な
な外国人留学
学生獲得のた
ための取り組
組みに協力し
してくれるのか、といっ
たことはす
すべて、それ
れぞれの留学
学経験や受入
入機関に対す
する直接的な評価の一部
部と見ることができる。
極めて主観
観的ではある
るが、社会的
的な評判に最
最も結びつき
きやすい部分
分でもある。 各国政府関係者に対す
る聞き取り
りの中で、留
留学前・留学
学中・留学後
後と、サービ
ビスの質が変
変わらないこ とが肝心であり、留学
学
前支援が充
充実していて
ても、帰国後
後のサポート
トが疎かであ
あれば、そのギャップが
が落胆をもたらし、留学
学
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全体の印象
象の悪化につ
つながる、という重要な
な指摘もあった。
外国人留
留学生のリク
クルートメン
ントとフォロ
ローアップ段
段階を結びつけ、コミュ ニティを形
形成する事例
例
もみられた
た。アメリカ
カのフルブラ
ライトや東京
京財団ヤング
グリーダー奨
奨学基金プロ グラムにお
おいては、留
学前プログ
グラムから奨
奨学生として
てのアイデン
ンティティを
を持たせることが意図さ れており、留学後にお
お
いても継続
続的な活動参
参加や組織運
運営への貢献
献が期待され
れていることが、事前か
から徹底して伝えられて
いる。留学
学後はそうい
いった立場か
から次代の奨
奨学生に対す
する取り組み
みに関わるこ とで、より奨学財団と
の絆を強め
めていくしくみがうかが
がえる。
4.既存の
の元日本留学
学生同窓会組
組織に対する
る重点的支援
援と関連機関との連携
元留学生
生や修了生の
のコミュニテ
ティの代表例
例は、同窓会
会組織である。各国の事
事例では、政
政府機関やそ
れに準ずる
る機関が各地
地での同窓会
会を立ち上げ
げ、留学前と留学後の連
連動的な取り 組みの中で活かされて
いることが
がわかった。元日本留学
学生の同窓会
会組織は公的
的には組織されていない
いものの、世
世界各地にお
お
いて私的な
なリーダーシ
シップの下、多数設立さ
されている。例えば、ミャンマー、 インド、タイなどでは
は
元留学生に
による団体が
が、日本留学
学に対する情
情報提供や日本留学試験
験等の運営に
にも関わっており、現地
地
における日
日本留学の広
広報に大きな
な役割を果た
たしている。こういった組織に対す
する在外日本
本公館の関与
与
や支援の度
度合いは様々
々であるが、いずれにし
しても限定的
的であり、こういった組
組織に対する財政的な支
支
援や、団体
体間のネット
トワーク構築
築も、拠点機
機能を充実させる上で有
有効な手段と 思われる。
しかし一
一方で、各国
国の政府機関
関やそれに準
準ずる機関が
が運営する同窓会におい
いては、会員の獲得と保
保
持を一番の
の課題と考え
え、運営で行
行き詰まりを
を感じている
ることも判明している。 元留学生自身の同窓会
会
組織への自
自主的な参加
加によっては
はじめて、当
当該政府は元
元留学生の情
情報を更新し
し、ネットワークを保持
持
することが
ができる。し
しかし、こういった従来
来型のネット
トワーキング
グ活動への参
参加は任意である場合が
が
多く、特に
に強い動機づ
づけがない限
限り、継続的
的な参加が期
期待できない
い。長期にわ
わたって活動
動している同
窓会組織に
においては、設立時のメンバー(シ
シニア層)と新たなメン
ンバー(若年
年層)との間で活動に対
対
する期待や
や興味、留学
学そのものに
に対する思い
い入れなどに
に対するギャップがあり 、そのことが同窓会運
運
営維持の課
課題となって
ている。
5.オンラ
ライン・コミ
ミュニティの
の階層的な設
設定による元
元留学生の取
取り込み
上記のよ
ように、若年
年層を同窓会
会活動に取り 込むための
の様々な方策
策が検討され
れる中で、ソーシャル・
ネットワー
ーキング・サ
サービス(SNS)の活用に
によって「広
広く浅い」ネ
ネットワーキ
キングの方法
法が試みられ
れ
ている。ブ
ブリティッシ
シュ・カウン
ンシルでは、 SNS プラッ
ットフォーム
ム上で、全世
世界や各国・地域におけ
け
るイギリス
ス留学経験者
者をつなぐペ
ページを展開
開し、毎日登
登録者数を増
増やしている という。SN
NS 活用の最
最
大の利点は
は、個人情報
報を獲得しな
なくとも個人
人とつながる
ることができる上、住所
所変更等の影
影響を受けず
ず
独
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につながり
りが維持でき
きるという点
点にある。ま
また、利用者
者側にとっても気軽に参
参加でき、日々少しずつ
元留学国や
や機関に関す
する情報に触
触れることが
ができる。
一方、フ ルブライトや DAAD のよ
ように、独自
自のオンライ
イン・コミュ
ュニティを立
立ち上げる例
例がある。こ
の場合、情
情報提供対象
象を限定し、より個別に
に特化された
た内容を提供
供することが
ができるが、日常閲覧が
が
習慣化して
ている一般的
的な SNS とは
は異なるプラ
ラットフォー
ームにわざわ
わざアクセス
スすることが
がハードルと
なっており
り、利用者の
の定着率が極
極めて低くな
なりがちなことが大きな課題である 。また、独
独自システム
ム
を管理する
るための経費
費が必要とな
なる。
いずれに
にしても、元
元留学生に対
対して魅力的
的なコンテン
ンツ(情報、イベントな
など)を提供
供することが
が
最も重要な
な課題である
ることは間違
違いない。東
東京財団ヤン
ングリーダー
ー奨学基金プ
プログラムでは、元奨学
学
生に対して
て日本の政策
策動向を英文
文でまとめた
たメールマガ
