平成 27 年度の臨時福祉給付金給付事業に関する

平成 27 年度の臨時福祉給付金給付事業に関する改善提案書
【改善提案事項】
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支給要領等の改善により対応可能な事項
(1)申請受付開始日の統一について
(2)消費税率引上げの影響を受けない者を支給対象外とすることにつ
いて
(3)前年度からの変更がない添付書類の省略について
(4)児童福祉施設等入所児童等の連絡調整方法の見直しについて
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法令や予算の措置が必要な事項
(1)平成 27 年度に 1 年 6 月分を一括支給することについて
(2)税情報を閲覧できる法令上の措置を講じることについて
(3)支給対象要件を「世帯全員非課税者」とすることについて
平成 27 年 3 月
東京都福祉保健局生活福祉部生活支援課
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改善提案の趣旨
平成 26 年度における臨時福祉給付金給付事業の実施に際しては、実施主体
である区市町村や、施設入所児童等に係る連絡調整を担う都道府県において、
事業を適正かつ円滑に実施する上で、その支障となる様々な課題があった。
消費税率 10%への引上げ時期が平成 29 年 4 月に延期されたことに伴い、国
は、平成 27 年度予算案に臨時福祉給付金給付事業に要する経費を計上し、平
成 27 年 3 月 9 日に開催された社会・援護局関係主管課長会議において、制度
の概要や支給事務のスケジュール、支給要領の案などを提示した。
これによると、平成 27 年度においては、事務を煩雑にしていた基礎年金受
給者等への加算措置や、子育て世帯臨時特例給付金との併給調整が廃止される
など、支給事務の簡素化の観点からは一定の改善が図られているものの、事業
の趣旨に沿った対象者に、簡易な手続きにより、迅速かつ適正に支給するため
には、なお改善すべき多くの課題が残されている。
東京都は、平成 26 年 12 月に管内区市町村に対し、平成 26 年度において生
じた課題及びその改善に向けた意見を照会したところ、7 割の区市町村から、
実際に生じた問題点の指摘や、具体的な改善策の提案が寄せられた。
今般、これらの意見を集約し、多数の区市町村に共通するものを中心に、改
善の必要性や実現可能性も含めて精査した上で、平成 27 年度における給付事
業において、強く改善を求める事項に絞り、支給要領等の改善により対応可能
な事項と、法令や予算の措置が必要な事項とに分けて取りまとめ、提案するも
のである。
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1 支給要領等の改善により対応可能な事項
(1)申請受付開始日の統一について
【改善提案】
申請受付開始日について、年度後半の例えば 10 月 1 日とするなど、全
国一律に統一すること。
【理由】
市町村民税の課税状況は、6 月の当初賦課決定の後も、修正申告や未申告者の期限
後申告等により変動する場合が多いため、課税状況の変動が概ね収束する年度後半以
降に申請受付を開始することで、より趣旨に沿った者への支給が可能となる。
また、申請受付開始日を全国一律に統一することにより、国、都道府県、区市町村
において、効率的かつ効果的な広報が可能となるほか、自治体間での申請受付開始日
の相違による住民の混乱を回避できる。
以上のことに加え、支給開始が平成 27 年 10 月からと想定されていることも踏まえ、
申請受付開始日について、例えば 10 月 1 日とするなど、全国一律に統一することが
適当である。
(平成 26 年度に生じた具体的な問題点)
① 都内区市町村においては、当初賦課決定直後の 6 月から順次申請受付を開始し
たため、申請受理から支給決定までの間においてのみ税情報の閲覧が可能という
制約の下では、修正申告等により支給決定後に「非課税者」から「課税者」とな
った場合であっても、支給の取消・停止や返還請求を行うことができなかった。
② 都内区市町村における申請受付開始時期は、6 月から 10 月までの間に分散して
いたが、国の広報活動として、新聞折込が 3 月、新聞広告及びテレビCMが 6 月
から 7 月にかけて実施されたため、自治体によっては給付金主管課やコールセン
ター等の体制を整備する前に住民からの問合せが殺到するなど、自治体及び住民
の双方に混乱が生じた。
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(2)消費税率引上げの影響を受けない者を支給対象外とすることについて
【改善提案】
支給対象期間を通じて、拘置所又は刑務所に入所している者や、国外
に居住している者など、消費税率引上げの影響を受けない者を支給対象
外とすること。
【理由】
消費税率引上げによる食糧費等に係る支出額の増加分を低所得世帯に支給すると
いう給付金の趣旨に照らし、国内で食糧費等にかかる費用を負担する可能性がない者
を支給対象とすることは、不合理かつ不公平である。
よって、支給対象期間を通じて、拘置所又は刑務所に入所している者や、国外に居
住している者など、消費税率引上げの影響を受けない者は、支給対象外とすることが
適当である。
(平成 26 年度に生じた具体的な問題点)
都内の一部の自治体で、刑務所の長期入所者や、基準日現在で住民登録のあった国
外在住者からの申請があり、支給した事例が多数報告された。
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(3)前年度からの変更がない添付書類の省略について
【改善提案】
平成 26 年度の受給者が前回申請時に提出した金融機関口座等の確認添
付書類のうち、変更がないものについて、本人同意を条件に、再度の提
出を不要とすること。
【理由】
前年度の申請時に確認が済んでいる添付書類については、再度の提出を省略しても
審査事務上の支障がなく、申請者の負担軽減による申請率の向上にもつながる。
よって、前年度と確認内容に変更がない場合には、申請者の同意を前提に、前年度
の添付書類を活用できるようにすることが適当である。
なお、最新のQ&Aにおいては、前年度の情報をあらかじめ印字した申請書を利用
する方法や、本人確認書類の添付を不要とすることができる場合の具体例が紹介され
ているが、さらにその趣旨を徹底し、区市町村に大幅な裁量を認めることが求められ
る。
(平成 26 年度に生じた具体的な問題点)
① 申請書及び添付書類の不備が多く、その補正のために、自治体及び申請者の双
方に多大な負担が生じた。
② 特に、高齢者や障害者にとっては、煩雑な書類を整えることへの負担感が強く、
また、預金通帳の写しなどの機微な個人情報の提出に抵抗感を抱く者も多く、手
続の途中で申請を断念したり、苦情につながる事例が多数報告された。
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(4)児童福祉施設等入所児童等の連絡調整方法の見直しについて
【改善提案】
児童福祉施設等入所児童等の連絡調整方法について、
「配偶者からの暴
力を理由とした避難事例」の取扱いの例に準じ、施設から施設所在地自
治体への申出に基づき、支給停止処理等を行う方法とすること。
【理由】
措置情報における児童等の住民票所在地は、措置時点のものであり、学齢期の児童
等の多くは施設所在地に住民票を移転しているほか、措置後に保護者が転居した場合
にもその情報は反映されない。一方、施設は、児童等及び保護者双方のより正確な現
在の住民票所在地を把握している場合が多い。
このため、措置情報に依存するのではなく、施設が把握している情報に基づいて連
絡調整を行うことにより、迅速な支給停止処理等につながり、制度の趣旨に沿った児
童等本人への迅速・確実な支給と、二重支給の防止が図られる。
(平成 26 年度に生じた具体的な問題点)
① 児童等が施設に入所してから、その措置情報が都の給付金主管課に提供される
までに、約 2 か月の時差があるため、支給停止処理が間に合わない、あるいは、
施設から施設所在地自治体への申請から支給・不支給決定まで相当長期間かかる、
などの不都合な事例が多数報告された。
② 措置後に保護者が転居するなどにより、措置情報における住民票所在地に該当
がない場合には、支給停止処理が行えず、結果として保護者と児童等の双方への
二重支給となる事例が多数報告された。
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2 法令や予算の措置が必要な事項
(1)平成 27 年度に 1 年 6 月分を一括支給することについて
【改善提案】
税制抜本改革法の趣旨を踏まえ、必要な予算措置を講じた上で、平成
27 年 10 月から平成 29 年 3 月までの 1 年 6 月分(一人当たり 1 万円)に
ついて、平成 27 年度に一括して支給すること。
【理由】
税制抜本改革法により、複数税率等が実現するまでの間は簡素な給付措置を実施す
ることとされているため、消費税率の 10%への引上げ時期の延期により、新たに平成
27 年 10 月から平成 29 年 3 月までの 1 年 6 月間を支給対象期間とすべきところである。