ガジンを発行
行しており、 その内容に興味を持つ
者は必ず連
連絡先の更新
新をしてくれ
れるという。 一方、イギ
ギリスのチー
ーヴィニング
グ奨学金制度
度では、留学
学
修了後にお
おいても奨学
学金受給者としての社会
会的役割を果
果たすため、連絡先情報
報等を必ず報
報告すること
になってお
おり、日本の
の国費留学生
生制度におい
いても同様の
の取り組みが
が可能と考え
えられる。
6.修了生
生の研究活動
動支援のため
めの再招聘や
や共同研究促
促進制度の充
充実
日本では
はすでに、
「帰
帰国外国人留
留学生短期研
研究制度」や「帰国外国人
人留学生研究
究指導事業」を通じて、
途上国に帰
帰国した元国
国費留学生が
が研究目的で
で再度来日す
するための財
財政支援を行
行なっている。しかし、
日本入国の
のためのビザ
ザ取得が困難
難なために、 これら制度
度の利用が促
促進されない
い事実も指摘
摘されている
(太田 20111)。そのた
ため、日本と査証相互免
免除条約を締
締結していな
ない国・地域
域からの元留
留学生に対し
ては、研究
究目的での日
日本訪問にお
おいてはビザ
ザ発行の優遇
遇措置をとることが有効
効に働くことが考えられ
れ
る。同様に
に、日本の元
元国費留学生
生の多くは政
政府系または
は研究系の専
専門職につい
いている(谷
谷口他 2011)
ことから、 日本の研究
究者との共同
同研究などを
を通じて専門
門性を高める支援を行う ことも有効
効である。彼
彼
らがそれぞ
ぞれの専門の
の立場におい
いて価値のあ
ある成果をあ
あげることが
ができれば、 それが日本
本への国費留
学の市場価
価値を高める
ることにもつ
つながるであ
あろう。各大
大学や奨学財
財団において
ても同様に、元留学生が
が
それぞれの
の専門性を高
高めることに
に特化した取
取り組みを検
検討することができよう 。有効な取
取り組みにお
お
いては、同
同時に、様々
々な価値が各
各組織に還元
元されるであ
あろう。
おわりに: 変化と多様
様性への対応
応
フォロー
ーアップの難
難しさは、総
総じて、対象
象となる「元
元留学生」が
が多様である という点にある。留学
学
時期や期間
間、分野、現
現在の職業な
などの広がり から考える
ると、彼らの興味関心や
やニーズを一括りにする
ことはでき
きない。また
た、かつては
は有効に機能
能していた同
同窓会組織が
が世代交代の
の中で課題を抱えるよう
になるなど
ど、
「元留学生
生」の資質や
や留学経験に
に対する姿勢
勢も変化して
ている。本調
調査において
ても、各国・
独
独立行政法人日本
本学生支援機構
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ウェブマガジン『留学交流』
』2015 年 3 月号
月 Vol.488
組織が施行
行錯誤する中
中で、参考となる事例は
はたくさんみ
みられたものの、成功事
事例として胸
胸を張る組織
織
は一つもな
なかった。今
今後、元留学
学生と組織の
の双方に意味
味のある形で新しいフォ ローアップ
プ体制を構築
築
する上では
は、変化と多
多様性への柔
柔軟かつ細や
やかな対応が
が鍵となるだ
だろう。
参考文献
Mashiko, EE. & M. Horie. (2008). “Nurturinng Soft Power: The Imp
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ds). Soft Power
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Superrpowers: Cu
ultural andd
National AAssets of Japan
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and the
t
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芦沢真五(22012)
「留学
学生受入と高度人材獲得 戦略−グロー
ーバル人材育
育成のための
の戦略的課題
題とは−」
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太田浩(20011)「日本か
から帰国した
た中国人大学
学院留学生に
に対する支援
援をどうすべ
べきか−中国調査から見
見
えてきたも
もの−」高橋五
五郎・加治宏
宏基他『中国
国の国際的人
人材における
る日本理解者
者の確保・養
養成に関する
る
日中共同研
研究−日本への
の大学院留学
学生の帰国後
後フォローア
アップ施策の
のあり方−』平
平成 22 年度
度外務省日中
共同研究交
交流支援事業
業(愛知大学
学)、130-1333.
谷口吉弘他
他 (2011)『国
国費外国人留
留学生制度の
の成果・効果
果に関する研
研究』平成 222 年度文部
部科学省先導
導
的大学改革
革推進委託事
事業(立命館
館大学)httpp://www.mex
xt.go.jp/a_
_menu/koutoou/itaku/13
307282.htm
谷口吉弘他
他(2012)
『各
各国政府外国
国人留学生奨
奨学金等によ
よる修了生へ
へのフォロー
ーアップ方策
策に関する調
査研究−主要
要な各国政府
府、海外の主
主要大学の取
取り組み−』2
23 年度文部
部科学省先導
導的大学改革
革推進委託事
事
業(立命館
館大学)httpp://www.mex
xt.go.jp/a__menu/kouto
ou/itaku/13
330395.htm
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