しかしながら、平成 27 年当初予算案では、平成 27 年 10 月から平成 28 年 9 月まで
の 1 年分として一人当たり 6 千円の支給が予定されており、法の趣旨からは、平成 28
年度において残余の 6 月分について支給する必要があると考えられるものの、この点
について最新のQ&Aでは、平成 28 年度予算の編成過程で検討するとされている。
本給付金制度については、平成 26 年度においても、支給額と支給に要する経費が
拮抗しており、また、支給額に比して申請に係る住民の負担も重いなど、費用対効果
の面で国民の批判の声が大きい。このため、仮に 2 か年度に分けて実施することとな
れば、支給に要する経費が倍増するほか、平成 28 年度の一人当たり支給額がより少
額となるなど、更に非効率となり、国民の批判に拍車をかける懸念がある。
以上のとおり、行政の効率性、住民の利便性の双方の観点から、支給開始時期とさ
れている平成 27 年 10 月までに、補正予算等の所要の財源措置を講じた上で、平成 27
年度において一括して支給することが適当である。
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(2)税情報を閲覧できる法令上の措置を講じることについて
【改善提案】
給付金支給事務を目的として税情報を閲覧できるよう、地方税法上の
守秘義務の解除に係る法令上の措置を講じること。
【理由】
支給事務に必要な税情報の閲覧について、申請時における本人同意に依存する方式
では、申請後の課税状況の変動に対応できない、個別に申請を勧奨することができな
い、住民からの照会に迅速な応答ができないなど、支給の適正化や効率的な事務執行、
住民サービスなどの面で課題が多い。
また、税務主管課においては、非課税者や未申告者への通知発送など、専ら給付金
支給のための事務負担が増大した。
そこで、支給事務の適正化・効率化及び住民サービスの向上を図るため、給付金主
管課において、事務に必要な範囲で随時、税情報を閲覧できるよう、法令上の措置を
講じる必要がある。
(平成 26 年度に生じた具体的な問題点)
① 税情報を閲覧できるのが申請受理から支給決定までの間のみであったため、申
請時の「非課税者」がその後に修正申告等により「課税者」となった場合などに、
適正な対応が図れなかった。
②
給付金主管課が対象者を把握できないために、適時適切な申請勧奨ができず、
そのことが申請率の低迷につながった。
③ 住民からの課税状況等の対象要件に関する問合せに対し、給付金主管課では対
応できないため、税務主管課へ回付することに対し、「たらい回し」との苦情が
多数寄せられた。
④ 税情報を閲覧できる税務主管課においては、申請書を同封した非課税者への通
知や、未申告者への慫慂通知の送付、住民からの支給対象要件に関する照会対応
など、専ら給付金支給のために、膨大な事務負担が生じた。
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(3)支給対象要件を「世帯全員非課税者」とすることについて
【改善提案】
支給対象者を、
「非課税者(課税者の被扶養者を除く)
」に代えて、
「世
帯全員非課税者」とすること。
【理由】
申請者の税情報と住基情報からは、扶養者の有無やその課税状況を確認することが
できず、その事実関係と真実性は、専ら申請者の申告内容及び誓約条項に依存してお
り、客観性が担保できない。
一方、行政施策においては、住民票上の世帯を生計の単位と捉える考え方が一般的
であり、また、その事実関係は公簿等により客観的かつ容易に確認可能である。この
ため、低所得者等を対象とする社会保障施策の多くが、「世帯全員が非課税者である
世帯に属する者」を対象要件としている。
そこで、給付金の対象要件についても、客観的に確認できない扶養関係等の要件を
撤廃し、確認が容易な「世帯全員非課税者」とすることが適当である。
なお、本要望の実現のためには、世帯全員の税情報の閲覧が必要となるが、前記2
(2)の法令上の措置の実現によるほか、「世帯用申請書」の活用により、世帯全員
が連名で税情報の閲覧に同意する方法でも対応可能である。
(平成 26 年度に生じた具体的な問題点)
① 扶養者の有無及びその課税状況という、客観的に確認できない事実関係を支給
対象要件とすることは、公平性を確保できない制度であるとの批判的意見が多数
寄せられた。
② 特に、高齢者や単身者においては、税法上の扶養者の有無等を認識していない
場合が多く、申請者の悪意の有無にかかわらず、多くの不適正な支給が行われた
可能性が否定できない。
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